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大阪高等裁判所 平成16年(ネ)8号 判決 2005年9月08日

当事者の表示

別紙当事者目録記載のとおり

主文

1  本件各控訴をいずれも棄却する。

2  控訴人らが当審で追加した新請求をいずれも棄却する。

3  控訴費用は控訴人らの負担とする。

事実及び理由

第1当事者の求めた裁判

1  控訴人ら

(1)  原判決を取り消す。

(2)ア  被控訴人は,別紙当事者目録記載の控訴人番号1ないし20及び22ないし592の各控訴人(以下,後記イの各控訴人と併せて「請求<1>の控訴人ら」という。)に対し,原判決別紙請求債権目録(1)(ただし,「原告番号」とあるのを「控訴人番号」と読み替える。)の「退職給与額」欄記載の各金員及び当該各金員に対する平成14年8月1日から各支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。

イ  被控訴人は,別紙当事者目録記載の控訴人番号21の1ないし3の各控訴人に対し,次の各金員及び当該各金員に対する平成14年8月1日から各支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。

(ア) 控訴人番号21の1の控訴人に対し,455万2850円

(イ) 控訴人番号21の2の控訴人に対し,227万6425円

(ウ) 控訴人番号21の3の控訴人に対し,227万6425円

(3)ア  被控訴人は,別紙当事者目録記載の控訴人番号1ないし20,22ないし357,359,361及び363の各控訴人(以下,後記イの各控訴人と併せて「請求<2>の控訴人ら」という。)に対し,平成14年7月から10年間,毎年2月1日,5月1日,8月1日及び11月1日(ただし,各月の1日が休日の場合は2日)限り,原判決別紙請求債権目録(2)(ただし,「原告番号」とあるのを「控訴人番号」と読み替える。)の「年金支給額(3カ月分)」欄記載の各金員及び当該各金員に対する当該各支払日の翌日から各支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。

イ  被控訴人は,別紙当事者目録記載の控訴人番号21の1ないし3の各控訴人に対し,平成14年7月から10年間,毎年2月1日,5月1日,8月1日及び11月1日(ただし,各月の1日が休日の場合は2日)限り,次の各金員及び当該各金員に対する当該各支払日の翌日から各支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。

(ア) 控訴人番号21の1の控訴人に対し,9万6150円

(イ) 控訴人番号21の2の控訴人に対し,4万8075円

(ウ) 控訴人番号21の3の控訴人に対し,4万8075円

(4)ア  被控訴人は,別紙当事者目録記載の控訴人番号1ないし20,22ないし344及び346ないし592の各控訴人(以下,後記イの各控訴人と併せて「請求<3>の控訴人ら」という。)に対し,原判決別紙請求債権目録(3)(ただし,「原告番号」とあるのを「控訴人番号」と読み替える。)の「夏季賞与支給額」欄記載の各金員及び当該各金員に対する平成14年8月1日から各支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。

イ  被控訴人は,別紙当事者目録記載の控訴人番号21の1ないし3の各控訴人に対し,次の各金員及び当該各金員に対する平成14年8月1日から各支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。

(ア) 控訴人番号21の1の控訴人に対し,28万1043円

(イ) 控訴人番号21の2の控訴人に対し,14万0522円

(ウ) 控訴人番号21の3の控訴人に対し,14万0522円

(5)  訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。

(6)  (2)ないし(4)につき仮執行宣言

2  被控訴人

主文と同旨

第2事案の概要

1  本件は,金融庁から破綻認定を受けて解散した金融機関である被控訴人の元職員又は元職員の相続人である控訴人らが,自己又は被相続人が被控訴人から解散を理由に解雇されたため,被控訴人に対し,退職金の増加支給分,退職年金及び平成14年度夏季賞与並びにこれらに対する遅延損害金の各支払を求める事案である。

原判決は,控訴人らの請求を全部棄却したため,控訴人らが控訴した。

2  本件の争いのない事実等,争点及び争点についての当事者の主張は,次のとおり付加するほか,原判決の「事実及び理由」第2の1ないし3(原判決3頁1行目から14頁24行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する(ただし,「原告番号」とあるのを「控訴人番号」と読み替える。)。

3  当事者双方の当審における主張

(争点(1)について)

(1)  請求<1>の控訴人らの主張

ア 退職金規定9条の解釈(原審における主張の補足)

次の各事情からすれば,退職金規定9条は,自由裁量規定ではなく羈束裁量規定であって,その内容は,「退職の事由が次の各号のいずれかに該当するときは,金庫は,第4条(支給額)の規定のほかに退職金を増加支給することができる。ただし,経営上の都合によりやむを得ず解雇された場合であって,解雇を予告した日から解雇した日まで特別の功労があったときは,増加支給する。」と定めた規定と解釈すべきであるから,請求<1>の控訴人ら元職員は,退職金増加支給請求権を有する。

