大阪高等裁判所 平成20年(行コ)12号 判決 2008年5月30日
主文
1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
第3当裁判所の判断
当裁判所も本件支出のうち平成16年度を除く部分は不適法であるから却下すべきものであり、同年度の部分は理由がないから棄却すべきものと判断する。
その理由は、次のとおりである。
1 前記前提事実、〔証拠省略〕及び弁論の全趣旨によれば、次の事実を認めることができる。
(1) 本件清掃工場建設前の経緯
ア 町は、昭和50年代後半になって、旧来の施設の老朽化が進み、新たな清掃工場を建設する必要に迫られた。そこで、町は、従来から焼却後の灰捨場として利用していた土地(本件清掃工場の敷地)に新たな清掃工場を建設することを計画した。町は、周辺住民に対し、説明をしたが、新たな清掃工場を建設する同意を得るまでには交渉は難航した。
イ 町と周辺住民は、次のとおり交渉等をした。
① 昭和58年3月2日 第1回懇談会開催
町は、周辺住民に対し、本件清掃工場の建設への協力を要望した。
② 同月10日 第2回懇談会
周辺住民は、町に対し、最新の清掃工場の実情を視察して確認すること及び清掃工場の建設によって公害が発生しないようにすることを要請した。
③ 同年4月3日及び同月4日
大字の役員が金沢市西部清掃工場及び愛知県稲沢市清掃工場を視察した。
④ 同年5月14日 第3回協議会
町と周辺住民との間で、同意の前提として、地域に体育館を建設すること及び環境モニターを設置することを協議した。
⑤ 同月29日 第4回協議会
町と周辺住民との間で、最新の清掃工場を再度視察すること及び清掃工場の建設に伴う補償問題を協議した。
⑥ 同年7月17日 第5回協議会
町と周辺住民との間で、最新の清掃工場の視察と同意書の交付について協議した。
⑦ 同月29日及び同月30日
大字の住民が金沢市西部清掃工場及び愛知県稲沢市清掃工場を視察した。
ウ 上記の経緯を経て、昭和58年8月、6ヶ大字から、一応、本件清掃工場の建設に対する同月12日付け同意書を得ることができた。しかしながら、6ヶ大字からは、上記同意に関して、今後補償交渉のいかんによっては、同意書を無効として同意を撤回することがあり得る旨の留保が付され(〔証拠省略〕)、当時の町長渡邊文次(以下「渡邊町長」という。)は、大字の自治会長あてに、補償交渉等については誠意をもって対処する旨の誓約書(〔証拠省略〕)を提出した。
エ その後、同月19日付けで、6ヶ大字の自治会長は、渡邊町長に対し、① 町が建設する清掃工場は、前記のとおり視察した清掃工場と全く同じ准連続式のものを建設し、既存の焼却方式は採用しないこと、② 公害防止に万全を期すること、③ 公害モニターを各大字から選出し、毎月、公聴会を開くなど周辺住民の声を十分聞くこと、④ 周辺地域の環境の向上と調和を図るため施設周辺に樹木を多く配置し建物内にすべての施設を配置すること、⑤ 補償については、後日、要求書を提出するので、誠意をもって対処すること、を記載した要望書(〔証拠省略〕)を提出した。
オ 町(渡邊町長)と西竹田、松本、金剛寺及び大網の大字(各自治会長)との間で、昭和60年8月20日、新たに、① 町は、地域住民の健康と生活環境を守るため、公害の未然防止に万全を期すこと、② 町は、清掃工場の操業に際して、大気汚染防止法等の関係法令を遵守し、各規制数値を超えてはならないことはもちろんその低減に努めること、③ 公害モニターを設置すること、④ 工場の操業に伴い、地域住民の健康その他に損害を与えた場合は、町は誠意を持って補償するとともに施設改善等速やかに必要な措置を講じること、などを内容とする町清掃工場公害防止に関する協定書(〔証拠省略〕)を締結した。
カ 町と6ヶ大字は、昭和58年12月26日、第6回協議会を開催し、昭和59年6月4日、第7回協議会を開催した。
(2) 本件清掃工場の建設等
ア 町は、昭和59年9月、本件清掃工場の建設に着工し、昭和60年9月、本件清掃工場は完成した。
本件清掃工場の敷地面積は8316m2、建築面積は1639m2で、鉄筋コンクリート4階建、一部鉄骨造の建物内に、准連続燃焼式焼却炉が設けられた施設であって、焼却能力は60t/日、粗大ごみ破砕能力は15t/5hである。
イ ごみの燃焼によって本件清掃工場から焼却時に発生する排気ガスは、ガス冷却室で高圧水噴射で冷却され、空気予熱器を通過し、有害ガス除去装置を通過して、ばいじんと有害ガス処理で生じた副生成物が除去された後、温水発生器を通り、誘引送風機で排気筒から大気中に放出されることとなっていた。
