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大阪高等裁判所 平成20年(ネ)2278号 判決 2008年12月10日

<一部仮名>

控訴人(第1審被告)

同訴訟代理人弁護士

藪下富紀

被控訴人(第1審原告)

同訴訟代理人弁護士

本田陸士

主文

1  本件控訴を棄却する。

2  控訴費用は控訴人の負担とする。

事実及び理由

第1控訴の趣旨

1  原判決を取り消す。

2  被控訴人の請求をいずれも棄却する。

第2事案の概要

1  事案の骨子及び訴訟経過

本件は、被控訴人が、控訴人に対し、消費貸借契約又は連帯保証契約に基づき、1800万円及びこれに対する弁済期後である平成18年12月28日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。

これに対して、控訴人は、被控訴人から1800万円を借り受けたのは、A(以下「A」という。)であって、控訴人は、Aの被控訴人に対する債務を連帯保証したにすぎないが、控訴人を主債務者とする金銭消費貸借契約書は、民法446条2項所定の書面には当たらないから、保証契約は無効である、仮に有効であるとしても、Aが被控訴人に550万円を弁済しているなどと主張して、被控訴人の請求を争った。

原審は、控訴人がAの被控訴人に対する借入金債務を連帯保証する旨の契約をしたことは、当事者間に争いがなく、控訴人を主債務者とする金銭消費貸借契約書は、民法446条2項所定の書面に該当し、控訴人の弁済の抗弁を認めるに足りる証拠はないとして、被控訴人の請求を認容した。

そのため、控訴人が本件控訴を提起した。

2  当事者の主張

次のとおり補正するほかは、原判決の「事実及び理由」中の第2の1ないし4のとおりであるから、これを引用する。

(1)  原判決2頁初行の「A(以下「A」という。)」を「A」と改める。

(2)  原判決2頁14行目末尾に「なお、民法446条2項の趣旨は、軽はずみに保証契約がなされることがないように、保証意思を明確にすることにあるが、控訴人は、少なくとも保証人になる意思で、金銭消費貸借契約書(《証拠省略》)の借主欄に署名押印をしているから、上記の趣旨からして、上記各契約書は、同項所定の書面に該当するというべきである。」を加える。

(3)  原判決3頁8行目の「当たらない。」の次に「民法446条2項は、保証契約を書面で行うことを要求しているところ、控訴人は、保証人として上記契約書に署名をしていないし、金銭消費貸借の主債務者となることと保証人となることとは全く性質が異なるので、控訴人を借主とする金銭消費貸借契約書を、同項所定の書面に該当するというのは、不合理である。」を加える。

第3当裁判所の判断

1  当裁判所も、被控訴人の請求は理由があると判断する。その理由については、次のとおり補正するほかは、原判決の「事実及び理由」中の第3の1、2のとおりであるから、これを引用する。

(1)  原判決3頁23行目の括弧内の証拠(《省略》)の次に「、証拠《省略》」を加える。

(2)  原判決4頁初行から同6行目までを次のとおり改める。

「なぜなら、民法446条2項が保証契約について書面を要求する趣旨は、保証契約が無償で、情義に基づいて行われる場合が多いことや、保証契約の際には保証人に対して現実に履行を求めることになるかどうかが不確定であり、保証人において自己の責任を十分に認識していない場合が少なくないことから、保証を慎重ならしめるために、保証意思が外部的にも明らかになっている場合に限って契約としての拘束力を認めるという点にあるところ、控訴人は、A等から依頼されて、Aの被控訴人に対する債務を保証する意思で、金銭消費貸借契約書の借主欄に署名押印をした(《証拠省略》)というのであるから、これによって、主債務者であるAと同じ債務を連帯して負担する意思が明確に示されていることに違いはなく、保証意思が外部的に明らかにされているといえるからである。」

(3)  原判決4頁11行目末尾に改行の上、次のとおり加える。

「3 したがって、被控訴人の控訴人に対する保証債務履行請求は理由がある。」

2  以上によれば、被控訴人の控訴人に対する請求は理由があり、これを認容した原判決は相当であるから、本件控訴は理由がない。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 渡邉安一 裁判官 安達嗣雄 明石万起子)

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