(ア) 自由な裁量により退職金を増加支給するかどうかを決定するのであれば,退職金規定9条のような条項をあえて設ける必要はないし,同条の目的は,所定の場合に退職金を増加支給することとして解雇後の労働者の生活の安定を図り,あるいは在職中の特別の功労に報い,もって在職中の労働者の労働への動機付けを強化することにあり,被控訴人においても,また請求<1>の控訴人ら元職員においても,一定の場合には退職金の増加支給があるとの確信を持っていた。

(イ) 他の金融機関,特に被控訴人と規模が近いいわゆる第二地銀や被控訴人と同じ業態である信用金庫の経営破綻に際し,退職金の増加支給の裁量規定の下で増加支給が行われた事例が参照されるべきである。

(ウ) 請求<1>の控訴人ら元職員は,経営破綻認定後,大阪信用金庫へ事業譲渡されるまでの4か月半の間,雇用不安に苛まれながら,被控訴人を端緒とする信用秩序の破壊という最悪の結果を回避し,事業譲渡を完遂するため,従来の業務に加えて,苦情への対応,債権の振り分け作業等の膨大な作業に従事したものであり,退職金を増加支給すべき「特別の功労」があったと解することが,退職金規定9条を定め,これを労働契約の内容とした被控訴人の意思であると解すべきである。

イ 黙示の合意の成立(当審における新請求)

次の各事情からすれば,被控訴人は,経営破綻以後解雇日までの期間中,請求<1>の控訴人ら元職員に対して退職金を増加支給するとの黙示の意思表示をし,同人らはこれを承諾したか,又は,退職金の増加支給を要求していた同人らに対し,被控訴人は黙示の承諾をしたと解すべきである。

少なくとも平成14年2月の団体交渉以降,同年3月22日ないし25日の「代替許可」をめぐる金融整理管財人の言動からして,遅くとも同月23日には黙示の合意が成立したものというべきである。

(ア) 被控訴人は,平成14年1月25日,事業継続は困難である旨金融庁長官に申し出たことにより,破綻認定を受けるに至ったが,当時の被控訴人の理事長は,同日付け「職員の皆様へ」と題する書面により,破綻の責任が経営陣にあること,職員の雇用と処遇の安定を図ることが最後の使命であることを明言した。また,金融整理管財人は,新しい「相互信用金庫」のために全力を傾注することを職員らに要請するとともに,店頭での混乱状態を回避することを店頭営業体制の基本方針とし,業務に支障を来さないよう職員のモラール維持を図ることを人事・労務の基本方針とすることを通達した。このような中で,請求<1>の控訴人ら元職員は,先行きに不安を抱きながらも,雇用と処遇の安定を図ることを最後の使命とするとの理事長の言葉を信頼し,事業譲渡日まで,本来業務に加えて,事業譲渡のための業務にも従事することになった。

(イ) 金融整理管財人から退職金の増加支給及び退職年金等について意見を求められたH弁護士は,同年2月15日付けで,早期退職者優遇措置との均衡,増額の容易性,モラル・意欲の問題等の事情から退職金を増額すべきである旨,また,退職年金については,被控訴人が支払をしないという選択をすることは許されないと考える旨の意見書を預金保険機構に提出し,金融整理管財人は,団体交渉の中で,職員らに対し,すべてのことについて同管財人が決定権限を有するところ,上記内容の意見書を預金保険機構に提出している旨を告げた上で,同意見書を提示,交付した。その後,金融整理管財人は,職員組合に対し,増加支給しない旨を明言しなかった。

(ウ) 同年3月15日,被控訴人の臨時総代会で大阪信用金庫への事業譲渡承認が否決され,金融整理管財人は,同月22日及び23日,事業譲渡に代わる裁判所の代替許可を得るため,各総代の事業譲渡に対する意思を確認するよう強く要請し,支店長らが同管財人に退職金増加支給や退職年金支給をする意思があるものと判断する旨の検討結果を伝えると,同管財人は,これを否定することなく,同月25日午前10時までに上記確認を願いたいと要請し,支店長らが電話による意思確認作業を行った結果,上記代替許可を得,また,預金の流出が急増して預金残高が半減する中で,同年4月10日,営業店長に宛てて,預金2000億円の死守を通知し,請求<1>の控訴人ら元職員は,金融整理管財人の指示に従い,本来業務に加えて,事業譲渡を完遂させるための業務にも従事した。

(エ) 職員組合は,同年4月10日,厚生労働省及び金融庁を訪問し,職員らの現状を伝えるとともに退職金割増・退職年金支給が必要である旨訴えたところ,厚生労働省及び金融庁の担当者もこれに理解を示した。

(オ) 預金保険機構と被控訴人の救済金融機関である大阪信用金庫とは,同年5月23日,資金援助(金銭の贈与)に関する契約を締結しており,同契約は,賞与や退職金の増加支給等に関する労働紛争にも備えるものであったと考えられるから,退職金の増加支給等については資金的な裏付けもあった。

