大阪高等裁判所 平成18年(行コ)78号 判決 2007年12月26日
主文
1 本件控訴に基づいて,原判決主文1,2項を次のとおり変更する。
(1) 被控訴人は,P1議員団に対し495万9214円,P2議員団に対し61万1682円,P3議員団に対し63万6972円,元寝屋川市議会議員P4に対し26万1450円及びこれら各金員に対するいずれも平成14年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を請求せよ。
(2) 控訴人のその余の請求を棄却する。
2 本件附帯控訴を棄却する。
3 訴訟費用のうち附帯控訴費用は被控訴人の負担とし,その余の訴訟費用は,第1,2審を通じてこれを10分し,その3を控訴人の,その余を被控訴人の各負担とする。
事実及び理由
第1当事者の求めた裁判
1 控訴人
(1) 原判決を次のとおり変更する。
(2) 被控訴人は,P1議員団に対し650万円,P2議員団に対し96万円,P3議員団に対し101万6680円,元寝屋川市議会議員P4に対し94万6200円及び上記各金員に対する平成13年11月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を請求せよ。
(3) 本件附帯控訴を棄却する。
(4) 訴訟費用は,第1,2審とも,被控訴人の負担とする。
2 被控訴人
(1) 本件控訴を棄却する。
(2) 原判決中,被控訴人敗訴部分を取り消す。
(3) 控訴人の請求を棄却する。
(4) 訴訟費用は,第1,2審とも,控訴人の負担とする。
第2事案の概要
1 事案の要旨
寝屋川市は,平成13年度において,寝屋川市議会(以下「市議会」という。の議員により結成された会派であるP1議員団に対し1248万円,P2議員団に対し768万円,P3議員団に対し480万円,会派に属さない議員であるP4(以下「P4議員」といい,P4議員と上記3会派とを合わせて「相手方ら」という。)に対し96万円の政務調査費を交付した。政務調査費の交付を受けたP1議員団,P2議員団及びP3議員団は,当該会派に属する各議員に対し,当該政務調査費を交付した。
本件は,大阪府寝屋川市の住民である控訴人が,P1議員団が会派に属する議員に対して交付した政務調査費のうち事務所費として交付した650万円,P2議員団が会派に属する議員に対して交付した政務調査費のうち事務所費として交付した227万7406円のうちの96万円,P3議員団が会派に属する議員に対して交付した政務調査費の研究研修費40万2722円のうち12万5010円と事務所費146万3165円のうち89万1670円の合計101万6680円及びP4議員に交付された政務調査費96万円のうち94万6200円は政務調査費の交付目的以外の使途に違法に使われているので,寝屋川市の長である被控訴人は,政務調査費を交付した相手方らに対し,上記目的外の使途に違法に使われた政務調査費相当額について損害賠償の請求に及ぶべきところ,これを行わず,違法に寝屋川市の財産の管理を怠っていると主張して,被控訴人に対し,地方自治法242条の2第1項4号に基づき,不法行為に基づく損害賠償として,P1議員団に対し650万円,P2議員団に対し96万円,P3議員団に対し101万6680円及びP4議員に対し94万6200円並びに上記各金員に対するそれぞれ平成13年11月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を請求することを求めた住民訴訟である。
原審は,被控訴人に対し,P1議員団に対し326万9048円及びこれに対する平成14年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を請求することを命ずる限度で控訴人の請求を認容し,その余の請求を棄却したところ,控訴人は,上記第1の1の(1)(2)(4)記載の裁判を求めて控訴を提起し,被控訴人は,上記第1の2の(2)(3)(4)記載の裁判を求めて附帯控訴を提起した。
2 法令の規定,争いのない事実等,争点及び争点についての当事者の主張
次の(1)のとおり補正し,(2)のとおり当審における当事者の主張を加えるほかは,原判決の「事実及び理由」の「第2 事案の概要」の「1 法令の規定」「2 争いのない事実等」及び「3 争点」のとおりであるからこれを引用する。
(1) 原判決の補正
ア 6頁14行目の「(4)」を「(3)」に改める。
イ 33頁4行目から5行目までを「P1議員団は,政務調査費のうちから備品費として183万0516円を計上し,これを会派控え室用のパソコン及びP5議員ほか6名の会派所属議員のパソコンの各購入費に充てたが,P6議員は上記備品費をもってパソコンの購入費に充てられた議員に含まれていない。」に改める。
ウ 39頁13行目から14行目までを「P1議員団は,政務調査費のうちから備品費として183万0516円を計上し,これを会派控え室用のパソコン及びP5議員ほか6名の会派所属議員のパソコンの各購入費に充てたが,P7議員は上記備品費をもってパソコンの購入費に充てられた議員に含まれていない。」に改める。
エ 39頁16行目から19行目までを以下のとおり改める。
「 P8議員は,その自宅を事務所として使用していたことから,平成13年度中の自宅の電気及びガス料金28万5282円の支払等に50万円の事務所費を充てた。」
(2) 当審における当事者の主張
ア 被控訴人
(ア) 平成13年度において,P3議員団は,P9,P10,P11,P12及びP13の5名の議員により構成されていた。
平成15年にP3議員団は解散し,同議員団に属していたP10,P11及びP12の各議員は,同年に結成されたP14議員団に所属することとなった。
P14議員団は,平成17年,P15議員団とP16議員団に分裂し,P11及びP12の各議員はP15議員団に属し,P10議員はP16議員団に属した。
平成19年,P16議員団に属していたP10議員がP15議員団に属することとなった。
(イ) P3議員団に属していた議員は5人中2人に過ぎず,P3議員団を承継する議員団(会派)も存在しない。これらの意味から,会派としてのP3議員団の存在はないといわなければならず,政務調査費の返還を求めるべき議員団が法律上存在しないのであるから,これに対する損害賠償請求はあり得ない。
イ 控訴人
P3議員団を含む寝屋川市議会において結成された会派は,民訴法29条にいう法人でない社団に当たるから,訴訟における当事者能力を有する。
本件訴訟は,被控訴人に対し,地方自治法242条の2第1項4号に基づき,不法行為に基づく損害賠償として,各会派等に対する金員の請求を求めたものであり,政務調査費の支出当時会派が存在し,その会派に不法行為が成立する以上,たとえ,その後,会派が消滅したとしても,なお,その限りで存在するものとして,被控訴人は,同会派に対し,損害賠償請求をすることができるというべきである。
第3当裁判所の判断
1 本件訴えの内容等,政務調査費の支出が違法となる場合
本件訴えの内容等並びに政務調査費の支出が地方自治法及び本件条例に違反し違法となる場合についての当裁判所の判断は,48頁14行目の「本件訴えの適法性等」を「本件訴えの内容等」に,50頁9行目の「相手方としての適格を有するもの」を「相手方とすることができる」にそれぞれ改め,50頁12行目の「主張するが,」の次に「後記のとおり,」を加え,54頁4行目から5行目にかけた「たとい」から6行目の「あったとしても」まで及び同頁7行目から12行目までをそれぞれ削るほかは,原判決の「事実及び理由」の「第3 争点に対する判断」の「1 本件訴えの適法性等」及び「2 政務調査費の支出が地方自治法及び本件条例に違反し違法となる場合」と同じであるからこれを引用する。
2 相手方らによる個々の政務調査費の支出の適否
(1) P1議員団
P1議員団の政務調査費の支出の適否についての当裁判所の判断は,以下のとおり補正するほかは,原判決の「事実及び理由」の「第3 争点に対する判断」の「3 相手方らによる個々の政務調査費の支出の適否」の「(1)P1議員団の政務調査費の支出の適否」と同じであるからこれを引用する。
ア 59頁17行目の「(乙17)」の次に「,P17議員事務所現況写真(乙71),陳述書(乙72)」を加え,18行目の「本件においては」から21行目の「措くとしても」までを「上記陳述書(乙72)によれば,P17議員は,平成13年度において,P18の営業用店舗の2階部分約43平方メートルを議員活動用の事務室として使用していたことが認められるが」に改める。
イ 60頁18行目を改行して以下のとおり加え,19行目の「c」を「d」に改める。
