大阪高等裁判所 平成17年(ラ)777号 決定 2005年9月06日
東京都目黒区三田1丁目6番21号
抗告人(原審相手方・本案被告)
GEコンシューマー・ファイナンス株式会社
同代表者代表取締役
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同訴訟代理人弁護士
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同
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同
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同
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相手方(原審申立人・本案原告)
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同訴訟代理人弁護士
柿沼太一
主文
1 相手方の当抗告審における申立ての趣旨の変更に基づき,原決定を次のとおり変更する。
抗告人は,本決定送達後7日以内に,別紙文書目録記載の各文書を提出せよ。
2 抗告費用は抗告人の負担とする。
理由
第1事案の概要
1 本件は,相手方を原告,抗告人を被告とする神戸地方裁判所明石支部平成17年(ワ)第85号不当利得金返還等請求事件(本案事件)において,相手方が,民事訴訟法220条3号に基づき,抗告人が所持するものとして原決定別紙文書目録記載の文書の提出命令の申立てをし,原審は,相手方の申立てを理由があるものとして,抗告人に対して前記文書の提出を命じる原決定をし,これに対し,抗告人が即時抗告した事案である。
2 当抗告審において,相手方は,提出命令を求める文書を別紙文書目録記載のとおりの文書(以下「本件文書」という。)であると特定して,その申立てを変更した。
第2抗告理由
抗告理由は,別紙抗告理由書写しのとおりであるが,要するに,文書の提出を命ずる必要性がないこと(抗告理由1),原決定別紙文書目録記載の文書のうちの平成5年10月ころ以前の分について,抗告人は文書の所持者ではないこと(抗告理由2)であると解される。
第3当裁判所の判断
1 当裁判所も,本件文書は,民事訴訟法220条3号後段又は4号所定の文書に該当し,本件文書の提出命令を求める相手方の申立ては,理由があるものと判断する。抗告理由1,2については,次のとおりである。
2 抗告理由1について
証拠の採否の判断は,受訴裁判所の専権に属するから,証拠調べの必要性がないことを理由として原決定を非難する抗告人の主張は,抗告理由として失当である。
3 抗告理由2について
抗告人は,平成15年1月から同年10月までの間,10年を経過した取引履歴を消去する方針をとっていたため,本件文書のうちの平成5年10月以前の取引に関するものは所持していないと主張し,乙20ないし23を提出する。
しかし,上記乙号各証によっても,抗告人が主張するように本件文書のうちの抗告人主張の分について破棄等の処理がされたことが証明されたことにならない。また,一件記録によると,抗告人は,金融業者であって,顧客であった相手方から取引履歴の開示を求められた場合には,特段の事情のない限り,貸金業法の適用を受ける金銭消費貸借契約の付随義務として,信義則上,保存している業務帳簿(保存期間を経過して保存しているものを含む。)に基づいて取引履歴を開示する義務を負っていたもので(最高裁平成17年7月19日判決・平成16年(受)第965号),抗告人がそのような処理をして本件文書の一部の所持を喪失したとは容易に考え難い。電磁記録の管理にはそれほど場所や経費がかかるわけではないから,管理の手間を節約するために電磁記録の一部を消去する必要は乏しいはずであり,むしろ,一部を消去した場合,残存部分の読み取りや計算に過誤が生じる危険があり,電磁記録の消去に利点があるとも考え難い。また,抗告人が,顧客との間で,残債務につき新たな貸金債務とする準消費貸借契約をした場合,その後の訴訟等において残債務の発生原因事実の主張立証をする必要があることも十分に考えられる。したがって,抗告人としては,各顧客からの訴訟対応等の必要からも上記の業務帳簿や契約書である本件文書を保存しておく必要があったと考えられ,この点の抗告人の主張は採用できず,一件記録によると,抗告人は,本件文書を所持するものと認めるのが相当である。
4 以上によれば,本件抗告は理由がなく,本件文書の提出命令を求める相手方の申立ては,理由がある。よって,主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 渡邊等 裁判官 八木良一 裁判官 石井寛明)
<以下省略>