大阪高等裁判所 平成23年(行コ)82号 判決 2011年11月24日
主文
1 一審被告の本件各控訴をいずれも却下する。
2 補助参加人らの本件各控訴に基づき、原判決中主文1項に係る部分を取り消す。
3 上記取消部分に係る一審甲事件原告らの請求をいずれも棄却する。
4 一審原告らの各控訴をいずれも棄却する。
5 訴訟費用中、一審原告X1らの関係では、同一審原告らの控訴費用は同一審原告らの、一審被告の控訴費用は一審被告の各負担とし、一審甲事件原告らの関係では、一審被告の控訴費用は一審被告の負担とし、その余は、第1、2審を通じ、補助参加に関する費用も含め、全部一審甲事件原告らの負担とする。
事実及び理由
第1当事者の求めた裁判
1 一審原告ら
(1) 原判決を次のとおり変更する。
(2) 一審被告は、補助参加人らに対し、それぞれ、1528万0918円及びうち1175万0821円に対する平成21年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払うよう請求せよ。
(3) 一審被告の各控訴をいずれも棄却する。
(4) 訴訟費用は、第1、2審とも、一審被告の負担とする。
2 一審被告
(1) 原判決中、一審被告敗訴部分を取り消す。
(2) 上記取消部分に係る一審原告らの請求をいずれも棄却する。
(3) 一審原告らの各控訴をいずれも棄却する。
(4) 訴訟費用は、第1、2審とも、一審原告らの負担とする。
3 補助参加人ら
(1) 原判決中、一審被告敗訴部分を取り消す。
(2) 上記取消部分に係る一審甲事件原告らの請求をいずれも棄却する。
(3) 一審原告らの各控訴をいずれも棄却する。
(4) 訴訟費用は、一審原告X1らの控訴費用は同一審原告らの、その余は、第1、2審を通じ、一審甲事件原告らの負担とする。
第2事案の概要
1 訴訟物及び審理経過
(1) 本件は、大阪市の住民である一審甲事件原告らが、社会福祉法人大阪市住之江区社会福祉協議会(社会福祉法109条2項の法人。以下「本件区社協」という。)から、高齢者食事サービス事業(以下「本件事業」ともいう。)のための補助金(以下「本件補助金」ともいう。)を受領している補助参加人地域社協(大阪市内においておおむね小学校区ごとに設立された地域福祉活動推進事業等を行う権利能力なき社団の1つ)は、本件補助金の一部を、目的外に支出し、又は違法に保有しており、大阪市は、補助参加人地域社協及びその代表者会長である同Zに対する不当利得返還請求権又は損害賠償請求権を有するのに、それらの行使を違法に怠っており、これは地方自治法242条1項の財産の管理を怠ることに当たるなどと主張して、同法242条の2第1項4号に基づき、一審被告に対し、①同号所定の怠る事実に係る相手方である補助参加人地域社協に対して、不当利得返還請求又は一般社団法人及び一般財団法人に関する法律78条の準用に基づく損害賠償請求として、②同じく補助参加人Zに対して、不法行為に基づく損害賠償請求として、それぞれ1528万0918円(原判決別表4記載の「違法支出額」と「違法貯蓄」額を合算した「不当利得・損害額」欄の合計1175万0821円と、各年度ごとの「不当利得・損害額」欄記載の金員に対する各年度の翌日(ただし、平成9年度までに交付された本件補助金については平成10年4月1日)から平成21年3月末日までの確定法定利息又は確定遅延損害金の総合計)及び1175万0821円に対する平成21年4月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による法定利息又は遅延損害金の支払請求をするよう求める住民訴訟であり(甲事件)、同訴訟係属中に、一審原告ら(一審甲事件原告らに一審原告X1らを加えた8名)が甲事件と同様の裁判を求める住民訴訟を提起し(乙事件)、両訴訟が併合審理された事案である。
(2) 原判決は、甲事件請求につき、一審被告に、補助参加人らに対し、連帯して327万8093円及び内金318万1021円に対する平成21年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払うよう請求せよと命じる限度で理由があるとして一部認容し、その余は理由がないとして棄却し、乙事件訴えは地方自治法242条の2第4項により不適法であるとして却下したところ、一審原告ら、一審被告及び補助参加人らが各控訴(ただし、補助参加人らの控訴は甲事件原告らのみに対する控訴)した。
2 前提事実
前提事実(争いがないか、各項掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)は、次のとおり補正するほかは、原判決が「事実及び理由」欄の第2の2(原判決3頁4行目から16頁4行目まで)に摘示するとおりであるから、これを引用する。ただし、「本件地域社協」は「補助参加人地域社協」と、「Z」は「補助参加人Z」と読み替える。なお、以下、略語は、注記した点を除き、原判決の例による。以下に原判決を引用する場合も同様とする。
