大阪高等裁判所 平成14年(行コ)89号 判決 2004年9月15日
控訴人 甲
控訴人 乙
控訴人 丙
控訴人ら訴訟代理人弁護士 吉田麓人
同 西晃
同 柏木幹正
同 渡邉一平
被控訴人 奈良税務署長
島本幸夫
同指定代理人 安西二郎
同 豊田周司
同 石尾裕
同 平本義博
主文
1 本件控訴をいずれも棄却する。
2 控訴費用は控訴人らの負担とする。
事実及び理由
第1 当事者の求めた裁判
1 控訴人ら
(1) 原判決を取り消す。
(2) 被控訴人が平成3年6月19日付けで控訴人らに対してした昭和63年12月21日相続開始に係る相続税更正処分のうち、各控訴人に対する課税価格3695万2000円、同納付すべき税額765万5800円を超える各部分及び同過少申告加算税の各賦課決定処分をいずれも取り消す。
(3) 訴訟費用は、第1、2審とも被控訴人の負担とする。
2 被控訴人
主文と同旨。
第2 事案の概要
1 事案の要旨及び訴訟の経過
(1) 本件は、被控訴人が、昭和63年12月21日に死亡した丁(以下「丁」という。)の法定相続人(の一部)である控訴人らに対し、平成3年6月19日付けで、同相続開始に係る相続税更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分をしたところ、控訴人らが、同更正処分には課税対象財産の帰属についての認定に誤りがあって違法であり、同賦課決定処分も違法であるとして、被控訴人に対し、上記更正処分中、各控訴人に対する課税価格3695万2000円、同納付すべき税額765万5800円を超える各部分及び上記過少申告加算税の各賦課決定処分の取消しを求めた事案である。
(2) 原審裁判所は、控訴人らの請求をいずれも棄却した。これに対し、控訴人らが、控訴し、上記第1の1のとおりの判決を求めた。
(3) 当審における審判の対象は、控訴人らの上記(1)の各請求の当否である。
2 前提事実並びに争点及びこれに関する当事者の主張
(1) 前提事実
前提事実(事実の確定根拠のないものは争いがない。)は、原判決2頁16行目から同3頁16行目までのとおりであるからこれを引用する。ただし、「別紙」を「原判決添付の別紙」と、「別表」を「原判決添付の別表」と、それぞれ読み替え(以下、同様。)、原判決添付の「別表5-1」中の順号1ないし11の各公社債の各「購入場所」をいずれも「K証券針中野支店」に、同「別表5-2」中の順号13の公社債、同14の信託受益証券の各「保護預け場所」をいずれも「K証券針中野支店」に、同15ないし17の各公社債、同18及び19の信託受益証券の各「保護預け場所」をいずれも「P証券西大寺支店」に、それぞれ改め、原判決2頁16行目の「昭和63年12月21日」の次に「(以下「本件相続開始日」ともいう。)」を加える。
(2) 争点
本件の争点は、原判決3頁18行目から同頁20行目のとおりであるからこれを引用する。
(3) 争点に関する当事者の主張
争点に関する当事者の主張は、原判決3頁21行目から同41頁6行目までのとおりであるからこれを引用する。ただし、次のとおり補正する。
ア 同4頁9行目の「払って後の」を「払った後の」に、同9頁10行目の「J名義割債」を「J名義の割引債」に、同10頁1行目から同頁2行目の「J名義の割債」を「J名義の割引債」に、同頁13行目を「<1> 丁名義の株式について 丁名義の株式は控訴人ら及びAの資産であり、」に、同頁20行目の「B生前に購入されたもの-Bの」を「Bが生前に購入したもの-Bの」に、同11頁2行目の「Jの割債」を「J名義の割引債」に、同頁19行目の「原告ら第5準備書面」から同頁20行目の「義の「預金、その他の債券」を「丁名義の預金、その他の債券」に、それぞれ改める。
