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大阪高等裁判所 平成2年(行コ)11号 判決 1991年1月25日

相生市垣内町二番地四五号

控訴人

相生税務署長 杉下忠明

右指定代理人

下野恭裕

中村悟

中田孝幸

相生市那波野三丁目七番三七号

被控訴人

西川つる

右訴訟代理人弁護士

吉川武英

主文

原判決中、控訴人敗訴部分を取り消す。

被控訴人の請求を棄却する。

訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。

事実

第一申立

一  控訴人

主文同旨

二  被控訴人

本件控訴を棄却する。

控訴費用は、控訴人の負担とする。

第二主張及び証拠関係

一  原判決の事実摘示は同一であるから、ここに引用する。

但し、次の訂正、付加をする。

1  原判決三枚目表五行目の「本件各更生」を「本件各更正」と、同八行目の「右各更生」を「右各更正」と各改める。

2  同八枚目表二行目の「西川豪、西川勝則が」を「西川豪が、昭和五七年一二月六日金二五万円、同月七日金四五万円、同月八日金二〇万円、西川勝則が、同月七日金六〇万円、以上合計金一五〇万円を国民金融公庫名義の口座に振り込んで」と、同四行目の「合意」を「合意があつたことは知らないが、仮にそれ」と、同七行目の「保証したものであつて、」を「保証し、あるいは、右西川豪、西川勝則の弁済金の補填もしていないから、」と各改める。

3  同九枚目裏一〇行目の次に次項を加える。

「訴外西川商事の国民金融公庫からの借入れに対する弁済のうち、金一六八万円が訴外西川商事によつてなされ、合計金一五〇万円が西川豪、西川勝則によつて振り込まれたことは認める。但し、右合計金一五〇万円は、西川豪、西川勝則が一時立替払いをしたもので、後日、控訴人が、同立替金額を全額補填した。」

4  同一〇枚目表三行目の次に、次項を加える。

「なお、右立替金の補填がなされたか否かは、法六四条二項の適用に影響を及ぼさない。そうでないと、連帯保証人間で、現実の弁済者を形式上誰にするかによつて、同条項の適用が左右されることとなり、著しく不公平、不合理な結果を招くのである。」

二  被控訴人の当審での新たな主張

1  被控訴人は、次のとおり、保証債務(物上保証を含む。)を履行した。

(一) 被控訴人は、環境衛生金融公庫に対し、訴外西川商事の連帯保証人として、昭和五七年二月二九日金二〇〇万円を支払つた。

(二) 右公庫は、平成元年三月一五日の配当期日に、訴外西川商事の同公庫に対する債務の担保のため被控訴人所有の土地(相生市那波野三丁目五九番一のほか三筆)に設定されていた抵当権の実行による配当金一、〇七九万三、四三〇円の交付を受けた。

2  右保証債務の履行に伴う求償権は、訴外西川商事の倒産により、全部行使することができないから、譲渡所得の金額の計算上なかつたものとみなし、昭和五七年分の譲渡収入金額から控除すべきである。

三  控訴人の認否

控訴人の当審での新たな主張は、いずれも、被控訴人の昭和五七年分の譲渡所得とは、関係ないものである。

すなわち、主張(一)の合計金四〇〇万円の支払いは、被控訴人の昭和五七年分の譲渡収入(同年九月に費消済み)によるものではないし、主張(二)の配当金一、〇九九万三、四三〇円の交付は、昭和五九年分以降の譲渡収入にかかる課税の問題である。

四  当審での証拠関係

本件記録中の証拠関係目録の記載を引用する。

理由

一  当裁判所の判断は、原判決の理由一、二の説示(原判決一〇枚目表八行目から同一七枚目裏七行目まで)と同一であるから、ここに引用する。但し、次の付加、訂正、削除、挿入をする。

1  原判決一〇枚目裏一〇行目冒頭の「弁済された」の次に「(一六八万円が訴外西川商事によつて弁済されたことは、当事者間に争いがない。)」を加える。

2  同一二枚目裏八行目の末尾の「弁済した(甲」を「弁済したのを含め、合計金一、〇四一万五、三二五円を弁済した(甲第一号証、同」と改める。

3  同一三枚目裏七行目の括弧内冒頭に「甲第一号証、」を加える。

4  同一四枚目表一行目末尾の「(甲」を「(甲第一号証、同」と改める。

5  同枚目裏二行目の「甲第一三号証の一ないし三、」を「甲第一三号証の一ないし四、」と、同五行目の「東京都港区」を「東京都大田区」と各改め、同九行目から一〇行目にかけて、「甲第一四号証の一ないし六、」とあるのを削り、そこに「甲第一号証、同第一四号証の一ないし六、」を挿入する。

6  同一六枚目表三行目の「資産は」を「資産も」と改める。

7  同一七枚目表七行目から同枚目裏七行目までを全部削り、そこに次項を挿入する。

「万円、以上合計金一五〇万円を弁済していることが認められる。

ところで、被控訴人と西川豪及び西川勝則との間で、同人ら三名が訴外西川商事との関係で負担する債務(借受債務、保証債務等のすべてを含む。)は、すべて、被控訴人の負担に帰することになつていたことは、前記のとおりであるが、以上認定の事実(引用した原判決理由中の認定事実)関係のもとで、訴外西川商事(主債務者)から委託を受けて保証人となつた被控訴人が、訴外西川商事に対する求償権を取得するためには、訴外西川商事が負担する債務を支払つた西川豪及び西川勝則(いずれも保証人)に対し、その出捐額を補填することが必要である(民法四五九条一項参照)。

