大阪高等裁判所 平成19年(ネ)3214号 判決 2008年4月09日
控訴人(被告)
アコム株式会社
代表者代表取締役
A
訴訟代理人弁護士
谷澤英毅
被控訴人(原告)
X
訴訟代理人弁護士
神原亜子
主文
1 原判決を次のとおり変更する。
(1) 控訴人は被控訴人に対して、金101万3777円及びこれに対する平成18年11月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(2) 被控訴人のその余の請求を棄却する。
2 訴訟費用は、1、2審を通じて5分し、その1を控訴人の、その余を被控訴人の各負担とする。
3 この判決の1頁(1)は仮に執行することができる。
事実及び理由
第1当事者の求める裁判
1 控訴人
(1) 原判決を取り消す。
(2) 被控訴人の請求を棄却する。
(3) 訴訟費用は1、2審とも被控訴人の負担とする。
2 被控訴人
(1) 本件控訴を棄却する。
(2) 控訴費用は控訴人の負担とする。
第2事案の概要
1 事案の概要
(1) 本件は、貸金業者である控訴人から昭和57年9月24日以降借入れをしていた被控訴人が、その間に支払った利息制限法所定の制限額を超過する利息を元本に充当すると過払金が生じているとして、過払金(532万2790円)及び中間の過払金についての確定利息(15万9218円)並びに上記過払金に対する最終弁済日の翌日(平成18年11月1日)から民法所定の年5分の割合の利息の支払いを求めた事案である。
(2) 本件の主たる争点は、平成6年4月24日になされたそれまでの基本契約に基づく借入金残額の完済(以下「本件弁済」という。)以前の取引(本件第1取引)によって生じた過払金が、その51日後になされた新たな基本契約に基づく借入れ以降の取引(本件第2取引)によって生じた借入金債務の弁済に当然に充当されるか否かである。控訴人は、この充当がなされないことを前提として、本件第1取引によって生じた過払金返還請求権について10年の消滅時効を援用している。
(3) 原判決は、本件第1取引及び本件第2取引の各貸付けは、本件第2取引の最初の貸付けを除き、従前の貸付けの切替え及び貸増しとして、長年にわたり同様の方法で反復継続して行われていたものであり、本件第2取引の最初の貸付けも、前回の返済(本件弁済)から期間的に接着し、前後の貸付けと同様の方法と貸付条件で行われたものであるから、本件第1取引と本件第2取引は全体が1個の連続した貸付取引に当たると判断し、本件第2取引について新たな基本契約書が作成されていることなどのみで、この判断を覆すことはできないとした。その結果、本件第1取引によって生じた過払金はその後の本件第2取引によって発生した借入金債務に当然に充当されていると判断して、控訴人の消滅時効の主張を認めず、被控訴人の請求を全部認容した。
2 前提事実並びに争点及び争点に関する当事者双方の主張は、当審補充主張のほかは、原判決が事実及び理由の事案の概要の1、2に摘示するとおりであるから、原告を被控訴人、被告を控訴人と改めるなど一部を補正した上で以下に引用する。
『1 前提事実
(1) 被控訴人は、昭和57年9月24日から平成18年10月31日までの間、控訴人から、原判決別紙のとおり、金銭の借入れ及び弁済をした(以下「本件取引」といい、個別の貸付け又は弁済を特定する場合、同別紙の番号に対応させ、「本件貸付け1」、「本件弁済2」などという。また、本件取引中の貸付けを合わせて「本件各貸付け」、本件取引中の弁済を合わせて「本件各弁済」という。)。
(2) 控訴人は、平成19年6月21日、原審第1回弁論準備手続期日において、被控訴人に対し、平成6年4月26日にされた本件弁済233以前の本件取引(これを「本件第1取引」と、本件貸付け234以降の本件取引を「本件第2取引」という。)に係る被控訴人の控訴人に対する過払金返還請求権が10年の経過により消滅したとして、消滅時効を援用する旨の意思表示をした。
2 争点及びこれに対する当事者の主張
(1) 控訴人は過払金について悪意の受益者にあたるか否か
(被控訴人)
控訴人は、被控訴人から、制限超過利息を債務の弁済として受領しており、被控訴人の弁済が貸金業の規制等に関する法律(平成18年法律第50号による改正前のもの。以下「貸金業法」という。)43条1項の適用が認められず、かつ、同項の適用があるとの認識を有するに至ったことについてやむを得ないといえる特段の事情がない以上、当然、悪意の受益者である。
(控訴人)
控訴人は、被控訴人から、本件各弁済において、制限超過利息を債務の弁済として受領していたが、貸金業法43条1項の適用があると認識していた。そして、最高裁平成16年(受)第1518号同18年1月13日第二小法廷判決・民集60巻1号1頁(以下「平成18年判決」という。)が出されるまでは、裁判例において、貸金業法43条1項の適用があることを認める判断が少なからず示されていたこと、同項の適用がない場合に必ず過払金返還請求権が生じるわけではなく、制限超過利息を元本に充当しても、なお、元本が残る場合もあるから、貸金業者において顧客の同請求権の発生の有無・時期を正確に認識できないことからすれば、控訴人が貸金業法43条1項の適用があると認識していたことについては、やむを得ないといえる特段の事情がある。