(原判決の補正)
(1) 原判決3頁8行目の「本件市社協は、」を「福祉法人大阪市社会福祉協議会(以下「本件市社協」という。)は、昭和26年5月、」に改め、9行目末尾の次に「その主な事業内容は、後記区社協及び後記地域社協への活動支援等の地域福祉及び在宅福祉サービスの推進並びにボランティア・NPO活動の推進等である。」を加え、12行目の「の1つである。」を「である。区社協は、昭和26年1月以降、大阪市24区に順次設立された。その主な事業内容は、後記地域社協の育成・支援、地域福祉活動推進事業、在宅福祉サービス事業、老人福祉センター管理代行等である。」に、15行目の「の1つであり」から16行目末尾までを「である。同区内には10を超える地域社協がある。」に、19行目の「争いがない」を「争いがない事実及び甲7」に改める。
(2) 原判決3頁26行目及び4頁12行目の各「本件補助金」をいずれも「本件事業に係る補助金」に改める。
(3) 原判決4頁6行目末尾の次に「利用者の負担額は、各地域社協ごとに異なり、1食あたり、200円ないし400円程度を徴収している。」を加える。
(4) 原判決4頁12行目末尾の次に改行の上、「本件事業に係る大阪市の補助金(以下、単に「本件事業補助金」という。)の目的は、大阪市に居住する独居、ねたきり高齢者等を対象に食事サービスを行い、当該高齢者の健康増進と地域社会との交流を深めることにあるところ(乙1の1ないし3、23)、大阪市は、本件事業補助金に関して、次のように定めている。」を加える。
(5) 原判決4頁15行目の「の内容は」を「は、大阪市が、本件事業のために、本件市社協に対し、補助金を交付することについて必要な事項を定めたものであるところ、その内容は」に改める。
(6) 原判決4頁22行目を「b 区社協又は地域社協の活動経費」に改める。
(7) 原判決5頁12行目から14行目までを次のとおり改める。
「c 本件市社協の事業経費
本件市社協が区社協又は地域社協の指導育成等を行うために必要な経費であって、一審被告が承認した額」
(8) 原判決6頁11行目末尾の次に「なお、本件規則の附則によれば、本件規則は、平成18年度以降の予算により支出する補助金等について適用される(乙2)。」を加える。
(9) 原判決6頁25行目の「6条」を「6条1項」に改める。
(10) 原判決7頁12行目末尾の次に改行の上、次のとおり加える。
「d 一審被告は、補助事業等の完了により補助事業者に相当の収益が生ずると認められる場合においては、当該補助金等の交付の目的に反しない場合に限り、その交付した補助金等の全部又は一部に相当する金額を大阪市に返還すべき旨の条件を付することができる(6条2項)。」
(11) 原判決7頁13行目の項番「d」を「e」に改め、17行目の項番「e」を削除し、22行目の「上記d」を「上記e」に改める。
(12) 原判決8頁9行目の「本件要綱の」を「本件要綱の趣旨を、本件規則に定めるもののほか、本件事業の交付に係る申請、決定等について必要な事項を定めると改め、その」に、10行目の「改め」を「定め」に、同行末尾の次に「なお、事業補助金の交付先が本件市社協であることは変わらない(乙1の2・3条)。」を加える。
(13) 原判決8頁14行目を「(a)区社協及び地域社協が事業を行うための経費」に改める。
(14) 原判決10頁20行目及び23行目の各「本件補助金」をいずれも「本件事業補助金」に改める。
(15) 原判決11頁6行目の「区社協」から8行目末尾までを「本件市社協の収支とともに、各地域社協ごとの実績及び事業補助金額の内訳が記載されていたが、この内訳は、区社協が取りまとめて本件市社協に提出した各地域社協作成の事業報告書及び精算書に基づき、本件市社協が作成したものであり、各地域社協ごとの本件事業の収支(本件事業補助金のみならず、他の収入も全て含めた金額と支出額全額)は記載されていなかった。したがって、平成18年度以降の補助金の確定作業は、実際には配食数の実績(増減)に伴う清算のみが行われていた。平成17年度の包括外部監査において、「本人負担額+補助額が実際の調理費を上回ってるかを市は調査し、上回っている場合には市へ返戻させる、又は、補助の趣旨に鑑み、高齢者の健康増進及び会食参加へのさらなる誘因となるような食事内容へ改善するよう指導することが必要である。」「補助先である各地域社協において、調理に要する経費の内容及び証憑は各地域社協で保管され、区社協、市社協、市ではチェックしていないとのことである。少なくとも、区社協がチェックする体制を整えるべきである。」との意見が付された。(以上につき、甲7、乙9ないし14)。」に改める。
(16) 原判決11頁19行目の「大阪市は、」の次に「平成20年6月10日、」を加え、同行の「本件補助金」を「本件事業補助金」に改める。
(17) 原判決11頁23行目及び12頁2行目の各「本件補助金」を「本件事業に係る補助金」に、11頁24行目及び25行目を「本件市社協は、平成10年度から平成19年度までの間、本件区社協から申請のあった本件事業に係る補助金を本件区社協へ交付した(争いがない)。」に改める。
