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大阪高等裁判所 平成20年(ネ)174号 判決 2008年6月05日

和歌山市●●●

控訴人

高島秀丞こと

●●●

上記訴訟代理人弁護士

●●●

被控訴人

●●●

上記訴訟代理人弁護士

蔭山文夫

主文

1  本件控訴を棄却する。

2  控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

第1控訴の趣旨

1  原判決中,控訴人敗訴部分を取り消す。

2  被控訴人の請求を棄却する。

第2当事者の主張

1  請求原因

(1)ア  被控訴人は,兵庫県南あわじ市に住む大正15年●●●月●●●日生まれの女性であり,無職の年金受給者である。

イ  控訴人は,高島易断霊心館総本部の名称を用いて,鑑定会などを行っている者である。

(2)  平成16年7月,被控訴人宅に配達された新聞に,控訴人が人生相談をするというチラシが折り込んであった。そこには,「神仏と人が融合する修験道の業 悪因縁を切る」「悩み解決」「伝統ある日本最古易断」「誰もが救われる大きな智慧の教え」などと記載されていた。

(3)  被控訴人は,平成16年7月13日,三原町商工会で行われた控訴人の鑑定会に赴き,控訴人に,被控訴人の体調のこと,孫の悩み,親族や子どもとの縁が薄いことなどを相談した。

すると,控訴人は,被控訴人に対し,今年中に被控訴人が死ぬこと,水子が右足にすがって泣いていること,控訴人が水子の供養をして被控訴人を治すこと,被控訴人の子が未亡人になるかもしれないことなどを述べた。

そして,控訴人は,「朝起きたら東に向かって拝みなさい。毎月1日には必ず家の四隅にお祭りをしなさい。私が平成18年11月5日まで水子の供養をして上げます。11月5日まで続けるとそれで終わりです。私が治します。」などと述べた上で,「200万円です。タクシーが来るから乗ってお金を持ってきてください。」と申し向けた(以下,上記平成16年7月13日の控訴人の行為を「本件鑑定1」という。)。

被控訴人は,控訴人が要求したお金を支払わなければもっと悪いことになるのではないかと不安になり,控訴人が用意したタクシーに乗り,郵便局で200万円を引き出して前記鑑定会場に戻り,控訴人にこれを支払った。

(4)  被控訴人は,控訴人から電話で呼び出され,平成16年8月2日,孫の●●●(以下「●●●」という。)と共に,旧三原郡西淡町のくつろぎプラザSEAPAシーパホール(以下「シーパホール」という。)で行われた控訴人の鑑定会に赴いた。

控訴人は,被控訴人に対し,「3日間,供壇で拝みました。大分変わりましたか。」と聞いてきたので,被控訴人が何も変わりありませんと答えると,「もう3か月もすれば,うんと良くなる。」と述べた。そして,横にいる●●●を見て,「平成17年には良い職業に就ける。良い縁談がある。子どもは男の子と女の子2人で幸せに暮らせる。おばあちゃんに苦労をかけるなよ。」などと10分間程度話した後,また,「200万円」と言った。被控訴人は,控訴人を信じたかったので,郵便局から200万円を引き出して,これを支払った(以下,上記平成16年8月2日の控訴人の行為を「本件鑑定2」という。)。

(5)  上記控訴人の行為は,社会的に相当な範囲を超えて,親子の因縁の話や自らの超自然的な能力の話を利用し,害悪を告知して,殊更に不安を煽るものであるから,不法行為に当たる。被控訴人は,控訴人から告知された害悪を回避するために,控訴人の言うがままに金銭を支払ったのであり,その名目は重要ではない。具体的な悩みを抱えている人間が水子の供養を勧められた程度で200万円もの金銭の支払を決意するようなことは通常あり得ない。