(2) 当然充当の成否及び消滅時効
(控訴人)
被控訴人は、控訴人に対し、本件第1取引に係る債務を完済し、カードローン基本契約を解約した後、新たに取引の申込みをし、与信審査を受け、カードローン基本契約を締結し、本件第2取引を開始したことから、本件第1取引と本件第2取引は、契約番号が異なるものとなった。よって、本件第1取引と本件第2取引は、別個の取引である。
また、貸金業者及び顧客は、いずれも、完済後も基本契約を解約することを望まない。それにもかかわらず、被控訴人は、本件第1取引のカードローン基本契約を解約したのであるから、本件第1取引の弁済によって過払金が発生した場合、これをその後の本件第2取引によって発生する新たな借入金債務に充当することを合意しているものと解する余地はない。
なお、本件第1取引終了から本件第2取引開始まで51日の期間が空いていることについては、その後、何が生じるか分かるはずもないから、その期間が短いということにはならない。
よって、本件第1取引によって生じた被控訴人の過払金返還請求権は、最終弁済日である平成6年4月26日から10年が経過し、控訴人が消滅時効を援用したことから、時効により消滅した。
(被控訴人)
本件第1取引と本件第2取引は、同一当事者間において、借入限度額を定めて継続的に借入れと弁済を繰り返すことが予定された、同種の継続的な金銭消費貸借取引であり、毎月の弁済については、借入金額を基準に一定額以上と定められているから、一連一体の取引である。
また、借主にとって過払金がいつどれだけ発生したかを把握することは困難であるから、契約当事者の合理的意思解釈として、本件第1取引終了時に発生していた過払金はその後に発生する貸付けに充当されるものというべきである。また、上記のような取引の性質からすれば、過払金の充当の対象は、全体としての貸付金であり、弁済当時存在する貸付金はもとより、その後に発生する貸付金にも充当する意思が含まれている。よって、控訴人が消滅時効を援用する余地はない。
さらに、控訴人の被控訴人に対する新たな貸付けは、その都度、過払金が充当されるのであるから、控訴人の債務の承認に当たる。』
3 当審補充主張
(1) 控訴人の主張
ア 原判決は、本件取引を一個の連続した貸付けであると認定判断しているが、その根拠は全く薄弱で、本件取引が基本契約に基づいてなされていることを見過ごし、最高裁判所の示す基準を念頭に置かず、これに反して原審裁判官独自の主観的な判断をしている。
イ 過払金が、過払金発生当時(弁済当時)には存在せずその後発生した他の貸付金への充当が許されるのは例外的な場合であって、それが認められるのは当事者の合意(充当の合意)が存在する場合等に限られるとするのが最高裁の判例である。最高裁第3小法廷平成19年2月13日判決(以下「19・2・13判決」という。)は、この当たり前の法理を確認し、それまでこの法理を無視した無原則で非論理的な下級審判決が散見された事態に歯止めをかけたといっても過言ではない。それ以降の最高裁の累次の判決でもこれが確認され、具体的な判断要素が示されている。
(ア) 19・2・13判決
同判決は、基本契約が締結されずに第1の貸付けが行われ、第1の貸付けにおいて過払金が発生後、第2の貸付けが行われた事案に関するものである。同判決は、過払金がその時点では存在せず、その後に生じた貸付金に当然充当されるための要件事実を、次の2事実であると明示し、本件はそれが充足されていないとして、充当を否定した。
① 基本契約が締結されているか、基本契約が締結されていなくとも基本契約が締結されているのと同様の貸付けが繰り返されていること。
② 第1の貸付けの際にも第2の貸付けが想定されていたとか、過払金の充当に関する特約が存在するなど特段の事情があること
(イ) 最高裁第1小法廷平成19年6月7日判決(以下「19・6・7判決」という。)
同判決は、時期を異にして成立したA・Bの2個の基本契約が併存していた事案である。同判決は、A基本契約の過払金はその後生じたA基本契約の他の借入金に、B基本契約の過払金はその後生じたB基本契約の他の借入金にそれぞれ当然充当されるものとした。同判決は、「弁済によって過払金が発生しても、その当時他の借入金債務が存在しなかった場合には、上記過払金はその後に発生した新たな借入金債務に当然に充当されるものということはできない。」「しかし、この場合においても、少なくとも、当事者間に上記過払金を新たな借入金債務に充当する旨の合意が存在するときは、その合意に従った充当がされるものというべきである。」