大阪高等裁判所 平成19年(ネ)2032号 判決 2008年4月17日
控訴人
破産者有限会社a破産管財人X
上記訴訟代理人弁護士
井口喜久治
被控訴人
中小企業金融公庫
上記代表者総裁
A
上記代理人
C
上記訴訟代理人弁護士
若尾令英
主文
1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
第1控訴の趣旨
1 原判決を取り消す。
2 大阪地方裁判所堺支部平成18年(モ)第8018号破産債権査定申立事件について、大阪地方裁判所堺支部が平成18年10月24日にした決定(以下「原決定」という。)を、「被控訴人の届け出た別紙債権目録記載の破産債権の額を2244万4000円と査定する。」と変更する。
第2事案の概要
本件は、破産会社の破産管財人である控訴人が、被控訴人の破産債権査定申立てにより大阪地方裁判所堺支部がした原決定に不服があるとして、破産債権査定異議の訴えを提起した事案である。
原審は、原決定を認可したため、控訴人が控訴した。
1 争いがない事実
(1) 破産手続開始決定等
大阪地方裁判所堺支部は、平成17年12月12日午後5時、債務者有限会社aについて破産手続を開始する旨の決定をし(大阪地方裁判所堺支部平成17年(フ)第2687号。以下、有限会社aを、この決定の前後を問わず「破産会社」という。)、控訴人を破産管財人に選任した。
(2) 根抵当権設定契約の締結等
ア 破産会社及びBは、平成10年9月10日当時、原判決添付別紙物件目録1《省略》記載の土地(以下「本件土地」という。)を、持分各2分の1の割合で共有していた。
イ 破産会社は、平成10年9月10日当時、原判決添付別紙物件目録2《省略》記載の建物(以下「本件建物」という。)を所有していた。
ウ 破産会社及びBは、平成10年9月10日、被控訴人との間で、破産会社及びBを根抵当権設定者、被控訴人を根抵当権者として、本件土地及び本件建物につき、次の内容の根抵当権を設定する旨の契約を締結し、同月18日、その旨の根抵当権設定登記手続をした。
極度額 1億5000万円
債権の範囲 証書貸付取引
債務者 破産会社
エ 破産会社及びBは、上記契約締結の際、被控訴人との間で、破産会社が債務の履行をしないときは、被控訴人において、本件土地及び本件建物を法定の手続によらず、一般に適当と認められる方法、時期、価額等により自由に処分することができ、その処分代金を任意の方法により債務の全部又は一部の弁済に充てることができる旨合意した。
(3) 金銭消費貸借契約の締結
被控訴人は、破産会社に対し、次のアないしオのとおり、5口合計1億8000万円を貸し付けた。
ア 貸付日 平成10年9月10日
金額 6000万円
償還期限 平成17年8月31日
利息 年2.5%
遅延損害金 年14.5%
(この貸付けを、以下「貸付1」という。)
イ 貸付日 平成11年2月26日
金額 1500万円
償還期限 平成21年2月28日
利息 年2.9%
遅延損害金 年14.5%
(この貸付けを、以下「貸付2」という。)
ウ 貸付日 平成11年2月26日
金額 4500万円
償還期限 平成18年2月28日
利息 年2.9%
遅延損害金 年14.5%
(この貸付けを、以下「貸付3」という。)
エ 貸付日 平成11年9月29日
金額 3500万円
償還期限 平成18年9月30日
利息 年2.3%
遅延損害金 年14.5%
(この貸付けを、以下「貸付4」という。)
オ 貸付日 平成13年1月17日
金額 2500万円
償還期限 平成19年12月31日
利息 年2.1%
遅延損害金 年14.5%
(この貸付けを、以下「貸付5」という。)
(4) 破産債権の届出及び根抵当物件の任意処分等
ア 被控訴人は、破産会社の破産手続において、平成18年2月6日付けで、貸付1ないし5に基づく債権を、次のとおり破産債権として届け出た(この破産債権を、以下「本件破産債権」という。)。
貸付1 3528万円
貸付2 1119万4000円
貸付3 2978万円
貸付4 2608万8000円
貸付5 2244万4000円
貸付1ないし5の約定利息金合計 35万2815円
貸付1ないし5の遅延損害金合計(破産手続開始決定日の前日までの分)