(カ) その後も,金融整理管財人からは,退職金の増加支給等をしない旨の意思表示はないまま推移し,同年6月9日,請求<1>の控訴人ら元職員は解雇された。

(キ) 上記のような経過から,金融整理管財人は,破綻処理手続を進捗させるため,退職金の増加支給及び退職年金の支給があり得るかもしれないとの期待を職員らに持たせて,解雇までの間苛酷な労働に駆りたて,職員らは,退職金の増加支給及び退職年金の支給がされるとの期待を持って職務に従事した。

(ク) 金融システムの維持に大きな功労があった請求<1>の控訴人ら元職員に退職金の増加支給がないとすると,早期退職者優遇措置が適用される場合に比較してあまりに不均衡であり,また,被控訴人の賃金水準が大阪府下の信用金庫の中で最低レベルであったこと,他の金融機関において増加支給等の仲裁判断が出ていることにかんがみても,退職金を増加支給することで上記不均衡を是正し,職員らの功労に報いるというのが当事者の合理的意思であったと解される。

(2)  被控訴人の主張

ア 退職金規定9条は,「増加支給することができる」と定めており,増加支給するか否か,するとした場合におけるその額等については,その都度,被控訴人が経営・財政状態等諸般の事情を勘案して決するのであり,これが自由裁量規定であることは明らかである。請求<1>の控訴人らの主張は,退職金規定の解釈の域を逸脱するものである。

イ 請求<1>の控訴人らは,当審においてにわかに,退職金の増加支給について黙示の合意が成立した旨主張するが,時機に後れた主張であって許されない。また,同控訴人らの主張からは,いつの時点でそのような黙示の合意が成立したというのか明らかでないし,早期退職者優遇措置規定との不均衡を問題にする点についても,企業の存続を前提としたリストラ策の一環である同優遇措置制度と,破綻認定に伴う解雇に際して支払う退職金について増加支給の可否が問題となっている本件とでは次元を異にしており,不均衡を問題にすること自体失当である。

のみならず,平成14年2月21日,金融整理管財人から前記意見書が認められない旨の発言があり,さらには同年4月10日,金融庁の職員から同様の否定的発言があったことからしても,請求<1>の控訴人ら主張の合意は成立していない。

(争点(2)について)

(1)  請求<2>の控訴人らの主張

ア 退職年金規定2条2項の解釈(原審における主張の補足)

退職金の増加支給について述べた各事情のほか,退職年金規定2条2項が熟練労働者の定着促進という目的のために設けられた規定であり,本件においては,金融システム及び信用秩序の維持を至上命題とする被控訴人及び金融整理管財人にとって,熟練労働者である請求<2>の控訴人ら元職員が事業譲渡の前日まで作業に従事することが不可欠であったことからすれば,退職年金規定2条2項は,自由裁量規定ではなく羈束裁量規定であって,その内容は,「勤続満15年以上で特別の事由により退職するときは,金庫は理事会に諮り前項による退職年金を支給することができる。ただし,経営上の都合によりやむを得ず解雇する場合であって,解雇を予告した日から解雇する日まで特別の功労があったときは,退職年金を支給する。」と定めた規定と解釈すべきであるから,請求<2>の控訴人ら元職員は,退職年金支給請求権を有する。

イ 黙示の合意の成立(当審における新請求)

退職金の増加支給について述べた各事情からすれば,被控訴人は,経営破綻以後解雇日までの期間中,遅くとも平成14年3月23日には,請求<2>の控訴人ら元職員に対して退職年金を支給するとの黙示の意思表示をし,同人らはこれを承諾したか,又は,退職年金の支給を要求していた同人らに対し,被控訴人は黙示の承諾をしたと解すべきである。なお,本件においては,事業譲渡日が2回延期されているが,その間に定年に達したことにより,退職年金規定2条1項の適用を受けることになった者と,事業譲渡日までに定年に達しなかった者との均衡をも考慮すべきである。

(2)  被控訴人の主張

ア 退職年金規定2条2項についても,これが自由裁量規定であることは退職金規定9条の場合と同じであり,控訴人らの解釈は成り立ち得ない。

イ 請求<2>の控訴人らは,当審においてにわかに,退職年金の支給について黙示の合意が成立した旨主張するが,時機に後れた主張であって許されない。また,請求<2>の控訴人らの主張からは,いつの時点でそのような黙示の合意が成立したというのか明らかでなく,上記主張は争う。

のみならず,前記のような金融整理管財人や金融庁職員の発言にあるとおり,合意は成立していない。

(争点(3)について)

(1)  請求<3>の控訴人らの主張

ア 具体的賞与請求権(原審における主張の補足―主位的請求)