「本件各基本契約に基づく債務の弁済は、各貸付けごとに個別的な対応関係をもって行われることが予定されているものではなく、本件各基本契約に基づく借入金の全体に対して行われるものと解されるのであり、充当の対象となるのはこのような全体としての借入金債務であると解することができる。そうすると、本件各基本契約は、同契約に基づく各借入金債務に対する各弁済金のうち制限超過部分を元本に充当した結果、過払金が発生した場合には、上記過払金を、弁済当時存在する他の借入金債務に充当することはもとより、弁済当時他の借入金債務が存在しないときでもその後に発生する新たな借入金債務に充当する旨の合意を含んでいるものと解するのが相当である。」と判示している。すなわち、最高裁判所は、基本契約がそのような充当の合意を包含しているとして、過払金のその後に生じた同一の基本契約内における借入金への充当を認めたのである。基本契約が充当合意の根拠であり、計算は基本契約ごとになされるべきことが明確に判断されている。
(ウ) 最高裁第1小法廷平成19年7月19日判決(以下「19・7・19判決」という。)
同判決は基本契約が締結されていない当事者間で連続した金銭消費貸借取引が行われた事案である。この事案は、従前の貸付けの返済期間の途中で従前の貸付金残額と追加貸付金額の合計額を新たな貸付金額とする旨合意した上で書類上は別個の書面が作成されており、貸付残高が最初から最後まで途切れることなく継続している事案である。そのような事案において原審が一個の連続した貸付取引であると認定した事実を踏まえ、過払金をその後生ずる新たな借入金債務に充当する旨の合意を含んでいるものとして、充当計算を肯定したものである。まさに、基本契約が締結されているのと同様の貸付けが繰り返されており、かつ、一つの貸付の際に(切替え及び貸増しのため)次の貸付けを行うことが想定されていたといえる場合で、前記19・2・13判決の掲げる要件事実を満たしている。
(エ) 最高裁第2小法廷判決平成20年1月18日判決(以下「20・1・18判決」という。)
同判決は、2つの基本契約が時期を異にして存在する場合について、前記の19・2・13判決及び19・6・7判決を引用して、「第1の基本契約に基づく取引により発生した過払金を新たな借入金債務に充当する旨の合意が存在するなど特段の事情がない限り、第1の基本契約に基づく取引に係る過払金は、(その後に改めて締結された)第2の基本契約に基づく取引に係る債務には充当されない」との原則を再確認した上で、例外的に、「第1の基本契約に基づく債務が完済されてもこれが終了せず、第1の基本契約に基づく取引と第2の基本契約に基づく取引とが事実上1個の連続した貸付取引であると評価することができる場合」には、充当の合意が存在するものと解するのが相当であるとした。そして、そのように評価できる場合の判断要素として、「第1の基本契約に基づく貸付け及び弁済が反復継続して行われた期間の長さやこれに基づく最終の弁済から第2の基本契約に基づく最初の貸付けまでの期間、第1の基本契約についての契約書の返還の有無、借入れ等に際し使用されるカードが発行されている場合にはその失効手続の有無、第1の基本契約に基づく最終の弁済から第2の基本契約が締結されるまでの間における貸主と借主との接触の状況、第2の基本契約が締結されるに至る経緯、第1と第2の各基本契約における利率等の契約条件の異同等の事情」をあげている。
ウ 最高裁判例の本件への適用
(ア) 弁済当時(過払金発生時)に存在せずその後発生した借入金債務についての充当が認められる実定法上の根拠規定は存在しない。前記の20・1・18判決を含む一連の最高裁判決のいう「第1の基本契約に基づく取引に係る過払金は、その後に締結された第2の基本契約に基づく取引に係る債務には充当されない」という原則は、法理上は当然のことというべきである。本件のように複数の基本契約が存在する場合には、本件第1取引終了時に存在した過払金は本件第2取引の借入金に当然に充当されるものではない。
(イ) もっとも、20・1・18判決によれば、複数の基本契約が存在する場合にも、第1の基本契約に基づく債務が完済されても同契約が終了せず、第1の基本契約に基づく取引と第2の基本契約に基づく取引とが事実上1個の連続した貸付取引であると評価することができる場合には、例外的に、第1の基本契約に基づき発生した過払金がその後に締結された第2の基本契約に基づく取引に係る債務に充当する旨の当事者の合意があると評価することができることになる。
(ウ) そこで、本件の具体的な事情において、この様な評価ができるか否かを検討する。