153万7140円
貸付1ないし5の遅延損害金合計(破産手続開始決定日以降の分)
未定
イ 本件土地及び本件建物は平成18年3月28日に任意売却され、被控訴人は、①本件土地の破産会社持分の売却代金から4817万8443円、②本件土地のB持分の売却代金から4817万8444円、③本件建物の売却代金から2878万1928円、合計1億2513万8815円を本件破産債権に対する弁済として受領した(上記①ないし③の弁済金を、以下それぞれ「弁済金①」「弁済金②」「弁済金③」という。)。
ウ 被控訴人は、弁済金①及び③の合計7696万0371円を、届出に係る貸付1ないし5の遅延損害金合計684万1398円(破産手続開始決定日以降平成18年3月28日までの分を含む。)、貸付1ないし5の約定利息合計35万2815円、貸付1の3528万円、貸付2の1119万4000円及び貸付3のうちの2329万2158円に充当した。
エ 前記イ、ウにより、本件破産債権につき別除権行使不足額が確定したため、被控訴人は、平成18年4月10日付けで、同年3月28日現在の債権額1億3198万0213円から、弁済金①及び③の合計7696万0371円を控除した5501万9842円を確定不足額とする届出書を提出した。
これに対し、控訴人は、同年7月6日の債権調査期日において、上記確定不足額全額について異議を述べた。
(5) 破産債権査定申立て及び原決定
被控訴人は、平成18年7月28日、大阪地方裁判所堺支部に対し、本件破産債権の額の査定を申し立てた(同裁判所平成18年(モ)第8018号)ところ、同裁判所は、同年10月24日、本件破産債権の額を5501万9842円と査定する決定(原決定)をした。
2 争点
(1) 同一債権者に複数の債務を負担する債務者の破産手続開始決定後に、上記すべての債権を被担保債権とする根抵当権を設定した物上保証人から、債権者がその債権の一部について全額弁済を受けることの、届出債権額への影響の有無
(2) 代位権不行使特約の効果
(3) 弁済充当特約及びこれに基づく指定の効果
3 争点に対する当事者の主張
(1) 争点(1)について
次のとおり付加、訂正し、当審における当事者の主張を追加するほかは、原判決の「事実及び理由」の第2の3(1)、(2)(同6頁1行目から同8頁18行目まで)のとおりであるから、これを引用する。
ア 原判決の付加、訂正
(ア) 同6頁7・8行目の「同昭和62年4月23日第一小法廷判決・金融法務事情1169号29頁」の次に「[以下「昭和62年判決」という。]」を加える。
(イ) 同8頁10行目の「平成14年判決は、」から同12行目の「同条1項の」までを「破産法104条1項の」と改める。
イ 当審における当事者の主張
(控訴人)
被控訴人が本件破産債権として届け出た複数の債権は、その発生原因事実を異にするだけでなく、償還期限、約定利率、遅延損害金などその具体的内容をも異にする別個独立の債権である。したがって、上記各届出債権を1個の債権とみることは、形式的にも実質的にも許されない。
そして、複数の届出債権の一部について全部弁済がなされた場合、その部分について、破産手続開始時に有していた債権の全額について権利を行使できるという見解(以下「手続開始時現存額主義」という。)が及ばないとすれば、届出債権者がトータルで受ける満足が低下することは事実である。しかし、それは、届出債権の一部について全部弁済を受けたことの当然の帰結である。
逆に、複数の届出債権の全部の満足を与えない限り手続開始時現存額主義が適用されるとすれば、届出債権者の回収は極大化されることになる。しかし、①弁済者代位の基本構造、②全部弁済により債権は消滅するという民法の基本原則を無視し、手続開始時現存額主義の適用範囲を拡大することは、他の破産債権者が受けるであろうわずかの配当的満足に比して、特定の破産債権者のみに過剰な保護を与える点で、極めて公平を欠く解決であるとしかいいようがない。したがって、破産法104条2項、4項及び5項の趣旨のみを根拠として、一部の届出債権について全部弁済がなされた場合にまで手続開始時現存額主義を拡張適用することは不当である。
