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大阪高等裁判所 平成19年(ネ)1664号 判決 2008年1月29日

控訴人(被告)

株式会社シティズ

同代表者代表取締役

同訴訟代理人弁護士

浜本光浩

被控訴人(原告)

同訴訟代理人弁護士

辰巳裕規

主文

1  原判決を次のとおり変更する。

2  控訴人は、被控訴人に対し、2,277,909円及びうち2,198,757円に対する平成16年7月14日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

3  被控訴人のその余の請求を棄却する。

4  訴訟費用は、第1、2審を通じて、6分し、その5を控訴人の、その余を被控訴人の負担とする。

事実及び理由

第1本件控訴の趣旨

1  原判決を取り消す。

2  被控訴人の請求を棄却する。

3  訴訟費用は、第1、2審とも被控訴人の負担とする。

第2事案の概要

1  事案の骨子

被控訴人は、控訴人から金員を借りて分割で返済をしていたが、利息制限法を超える利息についての弁済については元本に充当されるべきであり、これに基づき計算を行ったところ過払になっているとして、不当利得返還請求権に基づき、過払金となっている不当利得金、及びこれに対する悪意の受益者としての法定利息の支払を求めた。

控訴人は、被控訴人が分割弁済の第2回目の支払日には期限の利益を喪失し、その後の支払は任意になされた損害金の支払であり、貸金業の規制等に関する法律(以下「貸金業法」という。)43条1項に基づく弁済とみなされるから、法律上の原因はあると主張している。

これに対し、被控訴人は、(a)控訴人は期限の利益喪失については宥恕(ゆうじょ)している、期限の利益喪失の主張は信義則に反するか権利の濫用である、あるいは控訴人は期限の利益を再度付与した、(b)貸金業法43条1項の要件を満たしていないと反論している。

被控訴人の請求を全部認容した原判決に対し、控訴人が本件控訴をした。

2  前提事実(証拠の摘示のない事実は、当事者間に争いがないか弁論の全趣旨により認められる。)

(1)  控訴人について

控訴人は、貸金業法3条所定の登録を受けて貸金業を営む同法2条2号にいう貸金業者である。

(2)  控訴人の被控訴人に対する貸付け

ア 控訴人は、被控訴人に対し、以下のとおりの貸付けをした。(乙1。以下この契約を「本件契約」という。)

貸付年月日 平成11年10月29日

貸付金額 4,500,000円

弁済期、弁済方法 平成11年11月から平成16年10月まで毎月28日限り、元金75,000円ずつを経過利息とともに控訴人の本・支店に持参又は送金して支払う。

利息 年29.8パーセント(年365日の日割計算)

期限後の損害金 年36.5パーセント(年365日の日割計算)。ただし、期限の利益喪失後、控訴人は毎月28日までに支払われた損害金については一部免除し、年29.8パーセントとするが、この取扱いは、期限を猶予するものではない。

特約 上記元金の支払を怠ったときは、通知催告なくして期限の利益を失い、債務全額及び残元本に対する遅延損害金を即時に支払う(以下「本件期限の利益喪失特約」という。)

イ 控訴人は、上記貸付けに係る契約を締結した際、貸金業法17条1項に掲げる事項についてその契約の内容を明らかにする書面として、貸付契約説明書(乙3の1)及び毎月の返済日とその日時に支払うべき利息、元金及びその支払合計額が記載された償還表(甲3、乙3の2、以下「本件償還表」という。)(別紙2償還予定計算書(以下「本件償還予定計算書」という。)は、本件償還表に、約定に従って計算された残元本額等を記載したものである。)。

(3)  被控訴人の控訴人に対する支払状況

ア 本件契約に基づく弁済として、控訴人に対し、別紙1の利息制限法に基づく法定金利計算書(以下「別紙1法定金利計算書」という。)の「年月日」欄記載の日に、「弁済額」欄記載の金員が支払われた。

イ このうち、別紙1法定金利計算書の番号14~16、26、38~41、54、57は、連帯保証人であったB(以下「B」という。)が支払い、その余は被控訴人が支払った(乙21の1・2、22、31、43~46、57、60、弁論の全趣旨)。

ウ なお、別紙1法定金利計算書のとおり、被控訴人は、平成11年12月28日に支払うべき支払を2日遅れた同月30日に支払っている(控訴人は、被控訴人のこの遅滞により、本件期限の利益喪失特約に基づき、期限の利益を喪失したと主張している。)。

エ 控訴人は、上記各支払を、別紙3元利金計算書のとおり、利息、損害金に充当し、その余を残元本に充当したとして、その支払を受ける毎に、領収書兼利用明細書(乙10~20、21の1・2、22~65、131、以下「本件受取証」という。)を被控訴人に郵便送付等により交付している(但し、被控訴人が、住所変更等を控訴人に連絡していなかったため、一部郵便が届かなかった時期もあった。)(控訴人は、本件受取書は、貸金業法18条所定の受取証書である旨主張している。)。