a 最初の基本契約に基づく本件第1取引は、昭和57年9月24日から平成6年4月26日まで約11年6か月間にも及んでいる。取引期間が長ければ長いほど、貸主・借主とも借入金残高がゼロになっても基本契約を解約しなければならない意思も必要もないといえるが、その反面、それにもかかわらず明示的に解約手続を行う場合には、長年の継続的契約を終了させるという趣旨が明らかであるから、解約後になされた別の基本契約に基づく取引とは別個の取引であると判断する根拠になる。ちなみに、消費者金融業者としては長期間取引のある顧客は歓迎すべきものであり、貸金業者の方から解約を求めることは一般にない。たとえ当面の融資残高を完済しても、基本契約だけでも残して再利用してくれるのを望むのである。解約してしまえば、再度取引を行うためには、運転免許証や健康保険証を提示し、勤務先を確認するなどの面倒な手続を再度行うこととなるのであって、顧客としては同じ手間なら他の業者との取引を選ぶこともあり得るのである。現に平成14年9月に控訴人との基本契約を解約した顧客1万0113件のうち1年内に再度基本契約が締結された割合は約12%、平成19年10月末日までにしても約22%に過ぎない。
b しかも、本件の場合は、被控訴人側からの求めによりわざわざ基本契約を解約によって終了させ継続的取引を切断したのである(ちなみに、本件第1取引期間中3回の契約の切換がなされているが、その際には基本契約自体の解約はされていない。)。基本契約が解約によって終了していることは、2つの基本契約による取引が事実上連続した1個のものであるとの評価を妨げる。もっとも、第1の基本契約に基づく最終の弁済から第2の基本契約に基づく最初の貸付けまでの期間は約2か月間と短いものであるが、第1の基本契約は解約によって終了しており、取引終了の意思も明確であり、短い期間を開けることによって形式的に2つの基本契約が存在するような体裁を整えたようなものではない以上、第1の基本契約による債務が完済されてもこれが終了せず、その後の取引と事実上一個の連続した取引となると評価される事情にはならない。
c 契約書返還の有無については、本件では、平成6年4月26日、被控訴人が17万0688円を弁済して控訴人に対する債務残高をゼロにし、同時に本件第1取引の基本契約の解約を申し出て、控訴人から被控訴人に対して同契約の契約書原本が返還され、被控訴人はこれを受け取っている。
d また、本件では、借入れについてアコムカードと呼ばれるATMで使用できるカードが発行されていたところ、前記債務完済と基本契約解約に伴い、カードが廃棄され失効手続がなされている。
e 第1の基本契約の最終弁済から第2の基本契約締結までの間に、借主と貸主との間で貸付の勧誘等の接触があったなどとの事情はない。
f また、本件第2取引の基本契約が再び締結されるに至ったのは、控訴人が店頭を訪れ、再取引を望んだもので、これに対して控訴人は審査の結果、新たに基本契約を締結したものである。本件第2取引の基本契約が外形的に別個の基本契約の体裁を作成しただけであるとか、貸主の方からの執拗な勧誘で開始されたというような事情はない。
g 本件第1取引と本件第2取引の各基本契約はいずれもいわゆるリボルビング形式の継続的金銭消費貸借で、利率や遅延損害金の割合等は同一であるが、この種の基本契約は普通約款としての性質が強く、個別に定められる部分は少ないから、条件が一致していたとしても、そのことが事実上1個の取引であると評価すべきことを意味するものではない。なお、平成6年当時、控訴人は既に無担保ローンにおける単発の証書貸付けは行っておらず、包括契約型の基本契約によるローンのみを取り扱っていた。
h なお、本件第1取引と本件第2取引の基本契約は、会員番号(アコム会員番号、アコムカードの番号でもある。)が、第1取引が061○○○、第2取引が066△△△と異なっている。支店ごとの顧客管理のための整理番号は<省略>で同一であるが、これは被控訴人という取引先ごとに付されるものであるから、契約の同一性とは異なるものである。
以上のとおり、本件では、第1の基本契約に基づく取引に係る過払金が、その後に締結された第2の基本契約に基づく取引に係る債務に充当される要件事実となる「第1の基本契約に基づく取引に係る過払金を新たな借入金債務に充当する旨の合意が存在するなどの特段の事情」はないことが明らかである。
(2) 被控訴人の主張
ア 取引の連続性
本件各貸付は、一個の連続した貸付取引である。本件第1取引は、昭和57年9月27日から平成6年4月26日まで約11年7か月の長きにわたって継続し、貸付と返済が繰り返されてきた。そして、平成6年4月26日に17万0688円を返済した後、わずか51日後である同年6月16日に再度の借入れが始まっている。そして、本件第1取引と第2取引の契約条件は、利息は年27.375%、遅延損害金は年36.50%で、全く同じである。本件第2取引の開始にあたって審査のために必要とされる情報は、氏名・住所・電話番号・性別・勤務先・独身既婚の別・生年月日のみであって、被控訴人の場合には本件第1取引の時点と本件第2取引開始の時点で変わった点はない。そして、控訴人は与信審査において通常必要とされる収入を証明する書面の提出を求めていないばかりか、口頭で収入を確認することすらしていない。したがって、審査は単に名目上のものであり実質的な審査は何ら行われておらず、本件第1取引が従前どおり継続されることの確認の手段に過ぎない。契約番号も本件第1取引が□□□-02で、本件第2取引は□□□-01であり、控訴人は被控訴人を同じ番号で管理し、再契約にあたり末尾の4つの数字を一つずつ増やしていくだけであり、そのことからも、控訴人が被控訴人に対して再度の貸付を予定していたといわざるを得ない。また、控訴人と被控訴人はたびたび「再契約」を行っているが、この再契約は単に残高がゼロになったときの扱いに過ぎず、これは、本件第2取引冒頭の平成6年6月16日の借入れ時においても同様である。
