大阪高等裁判所 平成18年(ネ)2970号 判決 2007年4月26日
控訴人(一審被告)
A野一郎(以下「控訴人一郎」という。)
他1名
上記二名訴訟代理人弁護士
川西譲
被控訴人(一審原告)
A野梅夫
同訴訟代理人弁護士
荒井洋一
同
西部俊宏
主文
一 本件控訴をいずれも棄却する。
二 控訴費用は、控訴人らの負担とする。
事実及び理由
第一控訴の趣旨
一 原判決を取り消す。
二 被控訴人の請求をいずれも棄却する。
三 訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。
第二事案の概要
一 控訴人ら及び被控訴人は、亡A野太郎(以下「太郎」という。)の子でありその相続人であるところ、本件は、被控訴人が、控訴人ら及び同じく相続人であるA野松夫、A野竹夫(以下それぞれ「松夫」、「竹夫」という。)に対して、太郎の嘱託による平成一六年三月四日神戸地方法務局所属公証人D原夏夫作成同年第一三六号遺言公正証書(以下「本件公正証書」という。)による遺言(以下「本件遺言」という。)が無効であることの確認を求めた事案である。
原審は、被控訴人の請求をいずれも認容したため、これを不服とする控訴人らが本件控訴を提起した。なお、松夫・竹夫は控訴を提起しなかった。
二 前提事実及び争点に関する当事者の主張は、以下のとおり当審での主張を付加する他は、原判決「事実及び理由」第二・一、二記載のとおりであるからこれを引用する。ただし、三頁六行目「預金通帳債権」を「預貯金債権」に、同一五行目「負担される」を「負担させる」に改める。
〔控訴人ら〕
本件遺言時に太郎は遺言能力を有しており、遺言は無効ではない。
(1) 太郎の症状は遺言能力に疑義を生じせしめるものでないこと
ア 本件公正証書の作成に立ち会った三菱信託のB野及び公証人、並びにその際病院内にいた控訴人一郎は、太郎の応答、表情、病状に遺言能力に疑いを生じさせる事情がなかったため、作成状況につき具体的な記憶を残さなかったものであり、太郎の遺言能力に問題はない。
遺言能力の判断に際し、遺言前後の病状や言動は一定の意味を有するが、遺言前後の状態、意思能力と関係の薄い病状や遺言後の症状悪化は直ちに遺言能力の欠如に結びつかず、B野は、太郎に出現した不穏や夜間せん妄の事実を知らなかったもので、少なくとも五回にわたる昼の面会時には何ら異常行動はなく、十分な意思疎通ができた旨証言し、公証人は、太郎の遺言能力に疑問を抱かせる出来事がなかったので通常どおりの手続を済ませたものであり、作成状況につき具体的な記憶がないのは自然であって、かつ偽証する必要もない。
D川医師は、太郎の意思疎通に特に問題はなかった旨証言しており、平成一六年二月のカルテ(乙二)の意思能力に関する記載も「意思疎通良好」、「元気そうにされている」とされ、本件遺言前後の症状は安定している。夜間せん妄は認知症の症状増悪ではなく、一過性・可逆的なものであり、上記同月以降はせん妄が見られず、E田病院A川医師の意見(乙八)に照らしても、太郎が痴呆症に罹患していたとの客観的な根拠はない。D川医師は、家族から聞いた話から「老人性痴呆」との病名をつけたが、器質的な所見があったわけでも検査をした上で確定診断したものでもない。
本件遺言前後、太郎の酸素飽和度が低く鼻カヌラを付けて酸素吸入をしていたことは意思能力に直接関係しない。高齢者の場合、肺機能が落ちるなどの理由により酸素飽和度が下がるのは珍しい事態ではなく、鼻カヌラの装着は通常行われる措置であり、これにより意識が清明に保たれる。本件遺言時までに太郎の発熱、呼吸苦等の症状は肺炎に進行しておらず、本件遺言当日の酸素飽和度は九五%を維持しており、微熱はあるが咳はなく、その症状はそれなりに安定しており、意識障害を窺わせる症状はなかった。体調の悪さと遺言能力の有無を混同するのは誤りである。