「c 上記に対し,被控訴人は,当審において,P17議員が,平成13年当時,P18の営業用店舗の2階部分約43平方メートルを事務所として賃借し,事務所家賃として年額54万円を支払ったのは事実であり,また上記家賃額は事務所賃料として高額なものではないなどと主張して,証拠(乙71ないし74)を提出する。
しかし,被控訴人の主張によれば,P18の営業用店舗はP17議員自身が所有する物件であり,同議員はこれを使用貸借契約によりP18に貸していたというのであるから,仮に同議員がP18に年間54万円の事務所家賃を支払ったとするなら,同議員は,無償でP18に貸した物件の一部を,P18に賃料を支払って借り受けたこととなるが,これを合理的な支出といい得るか極めて疑問である。被控訴人は,P17議員から営業用店舗を無償で借り受けていたP18が,当該店舗の維持管理経費を全額負担していたとも指摘するが,その維持管理経費なるものの実態及びその具体的数額が不明であることからすると,その指摘に係る事実が存在するとしても,P17議員の上記年間54万円の支出を合理的な支出といい得るかは疑問である。
以上によれば,被控訴人の当審における主張を考慮しても,P17議員の上記年間54万円の支出を,市政に関する調査研究に資するため必要な経費と認めることはできない。」
ウ 60頁25行目の「そうであるとすれば」から61頁1行目までを「よって,P17議員が,P1議員団から事務所費として支給された金員(50万円)を,P18の営業用店舗の維持管理費の一部に充てたことは違法というべきである。」に改める。
エ 61頁8行目から9行目にかけた「乙18の1ないし3」の次に「(家賃通い,賃貸借契約書,領収書),64(P5議員事務所現況写真),65(陳述書)」を,10行目の「乙18の1ないし3」の次に「,64,65」を,12行目の「一部」の次に「約15平方メートル」をそれぞれ加え,21行目の「議員としての調査研究活動」を「一般の議員活動」に,22行目の「調査研究活動」を「議員としての活動」に,62頁6行目から7行目にかけたもの及び13行目の各「議員としての調査研究活動」を「一般の議員活動」にそれぞれ改める。
オ 63頁9行目から10行目にかけた「議員としての調査研究活動」を「一般の議員活動」に改め,11行目の「いうべきである」の次に「(なお,乙64(P5議員事務所現況写真)中の番号5の写真には,P5議員の事務所内の事務机が写っている。この部屋は,P5議員が事務所として借り受けている約15平方メートルの部屋とは別の部屋であると窺われるが,同事務机の設置の態様から見ると,これは同議員の議員活動に使用されていると推認できる。)」を加える。
カ 63頁12行目から16行目までを,以下のとおり改める。
「e もっとも,政務調査費は市政に関する調査研究に資するため必要な経費以外のものに充ててはならないとされ(本件条例),このうちの事務所費は,会派等が行う調査研究活動のために必要な事務所の設置及び管理に要する経費とされている(本件使途基準)ことからすると,特定の政務調査を行うために賃借された事務所については,その事務所賃料の全額を政務調査費(事務所費)をもって充てることも差し支えないと解されるのに対し,一般的な議員個人の事務所は,当該議員の会派等に係る政務調査活動のほか,選挙活動,後援会活動その他政務調査活動に属さない一般の議員としての活動の拠点としても使用されることが明白というべきであるから,このような事務所については,その賃料の全額を政務調査費をもって充てることは許されないと解すべきである。このような事務所にあっては,当該事務所が市政に関する調査研究活動に供される割合によって,政務調査費をもって充てることが許される事務所賃料の割合とするのが相当である。しかし,その区分が必ずしも容易でないこと,普通地方公共団体の議会の議員の地位,権限及び職務内容等にかんがみると,当該事務所が市政に関する調査研究活動に供される割合は3分の1を下らないと認めるのが相当であり,したがって,一般的な議員個人の事務所においては,事務所賃料の3分の1については政務調査費をもって充てることが許されると解するのが相当である。
証拠(乙64,65)及び弁論の全趣旨によれば,P5議員が親族であるP19から賃借した上記事務所は,特定の政務調査を行うために賃借された事務所であるとまでは認められず,同議員の一般的な個人事務所と認めるほかないから,上記のところからすると,政務調査費をもって充てることが許されるのは,48万円の事務所賃料の3分の1である16万円に限られるというべきであり,その余の部分を政務調査費をもって充てることは違法というべきである。
また,P5議員が議員としての活動のために必要な事務用品として購入した事務机についても,上記と同様の趣旨から,政務調査費をもって充てることが許されるのは,事務机代金9万2760円の3分の1である3万0920円の部分に限られると解すべきであり,その余の部分を政務調査費をもって充てるのは違法というべきである。
f 以上によれば,P5議員が,P1議員団から事務所費として支給された金員(50万円)を,事務所賃料のうち16万円と事務机代金のうち3万0920円の合計19万0920円の経費に充てたことは政務調査費の使途基準に反するものでないから違法ではないが,その余の30万9080円の使途は違法であるというべきである。」
キ 63頁24行目の「乙19の1ないし3」の次に「(預金通帳,領収証),76(P6議員事務所現況写真),77(陳述書),106(口座振替金額のお知らせ),107(駐車場賃貸借契約書)」を加える。
ク 63頁末行から66頁5行目までを,以下のとおり改める。
「b 前掲証拠,証人P6及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
(一) P6議員は,昭和46年に寝屋川市会議員に当選し,以後,昭和58年から8年の期間を除いて,寝屋川市会議員の地位にある。同議員は,平成13年当時,妻と三女とともに建坪18.5坪の自宅に居住していたが,当該自宅の約10平方メートルの応接室を一般の議員活動のための事務所として使用していた。
(二) P6議員は自動車を所有しており,少なくとも20年以上も前から,自宅近くの駐車場の1区画を賃借していた。その賃料は,平成13年当時,月額1万5000円である。駐車場主は,市民相談等でP6議員の自宅事務所を訪れた者が同駐車場の空いた区画に無料で自動車を停めることを好意により容認していた。
(三) 平成13年4月5日から平成14年3月29日までの,P6議員宅の光熱水道費,電話料金(P6議員個人の携帯電話料金を含む。以下,この項において「電話料金」という。)の合計は50万9217円である。
(四) P6議員は,平成13年中に,株式会社P20からパソコンをプリンタとともに購入し,同年5月10日,代金18万5000円を支払った。
(五) P6議員は,自宅での光熱水道費及び電話料金の年額の2分の1である25万4608円,駐車場の賃料の年額の2分の1である9万円,並びにパソコンの購入費18万5000円の合計52万9608円のうち50万円を,P1議員団から事務所費として支給を受けた金員(50万円)をもって充てた。
c 上記のとおり,P6議員がその自宅の一部を一般の議員活動のための事務所としていたことからすると,P6議員の自宅の光熱水道費,電話料金のうちには,P6議員を含む家族の私用に供されたもののほか,P6議員の一般の議員活動の事務所のために供されたものがあり,かつ,P6議員の一般の議員活動のうちには,市政に関する調査研究活動が含まれると認めることができる。
もっとも,上記それぞれの具体的な割合はこれを算定することが極めて困難であるが,普通地方公共団体の議会の議員の地位,権限及び職務内容等にもかんがみると,少なくともP6議員の自宅の光熱水道費,電話料金の3分の1は,自宅を議員事務所として使用することに伴う負担と認めるのが相当であり,自宅を議員事務所として使用することに伴う光熱水道費,電話料金の負担の3分の1は,自宅を市政に関する調査研究活動のための事務所に供したことにより生ずる負担と認めるのが相当である。そうすると,P6議員の自宅の光熱水道費,電話料金のうち全体の9分の1は,市政に関する調査研究活動のための事務所の維持管理費もしくは備品に関する経費として,その支払に事務所費をもって充てることが許されると解するのが相当である。平成13年度におけるP6議員の自宅の光熱水道費,電話料金は50万9217円であるから,このうち事務所費をもって支払に充てることが許されるのは,上記の9分の1である5万6579円と認められる。