このように、本件第1取引と本件第2取引は、継続的に貸付が繰り返されることを予定した、一体、一連の取引である。
イ 最高裁判決について
(ア) 19・2・13判決
この判決は、継続的な貸付が繰り返されることを予定した基本契約が締結されていない場合であり、さらに反復継続した取引を予定していたとはいいにくい事案についてのものである。このような特別な事情の下における判決であり、本件を含めた、一般的な消費者金融業者との間の取引の事案に妥当するものではない。
(イ) 19・6・7判決
同判決は、債務者側は複数の基本契約を一体として計算すべきだとの主張をしておらず、この点についての判断は示されていない。取引の形態から過払金が発生した時点で他の借入金債務が存在しないときでも、その後に発生する新たな借入金債務に過払金を充当する旨の合意を含んでいるものと解するのが相当であるとされたものである。
(ウ) 19・7・19判決
同判決は、従前の契約の切り替え及び貸し増しとして長年にわたり反復継続して貸付け、返済が行われていた事案について、一旦債務を返済して3か月後に従前の貸付けと同様の方法と条件で貸付けがなされた場合についてのものである。それについて、同判決は「前回の返済から期間的に接着し、前後の貸付けと同様の方法、貸付条件で行われたものであるというのであるから、本件各貸付けを1個の連続した貸付取引であるとした原審の認定判断は相当である。」とした上で、さらに、当事者は「複数の権利関係が発生するような事態が生ずることを望まないのが通常であることに照らしても、制限超過部分を元本に充当した結果、過払金が発生した場合には、その後に発生する新たな借入金債務に充当することを合意しているものと解するのが合理的である。」としているものである。
本件においても、前回の返済から51日という非常に時間的に接着した時期に、前後の貸付けと全く同様の方法と貸付条件で貸付けが行われている。そして、当事者としても、複数の権利関係が発生するような事態が生じることは望んでいないというべきである。同判決に照らすと、少なくとも本件は、「1個の連続した」取引とされるものである。
(エ) 20・1・18判決
同判決においては、基本契約が異なる場合に第1の基本契約に基づく取引にかかる過払金が第2の基本契約に基づく取引に係る債務に充当される場合の特段の事情について判示している。その特段の事情として掲げられた中には、「第1の基本契約に基づく貸付け及び弁済が反復継続して行われた期間の長さやこれに基づく最終の弁済から第2の基本契約に基づく最初の貸付けまでの期間」や「第1と第2の各基本契約における利率等の契約条件の異同等」が挙げられている。本件の場合には11年7か月という長期間にわたって貸付と弁済が繰り返され、そのわずか51日後に、再度貸付けがなされており、その契約条件も利息や遅延損害金といった内容は全く同じである。このような事情からは、同判決に照らした場合、本件は明らかに「第1の基本契約に基づく取引と第2の基本契約に基づく取引とが事実上1個の連続した貸付取引であると評価することができる場合」であって、「第1の基本契約に基づく取引により発生した過払金を新たな借入金債務に充当する旨の合意」が存在するものと解される事案である。
第3当裁判所の判断
1 当裁判所は、原判決とは異なり、本件第1取引と本件第2取引は別個の基本契約に基づくものである上、両基本契約に基づく取引が事実上1個の連続した貸付取引であると評価することができるなど、第1の基本契約に基づく取引により発生した過払金を第2の基本契約に基づく新たな借入金債務に充当する旨の合意が存在すると解されるような特段の事情も認められないから、本件第1取引によって生じた過払金がその後になされた本件第2取引の借入金債務に当然に充当されることはないものと判断する。そうすると、本件第1取引によって生じた過払金返還請求権は、新たな借入金債務の発生後も一個の請求権として存続したところ、その後、控訴人が時効を援用したことにより消滅したものというべきである。したがって、被控訴人の本件請求は、本件第2取引のみに係わる別紙計算書による過払金101万3777円とこれに対する最終弁済の翌日である平成18年11月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による利息の支払いを求める限度で理由があるが、その余の請求は理由がないと判断する。その理由は以下のとおりである。