イ 本件遺言の無効を主張し、強い利害関係を有する被控訴人・竹夫の供述は信用できない。
(2) 本件遺言の内容等は遺言能力に疑義を生じせしめるものではないこと
ア 本件遺言は、高齢で身体の衰弱と死期を予感した太郎が遺言書を作成する必要を感じ、自発的意思でその作成を望んで三菱信託をして遺言書案を作成させたとの経緯によるものであり、控訴人らが働きかけたものでない。
イ 遺言内容から意思能力の有無を判断するのは慎重でなければならず、遺言内容が網羅的でないとか、付言事項等がおかしいからといって遺言能力がないことにならない。B野は、太郎から遺言作成に必要な財産の内容を聞き、配分の理由と複雑な配分割合を本人から指示されたものであり、遺言に些細な財産内容の記載不備や遺留分の誤解があっても遺言能力に欠けるものではない。
控訴人一郎が被控訴人の同意も得て本件遺言どおりの相続分に従った相続税の修正申告をしたところ、太郎が銀行員に指定した相続分の割合に符合しているから、本件遺言は太郎の意思を忠実に反映している。
銀行員の協力により作成された遺言書に、後継者の指定や墓の処置についての記載がないのは不自然でない。書画骨董等の動産の評価額は九〇万円程度にすぎず、本件遺言で触れられていなくとも特に不自然ではない。
〔被控訴人〕
本件遺言時に太郎は遺言能力を欠くなど、本件遺言は無効である。
(1) 太郎の症状は遺言能力に疑義を生じせしめるものであること
ア 控訴人一郎は、太郎が入院していたE田病院の理事・事務部長であり、影響力を行使しうる立場にあったなど、その供述に信用性はない。B野や公証人も、本件遺言の作成に業として関与したものであるから、その有効性につき利害関係を有するものであり、供述内容に照らしても、その供述に信用性はない。公証人は、太郎が遺言能力を保持していたことを裏付ける具体的なエピソードを証言しようと、地名「獄」(だけ)を「ひとや」と読むと教えてもらったとの明白な虚偽供述をするなどしており、その証言に信用性はない。
認知症の症状の増悪、九一歳九か月との高齢、高熱・呼吸苦等による体調の悪化に加え、遺言内容の不自然さに照らして、太郎は本件遺言当時、遺言能力を失っていた。
本件公正証書作成当時、太郎は発熱し、呼吸苦を訴え、鼻カヌラを付けていたから、遺言能力に疑いを生じさせる事情がなかったために公証人らが作成状況につき具体的な記憶を残さなかったというのは不自然である。
太郎は、夜間せん妄に限らない異常行動(不穏、見当識障害、不潔行動、幻覚、幻聴等)があり、KOMI記録のスケールによる認知症の程度も極めて重要であること等からすれば、本件遺言当時認知症に罹患して著しく増悪傾向にあった。平成一六年三月は、同年一・二月に比べて異常行動は少ないが、認知症が改善したとみるべきではなく、むしろ悪化して閉じこもり期・自己安穏期に進行したとするのが自然であり、本件遺言時は体調の悪化のため異常な言動すらできない状態であったと思われる。
D川医師の供述は、太郎の遺言能力の存在を裏付けるものではなく、E田病院A川医師の意見(乙八)は、本件遺言の四か月以上前のMRI画像に限った所見にすぎず、その意見は太郎が認知症に罹患していることを否定するものでもない。
本件遺言の直前、酸素飽和度が八八%に低下し鼻カヌラを付けていたことは、酸素飽和度の低下が集中力の低下、判断力異常、精神不穏等の症状を生じさせることからすると、遺言能力の有無に関係する。