d 駐車場代金について,前記認定によれば,P6議員は,議員でなかった8年間を含めて継続的に自己所有の自動車のため駐車場を借り受けていたと認められるから,その自動車を議員活動のため使用することがあったとしても,そのために,駐車場料金の負担が増加した事実はないと認められる。一方,P6議員の自宅事務所を訪れる者が前記駐車場を使用しても,駐車場主の好意により,来訪者は無料で同駐車場に自動車を駐車させることが可能であったが,P6議員はこのために具体的な負担をしていないと認められる。これらの事実によれば,P6議員が負担した前記平成13年度の駐車場料金は,その一部についても,市政に関する調査研究活動の費用と認めることはできないから,その支払に政務調査費を充てることは違法というべきである。
e 証拠(甲6,乙75)によれば,P1議員団は,政務調査費のうちから備品費として183万0516円を計上し,これを会派控え室用のパソコン及びP5議員ほか6名の会派所属議員のパソコンの各購入費に充てたこと,P6議員は上記備品費をもってパソコンの購入費に充てたことはないことが認められる。
一方,証拠(証人P6)によれば,P6議員が購入した上記パソコンを現実に使用しているのは同議員の妻と三女であり,同議員自身がこれを使うことはないと認められる。
P1議員団が,どのような理由から一部の議員のパソコンの購入費に備品費を充て,一部の議員のパソコンの購入費に備品費を充てなかったのかは明らかでないが,少なくとも,P6議員の政務調査活動にパソコンの購入が必要であったにもかかわらず,その購入費に備品費を充てることができなかった事情があることは窺えない。このことに,P6議員が購入したパソコンの使用実態を併せ考慮すると,P6議員が購入したパソコンが,同議員の市政に関する調査研究活動に供されているとまでは認めることができないというべきである。よって,政務調査費を上記パソコンの購入に充てることは違法というべきである。
f 以上によれば,P6議員が,P1議員団から事務所費として支給された金員(50万円)を,自宅の光熱水道費,電話料金のうち5万6579円に充てたことは政務調査費の使途基準に反するものでないから違法ではないが,その余の44万3421円の使途は違法というべきである。」
ケ 66頁8行目の「一部」の次に「約75平方メートル」を,17行目の「乙20の1・2」の次に「(領収証,預金通帳),78(P21議員事務所現況写真),79(陳述書)」をそれぞれ加え,22行目の「議員としての調査研究活動」を「一般の議員活動」に改める。
コ 67頁9行目の「上記事務所に」から12行目の「認めることができる」までを「上記事務所は一般の議員活動のための事務所であって,特定の政務調査を行うために賃借された事務所とまでは認められないから,当該事務所において使用された固定電話の電話料金は,P21議員の市政に関する調査研究活動に供された料金ばかりではなく,選挙活動,後援会活動その他政務調査活動に属さない一般の議員としての活動に供された料金をも含むと推認することができる。そうすると,上記電話料金の全額を政務調査費から充てることが許されるものではない。このような電話料金は,当該電話が市政に関する調査研究活動に供された割合によって,政務調査費をもって充てることが許される電話料金の割合とするのが相当であるが,その区分が必ずしも容易でないこと,普通地方公共団体の議会の議員の地位,権限及び職務内容等にかんがみると,当該電話が市政に関する調査研究活動に供された割合は3分の1を下らないと認めるが相当であり,したがって,上記電話料金の3分の1について,政務調査費を充てることが許されると解するのが相当である」に改める。
サ 67頁13行目の「しかしながら,」の次に「被控訴人の主張によれば,P22の営業用店舗はP21議員自身が所有する物件であり,同議員はこれを使用貸借契約によりP22に貸していたというのであるから,仮に同議員がP22に年間48万円の事務所家賃を支払ったとするなら,同議員は,無償でP22に貸した物件の一部を,P22に賃料を支払って借り受けたこととなるが,これを合理的な支出といい得るか極めて疑問である。被控訴人は,P21議員から営業用店舗を無償で借り受けていたP22が,当該店舗の維持管理経費を全額負担していたとも指摘するが,その維持管理経費なるものの実態及びその具体的数額が不明であることからすると,その指摘に係る事実が存在するとしても,P21議員の上記年間48万円の支出を合理的な支出といい得るかは疑問である。」を加える。
シ 68頁17行目の「6万0677円」の次に「の3分の1に当たる2万0225円」を,「議員の」の次に「市政に関する」をそれぞれ加え,18行目の「43万9323円」を「47万9775円」に改め,19行目の「これを」及び21行目の「議員の」の次にいずれも「市政に関する」をそれぞれ加え,24行目の「そうであるとすれば」から末行目までを「以上によれば,P21議員が,P1議員団から事務所費として支給された金員(50万円)を,電話料金のうち2万0225円に充てたことは政務調査費の使途基準に反するものでないから違法ではないが,その余の47万9775円の使途は違法というべきである。」に改める。
ス 69頁3行目の「一部」の次に「約50平方メートル」を,11行目から12行目にかけた「(乙21)」の次に「,P23議員事務所現況写真(乙80),陳述書(乙81)」をそれぞれ加える。
セ 69頁16行目の「されていないが,」の次に「被控訴人の主張によれば,P24の営業用店舗はP23議員自身が所有する物件であり,同議員はこれを使用貸借契約によりP24に貸していたというのであるから,仮に同議員がP24に年間60万円の事務所家賃を支払ったとするなら,同議員は,無償でP24に貸した物件の一部を,P24に賃料を支払って借り受けたこととなるところ,これを合理的な支出といい得るか極めて疑問である。被控訴人は,P23議員から営業用店舗を無償で借り受けていたP24が,当該店舗の維持管理経費を全額負担していたとも指摘するが,その維持管理経費なるものの実態及びその具体的数額が不明であることからすると,その指摘に係る事実が存在するとしても,P23議員の上記年間60万円の支出を合理的な支出といい得るかは疑問である。」を加える。
ソ 70頁16行目の「一部を」及び18行目の「議員の」の次にいずれも「市政に関する」をそれぞれ加え,21行目の「そうであるとすれば」から23行目までを「よって,P23議員の,P1議員団から事務所費として支給された金員(50万円)の使途は,違法というべきである。」に改める。
タ 71頁3行目の「(乙22)」の次に「,P25議員事務所現況写真(乙82),P26の陳述書(乙83),P25の陳述書(乙84)」を加え,5行目の「父」を「弟」に改め,6行目の「建物」の次に「の一部約50平方メートル」を加え,8行目(2箇所)及び18行目の各「親子」を「兄弟」にそれぞれ改める。
チ 72頁2行目の「いうべきであり」の次に「(なお,乙83には,P25議員が開設する議員活動用の事務所は,寝屋川市α×番16号の家屋内の約50平方メートルであると記載されているのに対し,乙84には,P25議員が約65坪の土地と約30坪の建物を弟から賃借している旨の記載があり,これらによれば,仮に,P25議員が弟から土地建物を賃借しているとしても,賃借物件は議員活動用の事務所に限られるものではないと認められる。また,乙84には,P25議員が借りている不動産は,家の周囲の雑草とりや植木の剪定費用をP25議員が立て替えているので,年度の最終日に賃料を支払ったとの趣旨の記載があるが,同記載からすると,同議員のいわゆる54万円の賃料の一部については差し引き計算が行われており,その全額が弟に支払われているものではないとの疑いも生ずる。)」を,6行目の「一部を」及び8行目の「議員の」の次にいずれも「市政に関する」をそれぞれ加え,11行目の「そうであるとすれば」から13行目までを「よって,P25議員の,P1議員団から事務所費として支給された金員(50万円)の使途は違法と認められる。」に改める。
ツ 72頁24行目の「乙23の1ないし3」の次に「(建物賃貸借契約書,利用明細書,領収証),63(住宅地図),75(抗弁書),85(P27議員事務所現況写真),86(陳述書)」を加える。
テ 73頁7行目の「上記建物」の次に「の1階部分約30平方メートル」を,15行目の「所属する」の次に「P5議員ほか6名の」を,同行の「交付した」の次に「がP27議員に対してはこの交付をしなかった」をそれぞれ加え,17行目から18行目にかけた「議員としての調査研究活動」を「一般の議員活動」に改め,18行目の「賃借し」の次に「,その1階部分約30平方メートルを」を加え,25行目の「調査研究」を「市政に関する調査研究活動」に,同行の「被告の」から末行の「60パーセント」までを「,当該事務所が一般の議員活動に供される割合を2分の1とし,市政に関する調査研究活動が一般の議員活動の中に占める割合を3分の1と見て,全体の6分の1」にそれぞれ改める。
