大阪高等裁判所 平成19年(ラ)1053号 決定 2007年11月12日
兵庫県三田市●●●
抗告人(破産者)
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代理人弁護士
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頭書裁判所が平成19年9月28日にした自由財産拡張申立却下決定(原決定)について,抗告人から原決定を取り消し,別紙財産目録記載の財産について自由財産の拡張を認めるとの決定を求める旨の即時抗告があったので,当裁判所は次のとおり決定する。
主文
原決定を取り消す。
別紙財産目録記載の財産について自由財産の拡張を認める。
理由
1 本件抗告に至る経緯
本件抗告に至る経緯は,原決定「理由」中,「第2 判断」欄の1項に記載のとおりである。
2 抗告の理由(要旨)
(1) 抗告人は,本件過払金(別紙財産目録記載の22万7000円)は抗告人代理人らが破産手続開始申立ての受任をした後に,金融業者(アイフル株式会社及びシンキ株式会社)との間で和解をし,回収した金銭であり,上記破産手続開始決定の後,破産管財人に送金したものである。
(2) 破産法34条3項1号にいう現金は,従前から現金であったもの(本来的自由財産)であれ,弁護士が債務整理に着手した後に過払金返還請求権を行使し回収して現金化した場合であれ,いずれも同条項の現金に該当するものとして,当然破産財団に属しない扱いとすべきである。
(3) 仮に,破産法34条4項の自由財産拡張の扱いにおいて,99万円の範囲内であっても不動産,売掛金・貸付金はその対象とならないとしても,本件過払金は当然に自由財産拡張の扱いをするべきである。
3 当裁判所の判断
(1) 一件資料によれば,次の事実を認めることができる。
ア 抗告人はアイフル株式会社との間で,平成19年1月5日,和解契約を締結し,過払金20万円を同月23日までに代理人弁護士名義の口座に振り込み送金することを合意した。
イ 抗告人はシンキ株式会社との間で,平成19年4月20日,和解契約を締結し,過払金2万7000円を同月27日までに代理人弁護士名義の口座に振り込み送金することを合意した。
ウ 抗告人は同年4月11日,破産手続開始の申立てをし,その申立てに添付した財産目録12項に,アイフル株式会社からの回収分20万円を保管中であり,また,シンキ株式会社から2万7000円が回収予定であることを明記した。上記シンキ株式会社との間の債権債務の関係については,同じく添付した債権者一覧表からもその趣旨を窺うことができる。
エ 抗告人は不動産,自動車等の財産を所有しておらず,平成17年3月に受領した退職金85万円も債務の返済,仕事上の経費等に充てて費消し,抗告人が現在自由財産とすることができる財産としては,上記ウ以外には合計19万2964円相当分が存在するだけである。
オ 抗告人(昭和48年10月22日生)は,現在,両親が所有する住居において両親と共に生活しているが,手取月額10万円余りの収入を得て生計を立てている。
(2) 上記(1)の各事実の下においては,本件過払金は,抗告人が今後生計を立ててこれを維持していく上で必要不可欠のものであるということができる。その他上記事実関係を総合勘案すると,本件過払金については,少なくとも破産法34条4項による自由財産の拡張を認めるべきである。なお,現金化される前の債権の種類,現金化される経緯等を柔軟に考慮して破産法34条1項の適用範囲を探っている破産裁判所(地方裁判所)の破産実務については,当裁判所は現段階においてこれを慎重に見守る対応とする。
(3) よって,原決定を取り消し,主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 塩月秀平 裁判官 菊池徹 裁判官 辻本利雄)
<以下省略>