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大阪高等裁判所 平成23年(ネ)1519号 判決 2011年10月18日

主文

1  本件控訴をいずれも棄却する。

2  控訴費用は控訴人らの負担とする。

事実及び理由

第3当裁判所の判断

1  当裁判所は、控訴人らの請求は全部理由がないものと判断する。その理由は、以下のとおり付加、補正、削除するほかは、原判決「事実及び理由」中の第3のとおりであるから、これを引用する。

(1)  原判決10頁16行目の「平成18年4月ころから」を「平成18年4、5月ころ吹奏楽部を退部し、そのころから」と改め、同20行目の「原告X1の頭髪は、」の次に「a小学校卒業時(平成17年3月)ころ(甲11の1ないし3)、そして」を加え、同21行目の「黒色様」を「黒色」と改め、同23行目の「また」から同25行目末尾までを削除し、同11頁1行目の「原告X1の服装の乱れや頭髪色等について指摘をした。すると、原告X3は、」を「控訴人X1が眉毛を細く剃ったこと、シャツの裾を出して着るなど服装が乱れていることを指摘した。これに対し、控訴人X3は、唐突に、」と改める。

(2)  原判決11頁2行目の末尾の次に以下のとおり加える。

「控訴人X1の頭髪は黒色であると考えていたA担任は、控訴人X3の発言の趣旨が分からなかったが、『うちの子と同じですね』と話を合わせた(控訴人X1は、平成18年5月ころ自宅又は美容院で頭髪の脱色をした旨供述するけれども(甲37、49、原審控訴人X1本人―50、65、66頁)、平成18年7月ころの保護者面談前に頭髪の脱色をしていたとすれば、控訴人X1の母親である控訴人X3が保護者面談の席で、頭髪の脱色の事実に触れず、あえて『生まれつき茶髪である』などと述べることは考えにくいこと、A担任をはじめとするb中学校の教員が控訴人X1の頭髪の色の変化に気付いていなかったこと(だからこそ控訴人X1に対し頭髪指導を始めていなかったこと)からすると、控訴人X1の上記供述を採用することはできない。)。」

(3)  原判決11頁7行目の「原告X1は、」の次に「『ストレートパーマを当てた』などと弁解し、」を加え、同11行目の「同月下旬ころ」を「同月29日」と、同12行目の「月曜日」を「同年10月2日(月曜日)」と各改め、同13行目の「原告X1は、」の次に「同日、」を加え、同18行目の「その後」から同20行目末尾までを削除し、同22行目の「同月中旬ころ」を「同年12月18日」と改める。

(4)  原判決11頁26行目の「原告X1は、2学年2学期ころ」を「控訴人X1は、2学年2学期に入ってからも、化粧(眉毛を細く剃る・マスカラを付ける・赤いリップクリームを塗る・マニュキュアを塗る)・服装の乱れ(ブラウスのボタンを外してネクタイをゆるめる・ブラウスをブレザーの下から出す・ブレザーを着用しない・上靴の踵を踏む)など生徒心得及び服装規定に違反する行為を繰り返していた。控訴人X1は、」と、同12頁3行目の「原告X1の」から4行目末尾までを「控訴人X1は、友人から『もうええやん。締めえなあ。はよ帰ろ。』などと言われてボタンを留めた。」と各改める。

(5)  原判決12頁9行目の「原告X1は、」を「控訴人X1は、2学年3学期に入ってからも、化粧・服装の乱れなど生徒心得及び服装規定に違反する行為を繰り返していた。控訴人X1は、」と改め、同14行目の「B生活指導教諭は、」の次に「被控訴人X1に対し『こんなに注意されても脱がないのか。』などと言って、」を加える。