ウ 渡邊町長は、昭和59年10月5日付けで、① 清掃工場の設置期間は完成後15年間とし、ただし、10年間で操業実績を検討して、継続か廃止かを地元と十分協議すること、② 環境整備事業については、信義と誠実をもって一定の基準を設け協議し実施すること、などを内容とする確約書(〔証拠省略〕)を作成した。
(3) 本件清掃工場の完成後確約書締結までの状況
ア 大網大字は、本件清掃工場の南南西側に位置していて、本件清掃工場の中心部までは、約400m前後の距離しかなく、本件清掃工場と集落の間は田畑であって、間を遮るものはなかった。本件清掃工場の操業が始まった後、特に大網大字と本件清掃工場の間の農地で栽培されている果実類や野菜類に本件清掃工場から排出された黒いすすが付着し、果実類等を廃棄せざるを得ないことが多かった。また、本件清掃工場の周辺の田に煤煙に含まれるすすが落下し、そこから出た油脂分が田の水面に膜を張った。さらに、周辺住民が洗濯物を外に干すと煤煙のすすが落下し、ひどいときは洗濯物を洗い直すほどであった。加えて、本件清掃工場からは、何かが燃えたような焦げた臭いが漂ってくることがあった。
大網大字の住民は、排気ガス中のダイオキシンに対する不安感は強く、徐々に人体に蓄積されて、将来にわたって、何らかの健康被害の影響がないか危ぐしていた。
大網自治会は、同大字内に居住する世帯数105のうち102が加入している。
イ 松本大字は、本件清掃工場の北西側に位置し、本件清掃工場から集落の中心までは約400mの近距離である。本件清掃工場と集落の間は田畑であって、間を遮るものはない。
松本大字では、本件清掃工場の排気ガスに含まれるすすが落ちてきて、野菜の葉に付着することが度々あるため、商品として出荷できないという事態が生じてきた。また、周辺住民が洗濯物を外に干すとすすが付着し、外に干せないときがあった。さらに、本件清掃工場から焦げ臭いような臭いが漂い、住民において、その臭いで頭が痛くなることがあった。加えて、周辺住民は、本件清掃工場の排気ガス中に含まれるダイオキシンについて、健康に対する不安が根強い。
松本自治会は、同大字内の同自治会対象地域に居住する世帯数67のうち65が加入している。
ウ 西竹田大字は、本件清掃工場の北北東側に位置し、本件清掃工場から集落の中心まで200mの距離しかない。本件清掃工場は、西竹田大字の区域内に存在し、集落との間は田畑であって、間を遮るものはない。
西竹田大字では、本件清掃工場の排気ガスに含まれるすすが地上に落下し、田の水面にすすに含まれる油脂分が膜をはることがしばしばあった。また、本件清掃工場のすぐ横を流れる飛鳥川から田に水を引いているところ、川にすすが落ちるため、周辺の田一帯に油膜が広がったことがあった。さらに、すすが果実類や野菜類に付くと、表面がうっすら黒くなって廃棄せざるを得なくなることがあり、周辺住民が外に干している洗濯物にすすが付着し、洗濯物が汚れるという被害が生じた。
西竹田大字では、本件清掃工場から何かが燃えたような頭が痛くなる悪臭が漂い、住民に対し、生活上相当な不快感を与えていた。また、本件清掃工場に向かうゴミ収集車が西竹田大字の区域内を走行し、腐汁やごみのくずなどを路面に落とし、周辺に不快な臭気を漂わせていた。さらに、本件清掃工場から、ごみを粉砕する「ガチャガチャ、ドンドン」という大きな音が普段から聞こえ、本件清掃工場内で穴を開けずに廃棄されたスプレー缶が爆発する事故があったときは、近隣でガス爆発があったと間違うような大音響を生じた。
そして、西竹田大字の住民は、排気ガス中のダイオキシンが蓄積されているのではないかという健康不安を強く持っている。
西竹田自治会は、同大字内に居住する世帯数53のうち47が加入している。
エ 金剛寺大字は、本件清掃工場の北西側に位置し、本件清掃工場から集落の中心までは約400mの距離である。集落と本件清掃工場の間はほとんど田畑のみで、その間を遮るものはない。
金剛寺大字では、田の水に排気ガスに含まれるすすや油が浮くという事態が度々生じ、排気ガス中に含まれるすすが集落全体に落下していた。そのため、住民は、白い洗濯物は汚れが目立つため、外に干せなかった。また、本件清掃工場からは物が焦げたような悪臭が漂ってきて、特に窓を開けて過ごすような夏は、相当な不快感を与えた。さらに、金剛寺大字では、住民の間に排気ガス中に含まれるダイオキシンによる健康被害の不安を主張する声が根強くあった。
金剛寺自治会は、その居住する世帯数29のうち25が加入している。
オ 平野大字は、本件清掃工場の南東側に位置し、本件清掃工場と集落の中心部までは500mほどの距離である。集落と本件清掃工場の間はほとんど田畑のみであって、間を遮るものはない。
