大阪高等裁判所 平成21年(く)326号 決定 2009年7月28日
主文
本件抗告を棄却する。
理由
本件抗告の趣意は,少年を中等少年院に送致した原決定の処分は著しく不当であるというのである。
そこで,検討するに,本件は少年が,共犯者と共謀の上,いわゆる美人局の方法により,少年の売春の相手方から現金20万円を脅し取った恐喝1件,及び,同様の方法により金員を脅し取ろうとしたが,警察に通報されたため,未遂に終わったという恐喝未遂1件の事案である。
いずれの非行も,当初から売春の相手方から金員を喝取する目的で,役割分担を決め,待ち合わせ場所等を打ち合わせた上で実行する計画的,組織的なものである上,被害者らの弱みに付け込む卑劣で悪質なものであり,被害額も多額である。少年は,被害者と性交後,送迎名目で共犯者との待ち合わせ場所に被害者を誘い込んだほか,被害者に対して脅迫文言を発するなどしている。
そして,少年は,平成18年10月30日及び同年12月25日に,窃盗(万引き)により審判不開始となったほか,平成19年11月29日には窃盗(万引き)により保護観察に付されたにもかかわらず,本件各非行に及んでいること等に照らすと,その非行性は深化しつつあるというべきである。
少年の資質上の問題としては,精神発達,社会性とも未成熟で,周囲への甘えや依存心の強さなどが目立つ自己中心的な性格や,後先のことを考えずにその時の気分や感情で軽率に行動しやすい傾向などが指摘されている。
また,少年の両親らは,これまで少年に対する適切な指導を行うことができず,結果的に放任してしまって,少年の問題行動を助長させてしまった側面がうかがわれ,その監護に多くを期待することは困難である。
このように,少年の抱える資質上の問題点が軽視できず,家庭での監護にも多くを期待することができないことなどを考えると,少年の健全な育成を図るためには,強力な枠組みの中で,規範意識を涵養させ,資質的な問題点等を改善していくことが必要である。したがって,少年を中等少年院に送致した原決定は相当であり,その処分が著しく不当であるとはいえない。
論旨は理由がない。
よって,少年法33条1項により本件抗告を棄却することとし,主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 大渕敏和 裁判官 中桐圭一 赤坂宏一)