(6)  仮にそうでないとしても,本件鑑定1,2の双方とも,三原町商工会やシーパホールという控訴人の営業所,代理店その他の経済産業省令(特定商取引に関する法律(以下「特定商取引法」という。)施行規則1条)で定める場所以外の場所で行われており,しかも易断を行うことは,特定商取引法施行令3条3項による別表第3の12で指定役務とされている。したがって,本件鑑定1,2は,いずれも特定商取引法の適用のある訪問販売である。そして,同法の適用のある訪問販売により営業所等以外の場所で契約が成立した場合については,役務提供事業者は同法5条に定める書面を交付する義務が存するところ,控訴人はそれをしていない。控訴人が法律を遵守しようとする気持など全く持っていないことは明らかである。そして,訪問販売については,同法5条の書面が交付された時から8日間,申込の撤回又は解除ができるところ(同法9条),同法5条の書面が交付されていない以上,クーリングオフの期間制限にはかかっていない。被控訴人は,平成20年3月25日,本件鑑定1,2の契約を取り消し,支払った金員の返還を求める旨の意思表示をした。

(7)  控訴人の本件不法行為により被控訴人が被った損害は,①騙取額から既払金を控除した残金399万4822円(既払金は,遅延損害金,元本の順に充当した。詳細は原判決添付別紙損害金計算書(以下「損害金計算書」という。)記載のとおりである。),②慰謝料50万円,③弁護士費用40万円の合計489万4822円である。

(8)  よって,被控訴人は控訴人に対し,不法行為による損害賠償請求権に基づき,(予備的には,本件鑑定1,2の契約取消しによる不当利得返還請求権に基づき)489万4822円及び内金20万円に対する平成16年7月13日から,内金70万円に対する同年8月2日(以上は各不法行為の日)から,内金399万4822円に対する平成18年1月13日(控訴人から最終の弁済を受けた日の翌日)から,各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。

2  請求原因に対する認否

(1)  請求原因(1)アは不知。同イは認める。

(2)  同(2)のうち,控訴人が,平成16年7月13日の数日前ころ,被控訴人主張のような内容の新聞折込みチラシを配布したことは認めるが,その余は不知。

(3)  同(3)のうち,第1段落(被控訴人の体調の話を除く。)及び控訴人が被控訴人から200万円を受け取ったことは認めるが,その余は否認する。

本件鑑定1に際し,被控訴人は,控訴人に対し,水子があると言われているので水子供養をしたいと述べた。控訴人が,被控訴人に対し,水子供養は1000日供養すると200万円かかると説明したところ,被控訴人はこれを依頼し,200万円を支払ったのである。

(4)  同(4)のうち,平成16年8月2日に被控訴人が孫の●●●と一緒にシーパホールで鑑定会をしている控訴人のもとへ来たこと,同日,控訴人が被控訴人から200万円を受け取ったことは認めるが,その余は否認する。

本件鑑定2に際し,被控訴人は,控訴人に対し,特に体調面の相談をした。控訴人が,被控訴人に対し,先祖供養を勧め,1000日供養すると前と同じく200万円かかると説明したところ,被控訴人はこれを依頼し,200万円を支払ったのである。

(5)  同(5)は争う。本件鑑定1,2の経緯は前記のとおりであり,控訴人の行為は不法行為とならない。控訴人は,丁寧に水子供養や先祖供養の説明をし,その費用に関しても十分説明し,被控訴人の納得を得た上で1日2000円で1000日供養として200万円の祈祷料の支払を受け,更にその祈祷をやり遂げている。

(6)  同(6)は争う。本件の祈祷契約当時,易断を行うことは特定商取引法上の指定役務であったが,祈祷はもちろん,易断の結果に基づき,助言,指導,その他精神的援助を行うことも指定役務ではなかった。これらについては,平成19年6月15日の政令の一部改正により追加されたのであり,同年7月15日以前の契約には適用されない。

(7)  同(7)のうち,控訴人が被控訴人に対し,平成17年5月ころから被控訴人主張の金員を送金したことは認めるが,その余は否認ないし争う。

理由

1(1)  請求原因(1)アは,証拠(甲20,被控訴人)及び弁論の全趣旨により,これを認めることができる。

(2)  同イについては当事者間に争いがない。

2  同(2)のうち,控訴人が,平成16年7月13日の数日前ころ,被控訴人主張のような内容の新聞折込みチラシを配布したことは当事者間に争いがなく,その余の事実は,証拠(甲1,20,被控訴人)及び弁論の全趣旨により,これを認めることができる。