2 争点1(控訴人は過払金について悪意の受益者にあたるか否か)に関する判断は、原判決第3の1(原判決4頁下から11行目から5頁13行目まで)記載のとおりであるから、これを引用する。
3 争点2(当然充当の成否及び消滅時効)について、以下検討する。
(1) 事実経過について
ア 被控訴人と控訴人との間で、原判決別紙計算書の年月日・借入金類・弁済額記載のとおり、昭和57年9月24日から平成18年10月31日まで金銭消費貸借取引(同計算書左端の番号1ないし552)が行われてきたことは当事者間に争いがない。
イ 上記争いのない事実及び証拠(甲1、乙7、8、13ないし22、24ないし26、33、証人B)によれば、本件取引の状況は次のようなものであったと認定判断される。
(ア) 控訴人と被控訴人の取引は、貸金取引に関するカードローン基本契約を締結した上で、昭和57年9月24日に70万円の借入れで始まったが、昭和60年5月までは実質的にはその返済のみで、同月16日から新たな借入れがなされ、その後いわゆる借入金額スライドリボルビング方式で借入れと返済が繰り返されてきた。その間何度か残高がゼロになっているが、それは同日中に店頭取引で返済と新たな貸付がなされたもので、単なる借換えであり、貸付取引は実質的に連続しているものと解される。
(イ) 昭和60年10月15日に15万円の新規貸付けが行われたころから帳簿上の貸付金残高(すなわち、利息制限法との関係を考慮することなく、基本契約どおりに計算した貸付残高であり、各取引ごとの取引明細書で貸付金残高として被控訴人に示されている。以下同様)は50万円近くに達し、時期により多少の変動があるが概ね残高30万円ないし50万円の状態で経過した。なお、極度額は、平成元年9月に50万円と、平成5年10月に100万円と定められている。
(ウ) 被控訴人の返済は、概ね月に2万円から5万円程度で、残高はなかなか減少せず、平成4年7月と平成5年12月などにはまとまった返済がされて残高が一時減少しているが、間もなく新たな借入れがなされて元に戻り、結局、平成6年2月28日の残高は、別紙1のとおり43万9044円になっていた。ところが、別紙1のとおり、平成6年3月26日に7万円、同月29日に9万円、翌4月18日に12万4000円、同月26日に17万0688円(本件弁済)というように、ひと月の間にまとめて弁済がなされ、上記基本契約に基づく貸付債務は完済されている。上記返済のうち前3回はATMによる入金であるが、最後の弁済(本件弁済)は控訴人の庄内支店の店頭でなされ、帳簿上の残高と利息金に合わせて、その全額を返済したものである。そして、後記のとおり先の基本契約(第1の基本契約)は合意解約され、基本契約書が被控訴人に返還され、アコムカードも被控訴人から控訴人に返還され廃棄されて失効している。
(エ) ところが、被控訴人は、本件弁済の51日後である平成6年6月16日、庄内支店の店頭を訪れ、改めて控訴人との間でカードローン基本契約(第2の基本契約)を締結した。これにより、控訴人と被控訴人との間で、本件第2取引が開始された。本件第2取引の最初のころの状況は、別紙2記載のとおりである。これによると、同年6月16日の借入れは10万円、同月20日の借入れは6万円、7月5日の借入れは5万円であるが、8月3日には8万円、同月6日には10万4000円の返済がなされ、同日には完済している。2月余後の10月16日には新たに5万円の借入れがなされたが、9日後の同月25日には完済している。さらに、同年11月8日及び14日の合計10万円の借入れも、同月28日のATM入金6万7000円と12月5日の残高の店頭入金により完済している。次の借入れは2月余後の平成7年2月15日であり、その借入れ5万円も1週間後の同月22日には完済している。このように、本件第2取引の当初8か月間ほどの取引状況は、11年以上続いてきた本件第1取引の状況とは全く異なっており、カードローンの利用が意識的に控えられ、その都度完済され、借入金額が増加しないように努力していることが明らかである。
もっとも、平成7年3月になると短期間に3回続いての借入れがなされ、貸付金残高は17万9262円となり、その後、返済額より借入額の方が上回ることが多く、平成8年9月頃からは契約上の極度額である100万円に近い貸付残高が続くようになり、その後一時期減少したものの、結局は、平成13年には極度額を130万円に増額し、平成18年までそれに近い残高が続いた。