なお、控訴人の利息、損害金(以下「利息等」という。)の計算方法は、貸付日から返済日の前日まで利息等が発生し、返済日当日の利息等は発生しない方法をとっている。

また、控訴人は、期限の利益喪失後の損害金につき、本件契約の損害金の約定に従い、毎月28日までに支払われた損害金については一部免除し、年29.8パーセントとする扱いをしているほか、毎月28日を経過して支払われた分についても、毎月28日分までの損害金は年29.8パーセントとし、翌29日から支払日の前日までの間の損害金についてのみ年36.5パーセントの割合で計算する扱い(本件契約の損害金の約定と一部異なる扱い)をしている。

オ なお、被控訴人の返済のうち平成11年11月29日の利息制限法を超える部分の利息の支払は、貸金業法43条1項のみなし弁済に当たらず(債務者が利息制限法所定の制限を超える約定利息の支払を遅滞したときには当然に期限の利益を喪失する旨の特約の下での制限超過分の利息の支払には任意性がないこと、乙10の本件受取証には、貸金業法18条1項2号所定の「契約年月日」の記載がないことがその理由である。最高裁平成18年1月13日第二小法廷判決(判例時報1926号17頁)参照)、その超過部分は、元本に充当される。

3  争点

(1)  被控訴人は期限の利益を喪失したといえるか。

(2)  貸金業法43条1項のみなし弁済の要件の有無。

(3)  保証人が弁済した分についての扱い。

(4)  控訴人は悪意の受益者といえるか。

4  争点に関する当事者の主張の要旨

(1)  被控訴人は期限の利益を喪失したといえるか。

(被控訴人の主張)

ア 控訴人は期限の利益喪失については宥恕(ゆうじょ)又は再度付与している。

全国信用情報センター連合会(以下「全情連」という。)は、①貸金業に係る適切な与信判断のために、正確確実な個人信用情報を登録・管理し、会員業者に登録情報を提供する目的(甲16)のみならず、②消費者信用の円滑かつ健全な発展に重要な役割を果たす公共的使命をもって運営されている(甲15)。また、会員となるためには厳しい入会資格をクリアしなければならず、会員には、①顧客の信用情報をすべて登録する、②即時(当日)に報告する義務が課せられている(甲17)。当然、会員は個人データを正確かつ最新の内容に保つよう努めなければならない(甲16)。控訴人は、全情連の会員である。控訴人の全情連信用情報記録の取扱い(別件として甲7~12)からすると、被控訴人の入金のたびに全情連信用情報記録の「入金予定日」(これは、契約に基づき会員と約束された次回の入金日又は利息にも満たない入金があった日(この場合は入金日と同日)とされている。甲12)には本件償還表の次回約定入金日が記載されていたはずである。控訴人の主張のとおり、期限の利益を喪失していたとするなら、本件契約に基づき、次回の入金予定日は、期限の利益を喪失した日を記入していたはずであるが、別件の取扱いからそのようなことはありえない。

また、控訴人は、被控訴人が本件契約の期限の利益の特約に違反した後も、長期間、多数回にわたり多額の弁済を受け続けたものである。

そうすると、控訴人は、期限の利益喪失については宥恕(ゆうじょ)又は再度付与していたことになる。

イ 控訴人が期限の利益喪失を主張するのは、信義則に反するか権利の濫用である。

控訴人は、被控訴人が支払日の支払を遅滞した際、本件契約の期限の利益喪失の特約に基づき、直ちに一括請求の措置を取らず、長期間にわたり、被控訴人からの返済を受けていたものである。被控訴人が本件訴えにより、過払金の請求をすると、控訴人は約定による損害金の利率による損害金の充当計算をしていたとしているものである。控訴人の上記主張は、たとえ被控訴人の支払が支払日に遅れたとしても、被控訴人が返済を続けている限り、期限の利益喪失により返済を求められないであろうとの被控訴人の期待を著しく裏切るもので、信義則に違反するものである。

(控訴人の主張)

ア 被控訴人の主張アについての反論

本件契約によれば、履行遅滞により当然に期限の利益を喪失するところ(乙1)、被控訴人は、平成11年12月28日に一切支払をしなかったため、同日の経過により当然に期限の利益を喪失し、同月29日から損害金が発生したものである。そして、一括弁済請求をするかどうかは、債権者たる控訴人の権利行使としてその自由意思にゆだねられており、一括弁済の請求がなかったことをもって、期限の利益を再度付与する意思表示若しくは期限の利益の喪失を宥恕(ゆうじょ)する意思表示があったとすることはできない。

そもそも、本件において、控訴人は、被控訴人に対し、第2回目の支払日である平成11年12月28日に被控訴人から入金がないことを確認した後、期限の利益の喪失について通知し、一括弁済義務が生じたことの説明を行っている。

