大阪高等裁判所 平成15年(行コ)60号 判決 2004年2月10日
控訴人 有限会社A
同代表者取締役 甲
同訴訟代理人弁護士 関戸一考
同 田中宏幸
被控訴人 下京税務署長(東成税務署長事務承継者)
栃尾明利
同指定代理人 小島清二
同 山口宏明
同 牧村順市
同 濱垣治郎
同 吉田昭一
主文
1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
第1 申立て
1 原判決主文第3項を取り消す。
2 東成税務署長が、控訴人に対し、平成10年7月28日付でした平成8年8月1日から平成9年7月31日までの事業年度(以下「平成9年7月期」といい、他の事業年度においても同様に表示する。)以後の法人税の青色申告の承認の取消処分を取り消す。
3 東成税務署長が、控訴人に対し、平成10年7月31日付でした平成8年7月期(以下、平成9年7月期と併せて「本件各事業年度」という。)の法人税の更正処分のうち所得金額251万6894円を超える部分及びこれに係る過少申告加算税の賦課決定を取り消す。
4 東成税務署長が、控訴人に対し、平成10年7月31日付でした平成9年7月期の法人税の更正処分及びこれに係る過少申告加算税の賦課決定を取り消す。
5 東成税務署長が、控訴人に対し、平成10年7月31日付でした平成8年8月1日から平成9年7月31日までの課税期間(以下「本件課税期間」という。)の消費税及び地方消費税の更正処分のうち納付すべき税額168万3100円を超える部分及びこれに係る過少申告加算税の賦課決定を取り消す。
第2 事案の概要等
1 以下のとおり付加、訂正、削除するほか、原判決の「事実及び理由」中「第二 事案の概要」に記載のとおりであるから、これを引用する。
(1) 原判決5頁13行目の「P」の次に「(有限会社Cが経営する店舗)」を、16行目から17行目にかけての「売上集計表」の次に「(乙4の2)」を、それぞれ加える。
(2) 同6頁21行目及び7頁8行目の各「別表6の」の次にいずれも「「被告主張額」の」を加える。
(3) 同7頁16行目の「乗じ」を「乗じると」に改める。
(4) 同頁20行目、21行目及び24行目の各「別表6」の次にいずれも「の「被告主張額」の」を加える。
(5) 同9頁20行目、10頁4行目及び13行目の各「別表7の」の次にいずれも「「被告主張額」の」を加える。
(6) 同10頁3行目の「別表7」の次に「の「被告主張額」の」を加える。
(7) 同11頁13行目の「別表9の」の次に「「被告主張額」の」を加える。
(8) 同頁20行目から21行目にかけて、25行目の各「別表12」の次にいずれも「の「被告主張額」の」を加える。
(9) 同12頁2行目の「青色申告」を削除する。
(10) 同14頁12行目から13行目にかけての「別表12の」の次に「各「原告主張額」の」を加える。
(11) 同27頁下から4行目の「平成8年4月」を「平成9年4月」に改める。
2 原審は、本件各事業年度においても、平成10年4月当時に使用されていた乙5様式と同様の売上日報が本件店舗で作成されていたものと認められる、本件各事業年度における控訴人の各所得金額、並びに本件課税期間における控訴人の消費税の課税標準額は、いずれも被控訴人主張のとおりと認められるから、本件各処分はいずれも適法である、平成9年7月期の法人税の確定申告において控訴人が青色申告書に添付した決算書類は、売上金額が大幅に除外されたものであり、同事業年度に係る帳簿書類の記載事項の全体につき真実性を疑うに足りる相当な理由があったというべきであるから、本件取消処分は適法であるなどとして、控訴人の請求をいずれも棄却(ただし、本件訴えのうち、平成8年7月期の法人税の更正処分のうち所得金額251万6894円を超えない部分の取消を求める部分、並びに本件課税期間の消費税及び地方消費税の更正処分のうち納付すべき税額168万3100円を超えない部分の取消を求める部分については、いずれも却下)する内容の判決を言い渡した。
