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大阪高等裁判所 平成18年(行コ)21号 判決 2007年1月24日

主文

1  本件控訴をいずれも棄却する。

2  控訴費用は,控訴人らの負担とする。

事実及び理由

第1当事者の求めた裁判

1  控訴人ら

(1) 原判決を取り消す。

(2) 堺市長は,株式会社Aが廃棄物の処理及び清掃に関する法律14条6項に基づいて平成17年2月28日に堺市長に対してした産業廃棄物処分業許可申請に対し,許可をしてはならない。

(3) 訴訟費用は,第1,2審とも,被控訴人の負担とする。

2  被控訴人

主文と同旨

第2事案の概要

1  事案の要旨

(1) 本件は,株式会社A(以下「A」という。)が,平成17年2月28日に大阪府堺市α××××番及び同××××番(地名は当時。現在は堺市○○。両土地を併せて,以下「本件土地」という。)に「B」(以下「本件リサイクルセンター」という。)を設置して建設廃材の中間処理業を営むこととして,廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下「廃棄物処理法」という。)14条6項に基づいて,堺市長に対して行った産業廃棄物の処分業の許可申請(以下「本件申請」という。)について,控訴人らが,堺市を被控訴人として,本件土地に本件リサイクルセンターを設置することは廃棄物処理法及び都市計画法に違反するなどと主張して,行政事件訴訟法37条の4第1項に基づき,本件申請に対する許可処分(以下「本件許可処分」という。)の差止めを求めた事案である。

これに対して,被控訴人は,控訴人らには本件訴えをすることができる原告適格がないから,控訴人らの本件訴えは不適法であり,また,控訴人らに行政事件訴訟法37条の4第1項にいう一定の処分又は裁決がされることによって重大な損害を生ずるおそれがある場合に当たるとは認められないから,控訴人らの本件訴えは不適法である等と主張して,争った。

(2) 原審は,控訴人株式会社Cには本件差止めの訴えを提起することができる原告適格があることは認められないとして,その余の控訴人らについては行政事件訴訟法37条の4第1項所定の上記要件を満たしていることが認められないとして,控訴人らの本件訴えをいずれも却下する判決をした。

(3) これに対し,控訴人らは,本件請求を認容することを求めて,本件控訴を提起した。

2  法令の定め等,前提事実等並びに争点及び当事者の主張

次のとおり補正するほかは,原判決の「事実及び理由」中の「第2 事案の概要」のうち「1 法令の定め等」,「2 争いのない事実及び証拠により容易に認定できる事実等」及び「2 争点及び当事者の主張」と同じであるから,これを引用する。

(1) 9頁12行目の「証拠」の次に「等」を,末行の括弧内の末尾に続けて「及び弁論の全趣旨」をそれぞれ加える。

(2) 10頁3行目の括弧内の冒頭に「甲4,」を,13行目及び16行目の各括弧内の末尾に続けて「及び弁論の全趣旨」をそれぞれ加える。

(3) 11頁12行目の「甲2,」の次に「甲3」を加える。

(4) 13頁23行目の「2」を「3」に改める。

第3当裁判所の判断

1  当裁判所も,控訴人会社には本件訴えを提起することができる原告適格があることは認められないから,また,その余の控訴人らについては行政事件訴訟法37条の4第1項所定の前記要件があることは認められないから,控訴人らの本件訴えは,いずれも不適法なものとして却下すべきであると判断する。その理由は,次の(1)のとおり補正し,(2)のとおり補足するほかは,原判決の「事実及び理由」中の「第3 当裁判所の判断」と同じであるから,これを引用する。

(1) 原判決の補正

ア 42頁19行目から20行目にかけての,44頁18行目及び末行の各「行政事件訴訟法37条1項」をいずれも「行政事件訴訟法37条の4第1項」に改める。

イ 42頁23行目から44頁4行目までの括弧及び括弧内の記載を削除する。

(2) 原判決の補足

控訴人らの控訴理由にかんがみ,次のとおり補足する。

ア 控訴人らは,Aは,上記1冒頭の原判決の引用部分で認定したとおり,市街化調整区域内にある旧倉庫を,用途を倉庫として都市計画法43条1項所定の許可を受けて本件建物に改築したが,Aが本件建物を使用して建築廃材の中間処理業を営むことは,本件建物の用途が許可を受けた倉庫から工場に変更されることとなるので,同項所定の許可を得なければならないところ,都市計画法は廃棄物処理法に優先するから,堺市長は本件許可処分をすることは許されないことは明らかであって,このことからすると,控訴人ら5名には,行政事件訴訟法37条の4第1項に基づく本件許可処分の差止めを求める本件訴えを提起することが認められるべきであると主張する。

しかしながら,廃棄物処理法14条6項に基づく許可申請の可否を判断するに当たって,処分者が都市計画法の諸規定を審査する権限があることを規定した法令はないから,処分者がこれを審査することは許されないといわなければならない。また,都市計画法43条1項所定の上記許可の審査は,市街化を抑制する市街化調整区域(同法7条)内で,この目的に反する建築物が建築されることを防止するためにされるものであるから,本件建物が仮に同法43条1項に違反すると仮定しても,それだけで,控訴人ら5名につき,行政事件訴訟法37条の4第1項にいう一定の処分又は裁決がされることにより重大な損害を生ずるおそれがあると認めることはできない。

以上の次第で,控訴人らの上記主張は,採用することができない。

イ 控訴人らは,行政事件訴訟法37条の4第1項にいう一定の処分又は裁決がされることにより重大な損害を生ずるおそれがある場合に該当するとして,種々の主張をするが,これらが採用できないことは,上記1冒頭の原判決の引用部分の説示のとおりである。

2  以上によれば,控訴人らの本件訴えを却下した原判決は相当で,控訴人らの本件控訴はいずれも理由がないから,これを棄却することとする。

(裁判長裁判官 中路義彦 裁判官 礒尾正 裁判官 金子修)

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