控訴人が、期限の利益喪失後の弁済を受領しているのも、被控訴人には、一括返済ができず残金の一部しか入金できなかったことから、控訴人としても事実上一部金として受領せざるを得なかっただけであり、これについても期限の利益を再度付与する意思、若しくは期限の利益喪失を宥恕(ゆうじょ)する意思など全くなかったものである。控訴人は、被控訴人に対し、期限の利益喪失後は、利息ではなく損害金が生じていることを前置きしつつ請求しており、また、期限の利益喪失後、弁済を受けた際には、同月29日以降の充当関係につき、常に「損害金」への充当を記載した本件受取証を送付している。これは、控訴人が支払の度ごとに被控訴人に対して、被控訴人が既に期限の利益を喪失していることを表明していることにほかならないのであるから、控訴人が被控訴人に対し、期限の利益を再度付与する意思がなかったことは明白である。

加えて、被控訴人は、平成8年4月に開業した栗真興業の経営者であり、金銭の借入れに関して控訴人との取引が初めてというわけでないはずである。したがって、被控訴人は「損害金」の表示が何を意味するかについて十分な知識を有していたと考えられる。しかし、期限の利益喪失以降、被控訴人は、控訴人に対して、この「損害金」への充当を記載した本件受取証に関し、何らの異議申立てをも行っていない。このことから、被控訴人は平成11年12月28日の経過により期限の利益を喪失したとの認識があり、それを前提として取引を継続していたことがうかがわれる。

なお、全情連に報告された全情連信用情報記録開示書の内容は、控訴人と全情連の間で行われた事務のやり取りについて記録されたものであり、被控訴人に対して期限の利益に関し何らかの意思表示を行ったことの根拠となり得るものではない。また、控訴人においても、入金予定日は上記全情連の要請に従い、システム上、自動入力されることになっており、期限の利益の喪失の有無にかかわらず、形式的に毎月の支払日とされていた日付が、そのまま報告される仕組みとなっている。したがって、入金予定日として将来における特定の日が報告されていたとしても、当事者間で期限の利益に関し何らかの合意があったとはいえない。

イ 被控訴人の主張イについての反論

既に述べたように、控訴人は、被控訴人が第2回目の支払日である平成11年12月28日の支払を怠ったことにより期限の利益を喪失し、同月29日から損害金が発生したものとして扱い、上記期限の利益喪失日以降に弁済を受けた際には常に損害金への充当を記載した本件受取証を送付していた。控訴人が訴訟になってから卒然として、期限の利益喪失約款を盾に期限の利益の喪失を主張しはじめたものではない。加えて、期限の利益喪失後の弁済金の受領も、一括請求にもかかわらず、被控訴人は全額の一括返済ができないと申し出たために、控訴人は事実上の一部入金として受領したにすぎない。控訴人を含めた貸金業者は貸金業等の業務規制の範囲内でしか督促できないため、たとえ一括返済を求めたとしても、債務者等から分割で返済されれば当該分割金を受領するしかない。

(2)  貸金業法43条1項のみなし弁済の要件の有無。

(控訴人の主張)

ア 被控訴人又はBの本件契約に基づく平成11年12月30日以降の支払は、制限超過損害金を任意に支払ったものである。

控訴人が被控訴人に対し、説明の上、交付した貸付契約説明書に記載のとおり、約定の支払日は毎月28日限りであり、1回でも支払を怠った場合には期限の利益を喪失する旨の約定がある(乙3の1の第5項)。被控訴人は、第2回目の支払日である平成11年12月28日の支払を怠り、期限の利益を喪失した。そして、被控訴人は、支払日から2日遅れた同月30日に、183,382円を支払っているが、これは、既に期限の利益を失い、一括支払義務を負い、損害金が発生しているとの認識を前提とした支払であるから、被控訴人が「制限超過利息を支払わなければ残元本全額及びこれに対する遅延損害全額を直ちに一括して支払うべき義務を負う」と認識(誤解)し、このような不利益を回避するために、利息の制限超過部分を支払ったものではないことは明らかである。つまり、被控訴人は、第2回目の支払の時点では既に期限の利益を喪失しており、上記不利益は法律上現実化した不利益であることから、これを回避することはもはや不可能である。したがって、このような不利益を認識することは、自己の負う義務を正確に認識するというにすぎず、何ら支払を事実上強制する契機となり得ない。そうであれば、第2回目以降の支払について、本件期限の利益喪失特約の存在とその認識が支払の任意性を否定することとなるはずがない。また、同様に、Bによる各支払も、既に期限の利益を喪失し、これによる不利益の現実化を認識して支払ったものであるから、支払を事実上強制する契機となり得なかったものである。