イ 被控訴人のみならず、本件遺言が無効となれば大幅に相続分が減る竹夫も太郎に遺言能力がない旨供述しており、それらの供述内容は一貫性があり、カルテ等の客観的証拠とも合致し、信用性に疑義はない。
(2) 本件遺言の内容等は遺言能力に疑義を生じせしめるものであること
ア 平成一六年一月六日付自筆遺言(甲二四・別紙一)は遺言書といえるものではない上、太郎の署名部分は一見して偽造であることが明らかである。B野が太郎を病室に訪問した際は必ず控訴人一郎が同席していたこと、他の相続人の遺留分を侵害するなどの本件遺言の内容に照らして、本件遺言は実質的に控訴人一郎の意思に基づいて作成されたものである。仮に、太郎が自発的に遺言書の作成を望んでいたとしても、本件遺言時に遺言能力を保持していたものではない。
イ B野との最終面会時に太郎に提示されその了解を得たとする本件案文(乙一)と本件遺言は、各相続人に分割するとされた約四〇〇〇万円の遺産が控訴人一郎が単独相続するとの内容に変わった上、かかる変更がなされた理由が説明されていない。
B野が述べた相続分割合(松夫一・五:竹夫七:被控訴人一:控訴人一郎五:控訴人二江一)と、本件遺言を実行したときの相続分割合は一致せず、相続人によっては一〇〇〇万円以上の差が生じるから、双方が符合するとは到底いえない。かかる事実は、そもそも太郎が銀行員に相続分割合を説明した事実が存在しないことを示すものである。
太郎は動産(古文書類、骨董品等)や墓の処理を従前から気にかけていたのに、本件遺言に全く触れられていなかったり、先祖伝来の大分県竹田の不動産の分割先と別にするなど不合理な措置が記載されているのは、本件遺言が太郎の意思に基づいて作成されたことに重大な疑義を生じさせる。控訴人らが主張する書画骨董の評価は、相続財産のごく一部を評価したものにすぎず、大分の生家には更に多くの骨董品があるが、未だ評価されていない。
第三当裁判所の判断
一 当裁判所も、本件公正証書作成当時、太郎が遺言能力を有していたと認められず、かつ、本件遺言は民法九六九条を適用する前提を欠き無効であると認める。その理由は、原判決「事実及び理由」第三・一ないし四に記載のとおりであるからこれを引用する。
ただし、一三頁一一行目「九九パーセント」を「九〇パーセント」に改め、一五行目末尾に「本件公正証書は、その文言を公証人が読み上げた上で太郎の署名を代書し、三菱信託のB野・C山が証人として立ち会って作成された。なお、控訴人一郎は上記同日に本件公正証書の作成手続がとられることを知っていたが、被控訴人、松夫、竹夫には知らせなかった。」を加える。
二 この点、控訴人らは本件遺言が有効である旨縷々主張するが、以下のとおりいずれも採用できない。
(1) 太郎の症状に照らした遺言能力の有無
ア 本件公正証書の作成に立ち会った三菱信託のB野及び公証人、並びにその際病院内にいた控訴人一郎は、太郎の応答、表情、病状に遺言能力に疑いを生じさせる事情がなかったため、作成状況につき具体的な記憶を残さなかったものであると主張する。しかし、前記一の引用に係る原判決認定によれば、太郎は老人性痴呆と診断されて入院し、その後も度重なる不穏行動があり、認知症薬の投与にかかわらず痴呆症状を増悪させ、酸素飽和度の低下等により体調も悪化させ、本件公正証書の作成当日も微熱があり、呼吸補助のために装着していた鼻カヌラにもかかわらず呼吸苦により酸素飽和度も九〇%未満に低下して、その一週間後には肺炎を悪化させて一時危篤状態に陥ったものである。したがって、鼻カヌラ装着等その病態の外見上も遺言能力に疑いを生じさせるものではなかったとは認め難く、かかる状況につき何ら具体的な記憶を残さなかったとは言い難いから、かかる主張は採用し難い。