控訴人は、上記請求棄却部分に関する原審の判断を不服とし、前記第1記載の判決を求めて本件控訴を提起した。
第3 当裁判所の判断
1 当裁判所も、控訴人の請求(ただし、上記訴え却下部分を除く。)はいずれも棄却すべきものであると判断する。
その理由は、以下のとおり付加、訂正、削除するほか、原判決の「事実及び理由」中「第三 当裁判所の判断」(ただし、原判決22頁5行目から14行目までを除く。)に記載のとおりであるから、これを引用する。
(1) 原判決16頁22行目の「同店」を「本件店舗」に改める。
(2) 同17頁25行目の「甲5の丁の確認書には」を「丁は、確認書(甲5)及び各陳述書(甲6、20、23)において」に改める。
(3) 同18頁1行目の「との記載があり」を「旨供述しており、別件訴訟(大阪高裁平成15年(行コ)第45号)においても同旨の証言をしている(甲24)ところ」に、同行の「売上日報である」を「売上日報としての体裁のある」に、それぞれ改める。
(4) 同頁23行目の「本件訴訟が」から25行目の「本件訴訟において」までを「証拠(甲24)及び弁論の全趣旨によれば、原審当時、丁は、」に、末行の「拒んでいる」を「拒んでいた」に、それぞれ改める。
(5) 同19頁1行目の「明らかにしていない」を「明らかにしていなかったことが認められる」に、2行目の「記載されており」から3行目の「その」までを「記載されているにもかかわらず、売上日報の」に、それぞれ改める。
(6) 同頁8行目の「記載とで」から9行目末尾までを「記載との間には変化が見られない。以上の諸事情に照らせば、丁の前記供述等(甲5、6、20、23、24)を採用することはできないというべきである。」に改める。
(7) 同頁10行目の「平成10年4月」の次に「1日」を加える。
(8) 同20頁8行目の「本件各証拠によれば、」を削除し、10行目の「平成8年7月期に」を「平成8年7月期の」に改める。
(9) 同頁14行目の「そうすると、」の次に「控訴人の」を加える。
(10) 同21頁3行目の「業種にはなく」を「業種には該当せず」に改め、17行目の「したがって、」の次に「控訴人の」を加える。
2 当審における控訴人の主張に対する判断(補充)
当審において、控訴人は「丁の陳述書(甲6)は、乙が同席せず、同人の影響力を排除した状況において、控訴人代理人らが丁から聴取した内容をまとめ、その内容が正確であることを丁に確認してもらった上で署名押印してもらったものであること、丁は、平成9年12月31日まで、乙5様式と同様の売上日報(以下「新売上日報」という。)とは別に、控訴人主張様式と同様の売上日報(以下「旧売上日報」という。)が存在しており、平成10年1月2日以降、新売上日報となったことを明確に記憶していること(甲23)、甲11の1及び2の各数値は、有限会社Eの総勘定元帳の数値と一致しており、旧売上日報に基づいて有限会社Eの総勘定元帳が作成されていたことが裏付けられていること等に照らせば、本件各事業年度において、本件店舗で使用されていた売上日報の様式は、旧売上日報であったと認めるべきである。なお、原審において甲8の1ないし3、甲9ないし11の各1、2の提出が遅れてしまったのは、①丁ノートの記載内容等を控訴人が具体的に知ることができたのが、原審において被控訴人より丁ノートのコピーが提出されたときであったこと、②その後の丁との2回の面談(平成13年6月27日、同年8月3日)を経て、旧売上日報から新売上日報への変更が判明したこと、③上記売上日報の変更については、丙が丁ら各店舗の店長クラスの担当者と協議して処理していたため、実質上のオーナーである乙は全く知らなかったこと、④控訴人の決算書類を作成していた株式会社Fでは、パソコン入力後に旧売上日報を破棄する扱いとしていたため、乙は、旧売上日報は全く存在しないものと思い込んでいたが、控訴人代理人からの指示を受け、再度徹底的に同社の事務所を捜した結果、ようやく破棄されずに残っていた旧売上日報の一部を発見するに至ったこと等によるものであった。