平野大字では、本件清掃工場が建設されて以降、田に排気ガスに含まれるすすが落ちて水面に油膜をはったり、外に干した洗濯物にすすが付いて汚れたりといった問題が生じてきた。また、平野大字は、集落の中を通る道が町内各地域から本件清掃工場に向かう多数のごみ収集車の通り道となっていて、しかも急カーブとなっているので、日常的に路上にごみの腐汁やごみくずを落としていた。これが特に夏場では強い臭気を放ち、住民の生活に相当な不快感を与えていた。加えて、平野大字では、排気ガス中に含まれるダイオキシンによる健康被害の不安は、住民の間に根強い。
平野自治会は、その居住する世帯数45のうち38が加入している。
カ 十六面大字は、本件清掃工場の東側に位置し、本件清掃工場と集落の中心部までは約500mの距離である。集落と本件清掃工場の間はほとんど田畑のみであって、間を遮るものはない。
十六面大字では、田に排気ガスに含まれるすすが落ちてきたり、窓を開けると室内にすすが入ってきたりするなどの被害が度々あって、冬季に雪が降ったときは、白い雪の上に黒いすすが落ちていることがはっきり確認できるほどであった。また、住民が洗濯物を外に干していると、白い物はすすで汚れることが度々あった。更に、本件清掃工場からは、油臭いような焦げ臭いような臭いが漂ってきて、住民に相当な不快感を与えていた。加えて、住民は、本件清掃工場からの排気ガス中に含まれているダイオキシンによる健康被害に対する不安に脅かされている。
十六面自治会は、その居住する世帯数84のうち79が加入している。
キ 前記(2)ウの確約書では、本件清掃工場の操業は完成後10年経過時(平成7年)に操業実績を検討して継続か廃止かを地元と協議し、操業時限は操業開始後15年間(平成12年)までと定められていたが、清掃工場の移転には多額の費用と時間を要し、平成11年までに新たな清掃工場を建設できる見込みが立たなかったので、町と6ヶ大字は、平成7年以降、操業期限延長に向けて交渉を始めた。
しかし、前記のとおり、周辺住民の本件清掃工場の実態に対する不満から、6ヶ大字の反対は強く、操業延長に対する同意を得るための協議は、次のとおり、難航した。
① 平成7年9月12日
町長以下の町の責任者が、4ヶ大字12名の出席者を迎えて、① 今後10年間の操業継続を要請し、② 本件清掃工場近隣にフラワー公園を建設する計画を説明し、③ 各大字内で町の意向を受けて調整をすることを要請した。
② 同年11月16日
町長らが、4ヶ大字12名の出席者を迎えて、町として、本件清掃工場操業継続のために、① 公園の設置、② 本件清掃工場周辺の美観、他地区の住民のごみに対する認識強化の方針を提案した。
③ 同年12月20日
町から本件清掃工場継続に関する方針を提示し、大字側住民の意見を聴取した。
④ 平成8年2月28日
町側と4ヶ大字総代が出席し、① 町の本件清掃工場継続に関する方針の修正案を提示し、② 環境整備事業のための助成額と平成8年度の要求補助額の協議をした。
⑤ 同年3月6日
町長らと4ヶ大字総代が出席し、① 本件清掃工場継続に関する確認事項の検討と、② 環境整備補助額についての協議をした。
⑥ 同年4月10日
上記⑤と同様、① 確認事項中の公民館分館についてと、② 平野大字及び十六面大字の対応について協議をした。
⑦ 同年5月16日
町から、平野大字及び十六面大字の代表者を迎えて、① 公民館分館の取扱いと、② 環境整備補助金の説明がされた。
⑧ その後、同年6月から同年12月まで、継続的に協議がされた。
ク 上記の協議等の結果を踏まえ、町(森前町長)と4ヶ大字(各自治会長)<〔証拠省略〕>、町(森前町長)と平野大字(自治会長)<〔証拠省略〕>、町(森前町長)と十六面大字(自治会長)<〔証拠省略)>の間で、平成9年2月12日、本件清掃工場の操業継続について大字側が同意する一方で、町が地域環境整備事業のための助成を行う旨の確約書が締結された。
4ヶ大字との確約書(〔証拠省略〕>においては、地域環境整備事業のための助成として、平成8年度は、2000万円とし、平成9年度から平成17年度までの9年間については、毎年800万円と定める旨を、平野大字との確約書(〔証拠省略〕)においては、地域環境整備のための助成金として、平成8年度は、1000万円とし、平成9年度から平成17年度までの9年間については、毎年400万円と定める旨を、また、十六面大字との確約書(〔証拠省略〕)においては、地域環境整備事業のための助成として、平成8年度は、1000万円とし、平成9年度から平成17年度までの9年間については、毎年400万円と定める旨をそれぞれ合意した。
ケ 民生水道常任委員会での平成8年定例会までの審議状況
本件助成金は、町議会で十分議論した上で、その承認を得て支払われたものであるが、民生水道常任委員会での審議状況は、次のとおりである。
① 平成7年3月10日の委員会