また、本件での弁済者は、担保目的物の交換価値を限度とした物的有限責任のみを負担する物上保証人である。したがって、担保目的物が換価され、その換価代金により弁済がなされた場合には、物上保証人はその責任を完全に果たしたといえ、残りの届出債権について履行義務を負担しないことは明らかである。そして、担保目的物が換価され、その換価代金により弁済がなされた場合には、根抵当権設定契約がその目的を達成して終了することは当然であり、物上保証人に他の届出債権の満足を低下させてはならないとの消極的義務など認められるものではない。
なお、根抵当権は、確定によって普通抵当と同じく確定債権を担保する抵当権となるから、極度額の範囲で担保された債権全体が1個の債権であるとの主張は失当である。
また、破産法104条5項で想定されているのは、1個の債権の満足すら物上保証人が与えていない場合である。物上保証人の弁済により届出債権の一部が全部弁済されている以上、原則どおり物上保証人の代位を認めるべきであり、手続開始時現存額主義の準用ないし類推適用は認められないと解すべきである。
(被控訴人)
複数の届出債権の一部について全部弁済がなされても、破産手続において届出債権について全部弁済を受けたことにはならず、昭和62年判決は、まさにこのような結果を認めないとしたものである。
控訴人の上記公平を欠くとする主張は、本来の破産債権者と、連帯保証人あるいは物上保証人などの代位弁済者を同一レベルの破産債権者として扱っており、平成14年判決の趣旨に反する。
複数の届出債権全額の弁済がない限り代位しないとするのは、破産法104条の解釈として当然の帰結である。破産手続は、包括執行であって、破綻した債務者の配当対象財産を全部換価し、破産債権者の債権はすべて金銭化、現在化して、配当率を計算した上で配当するものであるから、当然届出債権全部についての手続である。控訴人は、民法理論に基づいて代位弁済者の保護を主張するが、破産法104条は債権者保護の徹底を図った特別法であり、特別法が優先する。
(2) 争点(2)について
(被控訴人)
本件では、被控訴人とBとの間に、Bが債務の一部を弁済して被控訴人に代位する場合には、被控訴人の承認を受けた場合を除き、その代位により取得すべき一切の権利を行使せず、また被控訴人の請求により、その権利又は順位を被控訴人に無償で譲渡する旨の特約があるから、Bは代位権を行使できない。
(控訴人)
被控訴人が指摘する代位特約が1個の債権の一部についてのみ弁済がなされたという典型的な一部代位弁済事例を想定していることは、その文言上明らかであり、本件のように1個の債権について全部弁済がなされた事例には適用がない。
(3) 争点(3)について
(被控訴人)
本件では、被控訴人とBとの間に、破産会社の被控訴人からの借入れが数個ある場合において、債務の全部を消滅させるに足りない弁済がなされたときは、被控訴人が適当と認める順序方法により任意の時期に充当することができ、その充当に対しては、Bは異議を述べない旨の特約がある。そこで、被控訴人は、平成19年11月30日の当審第2回口頭弁論期日において、Bからの弁済金を各債権に案分して充当する旨意思表示をした。これにより、いずれの債権についても全部弁済とはならないから、被控訴人は、届出債権全額(ただし、別除権行使額を除く。)に基づいて配当を受けることができる。
(控訴人)
被控訴人から、物上保証人であるBが弁済した分についての充当内容は一切明らかにされておらず、また、破産会社、Bに対する充当の意思表示もされていなかった。そうすると、被控訴人が債権残高を684万1398円と確定させるに至ったのは、被控訴人による指定充当権の行使によるものではなく、法定充当によるものといわざるを得ない。このように解することは、被控訴人が、別除権行使による回収額に関し、法定充当に従い充当するとしたことと首尾一貫する。そして、本件では、民法489条2号が適用される結果、届出債権中、貸付3、貸付4の債権が消滅し、貸付5の債権はその残額が684万1398円となる。したがって、被控訴人が当審で行った予備的な指定充当は何ら効力を有しない。
第3当裁判所の判断
1 争点(1)について