本件店舗において旧売上日報は使用されていなかったと判断する根拠として原判決が指摘している諸点については、①税務調査の際、丁は、新売上日報を見せられてその説明を求められたため、それに対して答えただけであり、質問されてもいない旧売上日報についての説明を積極的にしなかったとしても不自然ではないこと、②丁が、原審において証人としての出廷を拒否したり、所在を明らかにしなかったのは、丙の不正行為(売上げの一部抜き取り等)に加担していた丁が控訴人から法的責任を問われることを恐れたためにすぎないこと、③店長会議は、主として売上成績を上げることを目的とする場であって、売上日報等の経理処理の方法を議題とする場ではないし、幹部ミーティングは、本件店舗内における従業員との間の店舗運営方法等に関する話をする場であって、やはり売上日報の様式変更が議題とされる場ではないこと、④丁ノートの一覧表は、その時期の店の忙しさの状況を記録していたものであり、その日その日の売上日報の各項目の数値を単純に抜き書きしていたものであるから、旧売上日報から新売上日報へと記載方法の変更があったとしても、丁ノートの一覧表の記載方法を変更すべき必然性は全くないこと等に照らして、いずれも本件店舗において旧売上日報が使用されていたことを否定する根拠とはなり得ない。」旨主張する。
しかしながら、平成10年4月1日の税務調査の際、丁は、以前旧売上日報が作成されていたとの説明をしておらず、かえって、大阪国税局の調査担当者らに対して、丁ノート等は客から受領した売上金額からマッサージ嬢の報酬や各種手当を控除したいわゆる粗金の金額を記載したものであり、そこにはタオル売上金額は含まれていないなどと説明したこと、丁ノートには、店長会議や幹部ミーティングにおける議題事項等が詳細に記載されているにもかかわらず、売上日報の記載様式に変更があったとの記載は一切ないこと、丁ノートには、平成9年2月1日から平成10年3月31日まで、各営業日毎に一覧表の体裁で、粗金額、マッサージ嬢への各種手当等、割引額等の数値が記載されているが、その記載形式及び態様からも、平成9年12月31日以前の記載と平成10年1月2日以後の記載との間に変化は見られないこと、甲8の1ないし3、甲9ないし11の各1、2については、その提出時期、及びそれらが発見・提出された経緯に関する原審における証人乙の証言内容等に鑑みれば、少なくとも、本件各事業年度において本件店舗で旧売上日報が作成されていたことを認めるための証拠として採用できないこと、原審当時、丁は、証人として出頭することを頑なに拒んでいたこと等の諸事情に照らせば、丁の供述等(甲5、6、20、23、24)を採用することはできず、本件各事業年度において、本件店舗では乙5様式と同様の売上日報が作成されていたと認めるのが相当であることは、前記のとおりである。
そして、控訴人及び控訴人関連会社に対する税務調査があったのは平成10年4月1日であること、その当時、丁は、本件店舗の店長であり、かつ、丁ノート等を作成できるだけの知識と能力を有していたこと等によれば、丁は当該税務調査の対象に平成9年12月までの所得が含まれていることを理解したであろうことが推認できること、仮に甲11の1(Oの平成9年10月20日における「売上日報」と題する書面)及び2(Nの同年月日における「売上日報」と題する書面)の各数値が有限会社Eの総勘定元帳の数値と一致しているとしても、そのことから直ちに本件店舗においても旧売上日報が作成されていたと認めることはできないこと等に照らせば、控訴人の前記主張及び控訴人が当審において提出した証拠(甲23、24)を考慮しても、前記の判断が覆ることはないというべきである。
よって、控訴人の前記主張を採用することはできない。
3 以上によれば、原判決は相当であり、本件控訴は理由がないから、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 太田幸夫 裁判官 細島秀勝)
裁判官 川谷道郎は、転任のため、署名押印することができない。 裁判長裁判官 太田幸夫