ト 74頁2行目から9行目の「そうであるとすれば,」までを「被控訴人は,P27議員が事務所費をパソコンの購入費の一部に充てたと主張し,同議員がパソコンを購入したと認められることは上記のとおりであるが,他方,P1議員団が政務調査費のうち備品費を会派控え室用のパソコン及びP5議員ほか6名の会派所属議員のパソコンの各購入費に充てたことも先に認定したとおりであり,仮にP27議員の政務調査活動にパソコンの購入が必要であったとすれば,その購入費に備品費を充てることができなかった事情があることは窺えない。このことに,P27議員が購入したパソコンの使用実態が不明であることを併せ考慮すると,P27議員が購入したパソコンが,同議員の市政に関する調査研究活動に供されているとまでは認めることができない。よって,」に,13行目の「46万8000円」を「13万円」に,14行目の「60パーセント」を「6分の1」に,16行目の「3万2000円」を「37万円」にそれぞれ改め,14行目の「議員の」の次,17行目から18行目にかけた「議員としての」の次及び19行目の「議員の」の次にいずれも「市政に関する」をそれぞれ加え,22行目の「そうであるとすれば」から24行目までを「以上によれば,P27議員のP1議員団から事務所費として支給された金員(50万円)の支出のうち,13万円の支出は違法ではないが,37万円の支出は違法というべきである。」に改める。
ナ 75頁5行目の「乙24号証の1ないし7」の次に「(入金証明書,領収証等),87ないし92(陳述書等)」を,6行目の「乙24の1ないし7,」の次に「87ないし92」をそれぞれ加え,7行目の「自宅の一部」を「自宅とは別に寝屋川市β×-6に,1階部分がテナント,2,3階部分が居宅となっている10戸続き連棟形マンションを所有し,1階の約25平方メートルの部分」に,7行目から8行目にかけた「議員としての調査研究活動」を「一般の議員活動」にそれぞれ改め,8行目の「していたこと,」の次に「上記事務所部分には独自に電気,ガス,水道が引き込まれており,電話回線も専用のものが引かれていたこと,」を加え,末行の「自宅」を「事務所」に改める。
ニ 76頁5行目から78頁13行目までを以下のとおり改める。
「c 前掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,上記支払金のうち,株式会社P28に対するコピー機のリース料(合計16万0020円),株式会社P29に対する文具等の購入代金(合計5万8168円),株式会社P30に対する支払代金(合計1万1800円),株式会社P31に対する清掃用具等代(合計1万1402円),事務所用固定電話料金(合計18万1472円)の各支払は,いずれも上記P32議員の事務所の備品に関する出費と認められ,これらは同議員の一般の議員活動に付随して生じたものと認められる。有限会社P33に対する支払は,バッテリー代3200円と照明器具及び配線工事増設改修工事一式9万5000円の合計9万8200円は,証拠(乙24の4の1枚目,24の7)及び弁論の全趣旨によれば,P32議員の事務所の備品ないし事務所の改装にかかる費用と認められるが,乙24の4の2枚目にかかる6000円の支払は,その支払の内訳も支払者も同証から明らかではなく,また他にこれを認めるべき証拠もないので,P32議員の事務所の備品その他改装費等の経費であると認めることはできない。
d 以上によれば,被控訴人がP32議員に関する事務所費として主張するものうち,52万1062円はP32議員の事務所の備品その他改装費等の経費と認められる。
ところで,前掲証拠及び弁論の全趣旨によれば,P32議員の上記事務所は,特定の政務調査を行うための事務所とまでは認められず,P32議員がその属する会派に係る政務調査活動のほか,選挙活動,後援会活動その他政務調査活動に属さない一般の議員としての活動の拠点としても使用する事務所であると認めるほかない。政務調査費は市政に関する調査研究に資するため必要な経費以外のものに充ててはならないとされていることからすると,このような事務所の備品費,改装費等の経費の全額を政務調査費をもって充てることは許されないと解すべきである。このような事務所にあっては,当該事務所が市政に関する調査研究活動に供される割合によって,政務調査費をもって充てることが許される備品費,改装費等の割合とするのが相当であるが,その区分が必ずしも容易でないこと,普通地方公共団体の議会の議員の地位,権限及び職務内容等にかんがみると,当該事務所が市政に関する調査研究活動に供される割合は3分の1を下らないと見るのが相当であり,したがって,備品費,改装費等の3分の1については政務調査費をもって充てることが許されると解するのが相当である。
そうすると,事務所費を充てることが許されるP32議員の事務所の備品その他改装費等の経費は,上記52万1062円の3分の1に当たる17万3687円と認めるべきこととなる。」
ヌ 78頁14行目の「d」を「e」に,15行目の「株式会社」から21行目から22行目にかけた「33万5326円」までを「17万3687円」に,23行目の「16万4674円」を「32万6313円」にそれぞれ改め,22行目の「議員の」の次,24行目の「議員としての」の次及び25行目から末行にかけた「議員の」の次に「市政に関する」をそれぞれ加え,79頁2行目から3行目にかけた「そうであるとすれば」から5行目までを「以上によれば,P32議員のP1議員団から事務所費として支給された金員(50万円)の支出のうち,17万3687円の支出は違法ではないが,32万6313円の支出は違法というべきである。」に改める。
ネ 79頁13行目の「乙25号証の1ないし4」の次に「(送金記録,領収証等),69(P34議員事務所現況写真),70の1・2(陳述書等)」を加え,15行目から16行目にかけた「議員としての調査研究活動」を「一般の議員活動」に改める。
ノ 80頁3行目の「議員としての調査研究活動」及び8行目の「議員の調査研究」をいずれも「一般の議員活動」に,22行目の「事務所として」を「事務所としても」に,末行の「経費である」を「経費が含まれる」にそれぞれ改める。
ハ 81頁2行目から6行目までを以下のとおり改める。
「 もっとも,前掲証拠及び弁論の全趣旨によれば,P34議員の上記事務所は,特定の政務調査を行うための事務所とまでは認められず,P34議員がその属する会派に係る政務調査活動のほか,選挙活動,後援会活動その他政務調査活動に属さない一般の議員としての活動の拠点としても使用する事務所であると認めるほかない。政務調査費は市政に関する調査研究に資するため必要な経費以外のものに充ててはならないとされていることからすると,このような事務所の家賃,電気,水道及び電話料金の経費の全額を政務調査費をもって充てることは許されないと解すべきである。上記経費のうち,政務調査費をもって充てることが許される部分は,全体の3分の1と解するのが相当である。
そうすると,事務所費を充てることが許されるP34議員の事務所の家賃,電気,水道及び電話料金の経費は,上記65万1115円の3分の1に当たる21万7038円と認めるべきこととなる。
e 以上によれば,P34議員は,P1議員団から事務所費として支給を受けた金員(50万円)のうち21万7038円については議員の市政に関する調査研究に資するため必要な経費に充てたものと認められるが,その余の部分(28万2962円)については,議員としての市政に関する調査研究に資するため必要な経費と認めることはできず,同議員が当該部分をその他の議員の市政に関する調査研究に資するため必要な経費に充てたことについての反証もないから,同議員は,当該部分を市政に関する調査研究に資するため必要な経費以外のものに充てたと推認するほかない。よって,P34議員のP1議員団から事務所費として支給された金員(50万円)の支出のうち,21万7038円の支出は違法ではないが,28万2962円の支出は違法というべきである。」
ヒ 81頁17行目の「(乙26の1ないし4)」の次に「申立書(乙93),P35議員事務所現況写真(乙94),陳述書(乙95の1),状況確認書(乙95の2)」を加える。
フ 81頁18行目から83頁2行目までを以下のとおり改める。