イ 同12頁4行目の「また甲家全体の」から同頁5行目の「異常である。」を削り、同15頁10行目の「コ 学費」を「ケ 学費」に、同頁15行目の「サ 建物維持管理修繕費」を「コ 建物維持管理修繕費」に、同頁18行目の「シ 税金」を「サ 税金」に、同頁23行目の「<4>」を「<3>」に、同16頁16行目の「原資が丁でないこと」を「原資が丁の収入等でないこと」に、同17頁20行目の「原資が主張立証されるべきである。」を「原資が丁の固有の資産であることを主張立証すべきである。」に、それぞれ改める。
ウ 同18頁7行目、同頁11行目及び同頁13行目から同頁14行目の各「右所有権移転登記」をいずれも「上記所有権移転登記」に、同頁19行目の「右各土地は」を「上記各土地は」に、同19頁23行目の「右公社債は」を「上記公社債は」に、同20頁25行目の「公社債」を「公社債等」に、同21頁23行目の「右現金が」を「上記現金が」に、それぞれ改める。
エ 同22頁24行目の「本件における丁に係る遺産(以下「本件遺産」という。)」を「本件資産」に、同頁26行目から同23頁1行目の「9億32726万0220円」を「9億3726万0220円」に、同23頁2行目の「本件遺産」を「本件資産」に、それぞれ改め、同頁4行目、同頁8行目、同頁13行目、同頁17行目、同頁22行目、同頁26行目の各「本件遺産のうち、」をいずれも削る。
オ 同24頁4行目の「本件遺産」を「本件資産」に、同頁16行目の「442万000円」を「442万円」に、同頁18行目の「右債務・葬式費用」を「上記債務・葬式費用」に、同25頁6行目の「訴外相続人」を「戊及びA」に、同頁22行目から同頁23行目の「右基礎控除額」を「上記基礎控除額」に、同26頁17行目から同頁18行目の「右割合を乗じて」を「上記割合を乗じて」に、それぞれ改める。
カ 同26頁20行目の末尾に行を改めて次を加え、同頁21行目の「(6)」を削る。
「(6) 控訴人らは、上記のとおり、本件相続に関する相続税申告書を提出したが、適法な上記更正処分があったから、国税通則法65条1項、2項に基づき過少申告加算税を課せられる。」
キ 同27頁9行目、同頁12行目、同頁19行目、同28頁5行目、同29頁2行目、同31頁9行目、同37頁12行目の各「本件遺産」をいずれも「本件資産」に改める。
ク 同32頁3行目から同頁5行目までを次のとおり改める。
「控訴人らは、甲16の1ないし48の2を集計して推移表を作成し検討しているが、同推移表だけでは計算経過(名義人別、金融機関別、年度別の合計)が明らかにされておらず、検討として不十分である。」
ケ 同32頁11行目の「(同準備書面別紙<16>)」、同頁13行目の「(同<17>)」、同頁17行目の「(同<18>)」及び同頁20行目の「(同<19>)」をそれぞれ削り、同頁22行目の「収益金の算定方法」から同頁23行目の「意味するところが」までを「収益金の算定方法中「修正額」と考慮しているところ、その意味するところが」に改め、同頁24行目の「(同<20>)」及び同33頁3行目の「(同<21>)」をそれぞれ削る。
コ 同34頁中の文頭の「<5>」ないし「<9>」をそれぞれ「<4>」ないし「<8>」に、同頁18行目の「原告ら第5準備書面」から同頁19行目の「としても、」までを「控訴人らの推計計算によると、控訴人ら及びAは」に、それぞれ改める。
サ 同38頁2行目の「原告ら第10準備書面別紙1において」を削り、同頁4行目の「具体例1ないし6の株式については」を「控訴人らが、Bの相続以後に新たに購入された株式で、丁名義以外の口座で購入されたが、その後丁名義になっている株式の例については」に、同頁9行目の「具体例1ないし6」を「控訴人らが具体例として示す株式」に、同頁10行目の「具体例4(R)」を「昭和56年3月20日に登録されたR」に、同頁17行目の「具体例1及び2については」を「一部の例では」に、同頁23行目の「具体例7の株式(S)」を「昭和51年7月31に登録されたSの株式」に、同頁24行目から同頁25行目の「<6>、<7>は、」を「昭和54年3月8日登録のSの株式は、」に、それぞれ改める。