イ 本件受取証は貸金業法18条の書面に該当する。

(ア) 契約年月日の不記載

貸金業者は、貸金業法18条1項の規定により交付すべき書面を作成するときは、当該弁済を受けた債権に係る貸付契約を契約番号その他により明示することをもって、同項2号所定の契約年月日の記載に代えることができる旨規定されている(貸金業法施行規則15条2項)ので、契約年月日の記載がなくとも、契約番号の記載により、弁済を受けた債権に係る貸付契約を特定するのに不足することはないから、貸金業者は、従来、契約年月日の記載に代えて契約番号が記載された受取証書は、貸金業法18条1項所定の事項の記載に欠けるところはないものとして運用していた。本件における取引の時点では、貸金業法18条自体が法令として存在し、前記施行規則15条2項の有効性が争われておらず、貸金業法や上記施行規則などの定めに従った運用をして貸金業法43条のみなし弁済の主張をしてきた貸金業者の処理をすべて否定することは経済活動の安定を著しく損なうことになる。そうすると、契約年月日の記載を欠く受取証書であっても、貸金業法18条書面に該当するというべきである。

(イ) 受取証書の残元金の記載について

控訴人の交付した本件受取証は利息制限法に従った利息計算をした残元本が記載されていないが、このことは貸金業法43条3項の適用に影響しない。

貸金業法18条1項が受取証書の交付を義務付けた趣旨は、債務者に充当計算の手掛かりを与えもって紛争を防止するところにある。控訴人が被控訴人に交付した本件受取証と、本件契約締結時にあらかじめ交付していた貸金業法17条書面の記載とを合わせみれば、利息制限法に従った充当計算に基づく残元本が記載されていないとしても、被控訴人は容易に正確な充当関係を把握することが可能である。さらに、リボルビング払等とは異なり、本件契約は、1回限りの単純な貸付契約であり、被控訴人は、本件受取証だけをみても、弁済の対象となった貸付けを特定することができ、充当関係を把握するのには何らの支障も生じない。

したがって、控訴人が、被控訴人に交付した本件受取証は、貸金業法18条の要件を満たす書面といえる。

(被控訴人の主張)

ア 控訴人の主張は争う。

イ 貸金業法17条1項、18条1項、同法施行規則13条及び15条は、債務者が貸付契約の内容又はこれに基づく支払の充当関係が不明確であることなどによって不利益を被らないようにしている。その上で貸金業法43条1項は、債務者が利息として任意に支払った金銭の額が利息の制限額を超え、利息制限法上その超過部分について、その契約が無効とされる場合においても、貸金業者が貸金業法17条1項及び18条1項所定の各要件を具備した各書面を交付する義務を遵守したときには、利息制限法1条1項の規定にかかわらず、その支払を有効な利息の債務の弁済とみなすこととしている。したがって、貸金業法43条1項の規定の適用要件である17条書面及び18条書面には、同法17条1項及び18条1項所定のすべてが記載されていることを要し、その一部でも記載されていないときは、適用要件を欠くものというべきであって、有効な利息の弁済とみなすことはできない。

ウ 本件においては、次のとおり本件受取証の記載事項に誤り及び不足があるため、「みなし弁済」は適用されない。①平成11年11月29日時点での残元本は4,368,435円である。しかし、平成11年12月30日の弁済時に交付された乙11には「前元金残高4,425,000」と誤った金額が記載されている。また、「前元金残高」を基準に計算された「利息充当額」及び「損害金充当額」も当然誤りであり、それに伴って「元金充当額」も誤りである。また、上記事項が誤りであるため、「残存債務の額」も当然誤りである。このように、債務者(被控訴人)が最も関心があるであろうと思われる「前元金残高」「利息充当額」「損害金充当額」「元金充当額」「残存債務の残高」のすべてが誤りである以上、乙11はおおよそ18条書面であるということはできない。また、上記と同様の理由から、乙12~65についても、18条書面であるということはできない。②貸金業法18条1項2号所定の契約年月日の記載に代えて契約番号が記載された受取書面は、18条書面の要件を満たさない(上記最高裁平成18年1月13日判決)。控訴人が証拠提出したすべての本件受取証には契約年月日が記載されていないため、これらの本件受取証は18条書面ということはできない。

(3)  保証人が弁済した分についての扱い。

(控訴人の主張)

前提事実(3)イのとおり、別紙1法定金利計算書の番号14~16、26、38~41、54、57は、連帯保証人であったBが支払っている。そして、このうち番号41、54、57の支払に関し、過払金が発生しているので、その過払金の不当利得返還請求権はBに発生し、被控訴人はその支払を求める権利はない。

(被控訴人の主張)

控訴人は、原審の答弁書で、別紙1法定金利計算書の41、54、57の支払を含め、その全部の弁済を被控訴人がしたことを認めており、この点自白が成立している。なお、控訴人は、原審での平成18年9月19日付け準備書面1において、「答弁書の訂正」として上記弁済を含む保証人による弁済の事実を主張している。しかしながら、自白を撤回する旨の明示はなく、仮に、保証人弁済分を除くと、再度保証人より控訴人に過払金返還請求をすることになり、このように紛争を後に残さない観点から、控訴人は、あえて自白したままとして、自白の撤回をしなかったのである。

控訴人が、控訴審において、原審での上記自白を撤回するのであれば、これを争う。

(4)  控訴人は悪意の受益者といえるか。

(被控訴人の主張)

