大阪高等裁判所 平成17年(行コ)67号 判決 2005年12月21日
控訴人(附帯被控訴人)
豊郷町長 大野和三郎
訴訟代理人弁護士
岩本安昭
同
阿多博文
同
森脇肇
被控訴人(附帯控訴人)
X1
(ほか5名)
上記6名訴訟代理人弁護士
吉原稔
同
中島晃
同
近藤公人
主文
1 本件附帯控訴に基づき、原判決主文第1項を次のとおり変更する。
控訴人(附帯被控訴人)は、大野和三郎に対し、350万円を請求せよ。
2 控訴人(附帯被控訴人)の本件控訴を棄却する。
3 訴訟費用(控訴費用、附帯控訴費用を含む)は第1、2審を通じてこれを2分し、その1を控訴人(附帯被控訴人)の負担とし、その余を被控訴人ら(附帯被控訴人ら)の負担とする。
事実及び理由
第4 当裁判所の判断
1 当裁判所は、被控訴人らの本件請求は主文1の限度で理由があるからこれを認容し、その余は理由がないから棄却するのが相当であると判断する。その理由は、次のとおり訂正、付加するほか、原判決「事実及び理由」中の「第3 当裁判所の判断」のⅠないしⅤに記載のとおりであるから、これを引用する。
(1) 原判決10頁9行目の「〔証拠略〕」を「〔証拠略〕」と改め、「傷つけるなどした」の次に以下のとおり付加する。
「。また、解体業者は、かなりの数の窓枠を取り外して校舎外に投棄したため、これらの窓枠と窓ガラスがその付近の地上に散乱していた。なお、2階の窓ガラスが割られていた際、その直下で荷物の搬出作業をしていた引越業者は、解体業者に対し、危険なので窓ガラスを割るのを中止するよう要求した」
(2) 原判決11頁8行目の「困難であること」の次に以下のとおり付加する。
「、引越作業のためであれば、取り外された窓枠を校舎外に投棄して使用不能とする必要はないこと、2階の窓ガラスを割ることが搬出作業中の引越業者にとって危険で、むしろ引越作業の妨げになっていたこと」
(3) 原判決12頁20行目の次に改行して以下のとおり付加する。
「以上の判示に照らせば、控訴人の行為が「財産の処分」に該当しないとの控訴人の主張は採用できない。」
(4) 原判決14頁8行目の次に改行して以下のとおり付加する。
「控訴人は、本件校舎の解体について教育委員会の承認があることを前提に行動したものであり、また、用途廃止は、教育機能が仮校舎に移転後にすればよく、実際の用途廃止は、校舎解体後にされている例もあると主張する。
この点につき、教育委員会が本件校舎の建替えを含む全面改築の基本方針を承認していたことは控訴人が指摘するとおりであるが、町長が適法に本件校舎の解体作業を遂行するためには、本件損壊行為に着手する以前に、教育委員会が行政財産(教育財産)である本件校舎の用途廃止をしていることが前提とならなければならず、この前提条件が充足されていない以上、本件校舎の解体について教育委員会の承認があったとみることはできない。
また、用途廃止が本件校舎の解体後でもよく、そのような例もあるとの主張については、控訴人が指摘する実例の存在を認めるに足りる証拠はないうえ、仮に、そのような実例が存在するとしても、これが適法な処理でないことは明らかであるから、控訴人の同主張も採用できない。」
(5) 原判決16頁2行目の「このうち、」から5行目までを次のとおり改める。
「上記認定の本件損壊行為に関する大野の解体業者に対する指示内容、本件校舎の損傷個所及び損傷の程度、上記見積書の立証程度を考慮すれば、大野の指示と相当因果関係が認められる損害は、上記見積書中の廊下金属製建具修繕工事614万9020円と教室金属製建具修繕工事24万1105円の合計639万0125円の50%相当額に、上記見積書中の共通仮設費、諸経費、消費税の各金額を加味した350万円と認めるのが相当である。
控訴人は、本件校舎の窓枠は、耐用年数を過ぎた極めて価値の低いものであり、その修補も業者負担で行われていることから、豊郷町に損害はないと主張する。しかし、〔証拠略〕によれば、本件校舎の窓枠は、窓の本来の機能である採光、換気、風雨の遮断などの効用を果たすことができるものであると認められ、控訴人の主張するような価値が極めて低いものであるとは解されないうえ、損傷個所は、アクリル製の透明な薄板とこれを支えるサッシで応急補修されているが、このアクリル板自体に窓ガラスと同程度の十分な耐久性があるか不明であり、しかも、アクリル板の取付方法も、小さなネジでサッシに何か所か固定した程度のもので、台風などの強い風雨があった場合に、本件校舎をこの風雨から守ることができるかにつき疑問があるうえ、他に補修をしたことを認めるに足りる証拠がないことからすると、上記修補をもって豊郷町に損害がないとする控訴人の主張は採用できない。」
2 以上によれば、控訴人の本件控訴は理由がないのでこれを棄却し、被控訴人らの本件附帯控訴は主文1の限度で理由があり、その余は理由がないので棄却することとして、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 島田清次郎 裁判官 安原清藏 片岡勝行)