大阪高等裁判所 平成14年(行コ)100号 判決 2003年5月14日
主文
1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は,控訴人らの負担とする。
事実及び理由
第1当事者の求めた裁判
1 控訴の趣旨
(本案前の主張)
(1) 控訴人Aについて
ア 原判決中,控訴人Aの敗訴部分を取り消す。
イ 被控訴人の控訴人Aに対する訴えを却下する。
ウ 訴訟費用は,第1,2審とも,被控訴人の負担とする。
(2) 控訴人両名について
ア 原判決第1項中,控訴人両名に対し,26万6243円の支払を命じた部分を取り消す。
イ 被控訴人の,上記部分の訴えをいずれも却下する。
(本案についての主張)
(1) 原判決中,控訴人両名の敗訴部分を取り消す。
(2) 被控訴人の請求をいずれも棄却する。
(3) 訴訟費用は,第1,2審とも,被控訴人の負担とする。
2 控訴の趣旨に対する答弁
主文同旨
第2事案の概要
事案の概要は,次のとおり付加・訂正・削除するほかは,原判決「事実及び理由」の「第2 事案の概要」欄(原判決2頁1行目から6頁6行目まで)と同一であるから,これを引用する。
1 原判決2頁4行目の「地方自治法」の前に「平成14年法律第4号による改正前の」を付加する。
2 同18行目の「関して」の次に「,」を付加する。
3 同3頁13行目の「係る係る」を「係る」と訂正する。
4 同4頁10行目の「(乙1の2ないし4,6,7)」を「(乙1の2ないし4)」と訂正する。
5 同16行目の「(乙1の1,5)」を「(乙1の1・5・7)」と訂正する。
6 同19行目の「(乙2の2,」から同21行目の「金額と」までを「(乙2の2・3。なお,収支決算書には,支出総額は合計210万1314円と記載されていたが,後記の本件監査請求において監査委員が領収書等を照合した結果,支出総額は210万0667円であり(甲2),」と訂正する。
7 同5頁21行目の「付けで」を削除する。
8 同6頁1行目末尾の次に改行して,「被控訴人は,平成13年11月9日,本件訴えを提起した。」を付加する。
第3争点に対する当事者の主張
争点に対する当事者の主張は,次のとおり付加・訂正・削除するほかは,原判決「事実及び理由」の「第3 争点に対する当事者の主張」欄(原判決6頁8行目から9頁2行目まで)と同一であるから,これを引用する。
1 原判決6頁12行目末尾の次に改行して,次のとおり付加する。
「控訴人Aは,消防団長にすぎず,香芝市の財務会計上の行為をする権限もなく,その地位にもない。
仮に香芝市に損害賠償請求権があるとしても,その相手方(義務者)は消防団であって,控訴人A個人ではない。法242条の2の規定が平成14年に改正された趣旨は,これまで住民訴訟で,私人である職員個人に対し,多額の賠償請求が認められることがあったので,その負担から職員個人を解放するところにあり,その法意は改正前の本件でも生かされるべきである。
(被控訴人)
消防団に損害賠償責任が発生するとしても,控訴人A個人にも責任がある以上,被告適格がある。
平成14年の法改正が,改正前の法解釈を変えることはあり得ない。」
2 同18行目の「50万5343円の分については」の次に「(原判決は,このうち,(1)原判決別表1の番号1(6月9日の選手激励会分)及び(2)同番号7(5月28日の分団打合せ分)につき,請求を一部認容した。)」を付加する。
3 同19行目の「本件訴えは,」から同20行目末尾までを,次のとおり訂正する。
「本件訴えのうちこれらに係る部分は,監査請求前置の要件を欠き,不適法である。したがって,原判決が被控訴人の請求を棄却した部分を除いた部分(上記(1)のうち1人当たり6000円を超える支出16万8000円及び上記(2)のうち1人当たり500円を超える支出9万8243円の合計26万6243円について請求を認容した部分)は,本件訴えを却下すべきである。
適法な監査請求があったか否かは,監査請求書の記載により判断されるところ,本件監査請求書には,香芝市消防団が平成12年8月24日開催された奈良県消防操法大会に出場するため,香芝市が支出した助成金200万円の大半が飲食費に充てられたことにより,同消防団が公金を不法に費消したことを理由に,この支出の決済をして実行したB市長とA団長に対し,損害金の返還を求めるとあり,違法な公金の支出によって,これに携わった当該職員や相手方に対し,香芝市が取得した損害賠償請求権の不行使をもって,「財産の管理を怠る事実」と構成してその是正や損害を填補するため必要な措置を講ずべきことを請求していない。
そうすると,本件では,公金の支出のある都度,それぞれ別個の財務会計行為があったとして判断することになる。そして,本件のような前金払いの方法による場合には,概算払いの日が起算日となるのである。」
4 同25行目の「本件が違法な公金支出を問題とするものであるとしても,」を削除する。
5 同8頁5行目末尾の次に改行して,次のとおり付加する。
「原判決の線引きは独断にすぎず,幾多の先裁判例を無視するものであるし,国家公務員倫理法6条の規定は本件に直接参考となるものではない。」