控訴人は悪意の受益者である。

被控訴人側で、支払われた利息が制限利息を超過するものであることを控訴人が認識していたことを主張・立証したときには、当該支払に係る利息及び損失について、「法律上の原因がないこと」についての控訴人の悪意が認められ、控訴人が「法律上の原因がないこと」を争うためには、貸金業法43条に定める「みなし弁済」の適用があり、かつその認識があったことを抗弁として主張立証する必要があるものと解すべきである。そして、「みなし弁済」の適用が認められなかった場合には、そもそも「法律上の原因のあること」を基礎付ける事実があることを認識していたとはいえないというべきである。

本件において、控訴人は、利息制限法所定の上限を上回る金員を取得し続けたのであるから、「法律上の原因がないこと」が認められ、それに対する抗弁である「みなし弁済」も適用されないことから、「悪意の受益者」である。

(控訴人の主張)

控訴人は悪意の受益者でない。

「みなし弁済」(貸金業法43条1項3項)が成立すれば利息制限法所定の利息又は損害金の額を超える弁済であっても有効な弁済とみなされることとなるのであるから、控訴人に貸金業法43条1項3項の定める要件を満たすとの認識がある場合には、超過利息・損害金の受領につき、「法律上の原因がないこと」の認識があったとはいえない。本件において、控訴人には本件契約に対する支払について貸金業法43条1項の定める要件を満たすとの認識があったのであり、これまで控訴人を当事者とする訴訟において、上記最高裁平成18年1月13日判決が出るまでは、「みなし弁済」の適用が認められることがごく一般的であったのであるから(乙120~122参照)、控訴人には「みなし弁済」が成立し制限超過利息を受領する権利があると信じる合理的な事情が存在したというべきである。以上から、控訴人は悪意の受益者ではない。

第3争点に対する判断

1  争点(1)(期限の利益の喪失の有無)について

(1)  事実経緯

前提事実のほか、証拠(甲5、14、乙1、3の1・2、10~20、21の1・2、22~65、124、131、144)及び弁論の全趣旨を総合すると、以下の事実を認めることができる。

ア 被控訴人は、平成8年4月、勤務していた会社の営業不振から解体コンサルタントとして独立開業した。しばらくして、被控訴人は、単価が5,000,000円を超える仕事を得ることができるようになったが、運転資金が、手持ちの資金のみでは不足したために、控訴人から金員を借り入れることとし、本件契約を締結し、4,500,000円を借り入れた。その際、被控訴人は、控訴人から保証人をつけるようにいわれ、友人のB(公務員)に保証人になってもらった。

イ 被控訴人は、第1回目の分割金の支払につき、平成11年11月29日に予定どおり支払った。(なお、平成11年11月28日は日曜日であり、翌29日の被控訴人の支払は遅滞しているものではない。)

ウ 被控訴人は、年末の仕事があわただしかったことから、平成11年12月28日の夕刻、同日中に支払うべき支払をしていないことに気付き、控訴人の担当者に明日支払う旨連絡した。控訴人の担当者は、明日中に支払えば問題はなく、明日なら、183,382円になると被控訴人に伝えた。約定では平成11年12月28日には合計で179,769円を支払うべきところ(乙3の2)、1日遅れたために183,382円となったものである。なお、1日分の遅れとして、3,613円(=183,382円-179,769円)となっているが、これは残元金4,425,000円の年29.8パーセントにより計算した金額に該当する金額である。

被控訴人は、同月29日よりも1日遅れた同30日、上記金額183,382円を支払った。控訴人が被控訴人に後日送付した本件受取証(乙11)では、返済額183,382円から、残元金4,425,000円につき、平成11年11月29日から同年12月28日までの間の年29.8パーセント割合により計算した利息充当額108,382円と同月29日の1日分の損害金充当額4425円(本件受取証には記載がないが年36.5パーセントの割合により計算されている。)を控除した残額70,575円が元金に充当され、弁済後の残元本が4,354,425円であると記載されている(前提事実(3)エの控訴人の利息等の計算方法参照)。

エ 被控訴人は、手持ち資金がなかったことから、第3回目の支払日である平成12年1月28日には支払うことができなかった。控訴人担当者は、同年2月に入り、被控訴人に対し、第3回目の元金返済分と利息等の支払を催促する連絡をしたところ、被控訴人から、資金的な余裕がないので、10日に金利を、14日残りを支払う旨の回答があったので、被控訴人に対し、10日と14日に支払うべき金額を伝えた。

被控訴人は、同月10日に伝えられた金額である158,906円を支払った。しかし、同月14日に支払予定分を支払うことができなかったので、控訴人担当者に15日、16日ころまで待って欲しい旨連絡し、同月15日に、控訴人担当者に連絡して、本日支払うとして支払うべき金額を確認したうえ、同日、その知らされた金額である97,200円を支払った。

その結果、控訴人の計算によれば、別紙3元利金計算書のとおり、第3回目の支払を完了したことにより、その残元本額は、本件償還予定計算書のとおり、4,275,000円となり、当初約定の残元本額となった。