そこで、被控訴人が、西川豪及び西川勝則に、各自の出捐額合計金一五〇万円を補填したか否かについて検討する。被控訴人が右一五〇万円を補填した旨の主張に沿う原審証人西川豪、同西川勝則の各証言は、次の理由によつて、いずれも採用できず、他に右主張事実を認める足りる証拠はない。

(一)  原審証人西川豪は、「被控訴人から、土地売却代金によつて補填をうけた。」旨証言するが、補填を受けた時期、方法、原資(昭和五七年分の譲渡収入であることを要する。)について何ら明らかでない。また、同西川勝則は、「どの土地か分からないが、被控訴人から、土地売却代金によつて補填を受けた。その時期は、多分、借りた時から半年くらいたつてからではないかと思う。」旨証言するが、補填を受けた時期が借入時(昭和五四年二月二四日)から半年くらいたつてからであるというのであれば、被控訴人の昭和五七年分の譲渡収入とは関係ないこととなり、補填を受けた時期、方法、原資は明らかでない。

(二)  前掲乙第二六ないし第二八号証、第三一号証、成立に争いがない同第五一、第五九、第六五、第六六号証、原本の存在及び成立に争いがない同第六七ないし第七一号証、原審証人西川豪、同西川勝則の各証言によると、訴外西川商事は、被控訴人が所有する約一、〇〇〇坪の農地を当てに、必要資金の金額を借入れに依存していた会社で、昭和五三年一二月二二日に設立し、昭和五四年二月二五日に営業を開始し、同年一〇月末ころに倒産するまでの全期間を通じて、極度の営業不振に終始したため、繋ぎの運転資金や金利の支払いに追われ、更に高利の借入れを重ねるという悪循環に陥つたこと、被控訴人は、所有農地を担保に供し、あるいは、売却して入手した金員(昭和五五年分の譲渡収入金額四、〇〇〇万円及び昭和五七年分の譲渡収入金四、六七〇万円)を、すべて、訴外西川商事の営業資金や倒産後の債務返済資金につぎ込み、それでなお手に合わないほどの切迫した状況にあつたこと、昭和五七年分の譲渡収入金額金四、七六〇万円は、本件二土地の代金額金二、九〇〇万円(昭和五六年一一月一七日金三〇〇万円、同年一二月二八日金六〇〇万円、昭和五七年二月一〇日金二、〇〇〇万円の分割払い)及び本件三土地の代金額金一、八六〇万円(同年八月二〇日金二〇〇万円、当月二〇日金九〇〇万円、同月三一日金七六〇万円の分割払い)からなるが、その最後の分割払い後間もない同年一〇月二八日には、早くも、西川豪が、木原勝郎に対する弁済資金三〇〇万円を金融業者から借り受け、その後同年一二月初めころに、西川豪及び西川勝則が、被控訴人の依頼によつて、国民金融公庫に対し、合計金一五〇万円を立て替えて支払つたことが認められ、ほかにこの設定を動かすに足りる証拠はない。

右認定事実によると、西川豪及び西川勝則が合計金一五〇万円の保証債務を支払つた昭和五七年一二月当時、被控訴人は、同年分の譲渡収入金額金四、七六〇万円を、既に訴外西川商事の他の債務の支払いに充ててなくなつていたため、右両名に対し、国民金融公庫に立替払いをさせたもので、被控訴人が、右両名の立替払いをそのころ補填する資力は皆無であつたといわなければならない。

(三)  そうすると、被控訴人が、昭和五七年分の譲渡収入金額金四、六七〇万円で、西川勝則に立替払いさせた合計金額金一五〇万円の補填したことは、到底認めることができない。」

9  同一七枚目裏七行目の次に次項を加える。

「4 右の次第で、別表5記載の各債務の履行について、いずれも法六四条二項の適用はない。」

二  被控訴人の当審での新たな主張について

昭和五七年分の譲渡収入金額金四、六七〇万円が同年一二月当時既に残存していなかつたことは、前記のとおりであり、被控訴人が、当審での新たな主張として述べる保証債務(物上保証を含む。)の履行は、いずれも、それより後日のことであるから、同譲渡収入金額を、西川豪及び西川勝則が立替払いした合計金一五〇円の補填に充てるに由ないというべきである。

そうすると、被控訴人の当審での新たな主張は、その余の点について判断するまでもなく、理由がない。

三  以上の次第で、被控訴人の本件請求は、失当として、棄却を免れない。

四  むすび

原判決中、被控訴人の本件請求を認容した部分は失当であるから、本件控訴は理由があることに帰着する。そこで、原判決中、控訴人の敗訴部分を取り消し、被控訴人の請求を棄却することとし、行訴法七条、民訴法八九条に従い、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 古嵜慶長 裁判官 上野利隆 裁判官 瀬木比呂志)

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