3  同(3)について検討する。

(1)  被控訴人が,平成16年7月13日,三原町商工会で行われた控訴人の鑑定会に赴き,控訴人に対し,孫の悩み,親族や子どもとの縁が薄いことなどを相談したこと,控訴人が同日被控訴人から200万円を受け取ったことは当事者間に争いがない。

そして,上記争いがない事実に,証拠(各項掲記のほか,甲8,20,乙1,被控訴人,控訴人)及び弁論の全趣旨によると,次の各事実を認めることができ,控訴人の供述及び同人の陳述書(乙1)の記載(以下「控訴人供述等」と総称する。)のうち,これに反する部分は後記のとおり措信できない。

ア  被控訴人が自身の体調のことを含め上記相談をしたのに対し,控訴人は,まず,「せめて,もう半年早く会っとったらなぁ。」と繰り返し述べた後,既に亡くなった被控訴人の母と夫が「●●●,来い。来い。」と呼んでいるので今年中に被控訴人が死ぬと申し向けた。

イ  次に控訴人は,被控訴人に対し,被控訴人に男の子と女の子の水子がおり,「男の子が,なんで生んでくれなかったのかと右足にすがって泣いている。」と,また,被控訴人の2人の子どもについて「ひょっとしたら未亡人になるかもよ。」などと申し述べた。

ウ  上記控訴人の話を聞いた被控訴人は,これは大変だと思い,どうなるんだろうと不安に駆られた。

エ  そのような被控訴人に対し,控訴人は,「私が平成18年11月5日まで水子の供養をしてあげます。11月5日まで続けるとそれで終わりです。私が治します。終わったら,あなたを車で迎えに行きます。そのときに参ってあげなさい。」などと申し述べ,控訴人が手書きで記載した「水子供養満願日までの作法」と題する文書や数珠,お守りなどを被控訴人に手渡し,朝起きたら東に向かって拝みなさいなどと,被控訴人に供養の仕方を細かく教えた。その上で,控訴人は,被控訴人に200万円を支払うよう要求した。(甲2,19,21の1ないし3)

オ  被控訴人は,あまりに高額なのでびっくりしたが,お金を払わないと,もっと悪いことになるのではないかと不安に思い,控訴人から要求されるまま200万円を郵便局の貯金から引き出して支払った。そして,被控訴人は,控訴人の「治す。」という言葉を信じようと思いつつ帰宅した。(甲6)

カ  ところが,控訴人は,本件鑑定1の数日後,被控訴人に電話をかけ,「水子の供養は,私がするより,あなたがした方が喜びますよ。」と申し述べた。これを聞いた被控訴人は,話が変わってきた,おかしいと不安に感じた。

(2)  これに対し,控訴人は,控訴人供述等において,本件鑑定1の際,被控訴人から水子供養をしたいと言われたため,1日2000円で1000日間の水子供養を行うことを説明し,被控訴人から依頼を受け,その代金として200万円の支払を受けたと供述する。

しかしながら,まず,本件鑑定1の際,控訴人が水子供養のための祈祷をすることになったとする平成16年7月14日から平成18年11月5日までの期間(甲2参照)は,厳密には845日間であって1000日間ではないから,控訴人が200万円の支払を受ける根拠として,上記のような説明を被控訴人に対して行ったとは考え難いところである。

また,本件鑑定1に際し,控訴人は,被控訴人から,水子があるが,供養の仕方がわからないので気になっていたと言われたなどと供述等するが,被控訴人は,水子を亡くしたときに,位牌を持って寺に行き,性根を入れてもらい,供養について指導を受けており,それをずっと守って拝んでいたと具体的に供述している(被控訴人。上記被控訴人の供述内容は信用できるものと考えられる。)。したがって,これに照らすと,被控訴人の方から水子供養をしたいと申し入れた旨の控訴人供述等は,にわかに措信し難いというべきである。