(1) 破産法104条2項の趣旨は、連帯保証人等の全部義務を負担する者(以下「全部義務者」という。)が破産手続開始後に債権の一部を弁済をしたにすぎない場合に、直ちに破産手続開始の時に有する債権額に対する弁済の額の割合に応じて債権者の権利を行使することができるとすれば、債権者が上記債権全額の満足を得られていない場合にも、上記全部義務者が、残債権につき履行する義務が残っているにもかかわらず、弁済額の割合に応じて債権者の権利を取得し破産債権者としての権利を行使できることとなり、債権者を害する結果となるとの見地から、債権者は、他の全部義務者から弁済を受けたとしても、債権全額が消滅した場合を除いて、なお破産手続開始時に有していた債権の全額について権利を行使できること(手続開始時現存額主義)を規定したものである。また、同条4項は、上記全部義務者について、債権全額が消滅した場合を除いて、破産手続に参加して債権者の有していた権利を破産債権者として行使することができない旨規定したものである。
上記各条文は、全部義務者の履行は、債権者にとってその全額が履行されて初めて債権者の利益が実現されることになり、全部義務者も当初の契約時にそのような状況を認識、了解して履行義務を負担したのであるから、かかる状況が実現されていない段階では、全部義務者の利益よりも債権者の利益が優先されてもやむをえないとの見地から、有限の破産財団からの平等配当を目的とするため債権が実債権としての価値を失い、全額の弁済を受けることが期待できない破産手続において、複数の債務者の一般財産を集積し債権の強化を図った目的を全うするために規定されたものといえる。
そして、複数の債務についての全部義務者が、そのうちの一部の債務について全額弁済した場合においても、全部義務者からすると、全額弁済した債務以外の他の債務が残存している以上、当初約束した全部履行義務を果たしたとはいえず、債権者からしても、全部義務者が約束した利益が実現されるには至っていないのであるから、1個の債務についての全部義務者がその一部について弁済した場合と、利益状況は異なるものではない。したがって、複数の債務の全部義務者は、他の債務者について破産手続が開始された後、そのうちの一部の債務を全額弁済しても、当該弁済した分について債権者に代位することはできず、債権者は上記弁済分を控除しない金額で破産債権を行使することができる(破産法104条2項が適用される。)と解するのが相当である。
(2) ところで、物上保証人は、全部義務者と異なり、担保に供した特定財産の価額の限度において責任を負うにすぎないが、物上保証人も全部義務者も、債権者が債務者から債権の完全な弁済を受けられない場合に備えて、有限又は無限の責任を負担するものであって、責任の集積により債権の効力の強化を図るという点においては異なるものではない(平成14年判決)。また、破産法104条5項が、同条2項、4項を準用しているのは、上記のような物上保証人の性格に鑑みて、物上保証人が破産手続開始後に債権の一部を弁済して求償権を取得しても、債権者が破産手続開始時に有する債権全額の満足を受ける前に、債権者に一部代位して破産財団からの配当により求償権の満足を得るいわれはなく、また、前記のとおり有限の破産財団からの平等配当を目的とする破産手続においては、債権の全額の満足を得るまで債権者が破産手続開始時において有する債権の全額を行使し得るとすることが物上保証の目的に沿うとの見解に基づくものである。したがって、かかる物上保証人の性格及び上記規定の趣旨に鑑みると、前記(1)で全部義務者について検討したところは、物上保証人についても妥当するというべきである。
すなわち、1個の根抵当権で複数の債権を担保している場合、同根抵当権を自己の所有する不動産に設定している物上保証人は、極度額及び当該担保不動産の交換価値の限度に限定されるとはいえ、上記複数の被担保債権すべてについて債権者(根抵当権者)に満足を得させるべき責任を負担しているところ、主債務者の破産手続開始決定後、当該不動産の売却等によって上記複数の被担保債権の一部について全額弁済がなされたとしても、債権者は物上保証に係る被担保債権全額の満足を得るに至っていない。かかる債権者及び物上保証人の状況は、1個の債権の物上保証人がその債権の一部弁済をした場合と同様のものと考えることができるから、破産法104条5項による同条2項、4項の準用により、物上保証人は債権者に代位して破産手続に参加することはできず、他方、債権者は、物上保証人による弁済額を控除されることなく届出債権全額について破産債権として行使することができるものと解するのが相当である。