シ 同39頁1行目の「<9>の株式の」を「昭和54年3月8日登録のSの株式のうち1000株の株式の」に改め、同頁11行目から同頁12行目の「原告ら第10準備書面別紙2において」を削り、同頁16行目の「具体例1ないし4の株式の」を「上記丁名義の口座で取引され丁名義になった株式の」に改める。
ス 同40頁10行目の「原告ら第10準備書面別紙3において」を、同頁17行目から同頁18行目の「(以下「増資等」という。)」を、それぞれ削る。
3 控訴人らの原判決批判
(1) 原判決は、原判決添付の別紙2の別表4-2「株式の内訳表」中順号77番の「F(特定同族の株式)」(以下「本件F株式」という。)の数量を「550株」と認定した。しかし、控訴人らは、原審で同株は400株であると主張していた。原判決は何ら理由を付さずに上記認定をしており、理由不備である。
(2) 原判決は、A及び控訴人らがBから不動産を相続し、これら不動産が売却されて得られた土地代金が運用され、その収益が丁名義等の金融資産になったと正当に認定した。さらに、丁固有の原資はほとんどないことも正当に認定した。そうすると、丁名義の金融資産は控訴人らの不動産売却益に由来するのであるから、控訴人らが所有することは明らかである。
しかし、原判決は、以上のような認定をしながら、丁がこれら金融資産を取得した時点で丁が取得し所有したとの結論に至った。この原判決の結論は、次の点も踏まえるなら、法的常識を越えた飛躍といわざるを得ず、事実誤認である。
ア 丁は、金融資産を形成するだけの固有の原資を有していなかった。丁は、婿養子として甲家に入る際に、持参金を持ってきていない。また、F株式会社からの収入は、生活費に充てられた。さらに、丁がBから相続した株式中には、処分されず金融資産の原資に寄与しないものも現存する。また、その余の処分されたであろう株式も、金融資産形成への寄与の程度は、極めて小さい。
イ 丁は、甲家を主宰し、その一環として、控訴人らの土地売却代金の管理運用に当たっていたというわけではない。金融資産が控訴人らの売却益で形成されたことからすれば、丁が甲家の生計を主宰していたとはいえない。
また、丁が控訴人らの財産を管理していたことは、金融資産が全部丁に帰属する理由にならない。丁が控訴人らの売却代金を運用して資産を拡張しても、控訴人らの親権者として行っていたにすぎない。子の資産を親が管理する場合に、その収益物が子に帰属することは明らかである。控訴人らが成人した後も、丁に管理を委ねており、その収益は、果実として控訴人らに帰属するはずである。
このように、父親が子供の財産を管理する場合には、経験則上所得保有名義人がその財産の帰属主体であるとの推定力を働かせてはならない。
ウ 控訴人らの土地の売却代金と金融資産との結びつきが不明であるとしても、丁の資産との結びつきもまた不明である。丁名義の資産から形成された直接の収益は、甲家の収益のわずか3%にすぎない。したがって、金融資産の帰属についても、その実質に応じた割合計算をすれば足りる。また、その余の収益は、土地売却代金及びその運用益によるのであるから、相続時の金融資産が控訴人らに帰属するとしても何ら不自然ではない。
(3) 課税処分の対象となる本件資産に関する立証責任は課税庁にある。しかし、原判決は、本件の課税処分の対象となった本件資産が控訴人らの不動産を原資としているという正しい事実認定をしておきながら、結果として、控訴人らにおいて、本件資産が控訴人らに帰属することを積極的に細部にわたって厳密に立証しなければならないと結論せざるを得ない判断をするに至っている。これは、上記立証責任の建前に反する。