(18) 原判決14頁1行目及び4行目から5行目にかけての各「本件補助金」をいずれも「本件事業補助金」に、3行目の「交付要件」を「交付の趣旨」に、3行目から4行目にかけての「本件規則17条1項」を「平成14年度ないし平成17年度に交付した本件事業補助金については、本件要綱(乙1の3)7条2項に基づき、平成18年度及び平成19年度に交付した事業補助金については、本件規則17条1項、本件要綱(乙1の2、1の1)16条」に改め、5行目の「合計」を削除する。
(19) 原判決14頁16行目の「弁論の全趣旨」を「乙25及び弁論の全趣旨」に改める。
3 本件の争点及び争点に係る当事者の主張
本件の争点及び争点に係る当事者の主張は、次のとおり原判決を補正するほかは、原判決が「事実及び理由」欄の第2の3及び4(原判決16頁5行目から28頁24行目まで)に摘示するとおりであるから、これを引用する。
(原判決の補正)
(1) 原判決16頁26行目、17頁2行目、5行目、18頁19行目の各「本件補助金」をいずれも「本件事業補助金」に改める。
(2) 原判決18頁14行目末尾の次に改行の上、「補助参加人Zは、本件区社協の職務代理者として本件区社協をも支配している(甲25)。したがって、補助参加人ら提出の丙23は、自身の質問に自身で都合のよいように回答したものにすぎず、信用性がない。そもそも、丙24によれば、決算書と実際の補助金の流れは一致していない。」を加える。
(3) 原判決18頁21行目末尾の次に改行の上、「大阪市が、本件市社協に対し、平成15年7月28日付け、平成17年6月20日付け及び平成19年7月9日付けで本件区社協から補助参加人地域社協に送金された各5万円の引き当てとなる同各年度の本件事業補助金を支給した事実はない。このことは、各年度における本件事業補助金の支給決定の内容からも明らかである(乙16ないし22、24)。したがって、上記各5万円は「その他の収入」と取り扱われるべきである。」を加える。
(4) 原判決18頁25行目末尾の次に改行の上、「平成15年7月28日付け、平成17年6月20日付け及び平成19年7月9日付けで本件区社協から補助参加人地域社協に送金された各5万円は、本件区社協の独自財源からの収入であり、大阪市から本件市社協へ交付された事業補助金ではない(丙23)。したがって、上記各5万円は「その他の収入」に該当する。」を加える。
(5) 原判決19頁16行目末尾の次に改行の上、「(ウ) 補助参加人地域社協の活動状況を精査したところ、配食数の水増しが行われている(利用料を支払った者の数よりも、実施報告書に記載されている配食数の方が多い)ことが判明した。その配食数は、平成14年度から平成19年度までの累計で842食(21万0500円分)である。さらに、ボランティアの食事については、「年間運営費」等で賄うべきであり、これを年間活動費(調理に要する経費)として配食数の対象とすることは許されず、上記数字にボランティアの配食数を加えた累計は3556食であって(補助参加人地域社協の実態は、ボランティアのための食事事業である。)、補助参加人らは69万4750円の返還義務を負う。」を加える。
(6) 原判決19頁17行目末尾の次に改行の上、「(ア) 普通地方公共団体による補助金交付の具体的な方法については、法令上の規定はなく、交付者である普通地方公共団体の合理的な裁量によるべきであって、一審被告は、その裁量に基づき、本件要綱を策定し、本件事業補助金の交付を行っている。」を加える。
(7) 原判決19頁25行目末尾の次に改行の上、次のとおり加える。
「 また、いかなる場合においても、大阪市は、余剰金の返還を求めないということではなく、本件事業の目的に反するような使途に供された場合には、交付決定を取り消して返還を求めるべきところ、大阪市は、平成20年6月2日、本件市社協に対し、本件事業補助金の一部取消決定を行った上で、その返還を求めている。
(イ) 本件事業補助金(活動費)の交付の基準となる配食数の範囲には、食事サービスの利用者である高齢者だけではなく、会食に参加するボランティアの配食数も含まれている。これは、本件事業が単に高齢者に対して食事を提供するといったものではなく、高齢者と地域社会との交流を深めることをも目的としていることによる(平成22年6月1日改正の本件要綱には、ボランティアの配食数を含むことが旨明記された(乙30))。」
(8) 原判決22頁21行目末尾の次に、「また、宛名の異なる領収書でもよいとすることは、領収書の使い回しによる二重三重の補助金取得を可能にすることから、これを許してはならない。更に、計算書をもって領収書に代替できるなどとすれば、補助金行政の適正など図れない。」を加える。
(9) 原判決22頁23行目の冒頭に項番「(a)」を加え、23頁8行目末尾の次に改行の上、次のとおり加える。