オ 控訴人担当者は、第4回目の平成12年2月28日に支払うべき金額は、本件償還表では、183,198円になっているが、被控訴人は、上記エのとおり、同年2月14日までの利息等を支払っているので、同月15日から同月27日までの利息等45,373円と元本返済額75,000円の合計120,373円でよいと被控訴人に連絡してきた。被控訴人は、控訴人担当者の指示どおりに第4回目の支払を終えた。その結果、残元本額は、本件償還予定計算書のとおり、4,200,000円となった。

カ 被控訴人は、第5回目(平成12年3月28日)、第6回目(平成12年4月28日)、第7回目(平成12年5月29日)の支払を本件償還表の予定どおり行った。その残元本額は、それぞれ、本件償還予定計算書のとおりとなり、第7回目の支払後の残元本額は、3,975,000円であった。

キ 被控訴人は、第8回目の支払日である平成12年6月28日に、控訴人担当者に、明日入金する旨、連絡したところ、控訴人担当者は、本件償還表記載の172,360円に利息等をプラスして175,605円を支払うように要求した。そこで、被控訴人は、控訴人担当者の指示どおりに、翌29日に175,605円を支払った。なお、1日遅れたために余分に支払った金額は、3,245円であり、これは、残元金は3,975,000円に対する年29.8パーセント割合の1日分に相当する金額であった。その支払の結果、残元本は、本件償還予定計算書の残元本3,900,000円となった。

被控訴人は、第9回目の支払日である同年7月28日に支払うことができず、控訴人にその旨伝え、4日に入金する旨伝え、その指示どおりの金額である193,923円を同日支払った。控訴人は、その支払額は、上記残元本額3,900,000円に対する平成12年5月29日から同年7月28日までの年29.8パーセントの割合により計算した利息等95,523円と同月29日から同年8月3日までの年36.5パーセントの割合により計算した利息等23,400円に充当後の残額が元本に充当され、その残元本は、本件償還予定計算書の残元本3,825,000円となった。

ク その後も、被控訴人や保証人は、別紙1法定金利計算書のとおりに支払をしていった。この間、毎月28日に、本件償還表に定められた金額の支払を遅滞したことがあったが、控訴人担当者に支払うべき金額等を問い合わせて、遅れて支払ったことがあった。控訴人は、遅れて支払った分については、毎月29日(休日等の場合は翌取引日)から現実に支払った日までの間は、利息等の利率を年36.5パーセントの割合で計算し、その余を元本に充当計算した。

ケ 被控訴人は、上記支払期間中を通じて、控訴人から一括弁済を求められたことも、一括弁済すべき義務が発生している旨知らされたことはなかった。被控訴人は、本件償還表記載のとおりの支払を遅滞することはあったが、その場合、控訴人の上記取扱から、遅ればせながらも、遅れた日数分のみ、利率が高い利息等を支払えば、問題がないと信じ切っていた。現に、被控訴人が支払をするたびに本件償還表の該当部分に横の棒線を引いてこれを消していった(甲3)。

(2)  上記認定事実に基づき判断するに、被控訴人は、平成11年12月28日に、同年11月29日の弁済後の残元金4,368,435円に対する同月30日から同年12月28日まで29日間の利息制限法の制限利率年15パーセントの割合による利息52,062円と元金の約定返済額75,000円の合計額である127,062円を支払うべき義務があった。

しかるに、被控訴人は、同月28日に、上記金員を支払わなかったのであるから、形式的には、「上記元金の支払を怠ったときは、通知催告なくして期限の利益を失い、債務全額及び残元本に対する遅延損害金を即時に支払う。」旨の本件期限の利益喪失特約に該当する事由が生じたということができる。

(3)  しかしながら、以下に述べる事情を総合考慮すれば、本件の具体的な状況のもとで、控訴人が、本件期限の利益喪失特約により、被控訴人が期限の利益を喪失したと主張するのは、信義誠実の原則により許されないと解することができる。

ア 上記(1)認定のとおり、被控訴人は、上記支払期間中を通じて、控訴人から一括弁済を求められたことも、一括弁済すべき義務が発生している旨知らされたこともなかった。

この点につき、乙124(控訴人神戸支店管理部Cの陳述書)には、「平成11年12月28日午後3時の時点でご入金が確認できませんでしたので、電話でXさんに連絡をとり、本日中にお支払いいただけない場合には、債権全額について請求することになると伝えております。」「期限の利益喪失後は、常に一括弁済義務が生じており、利息ではなく、損害金が生じていることを前置きしつつ請求している。」とする部分が存在する。しかしながら、被控訴人は、年末の仕事があわただしかったことから、平成11年12月28日の夕刻、同日中に支払うべき支払をしていないことに気付き、控訴人の担当者に明日支払う旨連絡した。控訴人の担当者は、明日中に支払えば問題はなく、明日なら、183,382円になると被控訴人に伝えたことは上記(1)ウのとおりであり、残額一括返済を求めていないばかりか、明日支払えば問題がない旨答えていることや、甲5、14に照らして、上記証拠部分は採用できず、他に、控訴人が、被控訴人に対し、上記支払期間中を通じて、一括弁済を求めたことや、一括弁済すべき義務が発生している旨具体的に知らせたことを認めるに足りる証拠はない。