6 同9頁2行目末尾の次に改行して,次のとおり付加する。
「(控訴人A)
控訴人Aは,先例に従って本件助成金を支出しただけであり,違法の認識がなく,故意・過失がない。」
第4当裁判所の判断
当裁判所の判断は,次のとおり付加・訂正・削除するほかは,原判決「事実及び理由」の「第4 当裁判所の判断」欄(原判決9頁4行目から23頁16行目まで)と同一であるから,これを引用する。
1 原判決9頁5行目冒頭から同8行目末尾までを削除する。
2 同9行目冒頭の「(2)」を「(1)」と訂正する。
3 同16行目の「そうすると」から同17行目末尾までを削除する。
4 同18行目冒頭の「(3)」を「(2)」と訂正し,同行目の「本件助成金の支出」の次に「(概算払い)」を付加する。
5 同20,21行目の「それについて何らの是正措置を取らなかったこと」を,「精算時に概算払による金額をそのまま確定させ,何らの是正措置も取っていないこと」と訂正する。
6 同22行目の「不法行為者とし」の次に「(消防団も民法44条1項の準用により不法行為責任を負う。)」を付加する。
7 同25行目の「余地がある」を「ことができる」と訂正する。
8 同末行の「採用できない」の次に,次のとおり付加する。
「(控訴人Aは,上記のとおり,本件で法242条の2第1項4号の「相手方」となるのは消防団であって,控訴人A個人ではないと解すべきであると主張する。しかしながら,同号所定の,違法な行為又は怠る事実に係る相手方に対するいわゆる代位請求訴訟について被告適格を有する者は,地方公共団体が当該行為又は怠る事実によって被り,又は被るおそれのある損害の回復又は予防のために有する同号所定の実体法上の請求権の相手方であれば足りるのであって,必ずしも当該行為又は怠る事実の直接の相手方であることを要しないと解すべきである(最高裁判所昭和50年5月27日判決・裁判集(民事)115号15頁参照)。したがって,控訴人Aの上記主張は採用することができない。)」
9 同10頁9行目の「81万2929円」を「支出81万2329円」と訂正する。
10 同10行目の「飲食費として」を「飲食費」と訂正する。
11 同12行目の「19万8975円」の次に「の各支出」を付加する。
12 同19行目の「消防団の団長」を「消防団自体又はその団長」と訂正する。
13 同20行目の「解される」の次に「(具体的な監査請求の対象は,当該監査請求において請求人が何を対象として取り上げたのかを,請求書の記載内容,添付書面等に照らして客観的,実質的に判断すべきものであり,上記認定と異なる控訴人らの主張は採用することができない。)」を付加する。
14 同11頁8行目の「監査請求は」から同9行目の「これに」までを「監査請求については,」と改める。
15 同14行目の「消防団長」を「消防団自体又はその団長である」と訂正する。
16 同20行目の「けれども(」を「けれども,」と訂正する。
17 同23行目の「ものではなく),消防団による」を「ものではなく,消防団における」と訂正する。
18 同末行の「それは」を削除し,同行目の「違法,無効」の前に「財務会計法規に違反して」を付加する。
19 同12頁1行目の「実体法上の請求権」の次に「の行使を怠る事実」を付加する。
20 同2,3行目の「いうべきである」の次に,次のとおり付加する。
「(控訴人らは,上記のとおり,本件では公金の支出のある都度,それぞれ別個の財務会計行為があったものとして,概算払いの日を起算日として判断すべきである旨主張する。しかしながら,そもそも本件監査請求の対象は,上記のとおり,概算払いによる公金の支出自体ではない(仮に概算払いによる公金の支出自体が対象である場合は概算払いの日が起算日となる(最高裁判所平成7年2月21日判決))上に,概算払いされた資金は交付の時点で公金から私金に移行し,その保管及び使用は概算払いを受けた者の責任と判断に委ねられるものと解されるから,本件各費消行為の都度,公金の支出があったものとみることはできない。したがって,控訴人らの上記主張は採用することができない。)」
21 同7行目の「被告らの」から同8行目末尾までを「これが不適法であることを前提とする控訴人らの上記主張は採用することができない。」と訂正する。
22 同15頁6行目の「消防団」を「香芝市」と,同6,7行目の「協力態勢」を「協力体制」と,同8行目の「交付される」を「交付する」と改める。
23 同16頁7行目の「支出する」を「支出をする」と訂正する。
24 同19頁15行目の「されたも」を「された」と訂正する。
25 同21頁6行目の「社会通念上許容する範囲」を「社会通念上許容される範囲内」と訂正する。
26 同15行目の「膨大となることが」を「膨大となることは」と,同17行目の「額を」を「額に」と訂正する。
27 同22頁13行目の「であることが明らか」を削除する。
第5よって,本件控訴はいずれも理由がないから,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 下方元子 裁判官 森本翅充 裁判官 村川浩史)