「(b) 食事サービス事業を行う厨房等の整備費については、大阪市には、「大阪市地域福祉施設等整備費補助要綱」に基づく補助金制度があり(甲37ないし40)、これには厳格な審査が必要である。
厨房改修費については、補助参加人地域社協自身が本件補助金対象外であることを認めているにもかかわらず、一審被告は、本件要綱の明文に明らかに矛盾し、上記施設整備補助金の規制の潜脱を認めるような主張を展開し、補助参加人地域社協を擁護しており、明らかに合理性を欠く。」
(10) 原判決23頁12行目末尾の次に改行の上、「特に、本件区社協に対する手土産代は官官接待ともいうべきもので、その支出は違法である。また、撮影された写真が証拠提出されていない以上、写真代が本件事業に関連していると認定することはできない。a会館の公共的な使用には使用料は発生しない(甲22ないし24)のであって、補助参加人Z自身が作成した領収書によって、本件補助金の使用を認めてはならない。更に、補助参加人らが主張する6年分の光熱費も、本件補助金の返還を免れんがため主張にすぎず、現実には支出されていない。」を加える。
(11) 原判決24頁5行目末尾の次に「なお、本件市社協要綱は、あくまで、本件市社協が策定したものであり、大阪市の本件市社協に対する本件事業補助金の交付関係はあくまで本件要綱によるものであって、本件市社協要綱によるべき合理性はない。」、10行目末尾の次に改行の上「平成20年3月28日付け(平成19年度)及び同年4月14日付け(平成20年度)の「厨房改修費工事半額支払(b店)」各82万5000円は、本件事業の目的(独居、ねたきり高齢者等を対象に食事サービスを行い、当該高齢者の健康増進と地域社会との交流を深めること)及び補助参加人地域社協の本件事業の実態(昭和59年に本件事業を開始し、およそ30年間、ボランティアの手作りによる食事サービスを提供しており、その配食数も平成18年度、平成19年度と年間3700食を超えている。)に鑑みれば、本件事業の目的内の支出といえる。」を加える。
(12) 原判決24頁20行目末尾の次に改行の上、「厨房改修費が本件補助金対象外であることは認めるが、他方、本件補助金の対象であることが明らかな「光熱費」(6年間で212万円)が原判決別表に掲記漏れであった。」を加える。
(13) 原判決27頁17行目末尾の次に改行の上、「普通公共団体が補助金を交付するためには、本来的公益性の存在が大前提となるところ(地方自治法232条の2)、事業補助金の交付によって実現すべき公益性は、単に食事を提供することではなく、独居、ねたきり高齢者等を対象に食事サービスを行い、当該高齢者の健康増進と地域社会との交流を深めることにある。また、事業補助金にかかる法律関係は、大量的反復的に発生するものであり、その返還請求権は、明らかに私法上の法律関係とは同視し得ないものであって、公法上の債権といえることから、上記地方自治法の適用を受ける。」を加える。
(14) 原判決27頁24行目から26行目までを次のとおり改める。
「 地方自治法236条1項による5年の短期消滅時効は、普通地方公共団体の権利義務を早期に確定させる必要があるなど、主として行政上の便宜を考慮したことに基づくものであるから、行政上の便宜を考慮する必要がある金銭債権であって他に時効期間につき特別の規定のないものについて適用されるところ(最高裁昭和50年2月25日第三小法廷判決・民集29巻2号143頁参照)、補助金に係る予算執行の適正化を図る目的で定められた条件に違反して補助金が使用されたことによって、普通地方公共団体が取得する不当利得記返還請求権又は損害賠償請求権に、5年の消滅時効を認めて権利義務を早期に確定させてしまうと、かえって、補助金に係る予算執行の適正化という行政目的に反する結果を招くことから、行政上の便宜を考慮する必要がなく、同各債権に地方自治法236条1項を適用すべきではない。
本件事業の目的は不当なものとはいえないが、本件市社協や地域社協が行った事業の収支状況に対する大阪市の確認状況等は、目的達成に必要な経費の把握自体を行っていなかったといえるもので、その結果、目的との関係での補助金の必要性が確認されていなかった。必要最小限度(地方財政法4条1項)といえない補助金に公益性はない。」
第3当裁判所の判断
1 一審被告の各控訴の適法性について
記録によれば、補助参加人らの一審甲事件原告らに対する控訴状提出と一審被告の一審原告らに対する控訴状の提出は、同じく平成23年4月11日ではあるものの、補助参加人らの各控訴の事件番号は大阪地方裁判所(行ヌ)第38号、一審被告の各控訴の事件番号は同第39号であって、それぞれ訴訟代理人は別であり、その時間的間隔は不明ではあるものの、一審被告の各控訴は、補助参加人らの控訴があった後にされたものであると認められる。そうすると、一審被告の各控訴のうち一審甲事件原告らに対する部分については、二重にされた控訴であって不適法である。