町側から森前町長ら、議会(委員)側から民生水道常任委員会のA委員長(以下「A委員長」という。)らが出席し、町側からは、近隣住民の8割の協力を得るに至ったことが報告され、委員側からは、同年6月の議会までには、残り2割の住民の同意を得るよう督促された。
② 同年6月14日の委員会
町側から森前町長ら、議会(委員)側からA委員長らが出席し、町側からは、その後住民との協議が難航していることが報告され、委員側からは、大字の総代と話をした際の様子として、5年間の延長として、500万円の支払で地元を辛抱させるのは難しい、もっと前向きな物を持っていかないと困ると述べている旨の発言があった。
③ 同年9月13日の委員会
町側から森前町長ら、議会(委員)側からA委員長らが出席し、森前町長から今後10年間の操業延長を地元に依頼したこと、周辺の環境整備をすること、各大字に補償の額をいくら支払うかは未定であることなどが報告され、これらの件について審議された。
④ 同年12月13日の委員会
町側から森前町長ら、議会(委員)側からB委員長らが出席し、4ヶ大字との間では、10年間の操業延長の代償として、本件清掃工場に最も近い位置に公園を設置する方針であることが報告された。
コ 町議会平成8年第1回定例会での審議状況
平成8年3月4日から同月19日まで開催された町議会平成8年第1回定例会で、町側からは、本件清掃工場の10年間の操業継続のために、隣接するフラワーセンター建設整備事業の内容を説明し、地元6ヶ大字の了承を得た経緯を説明した。また、町側からは、6ヶ大字を対象として地域環境整備金として1億円を支出するため予算案に計上して提案した旨を説明をし、これには補償の意味合いがある旨などを説明した。
そして、同月19日の本会議で、平成8年度町一般会計予算などの議案について、各委員会における審議報告が各委員長からされ、本件清掃工場に関する地域環境整備補助金1億円の計上目的についても報告がされた上で、上記議案は可決された。
サ 予算審査特別委員会での審議状況
平成8年3月11日から同月15日の予算審査特別委員会では、町側から森前町長らが、議会(委員)側からC委員長らが出席し、地域環境整備助成金1億円を6ヶ大字に支出すること、本件清掃工場に関する古い確約書の配布と説明をしたこと、今後10年間の操業継続の了解を地元から得たこと、フラワー広場公園の整備事業などについて、質疑応答があった。
シ 民生水道常任委員会での審議状況
① 平成8年9月12日の委員会
町側から森前町長ら、議会(委員)側からB委員長らが出席し、本件清掃工場の継続等に関して、環境整備助成金、公園について本筋について同意が得られたこと、公民館の払下げについて補償的行為であることなどを確認した。
② 同年11月13日の委員会
町側から森前町長ら、議会(委員)側からD委員長(以下「D委員長」という。)らが出席し、町側からは、本件清掃工場の継続交渉の経過説明と6ヶ大字との間で締結予定の確約書の内容等について説明がされ、これに関して、本件清掃工場への廃棄物の搬入路の問題、ごみ処理全体の課題、公害防止協定の件、公害の測定その他について質疑応答がされ、本件清掃工場の継続の件は了承された。
③ 平成9年2月24日の委員会
町側から森前町長ら、議会(委員)側からD委員長らが出席し、町側から、本件清掃工場の継続のための確約書の書式を配布し、その内容等について説明した。これに関して、質疑応答がされ、賛成多数で了承された。
ス 町議会平成9年第1回定例会での審議状況
町側から、同年3月3日の本会議で、同年度町一般会計予算などの議案が一括上程にて提案されて、提案理由の説明がされた。また、同月5日の本会議では、町側から、本件清掃工場の操業継続期間は10年間とすることで6ヶ大字と合意に至ったこと、地域環境事業助成金は、平成8年度は1億円を6ヶ大字に交付し、また、平成9年度から平成17年度まで毎年4000万円、合計3億6000万円を支出すること、この助成金の使途については特に限定はしていないこと、フラワー広場公園整備事業費のこと、6ヶ大字との確約書などについて質疑応答がされた。さらに、同月6日の本会議では、確約書による公民館分館の払下げと地域環境整備事業助成金の関係について質疑応答がされた。
セ 町議会平成9年第2回定例会での審議状況
6月9日の本会議で、平成10年度から平成17年度までの地域環境整備事業助成金の限度額3億2000万円とする債務負担行為が可決承認された。
(4) 本件支出
町は、平成9年3月31日、1億円を、同年4月30日、3000万円を、平成10年4月30日、4000万円を、平成11年4月30日、4000万円を、平成12年4月28日、4000万円を、平成13年4月23日、4000万円を、平成14年4月26日、4000万円を、平成15年4月28日、4000万円を、平成16年5月14日、4000万円を、6ヶ大字に対し、清掃工場継続に伴う地域環境整備助成金として、支払った。