給与規定には,人事考課に基づき,毎年6月及び12月に賞与を支給することのほか,支給算定期間,在職要件,勤務を欠く職員の取扱いなどの定めがあったこと,従業員募集及び入社の際に,担当者から賞与に関し,前年度と同程度かその前後の平均支給率に基本給を乗じた金額を賞与として支給する旨の説明がされることが慣例となっていたこと,賞与は,基本給に9段階の人事考課基準に基づく支給率を乗じて支給額が決定されていたが,夏季,冬季を通じて長年にわたり,基本給に平均支給率を乗じた金額の支給を受ける者がおよそ4分の3を占め,約95%の職員が基本給の1か月分以上の支給を受けていたこと,各年度の平均支給率は,前年度と比較して大きな変動がなく,賞与の支給率及び支給額はほぼ固定していたこと,これらの諸事情からすれば,被控訴人においては,毎年6月及び12月に,基本給に前年度並みの平均支給率を乗じた金額か,少なくとも基本給の1か月分の金額に相当する賞与を支給することが,入社時における合意内容であり,かつ慣行であったと認められるから,上記内容は労働契約の内容になっていたというべきである。

それにもかかわらず,被控訴人が請求<3>の控訴人ら元職員の考課査定をせず,平成14年度夏季賞与を支給しなかったことは,合理性がないのに従来の労使慣行を一方的に破棄するものであり,無効である。

したがって,請求<3>の控訴人ら元職員は,基本給に前年度並みの平均支給率,すなわち,本件の場合は1.35を乗じた金額ないし少なくとも基本給の1か月分の金額に相当する賞与の支給請求権を有する。

なお,給与規定40条には「賞与の支給は金庫の事業成績等を考慮して決定」するとあるが,事業破綻の状況において賞与を支給しても被控訴人の経営に悪影響を与えることはないから,ここにいう事業成績の概念と被控訴人の破綻とは,次元が異なるというべきであり,むしろ,請求<3>の控訴人ら元職員の功労及び生活保障の必要などからすれば,賞与を支給すべき積極的な事情が存在する。さらに,賞与の引当金については預金保険機構の支援が予定されているし,協力一時金が支給されたことも,賞与とは性格を異にするから,賞与の不支給を正当化する事情とはならない。

イ 期待的利益の侵害(当審における新請求―予備的請求)

仮に,請求<3>の控訴人ら元職員が賞与の支給を受ける具体的請求権を有していないとしても,その抽象的請求権は有している。そして,上記アで述べた諸事情からすると,請求<3>の控訴人ら元職員は,考課査定により賞与の支給がされるという期待的利益を有しているのであって,被控訴人が同請求権の内容を確定せず,賞与を支給しない場合には,被控訴人は債務不履行責任を負うというべきである。したがって,請求<3>の控訴人ら元職員は,債務不履行に基づいて,被控訴人に対し,基本給に平均支給率を乗じた金額か少なくとも基本給の1か月分に相当する金額の損害賠償請求権を有する。

(2)  被控訴人の主張

ア 本件においては,請求<3>の控訴人ら元職員について賞与の支給決定はされていないし,被控訴人の給与規定上「賞与の支給は金庫の事業成績等を考慮して決定」することと定められているから,被控訴人の事業成績等にかかわりなく夏季賞与を支給するという労使慣行ないし労働契約が存するとは認められない。現に,被控訴人における賞与の支給実態をみると,少なくとも平成5年以降は,それまでと比較しておよそ固定的とは言い難く,支給率の最下限を読み取ることができない支給実績となっていた。

なお,被控訴人における平成5年から平成13年までの賞与の平均支給率からも明らかなように,賞与については被控訴人の業績を勘案して支給率が決められており,少なくとも基本給の1か月分などといった労使慣行が存在したとは認められない。

イ 請求<3>の控訴人ら元職員に夏季賞与の支給を受けるについての期待的利益が存したことは争うが,仮に上記利益が存したと認められるとしても,本件においては,被控訴人が経営破綻したという状況の下で賞与の支給決定がされなかったものであり,違法に上記利益が損なわれたということはできない。

第3当裁判所の判断

1  事実関係

前記争いのない事実等,証拠(<証拠・人証略>)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。

(1)  被控訴人は,平成14年1月25日に金融庁から破綻認定を受けたが,その際,被控訴人の理事長は職員らに対し,職員の雇用と処遇の安定を図ることを最後の使命と考え,これに全力を挙げて取り組むことを伝えた。また,破綻認定に伴って就任した金融整理管財人は,被控訴人の本部部長及び営業部店長に宛てて「当金庫の当面の業務運営方針」と題する書面を発し,店頭営業体制の基本方針として,店頭での混乱状態を回避すること,人事・労務の基本方針として,業務に支障を来さないよう職員のモラール維持を図ることを要請した。