「b 乙93(申立書)によれば,P36の営業用店舗はP35議員自身が所有する物件であり,同議員はこれを使用貸借契約によりP36に貸していたというのであるから,仮に同議員がP36に年間84万円の事務所家賃を支払ったとするなら,同議員は,無償でP36に貸した物件の一部を,P36に賃料を支払って借り受けたこととなるが,これを合理的な支出といい得るか極めて疑問である。
もっとも,被控訴人は,P35議員の上記84万円の出費は,実質的にはP36が負担していた営業用店舗の維持管理費の一部であるとも主張するので,以下この観点から検討するに,乙93,95の1によれば,P35議員はP36の営業用店舗の一部約60平方メートルを事務所として議員活動を行うに当たり,P36の事務機器,自動車,光熱設備を使用していたが,これらについての経費は全部P36が支払っていたこと,同証中の事務所の使用貸借に係る契約書によれば,P35議員がP36に支払っていた年間84万円(月間7万円)の金員の内訳は,①来客時の茶菓・軽食代月額5000円,②電話等事務機器のリース料及び消耗品代月額3万円,③車両,ガソリン代等月額1万円,④電気,ガス,水道等費用月額2万5000円であること,同証中のP36の帳簿によれば,P35議員は,P36に対し,事務所使用料として,平成13年8月10日に20万円,同年10月10日に20万円,同年12月20日に20万円,平成14年3月31日に24万円を支払ったことがそれぞれ認められる。そして,乙93中のP36の平成13年度の損益計算書によれば,P36の同年度中の事務・備品費・通信費は106万3124円,光熱費は46万1873円,ガソリン代・交通費は3万5253円と認められ,少なくともこれら合計156万0250円のうちには,P35議員がP36の営業用店舗の一部を議員事務所として使用することにより発生した事務・備品費・通信費,光熱費,ガソリン代・交通費その他の経費が含まれると推認することができる。同証によれば,当時,P36はほとんど休業状態であったと認められること及び普通地方公共団体の議会の議員の地位,権限及び職務内容等にもかんがみると,少なくとも上記156万0250円の費用の3分の1は,P35議員が,P36の営業用店舗の一部を議員事務所として使用し,その備品を議員活動のために供したことに伴うP36の負担と認めるのが相当である。また,P35議員の上記事務所は,特定の政務調査を行うための事務所とまでは認められず,P35議員がその属する会派に係る政務調査活動のほか,選挙活動,後援会活動その他政務調査活動に属さない一般の議員としての活動の拠点としても使用する事務所であると認めるほかないことからすると,政務調査費をもって充てることが許されるのは,上記P36の営業用店舗の一部を議員事務所として使用したことに伴うP36の負担の更に3分の1と認めるのが相当である。
c 以上によれば,P35議員は,P1議員団から事務所費として支給を受けた金員(50万円)のうち156万0250円の9分の1に当たる17万3361円については議員の市政に関する調査研究に資するため必要な経費に充てたものと認められるが,その余の部分(32万6639円)については,これをP36に対する経費分担名下の支払に充てたとしても,当該金員は議員としての市政に関する調査研究に資するため必要な経費と認めることはできず,同議員が当該部分をその他の議員の市政に関する調査研究に資するため必要な経費に充てたことについての反証もないことからすると,同議員は,当該部分を市政に関する調査研究に資するため必要な経費以外のものに充てたと推認するほかない。以上によれば,P35議員のP1議員団から事務所費として支給された金員(50万円)の支出のうち,17万3361円の支出は違法ではないが,32万6639円の支出は違法というべきである。」
ヘ 83頁9行目の「乙27の1,2」の次に「,乙66(P37議員事務所現況写真),67(陳述書)」を加える。
ホ 84頁16行目から20行目までを,以下のとおり改める。
「 もっとも,前掲証拠及び弁論の全趣旨によれば,P37議員の上記事務所は,特定の政務調査を行うための事務所とまでは認められず,P37議員がその属する会派に係る政務調査活動のほか,選挙活動,後援会活動その他政務調査活動に属さない一般の議員としての活動の拠点としても使用する事務所であると認めるほかない。政務調査費は市政に関する調査研究に資するため必要な経費以外のものに充ててはならないとされていることからすると,このような事務所の賃料の全額を政務調査費をもって充てることは許されないと解すべきであり,その3分の1について,政務調査費をもって充てることが許されると解するのが相当である。
そうすると,事務所費を充てることが許されるP37議員の事務所の賃料は,上記66万円の3分の1に当たる22万円と認めるべきこととなる。
e 以上によれば,P37議員は,P1議員団から事務所費として支給を受けた金員(50万円)のうち22万円については議員の市政に関する調査研究に資するため必要な経費に充てたものと認められるが,その余の部分(28万円)については,議員としての市政に関する調査研究に資するため必要な経費と認めることはできず,同議員が当該部分をその他の議員の市政に関する調査研究に資するため必要な経費に充てたことについての反証もないから,同議員は,当該部分を市政に関する調査研究に資するため必要な経費以外のものに充てたと推認するほかない。以上によれば,P37議員のP1議員団から事務所費として支給された金員(50万円)の支出のうち,22万円の支出は違法ではないが,28万円の支出は違法というべきである。」
マ 85頁2行目及び3行目の「乙28号証の1,2」の次に「,乙96(P7議員事務所現況写真),97(陳述書)」を,4行目の「自宅」の次に「の一部約10平方メートル」をそれぞれ加え,4行目から5行目にかけた「議員としての調査研究活動」を「一般の議員活動」に,18行目の「各議員」を「P5議員ほか6名の議員」にそれぞれ改め,同行の「交付した」の次に「が,P7議員に対してはこれを交付しなかった」を加える。
ミ 85頁20行目から86頁16行目までを以下のとおり改める。
「c 上記のとおり,P7議員がその自宅の一部を一般の議員活動のための事務所としていたことからすると,P7議員の自宅の光熱水道費,電話料金及び共同住宅管理費のうちには,P7議員を含む家族の私用に供されたもののほか,P7議員の一般の議員活動に供されたものがあり,かつ,P7議員の一般の議員活動のうちには,市政に関する調査研究活動が含まれると認めることができる。
もっとも,上記それぞれの具体的な割合はこれを算定することが極めて困難であるが,普通地方公共団体の議会の議員の地位,権限及び職務内容等にもかんがみると,少なくとも光熱水道費,電話料金及び共同住宅管理費の3分の1は,自宅を議員事務所として使用することに伴う負担と認めるのが相当であり,自宅を議員事務所として使用することに伴う光熱水道費,電話料金及び共同住宅管理費の負担の3分の1は,自宅を市政に関する調査研究活動のための事務所に供したことにより生ずる負担と認めるのが相当である。そうすると,P7議員の自宅の光熱水道費,電話料金及び共同住宅管理費のうち全体の9分の1は,市政に関する調査研究活動のための事務所の維持管理費もしくは備品に関する経費として,その支払に事務所費を充てることが許されると解するのが相当である。平成13年度におけるP7議員の自宅の光熱水道費,電話料金及び共同住宅管理費は53万6561円であるから,このうち事務所費を支払に充てることが許されるのは,上記の9分の1である5万9617円と認められる。
被控訴人は,P7議員が事務所費をパソコンの購入費の一部に充てたと主張し,同議員がパソコンを購入したと認められることは上記のとおりであるが,他方,P1議員団が政務調査費のうち備品費を会派控え室用のパソコン及びP5議員ほか6名の会派所属議員のパソコンの購入費に充てたことも先に認定したとおりであり,仮にP7議員の政務調査活動にパソコンの購入が必要であったとすれば,その購入費に備品費を充てることができなかった事情があることは窺えない。このことに,P7議員が購入したパソコンの使用実態が不明であることを併せ考慮すると,P7議員が購入したパソコンが,同議員の市政に関する調査研究活動に供されているとまでは認めることができない。」
ム 86頁18行目の「26万8280円」を「5万9617円」に,20行目の「23万1720円」を「44万0383円」にそれぞれ改め,19行目の「議員の」,21行目から22行目にかけた「議員としての」及び23行目の「議員の」の次にそれぞれ「市政に関する」を加え,87頁2行目から3行目にかけた「そうであるとすれば」から5行目までを「以上によれば,P7議員のP1議員団から事務所費として支給された金員(50万円)の支出のうち,5万9617円の支出は違法ではないが,44万0383円の支出は違法というべきである。」に改める。