(6)  原判決12頁15行目から21行目までを以下のとおり改める。

「ウ B生活指導教諭は、平成19年1月16日ころ、控訴人X1が左耳にピアスの穴を開け、傷口が化膿しているのを見付け、控訴人X1は、保健室で、C養護教諭から傷口の手当てを受けた。同月20日ころ、控訴人X1の頭髪が再び明るい茶色に変化したことから、B生活指導教諭は、控訴人X1に対し、繰り返し、口頭で頭髪指導を行ったが、控訴人X1はこれに応じなかった。

エ A担任は、そのころ、控訴人X3の勤務先に電話をかけ、控訴人X1が化粧・服装の乱れなど生徒心得及び服装規定に違反する行為を繰り返していることを伝えるとともに、家庭において生徒心得及び服装規定に遵うように控訴人X1を指導して欲しいと申し入れた。これに対し、控訴人X3は、化粧・服装の乱れなど生徒心得及び服装規定に違反する行為を繰り返していることは、緊急の用件ではないと考えていたことから(乙3―5頁)、職場に迷惑がかかるため、自宅か携帯電話に連絡するようにと答えた。」

(7)  原判決12頁22、23行目の「原告X1を○○学級(特別支援学級)の教室に呼び出し」を「控訴人X1が昼休みが終了する直前に、B生活指導教諭がいた○○学級(特別支援学級)の教室に一人で来たことから、放課後にもう一度来るようにと言って自分の教室に帰らせた。B生活指導教諭は、放課後○○学級の教室に来た控訴人X1に対し」と改め、同26行目の末尾の次に「B生活指導教諭は、控訴人X1に対し、自分の携帯電話の番号を書いたメモを手渡した(甲22、乙3―9頁、原審控訴人X1本人―57頁)。」を加える。

(8)  原判決13頁5行目の「原告X1は」から8行目の「述べた。この間、」までを「控訴人X1は、同日午前中の休憩時間に○○学級の教室に赴き、B生活指導教諭に対し、『先生。お母さんに絶対言わない約束でやって。』あるいは『先生。お母さんに内緒でやって。』などと述べた(乙6―14頁、原審証人B―18頁)。B生活指導教諭は、控訴人X1に対し、放課後保健室に来るようにと言った。B生活指導教諭は、昼休み時間に、D生徒指導主事に対し、控訴人X1が母親に報告されることを嫌がっていることを含め状況を説明して相談した結果、控訴人X1が染髪を実施してほしいと申し出てきたことをふまえ、学校内で染髪を実施することを決めた。その後、念のため、」と改める。

(9)  原判決13頁18行目の末尾の次に「B生活指導教諭は、本件染髪行為を開始するに当たり、皮膚アレルギー試験(染髪の2日前〔48時間前〕に行ういわゆるパッチテスト〔甲51、52〕)を行わなかった。」を加え、同20行目の「洗い流し」を「シャンプーでの洗い流し及びその後の乾燥」と、同26行目の「本件染髪行為の後、帰宅した。」を「本件染髪行為が終わった後、午後4時半ころ下校し、帰宅した。その後、E学年主任が控訴人X3に経過説明をするため、午後6時ころ、控訴人X1の自宅に電話をかけたが応答はなかった。」と、同14頁1行目の「午前2時ころ」を「午前2時35分ころ」と、同2、3行目の「真っ黒に染められました。」を「真っ黒に染め(ら)れました。校長に話しにいきます。」と各改める。

(10)  原判決14頁7行目の末尾の次に「控訴人X1は、同日、通常どおり登校した。」を、同11行目の末尾の次に「控訴人X1は、同月17日(土曜日)ころ、右耳にピアスの穴を開けた。B生活指導教諭は、同月19日(月曜日)控訴人X1が登校しなかったことから、同月20日午前7時35分ころ、控訴人X1の自宅に電話をかけたところ、控訴人X3は、控訴人X1が2月16日未明に手首をカッターで切ったなどと述べた。控訴人X1は、同月21日、片方の手首にサポーターを巻いて登校したが、B生活指導教諭及びA担任の問い掛けにも答えず、手首を見せようとしなかった(控訴人らが証拠として提出する控訴人X1の手首の写真〔甲42ないし44〕をみると、皮膚に赤化している部分が認められるけれども、これが自殺未遂の痕跡であるかは定かではない。)。」を各加える。