また、太郎の遺言能力に疑問を抱かせる出来事がなかったので通常どおりの手続を済ませたものであり、公証人に作成状況につき具体的な記憶がないのは自然であって偽証したものではないと主張する。しかし、上記説示に加えて、前記一の引用に係る原判決認定のとおり、特に記憶に残った事実として本件公正証書に記載された地名につき客観的事実に明らかに反する読み方を説明されたとの証言をしたものであるから、その証言には少なくとも記憶違いがあるものであって、その証言は信用性が高いとはいえず、かかる証言をもって太郎の遺言能力を直ちに裏付けることはできないから、かかる主張は採用し難い。
さらに、遺言能力の判断に際し、遺言前後の状態、意思能力と関係の薄い病状や遺言後の症状悪化は直ちに遺言能力の欠如に結びつかず、太郎は、B野が五回にわたり昼に面会した時には何ら異常行動はなく、十分な意思疎通ができたと主張する。しかし、前記一の引用に係る原判決認定によれば、太郎は老人性痴呆と診断されて入院し、認知症に対する投薬治療を受け、その後も度重なる不穏行動があり、D川医師においても痴呆症状が増悪したと診断され、酸素飽和度の低下等により体調も悪化させるなどしたものであるから、かかる主張は採用し難い。
そして、D川医師は、太郎の意思疎通に特に問題はなかった旨証言しており、平成一六年二月のカルテの意思能力に関する記載も「意思疎通良好」、「元気そうにされている」とされ、本件遺言前後の症状は安定しているし、夜間せん妄は一過性・可逆的なものであり、上記同月以降はせん妄が見られず、E田病院A川医師の意見(乙八)に照らしても、太郎が痴呆症に罹患していたとの客観的な根拠はないと主張する。しかし、D川医師自身が太郎の入院に際して「老人性痴呆」との診断をし、転倒転落アセスメント・スコアシート上も認識力の低下が著しいなどとの判定をし、認知症薬や抗精神病薬を投与していたものであり、度重なる不穏行動やせん妄の内容・程度に鑑みても、その症状は可逆的な一過性のものとは認め難い。また、平成一八年三月七日付のE田病院放射線科専門医A川四郎医師の意見書(乙八)は、平成一五年一〇月二八日撮影の太郎の頭部MRIにつき、「太郎の脳にびまん性の萎縮が認められ、年令相応若しくはそれよりは少し進行していますが、アルツハイマー病に見られる典型的な海馬の萎縮は見られず、画像所見では積極的には診断できません」、「痴呆の診断は、画像診断では(中略)MRIは補助的な診断と考えられています。あえてこのMRI画像でアルツハイマー型と脳血管性痴呆のいずれかと言われると、臨床的に痴呆が認められていたと仮定すると、脳血管性痴呆のパターンと考えますが、断定できる程の強い変化ではないと考えます」等と記載するところ、かかる意見は、カルテ上のD川医師の所見によっても臨床的に痴呆症状の増悪が認められる太郎につき、本件遺言の約四か月前に撮影されたMRI画像に限った意見にすぎないものであるし、反対趣旨と評価できる甲六に照らしても直ちには採用し難い。したがって、かかる主張は採用し難い。
さらに、本件遺言前後、太郎の酸素飽和度が低く鼻カヌラを付けて酸素吸入をしていたことは意思能力に直接関係せず、本件遺言当日の酸素飽和度は九五%を維持しており、微熱はあるが症状はそれなりに安定しており、意識障害を窺わせる症状はなかったと主張する。しかし、前記のとおり、太郎は老人性痴呆と診断されて入院し、度重なる不穏行動があり、認知症薬の投与にかかわらず痴呆症状を増悪させ、本件公正証書の作成当日も微熱があり、呼吸補助のために鼻カヌラを装着していたにもかかわらず酸素飽和度が九〇%未満に低下していたものであり、また、前記一の引用に係る原判決認定のとおり、酸素飽和度の正常値は九五%以上であり、九〇%未満では、判断力の異常、精神不穏、錯乱、頭痛、めまい等の症状が生じるとされるものである。そして、前記一の引用に係る原判決認定のとおり、酸素吸入量を増やしても酸素飽和度は九四%までしか回復しなかったものであること、本件公正証書作成の一週間後に肺炎により一時危篤状態に陥ったこと等にも照らすと、作成当時、太郎は認知症の症状が増悪し、かつ体調が悪化していたため、遺言をするに足りる意思能力を有していなかったと推認するのが相当であって、かかる主張は採用し難い。