したがって,控訴人供述等のうち,前記(1)の認定に反する部分は信用できず,他に前記(1)の認定を覆すに足りる証拠はない。

4  請求原因(4)について検討する。

(1)  平成16年8月2日に被控訴人が孫の●●●と一緒にシーパホールで鑑定会をしている控訴人のもとへ来たこと,及び同日,控訴人が被控訴人から200万円を受け取ったことは当事者間に争いがなく,これに証拠(各項掲記のほか,甲8,18,20,乙1,証人●●●被控訴人,控訴人)及び弁論の全趣旨によると,次の各事実を認めることができ,控訴人供述等のうち,これに反する部分は,後記のとおり措信できない。

ア  被控訴人は,控訴人から電話で呼び出され,平成16年8月2日,孫の●●●と共に,シーパホールで鑑定会をしている控訴人のもとへ赴いた。(甲7)

イ  控訴人は,被控訴人に「3日間,供壇で拝みました。大分変わりましたか。」と尋ね,被控訴人が「何も変わりありません。」と答えると,「もう3か月もすれば,うーんと良くなる。」と申し述べた。

ウ  そして,控訴人は,被控訴人の横にいる●●●に対し,「占って進ぜよう。」と声をかけ,親と縁が薄いとか,自分を良くしようと思うなら,東の方角を向いて毎日拝みなさいと申し向けたほか,「平成17年には良い職業に就ける。良い縁談がある。子供は男の子と女の子2人で幸せに暮らせる。おばあちゃんに苦労をかけるなよ。」などと話した。

エ  上記のとおり被控訴人と●●●に10分間ほど話しをした後,控訴人は,被控訴人に対し,「200万円です。」と前回と同じ金額を支払うよう要求した。

被控訴人は,控訴人を信じたかったこともあり,要求されるまま200万円を郵便局の貯金から引き出して控訴人に支払った。(甲6)

オ  控訴人は,本件鑑定2の4,5日後にも被控訴人に電話をかけ,「名前が悪いから印鑑をこしらえに出した。水牛の赤牛の角で,被控訴人ところの分だけである。もう出してしまった。150万円を送金しろ。」と申し向けたが,被控訴人は,お金がないなどと言って,これを断った。

(2)  これに対し,控訴人は,本件鑑定2の際,被控訴人から,墓参りもせず,あまり先祖供養をきちんとしていない旨聞いたことから,被控訴人に対して先祖供養を勧め,1日2000円で1000日間の供養の祈祷料が必要である旨説明した旨主張し,控訴人供述等でもこれに沿った供述をする。

しかしながら,被控訴人は,本人尋問において,昔から先祖の供養もしており,その旨を控訴人に話したと供述しているところ,控訴人の陳述書(乙1)にも,被控訴人が,本件鑑定1の際,控訴人に対し,先祖供養を毎日ちゃんとやっていると話した旨の,上記被控訴人供述に沿った記載が存在することなどからすると,上記被控訴人の供述は信用できるものである。

また,控訴人の陳述書(乙1)においては,本件鑑定1の際に,被控訴人に対し,先祖の供養をやっているかどうか尋ねたとする部分もあり,これに対する被控訴人の返答は上記のとおりであるところ,乙1のこれらに関する記載部分は,先祖供養の話は本件鑑定1の際ではなく本件鑑定2の際に出たとする控訴人供述と整合しないというべきである。

さらに,本件鑑定2に同席した●●●は,控訴人から先祖供養の話は聞いていないと証言している。

他方,控訴人は,甲21の2を本件鑑定2の際に被控訴人に渡したと供述し,その根拠として,同書面の表面に記載している真言が先祖供養のものであることを指摘するが,同書面の裏面に,本件鑑定1の際に控訴人が申し述べた水子供養の期間や方法等が被控訴人によって書き留められていることからすると,同書面は,被控訴人が供述するとおり,本件鑑定1の際に控訴人から被控訴人に渡されたものと認められる。