(11)  原判決14頁12行目の「同年3月2日」を「同年3月2日及び8日(甲22)と改め、同16行目の「謝罪を要求した」の次に「(甲23、24)」を、同18、19行目の「原告X1のクラスメイトの面前で、」の次に「『結果として保護者の承諾なしに髪を染めたこと』(甲31)を」を各加え、同19行目の「(甲26、31)」を「(甲25)」と改める。

(12)  原判決14頁20、21行目を以下のとおり改める。

「イ 控訴人X1は、平成19年3月17日、c医院を受診して投薬治療を受け、同月19日付けで『病名・接触性皮膚炎(頭部)』『上記にて内服外用の治療を必要とする。』との診断書(甲9)を作成してもらい、控訴人X2は、同月17日、合計5140円(内訳は、診察代4010円、薬代1130円である。)を支払った(甲1、8、9、弁論の全趣旨)。」

(13)  原判決14行目23、24行目の「奈良県教育委員会教育長や生駒市長らに対し」を「奈良県教育委員会教育長、生駒市市長、生駒市教育委員会教育長及びb中学校校長に対し」と、同25行目の「12月26日」を「12月27日」と各改める。

(14)  原判決15頁12行目の「化粧をしたり、頭髪を脱色するなど」を「化粧をしたりするなど」と、同13行目の「違反し始めた。」を「違反し始め、同年8月3日(夏休み中の平和登校日)に頭髪色をオレンジかかった明るい茶髪にして登校してからは、校則に違反して『染髪脱色等』すなわち染髪又は脱色をし始めた。」と、同19行目の「同年7月」を「同年7月ころ」と各改め、同24行目の「本件染髪行為の当日、」の次に「前判示のとおり、B生活指導教諭に対し、『先生。お母さんに絶対言わない約束でやって。』あるいは『先生。お母さんに内緒でやって。』などと述べたことに加え、」を加える。

(15)  原判決16頁11行目の「以上検討したところによれば、本件染髪行為の趣旨・目的は、」を「教育施設における規則や校則(本件にいう校則、服装規定)の教育性は、生徒一人一人の社会性、自立性、責任感を育成することにあるから、これに則った本件染髪行為は、」と改める。

(16)  原判決16頁20行目から同17頁3行目の「ところである。」までを以下のとおり改める。

「しかしながら、前判示のとおり、控訴人X1の頭髪は、a小学校卒業時(平成17年3月)ころ、b中学校入学(同年4月)から平成18年5月19日ころまで黒色であったこと、当時b中学校では、頭髪を脱色又は染色した生徒に対し口頭で指導し、場合によっては学校内で染髪行為を行うこともあったところ、控訴人X1は2学年1学期中は吹奏楽部を退部した後も頭髪指導を受けていなかったこと、控訴人X1は、平成18年8月3日(夏休み中の平和登校日)に初めて頭髪指導を受けたことがそれぞれ認められる。確かに、前判示のとおり、控訴人X3が平成18年7月ころの保護者面談において、唐突に『控訴人X1の髪の毛は、生まれつき茶髪である』などと述べたこと、控訴人X1は、平成20年4月入学した私立高校において、同月17日生活指導部から『地毛証明・茶色』との認定を受けたことがそれぞれ認められるけれども、前者(控訴人X3の発言)は、前判示のとおり、控訴人X1が2学年1学期中は頭髪指導を受けていないことからみて不可解というほかはなく(ひとくちに黒髪といっても個人により濃淡の差があることは当然であるが、本件における担任教諭、生徒指導教諭をはじめとするb中学の教員は、入学以来平成18年8月まで、控訴人X1の頭髪の色を問題にしたことはいっさいなく、それが保護者面談の話題になろうはずがない場であったのに、保護者側から先制して茶髪云々の話が持ち出されたというのは、控訴人X1の家庭内での生活に何らかの変化があったことを窺わしているとしか考えようがない。)、また、後者(私立高校生活指導部の認定)は、どのような検査を経て認定がされたか明らかではないことからすると、いずれの事実も上記認定を左右しない。さらに、証拠(甲33ないし35)によれば、控訴人X1の頭髪は、平成22年1月2日(高校2年生)の時点(原審控訴人X2本人―3、4頁)では黒色ではなく茶系統の色であること(a小学校卒業〔平成17年3月〕ころ、b中学校入学時〔同年4月〕から平成18年5月19日ころまでの黒色とは異なること)が認められるけれども、時点を異にするから、上記認定を左右しない。」