(2)  被控訴人においては,金融庁から破綻認定を受けた後,預金保険法に基づく破綻処理を行っていたが,職員らに対する退職金の増加支給分,退職年金及び平成14年度夏季賞与について,被控訴人に支払義務があるか否か,また,支払義務がないとしても支払うのが相当と認められるか否かを判断するため,弁護士の意見を求めるなどして検討を進めた。

(3)  上記につき意見を求められた弁護士は,同年2月15日付けで意見書を提出したが,その中で,退職金規定及び退職年金規定のいずれも,「支給することができる」旨の任意規定があるにすぎないが,退職金の増加支給については,早期退職者優遇措置との均衡,増額の容易性,職員らのモラル・意欲の問題から増加支給すべきであり,また,退職年金についても,退職年金規定2条1項の定める定年退職の場合との均衡,定年退職者でなくとも適格退職年金における受益者に当たることから,支払をしないという選択をすることは許されないと考える旨の意見を述べた。

(4)  職員組合は,退職金の増加支給,退職年金の支給等を求める要求書を金融整理管財人に提出し,同月18日には,同管財人との団体交渉を実施した。その席上,職員組合側が退職金の増加支給及び退職年金の支給等を要求したのに対し,同管財人は,退職金の増加支給及び退職年金の支給をすべき旨の上記意見書を預金保険機構に提出している旨回答した。その後,同管財人は,職員組合からの求めに応じて,同意見書の写しを職員組合側に交付したが,その際,「自分たち管財人が意思決定権限を持っているが,具体的な手続を進めるのは預金保険機構である」旨を告げた。

(5)  金融整理管財人は,同月21日に開かれた被控訴人の幹部職員らとの協議の場で,退職金規定は裁量規定であることが問題になり,上記意見書も預金保険機構で認められず,退職金の増加支給及び退職年金の支給は現状では困難である旨を説明した。

(6)  その後,金融整理管財人は,同月27日に開かれた職員組合との2回目の団体交渉の場で,退職金の増加支給等につき預金保険機構から具体的な支払方法等について回答がない旨を職員組合に伝えた。

(7)  同年3月15日,被控訴人の臨時総代会が開催され,大阪信用金庫への事業譲渡の承認案件が審議されたが,同案件は否決された。そこで,金融整理管財人は,同月22日及び23日,急遽,部店長らを招集し,事業譲渡の承認に代わる裁判所の代替許可を得るため,各総代の事業譲渡に対する意思を確認するよう強く要請し,支店長らが電話による意思確認作業を行った結果,裁判所の代替許可を得るに至った。また,被控訴人からの預金流出が続く中で,金融整理管財人は,同年4月10日には,営業店長に宛てて,最低でも預金2000億円を死守するよう努力を要請した。

(8)  職員組合及び部店長会の代表者らは,同年4月10日,厚生労働省及び金融庁の担当者に対し,退職金の増加支給及び退職年金の支給等についての陳情を行ったが,厚生労働省の担当者は,上記各支給等について同省が指示・指導等を行うことは困難である旨,金融庁の担当者も,費用最小化原則等を考慮して上記各支給をしないとの結論に達したものと考えたいし,当局として関与することは制約がある旨それぞれ回答した。

(9)  退職金の増加支給分及び退職年金につき,金融整理管財人は,被控訴人の退職金規定及び退職年金規定には,いずれも「支給することができる」旨の裁量規定があるにすぎず,被控訴人に支払義務があると解することはできないと判断し,これらを支給しないこととした。なお,被控訴人は,請求<1>の控訴人ら元職員に対し,退職金規定4条に基づき算出した額の退職金については,これを支給した。

(10)  金融整理管財人は,平成14年度夏季賞与について,被控訴人が預金保険法に基づく破綻処理下にあるとの事情から,これを支給することはできないと判断し,事業譲渡日まで勤務した職員に対しては,賞与に代えて,給与の約1か月分を事業譲渡協力一時金として支給することを決定し,同協力金を支給した。

2  争点(1)について

(1)  これについての判断は,次のとおり付加するほか,原判決の「事実及び理由」第3の2(原判決15頁14行目から17頁3行目まで)の説示と同一であるから,これを引用する。

(2)  請求<1>の控訴人らは,退職金規定9条は羈束裁量規定であり,経営上の都合によりやむを得ず解雇された場合であって,解雇を予告した日から解雇した日まで特別の功労があったときは,退職金を増加支給することを定めた規定である旨主張し,その根拠として前記第2の3(1)アの(ア)ないし(ウ)の事情を挙げる。