したがって,控訴人供述等のうち,前記(1)の認定に反する部分は措信できず,他に前記(1)の認定を覆すに足りる証拠はない。

5  進んで,請求原因(5)について検討する。

易断による鑑定料の支払又は祈祷その他の宗教的行為に付随して祈祷料の支払を求める行為は,その性格上,易断や祈祷の内容に合理性がないとか,成果が見られないなどの理由によって,直ちに違法となるものではない。しかしながら,それに伴う金銭要求が,相手方の窮迫,困惑等に乗じ,殊更にその不安,恐怖心を煽ったり,自分に特別な能力があるように装い,その旨信じさせるなどの不相当な方法で行われ,その結果,相手方の正常な判断が妨げられた状態で,過大な金員が支払われたような場合には,社会的に相当な範囲を逸脱した違法な行為として,不法行為が成立するというべきである。

そこで,本件について見るに,前記3(1)で認定した本件鑑定1の際の控訴人の言動は,親族や健康上の多くの悩みを抱えて相談に訪れた被控訴人に対し,今年中に死ぬとか,水子が被控訴人の足にすがって泣いているとか,子どもが未亡人になるかもしれないなど,被控訴人にとって不吉な事実を次々と告げ,殊更に被控訴人の不安を煽った上で,控訴人が水子供養をすれば被控訴人やその子らに生じる害悪を取り除くことができるかのように装って被控訴人をしてその旨信じさせ,正常な判断が妨げられた状態で,鑑定料もしくは祈祷料名下に著しく高額の金員を支払わせたものであり,社会的に相当な範囲を逸脱した違法なものといわざるを得ない。

また,本件鑑定2における控訴人の言動についても,具体的な害悪の告知こそされていないものの,本件鑑定1の影響下から脱し切れていない被控訴人の,控訴人を信じたいという心情につけ込み,200万円という鑑定料としては著しく高額な金員を支払わせたものであって,これまた社会的に相当な範囲を逸脱した違法なものといわざるを得ない。

したがって,本件鑑定1,2のいずれの控訴人の言動及び金員の受領についても,被控訴人に対する不法行為が成立するというべきである。

6  請求原因(7)について検討する。

(1)  前記3,4の各(1)説示のとおり,被控訴人は,本件鑑定1及び2に際し,各200万円を控訴人に支払っており,これは控訴人の前記不法行為によって被った損害ということができる。そして,被控訴人が損害金計算書の「賠償額」欄記載のとおり控訴人から合計30万円の支払を受けていることは当事者間に争いがないところ,これを,上記損害に係る遅延損害金,元本の順序で充当計算すると,残金は損害金計算書の「賠償金充当後の元金残」欄末尾記載のとおり399万4822円となる。

また,弁論の全趣旨によると,被控訴人は,控訴人の不法行為により弁護士である被控訴人訴訟代理人に依頼して本件訴訟提起を余儀なくされたものと認められるから,相当な弁護士費用も被控訴人の損害と認められる。そして,本件事案の内容,認容額その他本件証拠上認められる一切の事情を考慮すると,上記金額としては40万円(本件鑑定1,2の各不法行為ごとに20万円ずつ)をもって相当と認める。

(2)  なお,被控訴人は,慰謝料の支払も求めているところ,本件における控訴人の不法行為の内容等に鑑みると,財産的被害の回復によってその損害が填補されるものと考えられる。したがって,被控訴人の慰謝料請求は理由がない。

7  その他,原審及び当審における当事者提出の各準備書面記載の主張に照らし,原審で提出された全証拠を改めて精査しても,当審の認定,判断を覆すほどのものはない。

8  結論

以上の次第で,被控訴人の控訴人に対する本件請求は,439万4822円及び内金20万円に対する平成16年7月13日から,内金20万円に対する同年8月2日から,内金399万4822円に対する平成18年1月13日から各支払済みまで,民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを認容すべきであり,その余は理由がないから棄却すべきである(なお,被控訴人の予備的請求については,上記主位的請求の認容額を超えて認容することはできない。)。

よって,これと同旨の原判決は相当であり,本件控訴は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 大谷正治 裁判官 高田泰治 裁判官 西井和徒)

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