なお、本件支出のうち、平成12年大網大字に対するもの、平成13年大網大字に対するもの、平成14年大網大字に対するもの、平成15年大網大字に対するもの及び平成16年大網大字に対するものに係る支出命令書(〔証拠省略〕)の最終決裁権者は、森前町長である。
(5) 新聞報道
平成13年3月7日付け読売新聞奈良版に、「田原本町清掃工場 確約期限超え操業?」と題する記事が掲載され、町と6ヶ大字との間の各確約書が存在することなどが報道された。また、同年6月15日付け朝日新聞奈良版に、「ごみ迷惑料年4000万円」と題する記事が掲載され、町が6ヶ大字に対し、環境整備補助金との名目で金員を支払っていることなどが報道された。
(6) 情報公開条例
町は、平成11年12月22日、情報公開条例を制定し、これに従って手続をすれば、上記条例制定時以降、支出命令書(〔証拠省略〕)や確約書(〔証拠省略〕)は開示された。
(7) 一般会計予算及び決算書
本件支出のうち、平成8年度支出は、同年度一般会計特別会計予算に関する説明書(〔証拠省略〕)の「(款)4.衛生費(項)2.清掃費(目)1.清掃総務費(節)19.負担金補助及び交付金 地域環境整備助成金」と同年度町一般会計歳入歳出決算書(〔証拠省略〕)の「地域環境整備助成金」として記載され、平成9年度支出は、予算に関する説明書(〔証拠省略〕)及び決算書(〔証拠省略〕)で地域環境整備助成金(環境整備事業補助金)として記載され、平成10年度支出は、予算に関する説明書(〔証拠省略〕)及び決算書(〔証拠省略〕)で地域環境整備助成金(環境整備事業補助金)として記載され、平成11年度支出は、予算に関する説明書(〔証拠省略〕)及び決算書(〔証拠省略〕)で地域環境整備助成金(補助金)として記載され、平成12年度支出は、予算に関する説明書(〔証拠省略〕)及び決算書(〔証拠省略〕)で地域環境整備助成金(補助金)として記載され、平成13年度支出は、予算に関する説明書(〔証拠省略〕)及び決算書(〔証拠省略〕)で地域環境整備助成金(補助金)として記載され、平成14年度支出は、予算に関する説明書(〔証拠省略〕)及び決算書(〔証拠省略〕)で地域環境整備助成金(補助金)として記載され、平成15年度支出は、予算に関する説明書(〔証拠省略〕)及び決算書(〔証拠省略〕)で地域環境整備助成金(補助金)として記載されている。また、平成10年度支出ないし平成17年度支出は、平成9年度町一般会計予算(〔証拠省略〕)において3億2000万円を限度として債務負担行為が行われることが記載されている。
その上で、平成10年度決算書と平成11年度予算書は同年12月19日、平成11年度決算書は平成12年12月24日、同年度予算書は同年3月24日、同年度決算書は平成13年8月2日、同年度予算書は同年3月25日、同年度決算書は平成14年9月21日、同年度予算書は、同年3月30日、同年度決算書は平成15年10月23日、同年度予算書は同年3月9日、同年度決算書は平成16年9月21日に、それぞれ町立図書館で一般の閲覧が可能とされた(〔証拠省略〕)。
(8) 本件助成金の額
ア 本件清掃工場は、いわゆる迷惑施設であって、昭和60年の本件清掃工場の建設前後で6ヶ大字の地域の地価は、宅地(農家集落地)及び農地のいずれにおいても、概ね7.5%の減価が生じたことが推定されるなど、本件清掃工場の建設が一般的に周辺地域の地価を下落させている(〔証拠省略〕)。
そして、上記減価率7.5%を6ヶ大字の地域の面積に乗じて、土地原価額の総合計を試算すると、宅地(農家集落地)では10億9500万円、農地では26億6000万円となる(〔証拠省略〕)。
イ 本件清掃工場は、昭和59年9月、着工し、総工費12億4700万円を費やして昭和60年9月、完成した。
本件清掃工場の平成9年当時の残存価値は、定額法で8億8898万6300円、定率法で6億0242万1957円となる。
ウ 他方、本件清掃工場を廃止し、新たな清掃工場を建設するとした場合、調査に要する費用として1400万円(〔証拠省略〕)、同様の規模の広陵町の清掃工場で建設費として53億8233万2850円となっている(〔証拠省略〕)。また、本件清掃工場の解体費用として3億1000万円が試算されている(〔証拠省略〕)。
(9) その他
ア 本件においては、補助要綱は作成されておらず、また、町は、各自治会(大字)に対し、決算報告を求めたり会計監査を実施したりしていない。
イ 町と6ヶ大字は、平成17年9月22日、本件清掃工場について、①操業期限を平成27年9月30日までとする、②同日までの地域振興補助金として、毎年、各自治会に対し、100万円を交付する、などを内容とする協定書を締結した。
2 争点1(本件訴訟の適法性)について