(4) 実質課税の原則からすれば、金融資産の名義にもかかわらず、その資産の実質的な権利帰属主体が形式的な名義人以外に存することが明らかであれば、課税庁はその名義人の資産として課税処分をすることはできない。原判決は、甲家の金融資産の相当部分をA及び控訴人らがBから相続した土地の売却代金を原資としていると認定している以上、資産の実質的な権利帰属主体が明らかになっているのであるから、金融資産の名義人の財産主体性を否定すべきである。この点について、被控訴人は現在に至るも、原資が丁の資産によることを立証していない。
ところが、原判決は、個々の不動産と金融資産あるいは金融資産どうしの結びつきは不明であるとして、実際に取得した丁が、その取得の都度、法律上の権利の帰属主体になったと認めるほかないと結論付けた。この判断は、控訴人らに不動産売却代金と個々の金融資産との繋がりや具体的な対応関係、丁固有の原資が全く想定されないことまでの立証を課すことになり、資産形成過程の不明確性という不利益を国民である控訴人らに課すことを意味する。上記立証責任の建前に反するばかりか、実質課税の原則、ひいては租税法律主義にも反する。
(5) 原判決の結論は、二重課税にも当たる。
すなわち、控訴人らは、Bの遺産相続により不動産を相続した時点で相続税を負担している。そして、個々の不動産の売却の際にも譲渡所得税等を負担している。その売却代金が形を変え、その大部分が丁の金融資産に変じたことは原判決も認定するところである。このような状態のままで、金融資産を丁の相続財産と取り込んで相続税を課すことは、不動産売却益に対して二重に課税していることを意味する。
第3 当裁判所の判断
1 当裁判所も、控訴人らの請求は理由がないものと判断する。その理由は、下記3のとおり控訴人らの原判決批判に対する判断を加えるほか、原判決41頁8行目から同52頁22行目までのとおりであるから、これを引用する。ただし、下記2のとおり補正する。
2 原判決の補正
(1) 原判決41頁8行目を次のとおり改める。
「1 本件資産の遺産性
(一) 原判決添付の別紙2の別表2及び同3の不動産について
(1) 前提事実及び証拠(甲1ないし4、5の1ないし3、6、86、乙1ないし3)並びに弁論の全趣旨」
(2) 同41頁15行目を次のとおり改める。
「 (二) 原判決添付の別紙2の別表4ないし6の金融資産(以下「金融資産」という。)について
(1) 前提事実及び証拠(乙50、52ないし54)並びに弁論の全趣旨によれば、丁は」
(3) 同41頁21行目を次のとおり改める。
「 (2) 前提事実及び証拠(甲1ないし4、5の1ないし3、乙4ないし33)並びに弁論の全趣旨によれば、原判決添付の別紙2の別表」
(4) 同42頁4行目から同頁5行目までを次のとおり改める。
「 (3) 前提事実及び証拠(甲1ないし4、5の1ないし3、6、乙39ないし41、50、52ないし54)並びに弁論の全趣旨によれば、丁は、原判決添付の別紙2の別表5-1」
(5) 同42頁9行目の「9銘柄にについては」を「9銘柄については」に、同頁13行目から同頁17行目までを次のとおり、それぞれ改める。
「 (4) 前提事実及び証拠(甲1ないし4、5の1ないし3、乙42ないし47)並びに弁論の全趣旨によれば、丁は、原判決添付の別紙2の別表6記載の順号1の現金、順号2ないし12の預貯金を有していたこと、定期預金である順号9ないし12の丁の相続開始時の評価は同表「被告主張額」のとおりと認められる。
(三) 原判決添付の別紙2の別表7のその他の財産について
前提事実及び証拠(甲1ないし4、5の1ないし3、乙39)並びに弁論の全趣旨によれば、丁は、」
(6) 同42頁20行目から同頁21行目までを「2 相続税額、過少申告加算税額等」に、同頁25行目から同頁26行目の「9億32726万0220円」を「9億3726万0220円」に、同43頁5行目を次のとおり、それぞれ改める。
