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大阪高等裁判所 平成20年(ネ)2959号 判決 2009年3月11日

主文

1  本件控訴を棄却する。

2  控訴費用は控訴人の負担とする。

事実及び理由

第1控訴の趣旨

1  原判決中,共有物分割本訴請求に関する部分(原審平成19年(ワ)第687号事件)及び被控訴人甲山Y1から控訴人に対する持分移転登記手続反訴請求に関する部分(原審平成20年(ワ)第518号事件)を取り消す。

2  原判決別紙物件目録記載1の土地の競売を命じ,売却代金から競売費用を控除した残高を,控訴人160分の48,被控訴人甲山Y2・160分の42,同甲山Y1及び同甲山Y3各160分の35の割合で分割する。

3  被控訴人甲山Y1の反訴請求を棄却する。

第2事案の概要

1  控訴人は,(1)原判決別紙物件目録記載2の建物(以下「本件建物」という。)は亡甲山Aの遺産であるとして,その確認と,(2)それを前提に本件建物の2分の1を相続したとして,被控訴人甲山Y1(以下「被控訴人Y1」という。)に対し,真正な登記名義の回復を原因とする持分移転登記手続を求め,さらに,(3)原判決別紙物件目録記載1の土地(以下「本件土地」という。)について控訴人が160分の48の持分を有するとして,共有物分割(競売による換価分割)を求めた(本訴)のに対し,(4)被控訴人Y1は,本件土地は被控訴人Y1の所有であるとして,控訴人に対し,真正な登記名義の回復を原因とする持分移転登記手続を求めた(反訴)。

2  原審は,本件建物は,亡甲山C(以下「C」という。)が建てたもので同人の所有であり,これを被控訴人Y1が相続により取得したものであるとし,また,本件土地は,控訴人からCに所有権が移転し,その後,Cが死亡して被控訴人Y1が相続により取得したものとして,控訴人の請求を全部棄却し,被控訴人Y1の請求を認容した。

控訴人は,上記原判決中,共有物分割請求に関する部分(原審平成19年(ワ)第687号事件)及び被控訴人Y1から控訴人に対する持分移転登記手続請求に関する部分(原審平成20年(ワ)第518号事件)を不服として本件控訴に及んだ。

したがって,当審における審理の対象は,本件土地に関する部分のみである。

3  前提事実

以下のとおり付加するほか,原判決「事実及び理由」中「第2 事案の概要」の「2 前提事実」に記載のとおりであるから,これを引用する。

原判決4頁13行目の後に行を改め,以下のとおり加える。

「3 争点及び争点に関する当事者の主張

(1)  本件土地の所有権の帰属(控訴人と被控訴人らの共有か,被控訴人Y1の単独所有か。)

(控訴人の主張)

本件土地は,Bの所有であったもので,同人が昭和20年4月16日に死亡したことにより,同人の長男であった控訴人が,家督相続により単独で所有権を取得した。その後,平成3年1月10日までに,控訴人から,C,被控訴人Y2,同Y1,同Y3らに対しそれぞれ本件土地の持分40分の7宛(合計40分の28)が譲渡され,Cが平成17年1月10日に死亡し,同人の持分が法定相続分により被控訴人らに相続された結果,本件土地は,控訴人が160分の48,被控訴人Y2が160分の42,被控訴人Y1及び同Y3が各160分の35ずつの共有となった。

(被控訴人らの主張)

本件土地は,昭和39年8月ころ,あるいは遅くとも昭和63年9月ころ,控訴人からCに所有権が譲渡(贈与)され,平成17年1月10日にCが死亡し,その遺産分割協議により,被控訴人Y1が単独取得した。

(2)  本件土地が共有であるとした場合の共有物分割の方法

(控訴人の主張)

本件土地上には本件建物が存在するので,現物分割は相当でなく,本件土地を競売し,売却代金から競売費用を控除した残高を,控訴人と被控訴人らの各持分の割合で分配するのが相当である。

(被控訴人らの主張)

本件土地は被控訴人Y1の単独所有であり,共有物分割などはそもそもありえない。」

第3当裁判所の判断

1  当裁判所も,本件土地は被控訴人Y1の所有であり,控訴人の請求は理由がなく,被控訴人Y1の請求は理由があると判断する。

その理由は,以下のとおり改めるほか,原判決「事実及び理由」中「第3 判断」の「2 本件土地の所有権について」に記載のとおりであるから,これを引用する。

原判決8頁最終行の「原告は,」から9頁3行目の「ある。」までを次のとおり改める。

「前記(2)の甲山家の財産の管理状況等及び本件土地に控訴人名義の所有権保存登記がなされた経緯等並びに本件土地の持分権の贈与の経緯等の事実,さらに控訴人が家督相続により本件土地の所有権を取得してから本訴提起まで60年以上,上記保存登記がなされてからでも20年近くが経過したという事情に照らせば,被控訴人Y2の妹の夫Eが家の新築資金を借り入れるにあたり本件土地に抵当権を設定するため,Cの要請により,本件土地について便宜控訴人名義で所有権保存登記がなされるとともに,本件土地の持分の一部についてC及び被控訴人らに移転登記がなされ,かつ本件土地の登記済権利証書をCにおいて保管した昭称63年9月ころ,控訴人からCに対し,本件土地の所有権が譲渡されたものと認めるのが相当である。」

2  以上によれば,原審の判断は結論において相当であり,本件控訴は理由がないから棄却すべきである。

よって,主文のとおり判決する。

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