メ 87頁7行目から15行目までを以下のとおり改める。
「a 乙98(陳述書),99の1(電気料金支払証明書)・2(取引履歴一覧表)及び弁論の全趣旨によれば,P8議員は自宅内の事務室を議員活動のための事務所として使用していたこと,平成13年度中のP8議員の自宅の電気料金は28万5282円,ガス料金は12万2401円であり,P8議員はこれら電気及びガス代の支払をしたことが認められる。
被控訴人は,P8議員が,政務調査費を,上記自宅事務所の光熱費の支払等に充てたと主張すると解される。
b 上記のとおり,P8議員がその自宅の一部を一般の議員活動のための事務所としていたことからすると,P8議員の自宅の光熱費のうちには,P8議員を含む家族の私用に供されたもののほか,P8議員の一般の議員活動に供されたものがあり,かつ,P8議員の一般の議員活動のうちには,市政に関する調査研究活動が含まれると認めることができる。
もっとも,上記それぞれの具体的な割合はこれを算定することが極めて困難であるが,普通地方公共団体の議会の議員の地位,権限及び職務内容等にもかんがみると,少なくとも光熱費の3分の1は,自宅を議員事務所として使用することに伴う負担と認めるのが相当であり,自宅を議員事務所として使用することに伴う光熱費の負担の3分の1は,自宅を市政に関する調査研究活動のための事務所に供したことにより生ずる負担と認めるのが相当である。そうすると,P8議員の自宅の光熱費のうち全体の9分の1は,市政に関する調査研究活動のための事務所の維持管理費もしくは備品に関する経費として,その支払に事務所費を充てることが許されると解するのが相当である。平成13年度におけるP8議員の自宅の光熱費は前記電気代及びガス代を合算した40万7683円と認められるから,このうち事務所費を支払に充てることが許されるのは,上記の9分の1である4万5298円と認められる。
c 以上によれば,P8議員は,P1議員団から事務所費として支給を受けた金員(50万円)のうち4万5298円については議員の市政に関する調査研究に資するため必要な経費に充てたものと認められるが,その余の部分(45万4702円)については,議員としての市政に関する調査研究に資するため必要な経費と認めることはできず,同議員が当該部分をその他の議員の市政に関する調査研究に資するため必要な経費に充てたことについての反証もないから,同議員は,当該部分を市政に関する調査研究に資するため必要な経費以外のものに充てたと推認するほかない。以上によれば,P8議員のP1議員団から事務所費として支給された金員(50万円)の支出のうち,4万5298円の支出は違法ではないが,45万4702円の支出は違法というべきである。」
モ 87頁20行目の「297万6891円」から25行目の「26万8280円)」までを「128万6725円(P5議員に対する支給額のうち19万0920円,P6議員に対する支給額のうち5万6579円,P21議員に対する支給額のうち2万0225円,P27議員に対する支給額のうち13万円,P32議員に対する支給額のうち17万3687円,P34議員に対する支給額のうち21万7038円,P35議員に対する支給額のうち17万3361円,P37議員に対する支給額のうち22万円,P7議員に対する支給額のうち5万9617円,P8議員に対する支給額のうち4万5298円)」に,末行の「352万3109円」を「521万3275円」にそれぞれ改める。
ヤ 88頁10行目の「ところで」から24行目までを「ところで,政務調査費をもって充てることが違法とされる前記521万3275円の支出は,まず,P1議員団の会派会計より負担された25万4061円の部分から充当されたと見るのが当事者の通常の意思にかんがみ相当であるから,P1議員団が寝屋川市に対して返還義務ないし不法行為に基づく損害賠償義務を負うのは,違法支出額である521万3275円からP1議員団の会派会計が負担した25万4061円を控除した495万9214円と認めるのが相当である。」に,末行目の「326万9048円」を「495万9214円」にそれぞれ改める。
(2) P2議員団
P2議員団の政務調査費の支出の適否についての当裁判所の判断は,以下のとおり補正するほかは,原判決の「事実及び理由」の「第3 争点に対する判断」の「3 相手方らによる個々の政務調査費の支出の適否」の「(2)P2議員団の政務調査費の支出の適否」と同じであるからこれを引用する。
ア 89頁18行目から19行目にかけたもの及び20行目の各「議員としての調査研究活動」を「一般の議員活動」にそれぞれ改める。
イ 90頁16行目の「原則として」を「特段の事情がない限り」に改め,同行目の「もっとも」から23行目までを削る。
ウ 91頁1行目の「支給しているところ,」から21行目までを以下のとおり改める。
「 支給していることが認められる。この点について,被控訴人は,議員が自宅を事務所として使用する場合の議員活動は時間的に無限定な要素が大きく,私生活にかかる経費と事務所としての経費を明確に区別することができるものではないから,事務所を維持管理する経費として過少であることが明白な月額1万円の金額を,市民の理解を得られる範囲内として,一律に清算を要しないものとして支給することは合理的であり,上記は違法な政務調査費の支出に当たらないと主張する。
しかし,政務調査費は,その議会の議員の調査研究活動に資するため必要な経費の一部として交付することが許されるものであり,その交付を受けた会派又は議員は条例の定めるところにより当該政務調査費に係る収入及び支出の報告書を議長に提出するものとすると定められているのであるから(地方自治法100条12項,13項),その使途について,私生活にかかる経費との区別が困難であるからといって,一定の額を,清算を要しないものとして,会派又は議員に対して交付することの当否は極めて疑問である。被控訴人は,P2議員団が自宅を事務所とする議員に対して一律に交付した月額1万円の事務所費は過少であり,市民の理解を得られる範囲内であると主張するが,上記事務所費の交付を受けた各議員が具体的にどのような費目の支払に当該事務所費を充てたのかは本件において明らかでなく(P2議員団が事務所費として所属議員に交付した額の合計は,争いのない事実等によれば227万7406円であるが,上記一律交付額により支払に充てられた費目と,一律交付額を除く事務所費により支払に充てられた費目との関係も不明である。),また,そもそも,自宅を事務所とする議員について,当該議員の自宅の光熱費,水道代,電話料金等の維持管理費には,議員を含む家族の私用に供されたもののほか,議員の一般の議員活動に供されたものがあり,かつ,議員の一般の議員活動のうちには,政務調査費をもってその費用に充てることが許される市政に関する調査研究活動が含まれるとしても,その具体的な割合は,議員としての活動の実態を踏まえても,一般の議員活動にかかるものは自宅全体にかかる光熱費,水道代,電話料金等の維持管理費の3分の1を超えるものではなく,政務調査費をもって充てることが許される市政に関する調査研究活動にかかるものは上記部分の更に3分の1を超えるものではないというべきであることからすると,自宅事務所の維持費としての月額1万円の額は,過少であるとも,市民の理解を得られる範囲内であるとも認められない。以上によれば,P2議員団が,寝屋川市から交付を受けた政務調査費から事務所費として同会派に所属する5名の議員に対し一律に月額1万円(年額12万円)を支給したことは,この点につき,政務調査費をもって充てることが許される市政に関する調査研究活動のために支出されたことの特段の反証がない以上,これを政務調査費として容認すべき事情があると認めることはできないので,同金員は,地方自治法100条12項,本件条例及び本件施行規則に違反する支出というべきである。
P38議員の事務所の賃借料(年額36万円)の支出については,前掲証拠及び弁論の全趣旨によれば,P38議員の上記事務所は,特定の政務調査を行うための事務所とまでは認められず,P38議員がその属する会派に係る政務調査活動のほか,選挙活動,後援会活動その他政務調査活動に属さない一般の議員としての活動の拠点としても使用する事務所であると認めるほかない。政務調査費は市政に関する調査研究に資するため必要な経費以外のものに充ててはならないとされていることからすると,このような事務所の賃料の全額を政務調査費をもって充てることは許されないと解すべきである。このような事務所にあっては,当該事務所が市政に関する調査研究活動に供される割合によって,政務調査費をもって充てることが許される賃料の割合とするのが相当であるが,その割合は3分の1と認めるのが相当である。