「 (二) 控訴人らが取得した相続財産及びその価額
本件資産は、その全部が遺産分割されて」
(7) 同43頁14行目から同頁15行目の「442万000円」を「442万円」に、同頁17行目の「右債務・葬式費用」を「上記債務・葬式費用」に、それぞれ改める。
(8) 同44頁14行目の「右基礎」を「上記基礎」に、同45頁9行目から同頁10行目の「右割合」を「上記割合」に、同頁12行目から同頁25行目までを次のとおり、それぞれ改める。
「 (六) 本件処分の適法性
本件更正処分は、上記事実を前提にして、控訴人らの納付すべき税額をそれぞれ4657万9400円とするものである。そのいずれもが、上記控訴人らが「納付すべき相続税額」(4804万7800円)の範囲内でなされたものであるから、適法である。
また、過少申告加算税の賦課決定処分は、本件更正処分が適法である以上、国税通則法65条1項、2項の規定により、その増差税額を元に、原判決添付の別紙2の別表9記載のとおり算出されているから、適法である。
3 控訴人らの主張について(事実認定の補足)
控訴人らは、本件資産は丁の遺産ではなく、控訴人ら及びAの所有するものであるとして、るる主張する。
しかし、以下のとおり、控訴人らのこの主張は採用できず、本件資産は丁の遺産であると認められる。
(一) 甲家の家族関係、財産形成の推移等
上記前提事実及び証拠(甲6ないし12、14(14の100、14の103は欠番)、15ないし48、55ないし67、69ないし90、115ないし118、121ないし124、乙1ないし50、52ないし54、(以上、枝番があるものは枝番を含む)、当審控訴人甲)並びに弁論の全趣旨を総合すると、以下の事実を認めることができる。
(1) 丁(大正4年3月5日生)はp」
(9) 同46頁1行目の「・以下「B」という。」を削り、同47頁18行目の「債権」を「債券」に、同48頁19行目の「ほぼ原告甲らの分析のとおり」を「控訴人らの分析では(ただし、この分析は、控訴人らが採用した諸事情を前提とした一つの試論程度のものである。その前提等が必ずしも客観的な資料に基づくものと認められないことや、事情を単純化しすぎて客観的な事実と認め難い点が多々みられることなどは被控訴人が指摘反論するとおりである。)」に、同頁26行目の「別紙償還済債券目録」を「本判決添付の別紙償還済債券目録」に、それぞれ改める。
(10) 同49頁7行目を次のとおり改める。
「 (二) 金融資産の権利者
(1) 金融資産形成の概要
上記(一)の認定事実及び前掲の各証拠並びに弁論の全趣旨を総合すると、金融資産は、丁が甲家に婿に入りBと婚姻した昭和」
(11) 同49頁13行目から同頁14行目までを次のとおり改める。
「 (2) 検討
前提事実、上記認定事実に証拠(甲51ないし53、乙55ないし57、前掲のもの)並びに弁論の全趣旨を総合すると、次のとおり事実を認定し、また判断することができる。」
(12) 同50頁3行目の末尾に行を改めて次を加える。
「 他方、甲家の経費は、子供らの学費、職業準備費等を含めた日常生活費のほか、不動産の譲渡に伴う譲渡税等、不動産保有に伴う固定資産税等、賃料収入に伴う所得税等、不動産管理費等など相当の費用を要したことも窺える。そして、これら経費の原資も、A及び控訴人らの土地売却代金が主な原資になっていたものの、丁の上記各収入も渾然一体となったものから支出されていたと認められる。」
(13) 同50頁4行目を「<4> B死亡当時、Aは17歳、控訴人甲は14歳、同丙は16歳、同」に改め、同頁11行目の末尾に行を改め次を加える。