しかしながら,退職金規定9条は,同条各号所定の事由のいずれかに該当するときは,「退職金を増加支給することができる」と規定するのみで,同条各号所定の事由に重複して該当するときは増加支給しなければならないことなど,一定の場合には裁量が羈束される旨を窺わせる定めは存在しない。また,退職金を増加支給するか否か及び増加支給するとした場合における増加支給額ないし支給率は,被控訴人のその時々の経営状態や増加支給対象者数その他諸般の事情を勘案した上で決せられるべき事柄であるから,上記のとおり明文の根拠がないのに,同条が一定の場合には増加支給が義務づけられる趣旨を定めたものであるとか,被控訴人がそのような意思を有していたなどと解することは相当でない。請求<1>の控訴人らは,自由裁量規定であるとすれば,そのような規定を設ける必要はないと主張するが,自由裁量を定めたものであっても,退職金規定9条は,退職金の増加支給の根拠規定となる点において意味を有する規定であると解されるから,上記主張は失当である。また,請求<1>の控訴人らは,被控訴人と規模が近い金融機関等の事例が参照されるべき旨主張するが,単に規模が近いとか同じ業態であるというだけで,被控訴人と他の金融機関とを同列に論ずることは相当でないから,上記主張も採用できない。

以上のとおり,請求<1>の控訴人らの主張は退職金規定の解釈の域を超えるものであって,失当といわざるを得ない。

(3)  請求<1>の控訴人らは,経営破綻以後解雇日までの期間中に,被控訴人と請求<1>の控訴人ら元職員との間において,退職金を増加支給することにつき黙示の合意が成立した旨主張する。

ア 被控訴人は,上記主張は時機に後れていて許されないと主張するが,請求<1>の控訴人らが上記主張をすることによって,本件訴訟の審理が遅延したとまでは認められないから,この点についての被控訴人の主張は採用できない。

イ 前記1で認定したとおり,被控訴人の破綻認定以後,職員組合が中心となって,職員らが退職金の増加支給等を要求していたこと,金融整理管財人から意見を求められた弁護士が,退職金を増加支給すべき旨の意見書を提出し,その旨及び同意見書の内容は職員組合にも伝えられたことなどの事実が認められるけれども,他方において,金融整理管財人の側では,退職金の増加支給等を検討したり,上記支給等に向けて預金保険機構に働きかけたりしたことは認められるものの,職員らに対して退職金を増加支給する旨等を告げたり,あるいは,上記支給を行うことを前提とした行動に出たような事情は窺われず,むしろ,平成14年2月以降,退職金の増加支給は預金保険機構の理解が得られないため困難である旨を述べているのであって,このような事情をも考慮すると,破綻認定以後解雇日までの期間中に,被控訴人と請求<1>の控訴人ら元職員との間で退職金を増加支給することにつき黙示の合意が成立したと認めることはできない。

また,被控訴人の当時の理事長が職員の雇用と処遇の安定を図ることが最後の使命であることを明言したことや,金融整理管財人が職員らに対し円滑な事業譲渡に向けての作業を指示ないし要請したこと等の事情も,これらによって上記黙示の合意が成立したと認定するには不十分であり,同年3月22日及び23日の金融整理管財人の言動を考慮しても,同月23日に黙示の合意が成立したとまで評価することはできない。

なお,請求<1>の控訴人らは,退職金の増加支給等について資金的な裏付けがあった旨主張する。しかし,甲第282号証(預金保険機構と大阪信用金庫との間の資金援助(金銭の贈与)に関する契約書)によれば,被控訴人から大阪信用金庫への事業譲渡に伴う預金保険機構から大阪信用金庫への資金援助(金銭の贈与)に関し,「相互信用金庫と従業員との労働関係に係る紛争」を案件の1つとして,裁判等の結果大阪信用金庫又は被控訴人が現に損失を被り,又は被ることが確実となったときは贈与金を増額することができる旨の条項が設けられていることが認められるものの,同号証によっても,預金保険機構から当然に退職金の増加支給分等相当額の贈与を受けられることまでは認められず,他にこれを認めるに足りる証拠もないから,上記主張も採用できない。

3  争点(2)について

(1)  これについての判断は,次のとおり付加するほか,原判決の「事実及び理由」第3の3(原判決17頁4行目から18頁20行目まで)の説示と同一であるから,これを引用する。

(2)  請求<2>の控訴人らは,退職年金規定2条2項は羈束裁量規定であり,経営上の都合によりやむを得ず解雇された場合であって,解雇を予告した日から解雇する日まで特別の功労があったときは,退職年金を支給することを定めた規定である旨主張する。

しかしながら,退職年金規定2条2項は,「勤続満15年以上で特別の事由により退職するとき」との要件の下に,理事会に諮って「退職年金を支給することができる」と規定するのみで,経営上の都合によりやむを得ず解雇されたことや特別の功労があったことなどを要件として,一定の場合には裁量が羈束される旨を窺わせる定めは存在しない。また,事前に理事会に諮ることが支給手続として定められていることや,同条項により退職年金を支給するか否かの判断が,被控訴人のその時々の経営状態や退職年金の支給対象者数その他諸般の事情を勘案した上で決せられるべき事柄であることからしても,上記のとおり明文の根拠がないのに,同条項が一定の場合には退職年金の支給が義務づけられる趣旨を定めたものであるとか,被控訴人がそのような意思を有していたなどと解することは相当でない。請求<2>の控訴人らは,退職金の増加支給に関する場合と同様に,自由裁量規定であるとすれば,そのような規定を設ける必要はない,あるいは,被控訴人と規模が近い金融機関等の事例が参照されるべきである旨主張するが,自由裁量を定めたものであっても,退職年金規定2条2項は,退職年金の支給の根拠規定となる点において意味を有する規定であると解されるし,単に規模が近いとか同じ業態であるというだけで,被控訴人と他の金融機関とを同列に論ずることも相当でないから,上記主張も採用できない。