ウ 以上のとおり,P2議員団が支出した事務所費96万円は,P38議員に対して支出した36万円のうち12万円の部分についてはその使途に違法はないが,P38議員に対して支出したその余の支出(24万円)はその使途が違法である。また,P2議員団に属する5名の議員に対し一律に月額1万円を支給した(年額合計60万円)ことは違法である。
前記争いのない事実等(5)イによれば,P2議員団が支出した政務調査費の合計は790万8318円であり,同議員団はこれを,寝屋川市から交付を受けた政務調査費768万円と会派会計22万8318円の合計をもって充てたと推認される。そして,同議員団の事務所費の支出のうち84万円は寝屋川市から交付を受けた政務調査費をもって充てることが許されない部分であるが,政務調査費をもって充てることが許されない前記84万円の支出は,まず,P2議員団の会派会計より負担された22万8318円の部分から充当されたと見るのが当事者の通常の意思にかんがみ相当であるから,P2議員団が寝屋川市に対して返還義務ないし不法行為に基づく損害賠償義務を負うのは,違法支出額である84万円からP2議員団の会派会計が負担した22万8318円を控除した61万1682円と認めるのが相当である。
よって,控訴人の本訴請求のうちP2議員団に関する請求部分は,同議員団に対し61万1682円及びこれに対する平成14年4月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を請求することを被控訴人に求める限度で理由があるが,その余の請求部分は,その余の点について判断をするまでもなく理由がない。」
(3) P3議員団
ア 前提事実,乙102ないし105(会派別議員一覧表)及び弁論の全趣旨によれば,平成13年度において,P3議員団は,P9,P10,P11,P12及びP13の5名の議員により構成されていたこと,平成15年にP3議員団は解散し,同議員団に属していたP10,P11及びP12の各議員は,同年に結成されたP14議員団に所属することとなったこと,P14議員団は,平成17年,P15議員団とP16議員団に分裂し,P11及びP12の各議員はP15議員団に属し,P10議員はP16議員団に属したこと,平成19年,P16議員団に属していたP10議員がP15議員団に属することとなったこと,現在において,P9及びP13の両議員は既に議員の地位になく,また,P3議員団を承継する議員団(会派)も存在しないことが認められ,以上によれば,P3議員団は,会派としては既に事実上解散したと認められる。
イ 上記を前提に,被控訴人は,会派としてのP3議員団の存在はないとした上で,政務調査費の返還を求めるべき議員団が法律上存在しないから,これに対する損害賠償請求はあり得ないと主張する。
しかし,証拠(甲1,2)及び弁論の全趣旨によれば,会派は本件条例によって政務調査費の交付対象とされ,代表者及び経理責任者が置かれた団体であり,権利能力のない社団としての実態を有するというべきところ,民法上の法人は,解散した場合においても,清算の目的の範囲内において,その清算の結了に至るまではなお存続するものとみなされることからすると(民法73条。なお,持分会社について会社法645条も同旨。),権利能力のない社団であるP3議員団についてもこれと同様に解するのが相当であり,P3議員団が事実上解散しても,清算の目的の範囲内においてはなお存続するものというべきである。そして,本件賠償請求は清算の目的の範囲内というほかないから,その関係では,P3議員団は,事実上解散した後も,なお存続するものとして,被控訴人は,同議員団に対し,上記賠償請求をすることができるというべきである。
したがって,被控訴人の上記主張は,理由がなく,採用できない。
ウ 研究研修費の支出について
当裁判所も,平成13年度の政務調査費に係るP3議員団の研究研修費の支出のうち,飲食店4件に対する12万5010円の支払は,地方自治法100条12項,本件条例及び本件施行規則に違反するものではないと判断する。その理由は,原判決の「事実及び理由」の「第3 争点に対する判断」の「3 相手方らによる個々の政務調査費の支出の適否」の「(3) P3議員団の政務調査費の支出の適否」の「ア 研究研修費の支出について」と同じであるからこれを引用する。
エ 事務所費の支出について
(ア) 当裁判所が認定する平成13年度の政務調査費に係るP3議員団の事務所費の支出の経過は,原判決の「事実及び理由」の「第3 争点に対する判断」の「3 相手方らによる個々の政務調査費の支出の適否」の「(3) P3議員団の政務調査費の支出の適否」の「イ 事務所費の支出について」の(ア)と同じであるからこれを引用する。
(イ) 上記のとおり,P3議員団に所属していたP11議員,P12議員及びP13議員は,その自宅の一室を議員の調査研究活動のための事務所として使用し,事務所を訪れる来客のための専用の駐車場を賃借して確保していたというのである。普通地方公共団体の議会の議員の地位,権限及び職務内容等にもかんがみると,議員の調査研究活動の一環として議員事務所において関係者や住民等から事情聴取をしたり要望,意見等を聴取したりすることは通常想定される事態というべきであるが,上記議員らのこれらの自宅事務所は,特定の政務調査を行うための事務所とまでは認められず,同議員らがその属する会派に係る政務調査活動のほか,選挙活動,後援会活動その他政務調査活動に属さない一般の議員としての活動の拠点としても使用する事務所であると認められる。政務調査費は市政に関する調査研究に資するため必要な経費以外のものに充ててはならないとされていることからすると,このような事務所の駐車場賃借料の全額を政務調査費をもって充てることは許されないと解すべきである。上記駐車場が議員個人あるいは議員家族の私用に供されていたことを認めるべき証拠はないが,このような事務所にあっては,当該事務所が市政に関する調査研究活動に供される割合によって,政務調査費をもって充てることが許される駐車場賃借料の割合とするのが相当であるが,その区分が必ずしも容易でないこと,普通地方公共団体の議会の議員の地位,権限及び職務内容等にかんがみると,当該事務所が市政に関する調査研究活動に供される割合は3分の1を下らないと見るのが相当であり,したがって,駐車場賃借料の3分の1については政務調査費をもって充てることが許されるが,その余の部分は政務調査費をもって充てることが許されないと解するのが相当である。
以上によれば,P11議員が支出した18万9000円の駐車場賃借料に政務調査費から充てられた同額の金員のうち6万3000円は政務調査費からの支払が許されるが,その余の12万6000円は政務調査費からの支払が許されないというべきであり,P12議員が支出した25万2000円の駐車場賃借料に政務調査費から充てられた17万0100円のうち8万4000円は政務調査費からの支払が許されるが,その余の8万6100円は政務調査費からの支払が許されないというべきであり,P13議員が支出した14万4000円の駐車場賃借料に政務調査費から充てられた同額の金員のうち4万8000円は政務調査費をもって支払に充てることが許されるが,その余の9万6000円は政務調査費をもって支払に充てることは許されないというべきである。そして,上記議員らが,上記支払に充てることが許されない部分を,政務調査費をもって支払に充てることが許される他の費目の支払に充てたことを認めるべき証拠はない。
(ウ) 上記認定のとおり,平成13年度中の電話料金について,P9議員は5万9517円,P11議員は14万5500円,P12議員は20万1586円,P13議員は10万3293円の支払をしたと認められる(P9議員とP13議員については携帯電話料金。その余の議員は固定電話料金及び携帯電話料金。)。
普通地方公共団体の議員がその調査研究活動のために電話を使用することは通常予想される事態ではあるが,固定電話についてはもちろん(上記議員らはいずれも自宅を事務所とする議員であるから,上記固定電話料金は,議員個人のみならず,これら議員の家族の私用にも供されていることが明らかである。),携帯電話についても,議員としての活動以外の私的活動にも用いられることは明らかであることからすると,これに要する料金の全額を政務調査費をもって充てることは許されないというべきである。これら電話料金は,当該電話が市政に関する調査研究活動に供される割合によって,政務調査費をもって充てることが許される料金の割合とするのが相当である。その具体的な割合はこれを算定することが極めて困難であるが,普通地方公共団体の議会の議員の地位,権限及び職務内容等にもかんがみると,少なくとも電話料金の3分の1は,当該電話を議員活動のために使用することに伴う負担と認めるのが相当であり,さらにその3分の1は,当該電話を市政に関する調査研究活動のために供したことにより生じた負担と認めるのが相当である。