そして、一審被告の一審原告X1らに対する各控訴については、記録によれば、当審における控訴の趣旨は必ずしも明らかでないが、一審被告は、原審において、乙事件の訴えについて、不適法却下を求め、原判決も、これを却下したもので、これらの経過に照らすと、控訴の利益を欠くものといわざるを得ず、不適法である。ただし、この点に関し、乙事件請求のうち、一審原告X1らの訴えについてまでも却下した原判決の判断の不当性については、後記2(3)のとおりである。
2 甲・乙事件訴えの適法性について
(1) 一審被告は、大阪市は、本件地域社協に対し、直接補助金の返還請求等をすべき立場にはなく、これを行うことができないなどとして、一審原告らの甲事件請求及び乙事件請求は、いずれも不適法で却下されるべきであると主張する。
しかし、記録によれば、一審原告らの本件請求は、大阪市が補助参加人地域社協及び同Zに対する損害賠償請求権又は不当利得返還請求権という財産を有するのに、その管理を怠っていると主張して、一審被告に対し、怠る事実の相手方である補助参加人らに対して、上記各請求権を行使することを求める地方自治法242条の2第1項4号に基づく住民訴訟であると解され、その適法性に欠けるところは、見当たらない。一審被告の上記主張は、大阪市が上記の各請求権を有するかどうかの実体法上の問題であって、それについては後記3(1)のとおり、いずれも認められないと解されるが、むろん本案の問題である。一審被告の上記主張は、本案前の主張としては失当である。
(2) 乙事件のうち一審甲事件原告らによる訴えについては、記録上、その請求の趣旨と請求原因事実が、上記のとおり適法に係属する甲事件請求と重複しており、二重起訴であって、民訴法142条によって不適法であり、却下すべきである。
(3) 乙事件のうち一審原告X1らの請求については、記録上、その請求の趣旨と請求原因事実が甲事件請求と共通であり、甲事件と併合審理されたと認められるところ、地方自治法242条の2第4項が禁止しているのは、別訴をもって同一の請求をすることであって、先行する住民訴訟の係属中にこれに共同訴訟参加し、あるいは先行する住民訴訟と併合審理される場合まで禁止しているものとは解すべきでなく(最高裁昭和63年2月25日第一小法廷判決・民集42巻2号120頁参照。なお、この事例は、別の住民が共同訴訟参加ができるのにあえて補助参加にとどめた事例である。)、一審原告X1らの乙事件請求も、前記認定のとおり監査請求もされ、他に適法要件に欠けるところはないから、むろん適法であると解すべきである。
しかし、乙事件請求の関係でも、後記のとおり本案の請求は理由がないから、これを棄却すべきであり、そうすると、乙事件のうち一審原告X1らの訴えを却下した原判決の判断は失当であるが、一審原告X1らの関係でも、前記のとおり、一審被告の各控訴は不適法と解され、一審原告X1らの各控訴があるだけであるので、一審原告X1らに不利益に判断することができない。そこで、一審原告X1らの乙事件請求の関係での控訴も棄却すべきである。
3 本案の判断について
(1) 当裁判所は、大阪市の①補助参加人地域社協に対する不当利得返還請求権及び②補助参加人Zに対する不法行為による損害賠償請求権は、いずれも認められず、したがって、③同地域社協に対する一般社団法人及び一般財団法人に関する法律78条の準用に基づく損害賠償請求権も認められないと判断する。その理由は、以下のとおりである。
ア 事実関係
前記前提事実と証拠(甲7、32の1ないし9、乙3ないし14、16ないし22、28ないし30、丙7ないし15)及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。
(ア) 本件事業の実施主体は、区社協及び地域社協であり、大阪市は、それらの事業主体へ本件事業に係る補助金を直接交付するのではなく、本件市社協に対して本件事業補助金を交付した。本件事業補助金の内容は、大きく、①本件事業のための経費と②本件市社協が区社協及び地域社協の指導育成を行うための経費に分かれており、前記①は、区社協に交付され、区社協から更にその区内の各地域社協へ交付されることが予定されていることから、その交付申請額は各地域社協ごとの内訳で計算された。
(イ) 昭和52年4月1日制定の本件市社協要綱(丙14)には、本件事業は、本件市社協の承認した区社協及び地域社協が給食設備及びボランティアを確保して実施すること、本件事業の実施を希望する区社協及び地域社協は、本件市社協に対し(地域社協については区社協を通じて)、関係書類を添えて本件事業設置申込書を提出して申し込み、本件市社協会長は、審査の上、承認・不承認を決定し、不適当な事情が生じた場合には上記承認を取り消すことができること、本件市社協会長が必要と認めた時は、本件事業の実施主体の代表者から事業の概要及び実績等の提出を求め、事業の内容について指導できる(事業主体が地域社協である場合には、区社協が指導する)ことが定められていた。