(1) 監査請求期間徒過についての「正当な理由」の有無について
ア 前記前提事実のとおり、控訴人は、町監査委員に対し、平成17年1月11日、地方自治法242条1項の規定に基づく本件監査請求をしているところ、本件支出のうち平成16年度分を除く部分は、いずれも支出の日から1年間を徒過している。
イ 普通地方公共団体の住民が相当の注意力をもって調査を尽くしても客観的にみて住民監査請求をするに足りる程度に財務会計上の行為の存在又は内容を知ることができなかった場合には、地方自治法242条2項ただし書にいう正当な理由の有無は、特段の事情のない限り、当該普通地方公共団体の住民が相当の注意力をもって調査すれば客観的にみて上記の程度に当該行為の存在及び内容を知ることができたと解される時から相当期間内に監査請求をしたかどうかによって判断すべきである(最高裁平成10年(行ツ)第69号、第70号同14年9月12日第一小法廷判決・民集56巻7号1481頁参照)。
これを本件についてみると、前記1で認定した事実によれば、①本件支出は、平成7年及び平成8年、数回にわたって、民生水道常任委員会で審議され、平成8年、予算審査特別委員会で審議され、平成8年、第1回定例会、平成9年、第1、第2回定例会で町議会本会議で審議され、可決されたものであること、②本件支出のうち、平成8年度支出ないし平成15年度支出は、いずれも、予算説明書及び決算書で地域環境整備助成金(環境整備事業補助金あるいは補助金)として記載されていて、平成10年度決算書と平成11年度予算書は同年12月19日、平成11年度決算書は平成12年12月24日、同年度予算書は同年3月24日、同年度決算書は平成13年8月2日、同年度予算書は同年3月25日、同年度決算書は平成14年9月21日、同年度予算書は同年3月30日、同年度決算書は平成15年10月23日、同年度予算書は同年3月9日、同年度決算書は平成16年9月21日に、それぞれ町立図書館で一般の閲覧が可能とされたこと、③本件支出については、平成13年3月7日付け読売新聞奈良版に、「田原本町清掃工場 確約期限超え操業?」と題する記事が掲載され、町と6ヶ大字との間の各確約書が存在することなどが報道されたこと、また、同年6月15日付け朝日新聞奈良版に、「ごみ迷惑料年4000万円」と題する記事が掲載され、町が6ヶ大字に対し、環境整備補助金との名目で金員を支払っていることなどが報道されたことなどを認めることができるのであって、これらの事実関係を総合すると、本件支出については、平成8年度支出から平成15年度支出までの部分は、各支出の時、調査に要する期間を考慮したとしても各支出から一定期間が経過した時までには、控訴人において、相当の注意力をもって調査すれば客観的にみて本件支出の存在及び内容を知ることができたと認めることが相当であって、上記認定を覆すに足りる特段の事情をうかがうことはできない。そうである以上、各支出があった日から1年を経過してなされた監査請求は不適法である。
ウ そうすると、本件支出のうち、平成16年度支出を除く部分については、正当な理由がなく監査請求期間を徒過した後に監査請求をしたというべきであって、本件監査請求のうち上記部分は不適法であるから、本件訴えのうち、平成16年度支出を除く部分については不適法として却下を免れないというほかない。
エ 控訴人は、早くとも平成16年12月27日の新聞報道で本件助成金の支出を知った旨主張し、あるいは、「正当な理由」は緩やかに解されるべきである旨主張するが、いずれも上記認定説示に照らして、失当であることは明らかであって、他に上記認定判断を覆すに足りる証拠はない。
(2) 監査請求における「事実を証する書面」の添付の有無について
ア 〔証拠省略〕及び弁論の全趣旨によれば、控訴人の本件監査請求は、「『公文書開示請求の却下について』(田環第170号)の写し」を添付してされたものであることを認めることができ、他に上記認定を覆すに足りる証拠はない。
イ 住民監査請求は、その対象とする財務会計上の行為又は怠る事実を他の事項から区別し、特定して認識できるように個別的、具体的に摘示し、また、上記行為等が複数である場合には、上記行為等の性質、目的等に照らしこれらを一体とみてその違法又は不当性を判断するのを相当とする場合を除き、各行為等を他の行為等と区別し、特定して認識できるように個別的、具体的に摘示してしなければならない、と解される(最高裁平成元年(行ツ)第68号同2年6月5日第三小法廷判決・民集44巻4号121頁参照)。