また,請求<2>の控訴人らは,退職年金規定2条2項を羈束裁量規定と解すべき根拠として,同条項が熟練労働者の定着促進という目的のために設けられた規定であり,被控訴人及び金融整理管財人にとって熟練労働者である請求<2>の控訴人ら元職員の作業従事が不可欠であったことを挙げる。しかし,同条項が熟練労働者の定着を促進し,その功労に報いるという目的を有するとしても,そのことから直ちに,同条項の文言を離れて,一定の場合には退職年金を支給しなければならないことを定めたものとまで解することはできない。

以上のとおり,請求<2>の控訴人らの主張は退職年金規定の解釈の域を超えるものであって,失当といわざるを得ない。

(3)  請求<2>の控訴人らは,経営破綻以後解雇日までの期間中に,被控訴人と請求<2>の控訴人ら元職員との間において,退職年金を支給することにつき黙示の合意が成立した旨主張する。

ア 被控訴人は,上記主張は時機に後れていて許されないと主張するが,請求<2>の控訴人らが上記主張をすることによって,本件訴訟の審理が遅延したとまでは認められないから,この点についての被控訴人の主張は採用できない。

イ 前記1で認定したとおり,被控訴人の破綻認定以後,職員組合が中心となって,職員らが退職年金の支給等を要求していたこと,金融整理管財人から意見を求められた弁護士が,退職年金について支払をしないという選択をすることは許されないと考える旨の意見書を提出し,その旨及び同意見書の内容は職員組合にも伝えられたことなどの事実が認められるけれども,他方において,金融整理管財人の側では,退職年金の支給等を検討したり,上記支給に向けて預金保険機構に働きかけたりしたことは認められるものの,職員らに対して退職年金を支給する旨等を告げたり,あるいは,上記支給を行うことを前提とした行動に出たような事情は窺われず,むしろ,平成14年2月以降,退職年金の支給は預金保険機構の理解が得られないため困難である旨を述べているのであって,このような事情をも考慮すると,破綻認定以後解雇日までの期間中に,被控訴人と請求<2>の控訴人ら元職員との間で退職年金を支給することにつき黙示の合意が成立したと認めることはできない。

また,被控訴人の当時の理事長が職員の雇用と処遇の安定を図ることが最後の使命であることを明言したことや,金融整理管財人が職員らに対し円滑な事業譲渡に向けての作業を指示ないし要請したこと等の事情も,これらによって上記黙示の合意が成立したと認定するには不十分であり,同年3月22日及び23日の金融整理管財人の言動を考慮しても,同月23日に黙示の合意が成立したとまで評価することはできない。

なお,請求<2>の控訴人らは,退職年金の支給等について資金的な裏付けがあった旨主張する。しかし,甲第282号証(預金保険機構と大阪信用金庫との間の資金援助(金銭の贈与)に関する契約書)によれば,被控訴人から大阪信用金庫への事業譲渡に伴う預金保険機構から大阪信用金庫への資金援助(金銭の贈与)に関し,「相互信用金庫と従業員との労働関係に係る紛争」を案件の1つとして,裁判等の結果大阪信用金庫又は被控訴人が現に損失を被り,又は被ることが確実となったときは贈与金を増額することができる旨の条項が設けられていることが認められるものの,同号証によっても,預金保険機構から当然に退職年金の支給分等相当額の贈与を受けられることまでは認められず,他にこれを認めるに足りる証拠もないから,上記主張も採用できない。

4  争点(3)について

(1)  これについての判断は,次のとおり付加するほか,原判決の「事実及び理由」第3の4(原判決18頁21行目から19頁19行目まで)の説示と同一であるから,これを引用する。

(2)  請求<3>の控訴人らは,被控訴人においては,毎年6月及び12月に,基本給に前年度並みの平均支給率を乗じた金額か,少なくとも基本給の1か月分の金額に相当する賞与を支給することが,入社時における合意内容であり,かつ慣行であったと主張し,控訴人X1(以下「控訴人X1」という。)本人は,陳述書(甲276)及び本人尋問において,新規従業員の採用募集説明会や入社後の新人研修会で,長年にわたり,賞与は前年度の平均支給率ないしそれと同程度の支給率に基本給を乗じた金額が支給されると説明してきたなどと,上記主張に沿う供述をする。