「 このように、丁は、A、控訴人らが未成年の時期には親権者として、成人してからは少なくとも黙示的に財産管理を委ねられ、甲家の財産を管理していた。そして、甲家を家督相続したBが亡くなってからは、甲家を主宰し、その管理方法は、丁固有の財産も子供らの固有の土地売却代金等も一切を渾然一体として、甲家の財産として管理し、一方で、株式投資等により利殖を得て、毎年の多額の税務負担等に備え、他方で、その中から甲家の経費をも支出するというものであった。したがって、丁の財産管理は、親権に基づく管理方法や事務委任に基づく管理方法とは違った形態で行われていた。」
(14) 同50頁12行目の「<6>」を「<5>」に、同頁19行目の「<7>」を「<6>」に、それぞれ改め、同頁26行目の末尾に行を改めて次を加える。
「 丁は、控訴人らとの間で、控訴人ら固有の財産である土地の売却代金等の清算につき債権債務を負う余地があるものの、そうした売却代金等も自己の財産として管理し、計算し、処分し、新たな財産を吸収していったと認められる。」
(15) 同51頁1行目の「<8>」を「<7>」に、同頁6行目の「<9>」を「<8>」に、同頁14行目から同頁16行目の「<1>ないし<9>記載」までを次のとおり、それぞれ改め、同52頁9行目から同頁22行目までを削る。
「 (3) まとめ
以上の検討によれば、上記(1)のとおり、金融資産の大きな部分が、A及び控訴人らの土地の売却代金を原資として形成されたものであったとしても、上記(2)の①ないし⑧」
3 控訴人らの原判決批判に対する判断
(1) まず、控訴人らは、本件F株式は400株であると主張し、別件判決(甲87、88の1、2)を証拠として提出する。
しかし、同判決は理由中の判断として控訴人ら主張のような認定をしているにすぎない。
丁が亡くなる直前の昭和62年7月1日から昭和63年6月30日の事業年度におけるF株式会社の確定申告書中では、「判定基準となる株主等の株式数等の明細」欄で丁の持ち株の記載につき、「400」との記載を訂正し「550」としていることが認められる。そして、F株式会社は、上記認定のとおり、丁が農業のかたわらこれを経営していた会社であるから、上記株主欄の記載訂正は、丁の意思に従ってなされたものと認められる。
同記載からすると、本件F株式は550株と認めるのが相当である。これに反する控訴人らの上記主張は、採用しない。
(2) 控訴人らは、金融資産取得のための原資が控訴人らが所有していた不動産売却代金に由来するなどとし、あるいは、丁の財産管理の態様等を根拠に、控訴人らが金融資産を所有する旨主張する。
しかし、これらについてはすでに詳細に説示したとおり(特に、引用した原判決51頁以下)であって、控訴人らの主張は原判決の認定判断を左右するには足りない。
(3) 控訴人らは、控訴人らの土地の売却代金と金融資産との結びつきが不明であるとしても、丁の資産との結びつきもまた不明であり、丁名義の資産から形成された直接の収益は、甲家の収益のわずか3%にすぎないのであるから、金融資産の帰属について割合計算をするか、単的に相続時の金融資産が控訴人らに帰属するとしても何ら不自然ではないと主張する。
しかし、控訴人らが主張する「丁名義資産による収益の全体に対する収益割合」に関する分析結果は、先にも述べたとおり、控訴人らの試論程度のものと評価すべきものであって、これが客観的な実体を顕したものとは認め難い。そして、この点ついては、「金融資産の大きな部分が、A及び原告甲らの土地の売却代金を原資として形成された」(原判決51頁)とは認定できるものの、これを超えて厳密に客観的事実を認定することはできないのである。したがって、控訴人らの上記主張はこの点ですでに採用できないものというほかない。
仮に、この点を措いても、丁の管理していた財産は、控訴人らとの関係ではその原資の帰属割合により何らかの法律関係が形成されうるものの、丁はその原資を取り込んで自己固有の財産と一体として、自らの判断と計算により処分し、他の財産を取り込んでいたことは上記のとおりである。したがって、控訴人らの土地売却代金がその原資になっていたからといって、その原資を取り込んだ後の丁の財産帰属性が否定されるものではない。そして、そのことは控訴人らの原資の割合をもっても左右されるものでもない。