これを本件についてみると、「公文書開示請求の却下について」(田環第170号)の写しのみでは、監査請求の対象となる行為等を特定することは困難であるものの、監査措置請求書(〔証拠省略〕)の記載と照らし合わせると、本件監査請求の対象は、平成8年度から平成17年度までの町が6ヶ大字に対して支出した本件助成金であること等を読み取ることは十分可能であって、本件においては、上記添付書面は地方自治法242条1項の規定にいう「事実を証する文書」と認めることが相当である。
ウ これに対し、被控訴人は、本件の添付書類のみでは本件監査請求に係る事実を証する書面に該当しないなどと反論する。
しかしながら、住民監査請求においては、対象とする財務会計上の行為又は怠る事実を、他の事項から区別し特定して認識することができるように、個別的、具体的に摘示をすることを要するが、監査請求書及びこれに添付された事実を証する書面の各記載、監査請求人が提出したその他の資料等を総合して、住民監査請求の対象が特定の財務会計上の行為等であることを監査委員が認識することができる程度に摘示されているのであれば、これをもって足りるのであり、このことは、対象とする財務会計上の行為等が複数である場合であっても異ならない、と解すべきであるから(最高裁平成12年(行ヒ)第292号同16年11月25日第一小法廷判決・民集58巻8号2297頁参照)、被控訴人の上記反論は、上記認定を覆すものとはいえない。
3 争点2(本件支出の違法性)
(1) 補助金としての違法性の有無について
ア 前記1で認定した事実によれば、本件支出は、本件清掃工場に伴う地域環境助成金として支出されたものと認めることができるところ、上記認定事実によれば、本件支出は地方自治法232条の2の規定に基づく町から6ヶ大字(各自治会)に対する補助金であると認めることが相当である。
イ 普通地方公共団体は、その公益上必要がある場合においては、寄附又は補助をすることができるところ、いわゆる迷惑施設の整備に関しては、当該施設の建設又はその後の当該施設における操業により損失を受けるおそれのある周辺住民等から、当該施設の建設に同意する条件として、地方公共団体に対して損失補償を求めることが想定される。このような場合、地方公共団体としては、当該施設の整備の必要性、その建設又は操業による損失発生の蓋然性の程度、被侵害利益の種類、性質、補償額の算出方法、地方公共団体と周辺住民等との交渉の経緯その他諸般の事情を総合的に考慮し、地方公共団体の裁量権の行使がその裁量権の範囲を逸脱し、又は濫用したものと認められないときには、当該損失補償に関する契約の締結や支出は違法とはいえないと解することが相当である(最高裁平成15年(行ヒ)第123号同18年3月10日第二小法廷判決・判例地方自治283号103頁、判時1969号25頁参照)。
これを本件についてみると、前記1で認定した事実によれば、①町は、昭和50年代後半になって、新たな清掃工場を建設する必要に迫られ、従来から焼却後の灰捨場として利用していた土地(本件清掃工場の敷地)に新たな清掃工場を建設することを計画したこと、②町は、周辺住民に対し、説明をしたが、新たな清掃工場を建設する同意を得るまでには交渉は難航したこと、このような経緯の中で、昭和58年8月、町は、6ヶ大字から、一応、本件清掃工場の建設に対する同月12日付け同意書を得ることができたこと、しかしながら、6ヶ大字からは、上記同意に関して、今後補償交渉のいかんによっては、同意書を無効として同意を撤回することがあり得る旨の留保が付され、当時の渡邊町長は、大字の自治会長あてに、補償交渉等については誠意をもって対処する旨の誓約書を提出したこと、③町と西竹田、松本、金剛寺及び大網の大字(各自治会長)との間で、昭和60年8月20日、町清掃工場公害防止に関する協定書を締結したこと、④町は、昭和59年9月、本件清掃工場の建設に着工し、昭和60年9月、本件清掃工場は完成したこと、⑤渡邊町長は、昭和59年10月5日付けで、(ア)清掃工場の設置期間は完成後15年間とし、ただし、10年間で操業実績を検討して、継続か廃止かを地元と十分協議すること、(イ)環境整備事業については、信義と誠実をもって一定の基準を設け協議し実施すること、などを内容とする確約書を作成したこと、⑥しかし、本件清掃工場の操業開始後、6ヶ大字では、その排出する煙やすす、油脂分の落下、騒音や悪臭の発生、本件清掃工場に出入りする車両が走行中に落とすごみ汁などの問題が生じ、6ヶ大字の周辺住民からは苦情が出るようになっていったこと、⑦上記⑤の確約書では、本件清掃工場の操業は完成後10年経過時(平成7年)に操業実績を検討して継続か廃止かを地元と協議し、操業時限は操業開始後15年間(平成12年)までと定められていたが、清掃工場の移転には多額の費用と時間を要し、平成11年までに新たな清掃工場を建設できる見込みが立たなかったので、町と6ヶ大字は、平成7年以降、操業期限延長に向けて交渉を始めたこと、しかし、周辺住民の本件清掃工場の実態に対