(17)  原判決17頁9行目の「染めているが」から14行目の「そもそも、」までを「染めている。」と改める。

(18)  原判決18頁10行目の「これとて、」を削除し、同13行目の「この点を捉えて」から同14行目末尾までを「事前に保護者(控訴人X2及び控訴人X3)に連絡しないまま、本人(控訴人X1)の同意の元に本件染髪行為を行ったことは、これが適切な措置であったか否かはさておき、違法であると言うことはできない。」と改める。

(19)  原判決18頁18行目の「しかし、」を「確かに、前判示のとおり、B生活指導教諭は、本件染髪行為を開始するに当たり、皮膚アレルギー試験(染髪の2日前〔48時間前〕に行ういわゆるパッチテスト〔甲51、52〕)を行わなかったことが認められるけれども、弁論の全趣旨によれば、染髪行為をするに当たり毎回皮膚アレルギーテストを行うことが望ましいとしても、これが一般的ではないことが認められることからすれば、B生活指導教諭が本件染髪行為を開始するに当たり皮膚アレルギーテストを行わなかったことをもって、違法であると言うことはできない。加えて、」と、同23行目の「認めることができない」から25行目末尾までを「認めることができない。これに対し、控訴人らは、控訴人X2のF校長に対する平成19年3月2日付け謝罪要求書(甲18)に『その結果受けた控訴人X1の物理的・精神的傷』と記載しているが、ここでいう『物理的傷』とは『頭部皮膚炎』を指すなどと主張するけれども、文言上にわかに採用することができないし、証拠(甲22、36、乙3)及び弁論の全趣旨によれば、控訴人X2は、平成19年3月8日の話し合いの時点でも接触性皮膚炎に罹患したとの訴えをしていないことが認められることに照らし、控訴人X2の上記主張を採用することはできない。」と各改める。

(20)  原判決18頁26行目から同19頁3行目までを以下のとおり改める。

「ク 以上によれば、本件染髪行為は、控訴人X1の任意の承諾の下に実施されたことに加え、その目的、態様、継続時間等から判断して、教員が生徒に対して行うことが許される教育的指導の範囲を逸脱するものではなく、学校教育法11条ただし書にいう体罰に該当するものではない。したがって、本件染髪行為に違法性は認められない。」

(21)  原判決19頁5行目の「平成19年1月ころ、被告Y2が」を「平成19年1月11日及び同日ころ、男性教員である被控訴人Y2が」と改め、同10行目の「明らかである」の次に「(控訴人X1も、原審において「校則違反であることはわかっていた」旨供述している〔原審控訴人X1本人―78頁〕)」を加え、同23、24行目の「確たる証拠はない。」を「証拠はない。」と、同20頁4行目の「確たる証拠はない。」を「証拠はない(控訴人X1の同級生が作成したとされる手紙〔甲16〕は的確な裏付けを欠くからにわかに採用することはできない。)。」と各改める。

2  以上によれば、控訴人らの請求は、その余の点(争点(3)(損害))について判断するまでもなく理由がないから、これらを全部棄却すべきであり、原判決は相当であって本件控訴はいずれも理由がない。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 渡邉安一 裁判官 安達嗣雄 池田光宏)

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