なお、本件受取証には、損害金充当額との記載があるが、自営業を営んでいるとはいえ、法律の専門家でない被控訴人にとって、損害金充当額の記載から、期限の利益を喪失し、一括弁済の義務が発生すると読みとることは不可能に近いといわなければならない。

イ 被控訴人は、平成11年12月28日の支払をわずか2日遅れたにすぎない。

また、被控訴人が、同日に支払うべき金額は、127,062円にすぎないところ、約定のとおり、179,769円を支払うべき義務があると誤信していたことは間違いなく、その差は50,000円を超える額であり、被控訴人において、これを知っていたのであれば、同日中に127,062円を支払えた可能性もあったということができる。そして、同日中の控訴人担当者と被控訴人との電話のやりとりにおいて、控訴人担当者は、被控訴人のこの誤信を助長するやりとりをしている。

ウ 被控訴人は、上記(1)認定のとおり、第3回目以降も本件償還表記載のとおりの毎月28日の支払を遅滞し、控訴人担当者に支払うべき金額等を問い合わせて、遅れて支払ったことがあったところ、遅れて支払った分については、毎月29日(休日等の場合は翌取引日)から現実に支払った日までの間は、利息等の利率を年36.5パーセントの割合で計算し、その余を元本に充当計算した。そして、被控訴人は、控訴人の上記取扱から、遅ればせながらも、遅れた日数分のみ、利率が高い利息等を支払えば、問題がないと信じ切っていたのであり、被控訴人において、法的義務としては、一括返済の義務があるが、控訴人の恩恵的取扱により、その請求がなされていないだけであろうとは思いもよらなかったと考えられる。現に、被控訴人が支払をするたびに本件償還表の該当部分に横の棒線を引いてこれを消していっている。

ところで、本件契約の期限後の損害金の約定は、「期限後の損害金年36.5パーセント(年365日の日割計算)。ただし、期限の利益喪失後、控訴人は毎月28日までに支払われた損害金については一部免除し、年29.8パーセントとするが、この取扱いは、期限を猶予するものではない。」というものであり、被控訴人の現実の取扱は、この約定を超え、毎月28日までに損害金の支払がなかったとしても、毎月28日までの損害金は年29.8パーセントで計算するというものであり、上記約定と被控訴人の現実の取扱の相異は、一層、被控訴人の上記誤信を助長させたということができる。

エ 上記アのとおり、控訴人は、被控訴人に対し、一括弁済を求めたことはなかったのである。

ところで、控訴人にとって、一旦分割弁済を遅滞し、期限の利益を喪失する旨の約定に該当する事由が発生した後、遅ればせながらも、ほぼ毎月、ほぼ約定どおりの利息等や元金の支払をしてくれる被控訴人のような顧客は、高利率の利息等を支払ってくれるうえ、法定利率を超える利息等の過払金の返還訴訟が提起された場合は、利息制限法1条の制限利率ではなく、それよりも高利率の同法4条の制限利率が適用されるいわば上得意の顧客であったということができ、控訴人において、被控訴人が上記ウの誤信をしていることを知りながら、一括弁済を求める等その誤解を解く努力をせず、その誤信をそのまま放置して、高利率の利息等の支払を受けてきたということができる。

オ 控訴人は、当審における弁論終結間際に、乙145、146を提出し、「控訴人は、平成12年2月4日(乙144参照)に、乙145の様式による「保証債務履行通知(D)」と題する書面を保証人であるBに送付し、乙146の様式による「ご入金についてのお知らせ」と題する書面を、本件契約時に1回だけ被控訴人に交付した。いずれもその書面の控えは保存していない。」旨主張する。

仮に、乙145の様式に即した書面が保証人に送付されていたとしても、その書面には被控訴人が期限の利益を喪失した旨の記載はないし、その書面自体は被控訴人には送付されていないこと、次に、乙146の様式による書面が被控訴人に交付されていたとしても、その書面の記載自体からは、支払期日までに支払がないと当然に期限の利益を喪失する旨の記載とまではみることはできないのであり(請求があれば、期限の利益を喪失する旨の記載とみることもできる。)、これら書証から、上記の認定判断を覆すことはできず、他に、上記の認定判断を左右する事実関係を認める証拠は、存在しない。

2  争点(2)(貸金業法43条1項のみなし弁済の要件の有無)について

次の諸点から、別紙1法定金利計算書番号3以下の弁済は、貸金業法43条1項のみなし弁済の規定が適用されないことは明らかである。

(1)  既にみたように、控訴人が、被控訴人に対して、期限の利益の喪失を主張することは、信義則に違反するから、被控訴人が控訴人に「損害金」を支払う関係にはない。しかるに本件受取証(乙10を除く)の損害金の記載は、真実と相違している。