イ 本件遺言の無効を主張し、強い利害関係を有する被控訴人・竹夫の供述は信用できないと主張する。しかし、被控訴人はともかく、竹夫は本件遺言によれば最も多い相続分を有する者であるから、本件遺言をあえて無効とすべく虚偽の供述をするとは通常考え難いなど、太郎が会話に応ぜず反応が全くなかったとの同人の供述にかかる病状は、反対趣旨の控訴人一郎の供述よりも信用性が高いというべきであって、かかる主張は採用し難い。
(2) 本件遺言の作成経緯・内容に照らした遺言能力の有無
ア 本件遺言は、太郎が自発的に作成を望んだものであると主張する。しかし、太郎が三井信託に遺言信託をしたのは控訴人らの主張によっても平成一五年一一月ころであり、その後も平成一六年四月一三日に死亡するまで老人性痴呆との診断の下でE田病院に入院していたものであり、前記一の引用に係る原判決認定の入院後の認知症の症状増悪や体調の悪化状況に照らせば、太郎が遺言書の作成を自発的に望んだとしても、かかる事実から同年三月四日の本件公正証書作成当時に遺言能力を有していたことが直ちに推認されるものではないから、かかる主張は採用し難い。
イ 遺言内容が網羅的でないとか、付言事項等がおかしいからといって遺言能力がないことにならず、B野は遺言作成に必要な財産の内容を聞き、配分の理由と複雑な配分割合を太郎から指示されたものであり、遺言に些細な財産内容の記載不備や遺留分の誤解があっても遺言能力に欠けるものではないと主張する。しかし、前記一の引用に係る原判決認定のとおり本件案文(乙一)と本件遺言では各相続人に分配するとされていた合計約四〇〇〇万円相当の貴金属・現金が控訴人一郎の単独取得とされるとの少なからぬ変更があるのに、太郎による指示の内容、時期、理由等につきB野、控訴人一郎、公証人の的確な供述がないこと、B野が供述する太郎から説明されたとする遺言における相続分割合の説明と、本件遺言における相続分割合が完全に一致するものでなく、かかる変更についての太郎による指示の内容、時期、理由等につき同じく的確な供述がないこと、客観的な評価額はさておき太郎が大切にしていた先祖伝来の骨董品や墓の管理者の指定がないことは、太郎の遺言能力を判断するにあたり考慮すべき事由であるといえ、かかる事項に特段の配慮がなされていないことは本件公正証書の作成当時、太郎が遺言能力を有していなかったことを裏付けるものである。また、本件遺言の内容は、数十筆に及ぶ不動産の配分を決し、多数の預貯金債権等の財産につき相続人毎に異なった比率での配分を決するものであるから、その内容は単純であるとはいえず、上記作成当時に太郎がこれを容易に理解できたとも言い難い。したがって、かかる主張は採用し難い。
三 その他、原審及び当審における当事者提出の各準備書面記載の主張に照らし、原審及び当審で提出、援用された全証拠を改めて精査しても、以上の認定、判断を覆すほどのものはない。
以上によれば、被控訴人の請求は理由があるから、これと同旨の原判決は相当であり、本件控訴はいずれも棄却を免れない。
よって、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 若林諒 裁判官 小野洋一 菊地浩明)