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大阪高等裁判所 平成15年(行コ)32号 判決 2003年8月29日

控訴人

被控訴人

右京税務署長 宮田良範

被控訴人指定代理人

横田昌紀

鴫谷卓郎

河田貞明

的場秀彦

寺内将浩

主文

1  本件控訴を棄却する。

2  控訴費用は控訴人の負担とする。

事実及び理由

第1申立て

1  原判決を取り消す。

2  被控訴人が、控訴人に対し、いずれも平成13年2月19日付でした次の各処分を取り消す。

(1)  控訴人の平成9年分の所得税の更正のうち総所得金額215万4000円及び納付すべき税額6万5300円を超える部分並びに過少申告加算税の賦課決定

(2)  控訴人の平成10年分の所得税の更正のうち総所得金額186万3000円及び納付すべき税額0円を超える部分並びにこれに対する過少申告加算税の賦課決定

(3)  控訴人の平成11年分の所得税の更正のうち総所得金額150万0800円及び納付すべき税額2万3500円を超える部分並びにこれに対する過少申告加算税の賦課決定(ただし、平成14年2月1日付の裁決により一部取り消された後のもの)

第2事案の概要

事案の概要は、次のとおり訂正、削除するほか、原判決の「事実及び理由」中の「第二事案の概要」に記載のとおりであるから、これを引用する。

1  原判決2頁23行目の「付で」を削る。

2  同3頁8行目の「原告方に」を「控訴人方を」と、同頁16行目の「確定の各申告書」を「各確定申告書」と、それぞれ改める。

第3当裁判所の判断

1  当裁判所も、控訴人の請求は理由がなく、これを棄却すべきものと判断する。その理由は、次のとおり訂正し、次項に理由を補足するほか、原判決の「事実及び理由」中の「第三 当裁判所の判断」及び「第四 結論」に記載のとおりであるから、これを引用する。

(1)  原判決8頁19行目から20行目にかけての「委ねられており」を「委ねられているものと解され」と、同行から21行目にかけての「法律上の要件とはされていないというべきである」を「法律上一律の要件とされているものではない」と、それぞれ改める。

(2)  同9頁11行目の「類似同業者の基準」を「類似同業者を抽出するための前記10項目の基準」と、同頁13行目の「その」を「抽出した類似同業者の」と、それぞれ改める。

(3)  同10頁17行目の「事業所得金額」から同頁20行目末尾までを「算出所得金額は、原判決別表5「事業所得の金額の計算書」の「<5>算出所得金額」欄記載のとおり、平成9年分が736万8155円、平成10年分が705万2177円、平成11年分が542万0539円となる。」と改める。

2  控訴人の当審における主張に鑑み、以下、理由を補足する。

(1)  控訴人は、当審において、<1>本件調査は事前通知や調査理由の開示を欠いており、憲法13条、31条等に反し、違法である、<2>本件各処分は、同業者の売上金額、動力用電力の使用量等に基づき控訴人の売上金額等を推計する方法を採っているが、更正処分は確かな証拠に基づいて行われるべきであり、正確性を欠く推計による更正処分は財産権を侵害する違法なものである、と主張する。

(2)  しかしながら、上記<1>については、引用にかかる原判決が説示するとおり、本件調査は違法なものではなく、仮に違法な点があったとしても、原則としてそれによる課税処分が違法になるものでもない。

上記<2>についても、所得税法156条が推計課税を認める趣旨は、納税者の所得金額を直接資料によって把握することができない場合に、やむを得ず間接資料によって推計した金額をもって真実の所得金額に近似するものと認定して課税することを是認するものであるところ、本件においては、控訴人が本件調査に協力しないために、控訴人の所得金額を直接資料によって把握することができないのであるから、業種・業態、事業規模等が類似する同業者の各売上金額、動力用電力の使用量等に基づき、控訴人の売上金額及び算出所得金額を推計することは、合理性を有するのであって、違法なものではない。

3  よって、控訴人の請求を棄却した原判決は正当であるから、本件控訴を棄却することとし、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 太田幸夫 裁判官 川谷道郎 裁判官 大島眞一)

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