(2)  前提事実(3)オのとおり、被控訴人の返済のうち平成11年11月29日の利息制限法を超える部分の利息の支払は、貸金業法43条1項のみなし弁済に当たらず、元本に充当される。

その結果、同日の弁済後の残元本額は、別紙1法定金利計算書番号2のとおり、4,368,435円となる。

しかるに、乙11の本件受取証の前元金残高の記載は、4,425,000円となっており、真実と相違しており、したがって、その後の本件受取証の前元金残高の記載は必然的に真実と相違することになる。

(3)  本件受取証(乙10を除く。)には、貸金業法18条1項2号所定の「契約年月日」の記載がない(上記最高裁平成18年1月13日判決参照)。

3  争点(3)(保証人が弁済した分についての扱い)について

(1)  前提事実(3)イのとおり、別紙1法定金利計算書の番号14~16、26、38~41、54、57は、連帯保証人であったBが支払っている。そして、このうち番号41、54、57の支払に関し、過払金が発生しているので、その過払金の不当利得返還請求権はBに発生し、被控訴人はその支払を求める権利はない。

(2)  この点につき

被控訴人は「控訴人は、原審の答弁書で、別紙1法定金利計算書の41、54、57の支払を含め、その全部の弁済を被控訴人がしたことを認めており、この点自白が成立している。なお、控訴人は、原審での平成18年9月19日付け準備書面1において、「答弁書の訂正」として上記弁済を含む保証人による弁済の事実を主張している。しかしながら、自白を撤回する旨の明示はなく、仮に、保証人弁済分を除くと、再度保証人より控訴人に過払金返還請求をすることになり、このように紛争を後に残さない観点から、控訴人は、あえて自白したままとして、自白の撤回をしなかったのである。」との旨主張する。

そこで、検討するに、原審記録によれば、控訴人は、原審の答弁書(平成18年7月25日の原審第2回口頭弁論期日において陳述)で、別紙1法定金利計算書の41、54、57の支払を含め、その全部の弁済を被控訴人がしたことを認めており、この点で一旦自白が成立しているということができる。しかし、控訴人は、平成18年9月19日付準備書面1(平成18年10月4日の原審第4回口頭弁論期日において陳述)において、請求の原因に対する答弁の訂正として、(別紙1)法定金利計算書の番号14~16、26、38~41、54、57の弁済は、保証人のBがしたものである旨主張している。この主張は、「請求の原因に対する答弁の訂正」との頂目名の記載があるのであり、自白の撤回であることは明らかである。そして、被控訴人において、原審において、上記自白の撤回に対して異議を述べた形跡を認めることができないので、上記自白の撤回は有効になされたということができ、この点に関する被控訴人の主張は採用できない。

4  争点(4)(控訴人は悪意の受益者か否か)について

上記1(3)のとおり、被控訴人は、控訴人の現実の取扱から、遅ればせながらも、遅れた日数分のみ、利率が高い利息等を支払えば、問題がないと信じ切っていたのであり、被控訴人において、法的義務としては、一括返済の義務があるが、控訴人の恩恵的取扱により、その請求がなされていないだけであろうとは思いもよらなかったと考えられるところ、控訴人にとって、一旦分割弁済を遅滞し、期限の利益を喪失する旨の約定に該当する事由が発生した後、遅ればせながらも、ほぼ毎月、ほぼ約定どおりの利息等や元金の支払をしてくれる被控訴人のような顧客は、高利率の利息等を支払ってくれるうえ、法定利率を超える利息等の過払金の返還訴訟が提起された場合は、利息制限法1条の制限利率ではなく、それよりも高利率の同法4条の制限利率が適用されるいわば上得意の顧客であったということができ、控訴人において、被控訴人が上記の誤信をしていることを知りながら、一括弁済を求める等その誤解を解く努力をせず、その誤信をそのまま放置して、高利率の利息等の支払をうけてきたということができるのである。

この事案関係に照らせば、控訴人は、悪意の受益者といえる。

5  過払金、法定利息の計算

上記3に検討したところによれば、別紙1法定金利計算書の番号41、54、57の支払によって発生した過払金は、被控訴人が請求できないことが明らかであるから、被控訴人が請求できる過払金及び法定利息を計算すれば、別紙4利息制限法に基づく法定金利計算書のとおり、過払金の総額は、2,198,757円であり、平成16年7月13日現在での法定利息の額は、79,152円となる。

したがって、被控訴人の請求は、過払金の総額2,198,757円と平成16年7月13日現在での法定利息額79,152円の合計2,277,909円及びうち上記過払金の総額に対する平成16年7月14日から支払済みまで年5分の割合による法定利息の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し、その余は理由がないから棄却すべきである。

第4結論

以上の次第で、当裁判所の判断と一部異なる原判決を変更することとして、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 横田勝年 裁判官 東畑良雄 小林秀和)

<以下省略>

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