ウ 第1の基本契約の解約に至る返済状況は、前記のとおりであるが、その際の手続は、証拠(乙17、33、34、証人B)によれば、次のとおりである。すなわち、本件弁済に当たっては、被控訴人本人が控訴人の庄内支店に来店し、残高全額の返済と、基本契約の解約を申し入れた。基本契約の解約は控訴人としては望まないことであり、基本契約までを解約するのかどうか意思の確認がなされたが、解約の意思は明確であった。そこで、基本契約の契約書が被控訴人に返還され、かつ借入れ・返済の際に使用するアコムカードが被控訴人から控訴人に返還され、控訴人側でカードを破棄して失効手続をとった。以上のとおり認められ、これを覆すに足りる証拠はない。これに対して、被控訴人は当審における本人尋問において、どのような経緯があって本件第1取引による借入金債務を完済し、基本契約までを解約するに至ったのか記憶にないとして、競馬で勝ったとか、交通事故で賠償金を貰ったなどと曖昧な供述をする。また、解約の手続についても記憶がないとする。しかし、前記イの認定事実を総合すると、被控訴人が、本件弁済については何らかの特別な方法で資金を用意し、長年続いてきた控訴人からの借金を整理し取引を終えようとし、そして、基本契約自体を解約し、借入れ・返済に使用するアコムカードを返還し、基本契約書の返戻を受けたこと、その後改めて基本契約を締結してカードローンを利用する結果にはなったが、それでも当初8か月間ほどはその利用を意識的に控えていたことが明らかである。そうすると、第1の基本契約の解約に当たっては、被控訴人は、再びカードローンによる借金を繰り返さないようにと決意し、そのためにわざわざ長年続いてきた基本契約を解約し、アコムカードを返還して失効手続をとったことが推認される。被控訴人が本人尋問でその間の経緯について記憶がないというのは極めて不自然であり、逆に、第1の基本契約の解約が再び控訴人からの借入れを行なわないためにわざわざなされたという事実を隠ぺいしようとする意図が疑われるといわざるを得ず、到底信用できない。このように、本件においては第1の基本契約の解約にあたっては、今後取引を継続しないという当事者の意思が明確であり、解約手続による取引の終了は外形的にも明らかで、次の取引は想定されていないことが明らかである。
エ 次に、第2の基本契約が締結された経緯や手続等については、証拠(乙7、8、33、証人B)によれば、次のとおりであると認定判断される。
(ア) 被控訴人は、平成6年6月16日、控訴人の庄内支店の店頭を訪れ、借入れを申し込んだ。そこで、控訴人は、カードローン基本契約書(金銭消費貸借包括契約書兼借入申込書、乙7)及びAC会員入会申込書(乙8)を新たに作成した。
(イ) 上記の申込書に基づき、控訴人の担当者は運転免許証等の本人確認文書を確認した上、勤務先に対する在籍確認、信用情報機関に対する信用情報の確認、本人から収入状況を確認するなど、新規貸付けと同程度の確認作業を約30分ほどかけて行った。その上で、控訴人と被控訴人は第2の基本契約を締結し、被控訴人は、新たにアコムカードの発行を受けた。貸付け極度額は新たに100万円に設定された。
(ウ) 本件第1取引については、控訴人から直接電話等による勧誘をしないようにとの申し入れがあった(控訴人の扱いでは案内禁止という)。そのため、本件弁済から本件再貸付けの間に控訴人側から被控訴人に対して再度借入れをしないか等の勧誘をした事実はなかった。
以上の認定事実に対し、被控訴人は、本件再貸付けの時間は30分より短かったとか、この間に控訴人から2回ほど借入れをしないかとの勧誘があった等と供述をするが、同供述は、前記のとおり第1の基本契約の解約の経緯については記憶がないと述べながら、第2の基本契約と借入れ手続の時間が短時間であるとか、勧誘の内容について詳しく述べるなど著しく不自然な内容であって、到底信用できない。
(2) 本件第1取引による過払金の本件第2取引への当然充当の可否について
ア 前記認定によれば、本件第1取引と本件第2取引は、それぞれ別個の基本契約に基づいてなされた貸付取引である。そして、ある基本契約に基づく取引によって生じた過払金が、別の基本契約に基づく新たな借入金債務に対して当然に充当されることを定めた法規は存在せず、最高裁判決が明言し、控訴人訴訟代理人も的確に指摘するように、第1の基本契約に基づく取引により発生した過払金を新たな借入金債務に充当する旨の合意が存在するなどの特段の事情がない限り、第1の基本契約に基づく取引により生じた過払金は、その後に締結された第2の基本契約に基づく取引に係る債務には充当されないと解すべきである。したがって、上記のような充当の合意に関する特段の事情のない限り、本件第1取引により生じた過払金は本件第2取引に係る借入金債務に充当されないことになる。
イ ところで、本件第1の基本契約の解約に関する前記認定事実によると、解約にあたっては、今後取引を継続しないという明確な意思に基づいてわざわざ長年続いた基本契約自体を解約しアコムカードを返還して失効手続をとるなどしているのであるから、その後に当事者間に貸金取引が再開されることは全く想定されていなかったことが明らかである。そのような場合には、基本契約解約時点で過払金が生じていたとしても、これを新たな借入金債務に当然充当する旨の合意など成立する余地のないことが明らかである。そのような合意の擬制を相当とするような事情も考えられない。また、第2の基本契約の締結あるいはこれに基づく借入れの際に、従前の過払金を新たな借入れに当然充当する旨の合意が成立するということも、通常考えられない。