なお、平成20年4月1日改正後の本件市社協要綱(丙15)には、本件市社協会長は、本件事業の実施及び運営について、必要な細目を定め、これに基づき、補助金交付申請書を審査し、交付を決定すること、不適当と認められる事情がある(あるいは、あると疑われる)場合には、申請の保留若しくは交付決定を行わない場合があること、交付後においては補助金の交付決定の全部又は一部を取消し、返還を求めることができると規定された。
(ウ) 補助参加人地域社協は、毎年3月、本件区社協に対し、本件補助金交付申請書を提出していたが、同書には、活動費、運営費の内訳が記載されているのみで、添付資料は、事業実施計画書(会食実施予定、予定参加人数等が記載)と役員名簿のみであった。
補助参加人地域社協は、翌年4月、本件区社協に対し、本件事業の補助金精算書及び追加・戻入補助金申請書を提出していた。同書には、費目ごとに、本件補助金額と精算額が記載されていたが、精算金は、予定配食数と実際の配食数との差によって生じる活動費の額(場合によっては、500食ごとに加算される配食加算金の額)のみであった。
(エ) 本件市社協は、各年度の終了後の毎年5月に、大阪市に対し、本件事業報告及び決算報告書を提出していた。決算報告としては、各費目ごとの金額が記載され、そのうち、区社協へ交付した金額については、区社協ごと、地域社協ごとの内訳金額が記載されていたが、活動費は、いずれも、250円に当該地域社協における配食数を乗じた金額とされており、運営費は、大部分が、当該地域社協における配食数を当てはめた場合に本件要綱によって算出される金額(28万円、24万円、22万円、18万円、16万円、12万円、10万円、8万円、5万円、4万円)であった。配食加算金は、いずれも、当該地域社協における配食数を当てはめた場合に本件要綱によって算出される金額(5000円の倍数)であった。給食設備費又は設備費は、大半が0円又は5万円とされていた。新規事業費は、大半が0円又は15万円とされていた。事務費は、平成14年度は、1つの地域社協を除く全ての地域社協について1万円とされており、平成17年度は、file_2.jpg区社協が、区域内の地域社協の数に1万円を乗じた金額に2万円を加えた金額を受け取り、地域社協が事務費を受け取らない区と、file_3.jpg区社協が2万円を受け取り、区域内の地域社協は1万円を受け取る区が存在し、本件区社協はfile_4.jpgの方法を採っていた。
(オ) 大阪市監査委員は、平成20年5月7日付けで、平成14年度以降の補助金に係る返還請求権の存在は認められるものの、一審被告がその行使を違法に怠っているとはいえないとして、甲事件監査請求(同年3月12日付け)を棄却した。大阪市は、これを受けて、同年6月2日、本件市社協に対し、補助参加人地域社協における本件補助金の使用目的が交付趣旨に沿わないとの理由により、平成14年度ないし平成17年度に交付した本件事業補助金ついては、本件要綱(乙1の3)7条2項に基づき、平成18年度及び平成19年度については、本件規則17条1項、本件要綱(乙1の2、1の1)16条に基づき、平成14年度から平成19年度に交付した本件事業補助金の交付決定の一部取消決定を行い、合計248万6262円の返還を求めた。本件市社協は、同月3日、大阪市に対し、同額を返還した。
また、大阪市は、平成20年6月10日、本件市社協による平成20年度の本件事業補助金の交付申請に対し、本件地域社協においては既に多額の剰余金が生じており事業運営に際して補助金の交付を要しないとの理由により、申請額から107万5500円を減額した金額を、本件事業補助金として、本件市社協に交付した。
(カ) 大阪市は、さらに、前記監査結果において、審査・チェック体制等の見直し及び補助金受領者に対する会計指導等を行うべきとの意見が付されていたことを受けて、平成20年7月ないし9月、本件市社協及び区社協に対し、全ての事業主体である各地域社協へ実態調査を行うよう指示した。同調査は平成21年1月まで延長され、同年3月ないし7月には再調査も実施された。この結果、合計32箇所の地域社協で、配食数の誤り及び精算後の戻入手続の懈怠が判明し、各地域社協は、区社協へ精算した金員の返納を行った。大阪市は、平成21年2月23日及び8月6日に、本件市社協に対し、平成15年度から平成17年度までの分については本件要綱(乙1の3)7条2項に基づき、平成18年度及び平成19年度の分については本件規則17条1項、本件要綱(乙1の2、1の1)16条に基づき、上記各事業主体の本件事業について平成15年度ないし平成19年度に交付した本件事業補助金の交付決定の一部取消決定を行い、合計2064万2700円の返還を求め、同年3月30日及び同年8月6日、本件市社協は、同額を返還した。
大阪市内部の前記調査結果報告には、「これまで、会計などの事務処理を行う地域のボランティアに対し、充分な説明や会計指導が徹底されていなかったことが大きな要因であると考えられる。」「平成20年度から補助金交付要領を改正し、目的外の使用禁止、必要に応じ立入検査の実施、5年間の関係書類の整備などを明記し、適正執行に努めている。また、精算時には総事業費に基づく収支精算書及び金銭出納簿・参加者名簿の写しを各区社協へ提出することとした。」と記載された。
