大阪高等裁判所 平成21年(く)193号 決定 2009年5月18日
主文
本件即時抗告を棄却する。
理由
本件抗告の趣意は,弁護人A作成の即時抗告申立書に記載のとおりであるから,これを引用する。
弁護人は,原決定の理由1の(ア)から(キ)までに掲げる各証拠(これらをまとめて「本件各証拠」という。)につき,刑事訴訟法316条の28第2項,316条の20第1項のいわゆる争点関連証拠であると主張して,その開示を命ずる決定を求めているところ,論旨は,これら証拠は,本件捜査及び起訴が政治弾圧目的であって公訴権の濫用に該当するとの被告人・弁護人の主張と関連性を有し,開示を認める必要性があり,開示によって弊害が生じるおそれもないので,開示命令請求を認めなかった原決定は違法であるから,原決定を取り消して本件各証拠の開示命令を求める,というのである。
そこで検討するに,弁護人が上記公訴権濫用の主張を基礎づけるものとして主張している具体的事実は,原決定が引用する検察官の意見書(平成21年4月10日付け)の第2において,①から⑦までにまとめられているとおりであるところ,原決定が,本件各証拠について,上記①から⑦までの各主張との関係で,刑事訴訟法316条の20第1項に定める開示の要件に該当しないと認定判断して,証拠開示命令の請求を棄却したのは正当であり,所論を踏まえて検討しても,その認定判断は動かない。
なお,所論は.検察官に開示による弊害を具体的に明らかにさせることなく証拠開示命令請求を棄却したのは,最高裁判所の判例の趣旨と相容れないというが,所論の引用する判例は,警察での被疑者取調べの状況が具体的に争点となった場面において,警察官が犯罪捜査規範13条に基づいて作成した備忘録の開示が問題となった事案に関するものであり,本件とは事案が異なる。
よって,本件即時抗告は理由がないから,刑訴法426条1項によりこれを棄却することとし,主文のとおり決定する。
(裁判長裁判宮 古川博 裁判官 田中伸一 裁判官 出口博章)