仮に当事者が当時過払金の存在を認識できなかったとしても、過払金の存在を認識した時点で相殺の主張を許せば足りることであるから、当然充当の合意を擬制するのが相当であるとするような根拠もない。反対に、第1の基本契約に係る過払金を、新たに契約した第2の基本契約に係る借入金に当然に充当するとしたら、改めて第2の基本契約を締結して新たに金員を貸し付けたにもかかわらず、貸し付けたとたんに、相殺などの別段の意思表示もないのに、従前の過払金が当然に充当されて新たな貸付金債権がその分だけ直ちに消滅することになる。そのような結果は、同一の基本契約に基づいて反復継続されていた貸付取引全体の中のあらかじめ想定された貸付けならばともかく(その場合については19・6・7判決が当該基本契約自体がそのような充当の合意を含んでいるものと解されるとして、その法理上の根拠を説示している。)、本件事案のような場合には、著しく契約当事者双方の意思や予期に反する不合理で奇妙な結果であり、肯認し難いといわざるを得ない。
ウ もっとも、20・1・18判決が説示するとおり、第1の基本契約に基づく債務が完済されてもこれが終了せず、第1の基本契約に基づく取引と第2の基本契約に基づく取引とが事実上1個の連続した貸付取引であると評価できるような場合には、(同一の基本契約の中での借入れの場合と変わりがないとして)第1の基本契約に基づく取引によって発生した過払金を新たな借入金債務に充当する旨の合意が存在するものと解するのが相当であるといえる。しかし、本件取引の場合には、前記認定判断のとおり、第1の基本契約に基づく取引は、残債務が完済されたのみならず、基本契約自体が解約手続によって敢えて明確に終了させられているのであるから、これとその後に改めてなされた第2の基本契約に基づく取引とを事実上一個の連続した貸付取引であると評価する余地は全くない。被控訴人は、長く続いてきた本件第1取引と本件第2取引の間の中断期間がわずか51日に過ぎず事実上連続していると主張するが、本件のように、第1の基本契約が解約によって終了し、継続的取引終了の意思が明確である場合には(すなわち、体裁ばかりの形式的解約手続などでない限り)、次の取引開始までの期間の長短は重要な意味を持たないというべきである。けだし、問題は、そのような取引の中断にもかかわらず、なお、先の取引によって発生した過払金をその後に生じた新たな借入金債務に充当する旨の合意が存在するものと解するのが相当か否かという観点からの判断なのであって、第1の基本契約が解約されカードも返還されて失効手続がとられ取引終了の意思が明確な場合には、通常はそのような合意はあり得ないのであるから、その後の様々な事情によっても左右される中断期間の持つ意味は従的なものであって、仮にそれが短くとも、先の取引が明確な意思によって終了され次の取引は想定されていない以上、前後の取引を事実上1個の連続した貸付取引であると評価することは通常は困難であるというべきである。その意味で、本件における51日間の中断は、中断期間としても取引の事実上の連続一体性を否定するに十分な期間であって、これに反する被控訴人の主張は採用できない。その他、前記認定の事実経過に照らしても、本件においては、第1の基本契約に基づく取引と第2の基本契約に基づく取引が事実上1個の連続した貸付取引と評価するのを相当とするような事情は認められない。そうすると、前記20・1・18判決に照らしてみても、本件において、第1の基本契約に基づく取引による過払金を当時存在しない新たな借入金債務に充当する旨の合意が存在するものとは認められない。
エ 以上のとおりであるから、本件においては、本件第1取引において生じた過払金(過払金が生じていたこと自体は当事者間に争いがない。)がその後に生じた本件第2取引の借入金に当然に充当される旨の合意があると評価することができるなどの特段の事情は認められない。そして、そのような充当の合意がない以上、同過払金返還請求権は本件弁済のなされた平成6年4月26日から直ちに行使できる形で存続していたことになり、その後、控訴人の時効援用により消滅したものと認められる。
4 本件第2取引による過払金返還請求権について
前記争いのない取引内容(原判決別紙計算書記載の年月日・借入金額・弁済額の記載部分)によれば、本件第2取引の内容及びこの充当関係は本判決の別紙計算書(第2取引)に番号234ないし552として記載のとおりであり、その結果、平成18年10月31日の弁済後の時点で101万3777円の過払金が生じているものと認められる。
5 結論
したがって、被控訴人の請求は控訴人に対して前記101万3777円とこれに対する前記最終弁済の翌日である平成18年11月1日以降支払済みまで民法所定の年5分の割合による利息の支払いを求める限度で理由があるが、その余は理由がないから棄却すべきである。よって、これと異なる原判決は不当であるからこれを変更することとし、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 小田耕治 裁判官 富川照雄 小林久起)