する不満から、6ヶ大字の反対は強く、操業延長に対する同意を得るための協議は、難航したこと、⑧上記の協議等の結果を踏まえ、森前町長と4ヶ大字(各自治会長)(〔証拠省略〕)、森前町長と平野大字(自治会長)(〔証拠省略〕)、町(森前町長)と十六面大字(自治会長)(〔証拠省略〕)の間で、平成9年2月12日、再度、確約書が締結されたこと、4ヶ大字との確約書(〔証拠省略〕)においては、地域環境整備事業のための助成金として、平成8年度は、2000万円とし、平成9年度から平成17年度までの9年間については、毎年800万円と定める旨を、平野大字との確約書(〔証拠省略〕)においては、地域環境整備のための助成金として、平成8年度は、1000万円とし、平成9年度から平成17年度までの9年間については、毎年、400万円と定める旨を、また、十六面大字との確約書(〔証拠省略〕)においては、地域環境整備事業のための助成金として、平成8年度は、1000万円とし、平成9年度から平成17年度までの9年間については、毎年400万円と定める旨をそれぞれ合意したこと、⑨このようにして支出することとされた本件助成金は、前記1で認定したとおり、町議会で十分議論した上で、その承認を得て支払われたものであること、また、本件支出は、予算に関する説明書及び決算書に明示的に記載がされていること、6ヶ大字の自治会はその対象地域の世帯数の84ないし97%を組織すること(〔証拠省略〕)、⑩本件清掃工場は、いわゆる迷惑施設であって、昭和60年の本件清掃工場の建設前後で6ヶ大字の地域の地価は、宅地(農家集落地)及び農地のいずれにおいても、概ね7.5%の減価が生じたことが推定されるなど、本件清掃工場の建設が一般的に周辺地域の地価を下落させていること、⑪本件清掃工場は、昭和59年9月、着工し、総工費12億4700万円を費やして昭和60年9月、完成したものであるが、本件清掃工場の平成9年当時の残存価値は、定額法で8億8898万6300円、定率法で6億0242万1957円となり、他方、本件清掃工場を廃止し、新たな清掃工場を建設するとした場合、調査に要する費用として1400万円、建設費として53億8233万2850円を要するものであること、また、本件清掃工場の解体費用として3億1000万円が試算されていること、などの各事実を認めることができ、上記認定を覆すに足りる証拠はない。そして、上記認定した事実によれば、本件清掃工場はその設置・操業の必要性は高いものの、周辺住民等に対しては前記のとおり多くの被害を生じていて、町と6ヶ大字との問では、長年にわたって難航した交渉を慎重かつ継続的にしてきたこと、森前町長は、本件清掃工場の操業継続を独断でした訳ではなく、民生水道委員会や特別予算審査委員会で議論し、町の本会議で議論し、本件助成金については、町の予算・決算に計上してその議決を求め、上記予算等は可決の上、本件支出がされたものであること、本件助成金の額は、本件清掃工場を廃止し、新たな清掃工場を建設することと対比して、また、6ヶ大字の周辺住民の受けてきた被害と対比して、一応合理的な金額といえること、などを認めることができるのであって、町においてその裁量権を逸脱し、又は濫用したものとは到底言い難い。
ウ これに対し、控訴人は、補助要綱を作成する、補助金の交付申請書の提出を求めて事業計画や予算を審査する、支出後に報告を求めるなどの方法があるのに、町はこれらをしなかったのは違法な支出である旨主張する。
しかし、控訴人の上記指摘するような手続等を踏むことは本件支出後の金員の使い方をより慎重にするものに資するということはできるものの、本件支出そのものについて、町がその有する裁量権を逸脱し、又は濫用したか否かという観点からみると、上記のような手続を取っていないことをもってして、本件支出そのものが違法なものになるとはいうことはできず、控訴人の上記主張は理由がないというほかない。
エ そして、他に本件支出が違法であることを認めるに足りる証拠はない。
(2) 事務処理経費としての違法性について
当裁判所は、本件支出をもって補助金と認めるものであるが、仮にこれを地方自治法232条1項の規定にいう事務処理経費と認めるとして、前記1で認定した事実関係に照らすと、本件支出は、町がその事務を補助するために必要な経費であると認めることができ、上記認定を覆すに足りる証拠はない。
4 結論
以上によれば、控訴人の本件訴えのうち平成16年度を除く部分は不適法なものであるからこれを却下すべきであり、同年度の部分は理由がないから棄却すべきところ、これと同旨の原判決は相当である。
よって、本件控訴を棄却することとし、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 森宏司 裁判官 小池一利 山本善彦)