しかしながら,被控訴人の給与規定40条には,「賞与の支給は金庫の事業成績等を考慮して決定し,各人への支給基準は,勤務成績,業績等を人事考課により評定してこれを定める。」とされていて,他方,賞与につき,具体的な支給額の定めや支給額の算定方法に関する定めは設けられていないところ,控訴人X1本人も,「考課査定はするが,よほどのことがない限り通常前年度並みか前年度に多少前後する平均支給率に基本給を乗じた金額の賞与を支給する」と説明してきたというのであるから(甲276,本人尋問),控訴人X1本人の供述を前提にしても,人事考課も事業成績等を考慮することもなく,前年度並みの平均支給率を乗じた金額か,少なくとも基本給の1か月分の金額に相当する賞与を支給することが,被控訴人と職員らとの間の入社時における合意内容となっていたと認めることはできない。また,仮に控訴人X1の供述する上記説明内容が,人事考課も事業成績等を考慮することもなく,前年度並み又はこれに多少前後する平均支給率に基本給を乗じた金額の賞与が支給されるとの合意が成立している旨を述べるものであるとすれば,給与規定に抵触する誤った内容の説明がされていたものというほかはない。

また,証拠(甲276)によれば,被控訴人における平成5年以降の賞与の平均支給率は,夏季賞与についてみると,平成5年が2.20,平成6年が2.20,平成7年が2.00,平成8年が2.20,平成9年が2.00,平成10年が2.00,平成11年が1.70,平成12年が1.50,平成13年が1.35であり,冬季賞与についてみると,平成5年が3.00,平成6年が3.00,平成7年が2.80,平成8年が2.80,平成9年が2.60,平成10年が2.30,平成11年が1.60,平成12年が1.10,平成13年が1.50であったことが認められ,これらによれば,上記期間中,前年度の平均支給率と同率であったのは,夏季賞与,冬季賞与とも2回ずつにすぎなかったこと,夏季賞与の平均支給率の最大値は2.20,最小値は1.35で,その差は0.85であり,冬季賞与の平均支給率の最大値は3.00,最小値は1.10で,その差は1.90であること,平成9年以降の平均支給率は下降傾向にあることが明らかである。これらによれば,被控訴人における賞与の支給率ないし支給額が毎年ほぼ固定していたとは到底認められず,むしろ年度ごとの事業成績等に応じて相当程度変動していたというほかない。

これらの事情からすると,被控訴人において,毎年6月及び12月に,基本給に前年度並みの平均支給率を乗じた金額か,少なくとも基本給の1か月分の金額に相当する賞与を支給することが,入社時における合意内容であり,かつ慣行であったということはできず,請求<3>の控訴人らの上記主張は採用できない。

そして,被控訴人が金融庁から破綻認定を受けたことは,給与規定40条にいう事業成績等のいわば最たるものであって,賞与の支給を決するに当たって当然に考慮されるべき事柄であること,前記認定のとおり,事業譲渡日まで勤務した職員に対しては,賞与に代えて,給与の約1か月分が事業譲渡協力一時金として支給されたこと(控訴人X1本人は,賞与の支給と上記協力一時金とは別のものであると供述するが,甲第281号証の記載に照らして信用することができない。)からすると,被控訴人が請求<3>の控訴人ら元職員に賞与を支給しなかったことが合理性を欠くとまで認めることはできない。

なお,控訴人X1本人は,賞与引当金は預金保険機構の支援により既に準備されており,賞与を支給する資金的な裏付けができている旨を供述するが,甲第282号証によってもそのような事実を認めることができないことは,既に2(3)イにおいて説示したとおりである。

(3)  請求<3>の控訴人らは,同控訴人ら元職員は考課査定により賞与の支給がされるという期待的利益を有しており,被控訴人が賞与を支給しないときは債務不履行責任を負う旨主張する。

しかしながら,上記(2)で説示したとおり,賞与の支給の有無及びその内容が被控訴人の事業成績等に左右されるものである以上,請求<3>の控訴人らが主張する上記期待的利益は法的保護に値するものとは認められず,また,被控訴人が職員に対して賞与の具体的請求権を確定させる債務を負っているとも認められないから,上記主張は理由がない。

5  以上によれば,控訴人らの本件各請求をいずれも棄却した原判決は相当であるから,本件各控訴をいずれも棄却し,控訴人らが当審で追加した新請求はいずれも理由がないから,これらを棄却することとして,主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 若林諒 裁判官 石井寛明 裁判官 三木昌之)

(別紙) 当事者目録

控訴人 X2

(ほか593名)

上記594名訴訟代理人弁護士 中北龍太郎

村本純子

上記訴訟復代理人弁護士 中島光孝

被控訴人 相互信用金庫

代表者清算人 A

訴訟代理人弁護士 別城信太郎

同 種村泰一

同 勝井良光

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