したがって、控訴人らの上記主張も採用できない。
(4) 控訴人らは、原判決が、結果として、控訴人らにおいて、本件資産が控訴人らに帰属することを積極的に細部にわたって厳密に立証しなければならないと結論せざるを得ないとの判断に至っており、立証責任の建前に反すると主張する。
ところで、所得税法12条は「資産又は事業から生ずる収益の法律上帰属するとみられる者が単なる名義人であって、その収益を享受せず、その者以外の者がその収益を享受する場合には、その収益は、これを享受する者に帰属するものとして、この法律を適用する。」と規定している。そして、この実質課税の原則は、相続税法の解釈にあっても妥当するものと解すべきである。
実質課税の原則の下では、課税物件の帰属について名義人(形式)と収益享受者(実質)とが相違する場合に、その実質に即してその帰属を判断する必要がある。しかし、その経済的利益を結局最終的に誰が享受すべきかという点まで追求することになれば、法的安定性を害し、納税行政の見地からしてもその帰属を決定するのに困難を来すこととなるから、課税上は、名義人と一致しない収益享受者を明らかにすることで足りるのである。
また、相続税は、上記のとおり、個々の課税物件を評価基本通達等により評価し、これを前提にして最終的に相続税額が決定されるものである。したがって、課税物件の収益享受者の検討は、個々の課税物件ごとにされなければならない。被相続人の遺産全体について全般として原資を供給したというだけでは、個々の課税物件の帰属を検討したことにはならない。
以上を本件についてみてみると、上記のとおり、丁は、自己固有の財産とともに、控訴人らの土地の売却代金も大きな原資として取り込み、自己に帰属する財産として管理し、自己の計算によりこれを処分し、本件資産でいえば自己の名義でこれを取得していたことが認められる。そうすると、本件資産の名義が概ね丁であることに加えて、その収益も丁が自己の管理財産として収受していたということができ、名義と実質的な財産帰属主体とは一致していると認められる。すなわち、この点は、被控訴人によって立証されたものということができる。
以上のとおり、本件処分は実質課税の原則、ましてや租税法律主義に何ら反するものではないし、また、原判決の判断が挙証責任を転換したと評されるものでもない。
これに反する控訴人らの上記主張は採用しない。
(5) 控訴人らは、原判決の結論は、二重課税にも当たると主張する。
しかし、一般的に、ある課税物件が譲渡ないし取得時にその課税を負う者に権利帰属すれば課税されるし、その課税物件が相続時に被相続人に帰属することになれば相続税が課税されることになり、さらに相続人がこれを相続して処分すれば、その段階で新たな課税がなされる。その間には、何ら二重課税という関係は生じない。この点は、本件においても妥当するものである。
控訴人らの主張は、概括的に控訴人らがBから相続した財産を丁との相続関係でも相続したとされたかのような前提をとったうえで、二重課税にも当たるというもののようである。しかし、その前提自体が独自のものであり、採用することができない。
4 結論
以上の次第であって、控訴人らの請求はいずれも理由がなく棄却すべきであり、これと同旨の原判決は相当である。よって、本件控訴はいずれも理由がないからこれを棄却することとし、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 大出晃之 裁判官 赤西芳文 裁判官 川口泰司)
別紙 償還済債券目録3
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