そして、現に、本件要綱が変更がされ、平成22年6月1日改正の本件要綱(乙30)では、従前の各費目の定額は、同費目の上限額と改められ、精算書の様式も改定され、大阪市において内容を精査できるものとなった。
イ 補助参加人地域社協の大阪市に対する不当利得返還債務の有無
(ア) 前記認定事実によれば、本件事業補助金は、大阪市が、本件市社協に対して交付する補助金であることが明らかであり、本件事業補助金の大部分は、本件市社協から区社協へ交付されることを予定されているものの、本件市社協は、本件事業を実施し得る区社協及び地域社協を審査の上で承認し、これらを指導しており、その承認の取消しを行うことができ、また、本件市社協から本件事業に係る補助金が交付された区社協は、各地域社協の申請に基づき、各地域社協に対して補助金を交付しており、当該区社協が取得する金額と更に各地域社協に交付する金額の割付は、各区社協ごとに異なっていたものである。そして、本件要綱における本件事業補助金交付の対象となる経費の金額の定め方は当時は定額であり、また、大阪市と本件市社協との間、本件区社協と補助参加人地域社協との間において、それぞれ、年度終了後に精算が実施されるものの、その内容は、予定配食数と実際の配食数との差によって生じる金額のみについて実施され、配食数に連動しない費目については、各地域社協が本件事業に関して支出した経費の具体額を積算し、その過不足を精算することは予定されていなかったというべきである。
(イ) さらに、前記認定事実によれば、大阪市と本件市社協との間においては、大阪市は、平成14年度ないし平成19年度の本件事業補助金のうちの本件地域社協が目的外に使用したことを理由に、平成20年6月2日、本件事業補助金の交付決定を一部取り消し、これに伴って、本件市社協から、248万6262円の返還を受け、また、大阪市全域の各事業主体の本件事業に関する本件事業補助金について、原審係属中の平成21年2月22日及び同年8月6日、本件事業補助金の交付決定の一部を取り消し、本件市社協から、合計2064万2700円の返還を受けているが、上記の各取消決定以外に、大阪市が本件市社協に対する本件事業補助金の交付決定を取り消したことは、証拠上認められない。
(ウ) また、平成14年度ないし平成19年度の本件事業に関する補助金の交付について、前記(イ)の大阪市の各取消決定以外の分について、本件市社協が、本件区社協との間で、本件市社協要綱に基づいて交付決定を取り消したことは、これを認めるに足りる証拠がなく、また、本件区社協と補助参加人地域社協との間で交付の決定が取り消されたことや、既に交付された本件補助金の交付の法律関係が解消されたことを窺わせる事実も、これを認めるに足りない。
(エ) そうすると、大阪市が前記のとおり本件事業補助金の交付決定を取り消した以外の関係では、本件市社協も、本件区社協も、そして、補助参加人地域社協も、いずれも、本件事業に関する補助金をそれぞれ受領するについて、それぞれ、法律上の原因(公法上の贈与契約)があるものといわざるを得ない。そして、このことは、補助参加人地域社協において、一審原告らが主張するような目的外の支出や保有があったとしても、それによって、左右されないと解すべきである。
そして、大阪市と本件市社協との間においては、本件規則17条1項、本件要綱(乙1の2、1の1)16条(平成17年度以前は、本件要綱(乙1の3)7条2項)に基づき、大阪市による本件事業補助金の交付決定の一部取消しがされて初めて、大阪市の本件市社協に対する不当利得返還請求権が発生すると解されるのであって、この理は、本件市社協と本件区社協の関係及び本件区社協と補助参加人地域社協との関係においても同様であるというべきである。
(オ) このようにしてみてくると、補助参加人地域社協において一審原告らが主張するような目的外支出や保有があったとしても、それだけでは直ちに、補助参加人地域社協の本件補助金の領得がその法律上の原因を欠くものとは言えないというべきであり、補助参加人地域社協が、大阪市に対し、当然に不当利得返還債務を負うことにはならないというべきである。
ウ 補助参加人Zの大阪市に対する不法行為による損害賠償債務の有無
(ア) 前記イで認定・判断したところによれば、補助参加人Zにおいて、一審原告らが主張するように、本件補助金の目的外使用や保有に代表者として関わったものとしても、それは、本件区社協との関係で、本件補助金の交付の法律関係(公法上の贈与契約)の解消の問題となるとしても、大阪市との関係で大阪市の権利又は法律上保護すべき利益を侵害して違法となることはないというべきである(民法709条参照)。
そうすると、法人としての補助参加人地域社協も、その代表者である同Zも、大阪市に対して直接損害賠償義務を負担することにはならないというべきである。他にも、補助参加人らが、大阪市に対し、一審原告らが主張するような不法行為に基づく損害賠償義務を負うことを肯認し得る事情は認められない。