以上によれば,政務調査費をもって支払に充てることが許される電話料金は,各議員が支払った電話料金の9分の1相当額というべきであり,その具体的数額は,P9議員について6613円,P11議員について1万6166円,P12議員について2万2398円,P13議員について1万1477円と認められ,その合計額は5万6654円である。
P3議員団が平成13年度の事務所費名目で支出した政務調査費のうちに,上記4名の議員の固定電話料金及び携帯電話料金合計42万1690円が含まれるのは先に認定したとおりであるが,これら議員の電話料金について政務調査費をもって充てることが許されるのは5万6654円であるから,その余の36万5036円は政務調査費をもって充てることが許されないものと認められる。そして,上記議員らが,上記支払に充てることが許されない部分を,政務調査費をもって支払に充てることが許される他の費目の支払に充てたことを認めるべき証拠はない。
オ 以上のとおり,P3議員団が支出した研究研修費40万2722円のうち12万5010円並びに事務所費146万3165円のうち来客駐車場賃借料50万3100円及び個人使用の携帯電話代38万8570円の合計101万6680円については,研究研修費12万5010円,来客駐車場賃借料19万5000円,電話料金5万6654円の合計37万6664円の部分は議員の市政に関する調査研究に資するため必要な経費に充てられたと認められるが,その余の64万0016円は議員の市政に関する調査研究に資するため必要な経費に充てられたと認めることはできず,政務調査費をもって支払に充てることは違法である。
前記争いのない事実等(5)ウによれば,P3議員団が支出した政務調査費の合計は480万3044円であり,同議員団はこれを,寝屋川市から交付を受けた政務調査費480万円と会派会計3044円の合計をもって充てたと推認される。ところで,政務調査費をもって充てることが違法とされる前記64万0016円の支出は,まず,P3議員団の会派会計より負担された3044円の部分から充当されたと見るのが当事者の通常の意思にかんがみ相当であるから,P3議員団が寝屋川市に対して返還義務ないし不法行為に基づく損害賠償義務を負うのは,違法支出額である64万0016円からP3議員団の会派会計が負担した3044円を控除した63万6972円と認めるのが相当である。
よって,控訴人の本訴請求のうちP3議員団に対する請求を求める部分は,同議員団に対し63万6972円及びこれに対する平成14年4月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を請求することを被控訴人に求める限度で理由があるが,その余の請求部分は,その余の点について判断をするまでもなく理由がない。
(4) P4議員
P4議員の政務調査費の支出の適否についての当裁判所の判断は,以下のとおり補正するほかは,原判決の「事実及び理由」の「第3 争点に対する判断」の「3 相手方らによる個々の政務調査費の支出の適否」の「(4)P4議員の政務調査費の支出の適否」と同じであるからこれを引用する。
ア 100頁9行目から10行目にかけた「調査研究活動のための事務所」を「一般の議員活動のための事務所(なお,この事務所を特定の政務調査活動のための事務所とまで認めるべき証拠はなく,同事務所は,P4議員の政務調査活動のほか,選挙活動,後援会活動その他政務調査活動に属さない一般の議員としての活動の拠点としても使用される事務所であると認めるほかない。)」に改める。
イ 101頁2行目から102頁14行目までを以下のとおり改める。
「イ 証人P4によれば,P4議員がP39に対して支払った資料費30万円は,北河内4市合併を推進する同議員が,守口市,門真市,寝屋川市及び枚方市の過去10年の人口統計を年齢別に調査し,データ分析をするなどの作業をP39に依頼し,その対価としてP39に支払ったものと認められ,また,政務調査費の支出にかかるP39の業務が実態を欠いていたと認めるべき証拠はなく,これらによれば,上記資料費は,同議員の市政に関する調査研究活動のため必要な経費であったと認められる。
また,上記認定,乙9(陳述書および意見書)及び証人P4によれば,P39に対する事務所費18万円及び備品費46万6200円は,P4議員が一般の議員活動を行うための拠点である事務所の賃料及びP4議員が議員活動に使用するパソコンその他周辺機器のリース代金であると認められるが,上記事務所及び備品が専ら同議員の市政に関する調査研究活動にのみ供されていると認めるべき証拠はないから,政務調査費を充てることが許されるのは,上記事務所賃料及び備品リース代にP4議員の市政に関する調査研究活動が議員活動のうちに占める割合を乗じた額に限られるというべきである。その割合は,普通地方公共団体の議会の議員の地位,権限及び職務内容等にかんがみて3分の1と認めるのが相当である。」
ウ 103頁6行目の「各支出が」を「各支出は,先に認定した限度で」に改め,「議員の」の次に「市政に関する」を加え,15行目の「資料費」から16行目の「いずれも」までを「資料費30万円,事務所費18万円の3分の1である6万円及び備品費46万6200円の3分の1である15万5400円の合計51万5400円は」に改め,19行目の「(なお」から23行目までを以下のとおり改める。
「。以上によれば,P4議員がP39に対して支払った94万6200円の政務調査費のうち51万5400円は,議員の市政に関する調査研究に資するため必要な経費に充てたものと認められるが,その余の43万0800円は,これを上記事務所費及び備品費の支払に充てたとしても当該代金は議員としての市政に関する調査研究に資するため必要な経費と認めることはできず,同議員が当該部分をその他の議員の市政に関する調査研究に資するため必要な経費に充てた事実を認めるに足りる的確な証拠はないから,同議員は,上記43万0800円を市政に関する調査研究に資するため必要な経費以外のものに充てたと推認するほかなく,その支出は違法である。
前記争いのない事実等(5)エによれば,P4議員が支出した政務調査費の合計は112万9350円であり,同議員はこれを,寝屋川市から交付を受けた政務調査費96万円と同議員の個人会計16万9350円の合計をもって充てたと推認される。そして,同議員の政務調査費の支出のうち43万0800円は寝屋川市から交付を受けた政務調査費をもって充てることが許されない部分であるが,この支出は,まず,P4議員の個人会計より負担された16万9350円の部分から充当されたと見るのが当事者の通常の意思にかんがみ相当であるから,P4議員が寝屋川市に対して返還義務ないし不法行為に基づく損害賠償義務を負うのは,違法支出額である43万0800円からP4議員の個人会計が負担した16万9350円を控除した26万1450円と認めるのが相当である。よって,控訴人の本訴請求のうちP4議員に関する請求部分は,同議員に対し26万1450円及びこれに対する平成14年4月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を請求することを被控訴人に求める限度で理由があるが,その余の請求部分は,その余の点について判断をするまでもなく理由がない。」
3 以上によれば,控訴人の本訴請求は,被控訴人に対し,P1議員団に対し495万9214円及びこれに対する平成14年4月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金,P2議員団に対し61万1682円及びこれに対する前同日から前同率の割合による遅延損害金,P3議員団に対し63万6972円及びこれに対する前同日から前同率の割合による遅延損害金,P4議員に対し26万1450円及びこれに対する前同日から前同率の割合による遅延損害金の各支払を請求することを求める限度で理由があるが,その余は理由がない。よって,これと異なる原判決は一部相当でないので,その限度で原判決を本件控訴に基づいて変更することとし,本件附帯控訴は理由がないので棄却することとし,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 中路義彦 裁判官 川谷道郎)
裁判官礒尾正は,転補のため署名押印することができない。裁判長裁判官 中路義彦