なお、物上保証人の責任は、当該担保不動産の交換価値の限度に限定されており、同不動産の売却代金で債務を弁済すれば、それ以上の責任は免れるものである。しかし、特に本件のような根抵当権設定による物上保証の場合、物上保証人としては、根抵当権設定時に、極度額の範囲内で当該根抵当権によって複数の債権が担保されることとなることを当然予定していたはずであり、担保不動産の売却代金をもって被担保債権全額の弁済ができないときに債権者との間で前記のような状況が生じることも予見し得たものといえるから、かかる物上保証人について、債権者に代位して破産手続に参加することを認めなくても、不当に不利益を与えることにはならないというべきである。
(3) この点に関し、控訴人は、平成17年判決が示した価値判断に照らせば、物上保証人は全部弁済をした特定の債権につき債権者と対等の資格で配当手続に参加することができ、その反面、債権者は同債権を行使できなくなると解すべきである旨主張する。しかし、平成17年判決は、不動産を目的とする1個の抵当権が数個の債権を担保する場合に、そのうちの1個の債権のみについての保証人が、当該債権に係る残債務全額につき代位弁済した事案において、当該抵当不動産の換価による売却代金が被担保債権のすべてを消滅させるに足りないときには、上記売却代金につき、債権者が有する残債権額と保証人が代位によって取得した債権額に応じて案分して弁済を受けるべきである旨判示したものであって、複数の債権を被担保債権とする根抵当権を設定した物上保証人から債権者がその債権の一部について全額弁済を受けた本件とは、明らかに事案を異にするものである。
また、控訴人は、複数口の債権の一部の口が譲渡された後に、当該譲渡債権の全額について代位弁済がなされた場合、弁済者による代位が当然に認められることとの均衡からも、本件で手続開始時現存額主義は適用されるべきでない旨主張する。しかしながら、控訴人が掲げる事例は、上記債権譲受人が、債権者から複数口の債権の一部の口の債権譲渡を受けて債権者と対等の地位(債権者が有する残債権額と譲渡債権額に応じて案分して弁済を受け得る地位)に立った後、保証人等からその債権の全額について代位弁済を受けたというものであり、この代位弁済者は、本件のような物上保証人が債権者に対し複数口の債権の一部について全額代位弁済した場合とは異なり、そもそも破産法104条が適用されるべき対象でないことは明らかである。
したがって、上記控訴人の主張は、いずれも採用することができない。
2 そうすると、前記第2の1(4)のとおり、本件破産債権の合計残額は、弁済金①及び③(破産会社による弁済分)が充当された結果、5501万9842円となるところ、弁済金②(物上保証人であるBによる弁済分4817万8444円)は、貸付③の残額648万7842円及び貸付④の2608万8000円を全額弁済し得る金額ではあるが、本件破産債権の合計残額すべてを消滅させるには足りないものであるから、本件破産債権の合計残額から上記貸付③の残額及び貸付④の金額を更に控除することはできない。したがって、被控訴人が破産会社の破産手続において行使し得る本件破産債権の額は、5501万9842円となる。
3 その他、原審及び当審における当事者提出の各準備書面記載の主張に照らし、原審及び当審で提出された全証拠を改めて精査しても、当審の判断を覆すほどのものはない。
第4結論
以上の次第で、その余の争点について判断するまでもなく、被控訴人の届出に係る本件破産債権の額は5501万9842円と査定すべきである。
よって、これと同旨の原決定を認可した原判決は相当であり、本件控訴は理由がないから棄却することとし、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 大谷正治 裁判官 高田泰治 西井和徒)