(イ) また、前記認定事実と前記ア冒頭掲記の各証拠及び弁論の全趣旨によれば、補助参加人地域社協は、毎年度終了後に、本件区社協に対し、本件事業の補助金精算書及び追加・戻入補助金申請書を提出し、同書には、費目ごとに、本件補助金額と精算額が記載されていたが、精算金があるのは、予定配食数と実際の配食数との差によって生じる活動費の額(場合によっては、500食ごとに加算される配食加算金の額)のみであり、他の費目については、申請額と同額が記載されており、裏付資料の添付も要しないものであったこと、そのような報告方法は、本件市社協が大阪市に提出していた本件事業報告及び決算報告書の記載に照らし、他の地域社協においても同様であったこと、大阪市は、甲事件監査請求以前については、会計などの事務処理を行う地域のボランティアに対し、充分な説明や会計指導を徹底しなかったことを自認し、平成20年以降、本件要綱を改定し、従前の各費目の定額は、当該費目の上限額とし、本件事業交付金は、本件事業に必要な金額に限ることが明記されたことが認められ、これらの事実によれば、補助参加人地域社協の代表者である同Zは、本件区社協からの本件補助金、利用者から徴収した利用料、その他の収入を一括管理し(前記前提事実)、その中から、材料費及び備品等の購入代金を差し引くと、残金が生じた場合でも、同余剰金を、本件区社協に対して、精算しなければならないという認識を欠いていたものと認められる。
(ウ) そして、前記前提事実によれば、そもそも、大阪市が支給する本件事業補助金についての本件要綱の年間活動費及び年間運営費の具体的な使途が明示されていたとも言い難く、また、本件市社協の本件市社協要綱においても、利用者等から徴収する利用料について材料費相当額を負担すると定められていたものの、地域社協ごとにその金額にはバラツキがあり、純粋に材料費相当額が徴収される扱いとなっていたかどうかは不明確であったもので、利用料の使用目的についても、地域社協ごとにその認識を異にしていたものと認められ、これによれば、補助参加人Zにおいて、残余金(ないしはその積立金)を本件事業を離れたボランティアの研修費(ただし、親睦の意味合いを含む。)や慶弔費及び本件事業のために使用する厨房の改修工事に使用することもできると判断したことについて、無理からぬ事情があったというべきである。
(エ) このようにしてみてくると、甲事件監査請求による監査の結果の後は、本件事業補助金の使途や精算方法が整備されて明確になり、その取扱いも改められたが、平成19年度までの本件補助金に関しては、補助参加人Zに一審原告ら主張のような目的外使用や保有があったとしても、大阪市に対する関係では、違法となることも、また、仮に違法となるとしても、その故意過失は認められないというべきである。
(オ) 一審原告らは、当審において、利用者数と利用料支払者の人数に差があるとして、補助参加人地域社協の配食数の精算報告に水増しがあったとか、ボランティアの食事について「年間運営費」等で賄うべきであり、これを「年間活動費」(調理に要する経費)として配食数の対象とすることは許されないなどとも主張するが、いずれも、前記の認定・判断を左右するものではない。
(2) そうすると、大阪市が、補助参加人地域社協に対して不当利得返還請求権、補助参加人らに対して損害賠償請求権を有することを前提とし、大阪市がそれらの債権の管理を怠っていたとする一審原告らの請求は、その余の点を判断するまでもなく理由がないことに帰する。
4 結論
(1) 前記のとおり、一審被告の各控訴は、一審甲事件原告らに対する関係では二重控訴として、一審原告X1らに対する関係では控訴の利益を欠いて、いずれも不適法であるから、却下することとする。
(2) 前記のとおり、乙事件の訴えのうち、一審甲事件原告らによるものは民訴法142条に反して不適法であるから、これを却下すべきであり、これを却下した原判決は結論において正当である。また、前記のとおり、一審原告X1らによる乙事件請求は理由がなく、これを棄却すべきであり、同請求に係る訴えを却下した原判決は不当であるが、一審原告X1らからしか適法な控訴がないから、同一審原告らに不利益に変更することはできない。
(3) 前記のとおり、甲事件請求はいずれも理由がないから、これをすべて棄却すべきであり、これを一部認容した原判決は不当であるから、補助参加人らの本件各控訴に基づき、原判決中主文第1項に係る部分を取り消し、同取消部分に係る一審甲事件原告らの請求をいずれも棄却すべきである。
(4) 一審甲事件原告らのその余の請求を棄却した原判決は正当である。
(5) 以上のとおりであるから、一審被告の本件各控訴をいずれも却下し、補助参加人らの本件各控訴に基づき、原判決中主文1項に係る部分を取り消し、同取消部分に係る一審甲事件原告らの請求をいずれも棄却し、一審原告らの各控訴はいずれも棄却すべきである。
よって、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 八木良一 裁判官 比嘉一美 杉村鎮右)