大阪高等裁判所 平成25年(ネ)2968号 判決 2014年3月28日
一審原告
X1(以下「一審原告X1」という。)<他1名>
上記両名訴訟代理人弁護士
占部彰宏
同
岡惠一郎
同
那須秀一
一審被告
高取町土地開発公社
同代表者理事
A(以下「一審被告公社」という。)
被控訴人(被告)
高取町
同代表者町長
A(以下「一審被告町」という。)
上記両名訴訟代理人弁護士
川﨑祥記
同
片山賢志
同
馬場智巌
同
前川典彦
主文
一 一審原告らの各控訴をいずれも棄却する。
二 原判決中一審被告公社敗訴部分を取り消す。
三 一審原告らの一審被告公社に対する請求をいずれも棄却する。
四 訴訟費用は、一審原告らと一審被告公社との関係では、第一、二審を通じ、一審原告らの負担とし、一審原告らと一審被告町との関係では、控訴費用を一審原告らの負担とする。
事実及び理由
第一当事者の求めた裁判
一 一審原告ら
(1) 一審被告公社の控訴を棄却する。
(2) 主位的請求
ア 原判決を取り消す。
イ 一審被告らは、一審原告X1に対し、連帯して、五億円及びこれに対する平成二一年一〇月二〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
ウ 一審被告らは、一審原告会社に対し、連帯して、二四億三二二八万二〇〇〇円及びこれに対する平成二一年一〇月二〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
(3) 予備的請求
ア 原判決中、一審原告ら敗訴部分を取り消す。
イ 一審被告町は、一審原告X1に対し、五億円及びこれに対する平成二二年八月六日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
ウ 一審被告町は、一審原告会社に対し、二四億三二二八万二〇〇〇円及びこれに対する平成二二年八月六日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
(4) 訴訟費用は、第一、二審を通じ、一審被告らの負担とする。
(5) 仮執行宣言
二 一審被告ら
主文と同旨
第二事案の概要
一 本件は、①第一次的に、一審被告公社に、一審原告X1が五億円を、一審原告会社が二四億三二二八万二〇〇〇円をそれぞれ貸し付け、これを一審被告町が連帯保証したと主張し、一審被告公社に対しては金銭消費貸借契約に基づき、一審被告町に対しては連帯保証契約に基づいて、一審原告X1が五億円及びこれに対する遅延損害金の連帯支払を、一審原告会社が二四億三二二八万二〇〇〇円及びこれに対する遅延損害金の連帯支払をそれぞれ求め、②第二次的に、一審被告公社の理事長等が、一審被告公社の職務を行うにつき、それが違法であることを知りつつ、一審原告らに対して、一審被告公社としての借入を要請し、それを信じた一審原告らに、上記各金員を出捐させ、当該出捐金額に相当する損害を与え、また、一審被告町の町長がその職務を行うにつき、一審被告公社を監督する義務があるにもかかわらず、本件各借入について、それが違法であることを知りつつ、一審被告町としても責任を持つとして、一審原告らを信用させ、それを信じた一審原告らに上記各金員を出捐させ、当該出捐金額相当額の損害を与えたと主張し、一審被告公社に対しては「公有地の拡大の推進に関する法律」(以下「公拡法」という。)二三条、平成一八年法律第五〇号による改正前の民法四四条(現行法では、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律七八条。以下、単に「民法四四条」という。)に基づき、一審被告町に対しては民法四四条の類推適用に基づき、一審原告X1が五億円及びこれに対する遅延損害金の連帯支払を、一審原告公社が二四億三二二八万二〇〇〇円及びこれに対する遅延損害金の連帯支払をそれぞれ求め、③一審被告町に対しては、第三次的に、国家賠償法一条に基づき、一審原告X1が五億円及びこれに対する遅延損害金の支払を、一審原告会社が二四億三二二八万二〇〇〇円及びこれに対する遅延損害金の支払をそれぞれ求めた事案である。
二 原判決は、一審原告らの一審被告公社に対する第一次的請求をいずれも棄却し、一審原告らの一審被告公社に対する第二次的請求をいずれも認容する一方、一審原告らの一審被告町に対する請求をいずれも棄却した。そこで、一審原告らは、原判決中一審原告ら敗訴部分を不服として、一審被告公社は、原判決中一審被告公社敗訴部分を不服として、それぞれ控訴した。
三 前提事実、争点及び争点に関する当事者の主張は、次のとおり補正し、後記四のとおり「当審における新主張」を加えるほかは、原判決「事実及び理由」中の「第二 事案の概要」欄の二ないし五(原判決四頁七行目から一五頁一行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。
(1) 原判決八頁一五行目の「原告」を「一審原告ら」に改め、一七行目の「常務」の次に「理事」を加え、二一行目の末尾の次に「仮に、一審原告らの主張が認められるとして、一審原告らに、B及びC(以下「Bら」ともいう。)の上記行為がその職務行為に属さないことを知らなかったことにつき重大な過失があったか。」を加える。
(2) 原判決九頁三行目の「被告会社」を「一審被告公社」に改める。
(3) 原判決一〇頁八行目の「九八〇〇」の次に「万」を加える。
(4) 原判決一一頁二〇行目の末尾の次に改行の上、次のとおり加える。
「一審原告らによる上記各金員の拠出は、一審原告らが新市街地開発事業の実現による大規模工事の受注により多大な利益を得られると期待して行った投資というべきである。」
(5) 原判決一三頁二行目の末尾の次に改行の上、次のとおり加える。
「エ 後記(2)イの一審被告らの主張は争う。Bらの一審原告らに対する資金提供要請及びこれに基づく金員の受領は、自己や一審被告公社以外の第三者の利益を図るためにされたものではなく、現に同金員は新市街地開発事業のための地位譲受代金、土地取得代金、預託金支払資金、南都銀行からの借入金の返済資金等に充てられているのであるから、一審原告らに、重大な過失はない。」
(6) 原判決一三頁四行目を次のとおり改める。
「ア 一審原告らの主張はいずれも争う。」
(7) 原判決一三頁五行目の末尾の次に改行の上、次のとおり加える。
「イ 公法人である一審被告公社が、その事業に要する資金について、金融機関ではなく、一個人や一建設業者に資金提供を依頼しており、貸付けを受けるに当り、一審被告公社名義の借用書が作成されず、上記五億円については、BがB個人名義で借用書を作成し、一審被告公社名義口座ではなくD口座に振り込むように指示し、上記八億円については鴻池組らからの精算金を装って振り込むように指示するなど常識的に考えてあり得ないことであるところ、一審原告らは、地元の有力建設業者及びその代表者なのであるから、上記資金提供要請が一審被告公社の正当な事業に関連するものではなく一審被告公社の理事としての職務に属さないのではないかとの疑念を抱いて確認又は調査を行って然るべきであり、また、容易に行えるのに、これをせず、一審被告公社から返済を受けられると軽信したものであって、Bらによる資金提供要請がその職務行為に属さないことを知らなかったことにつき重大な過失があったというべきである。」
(8) 原判決一四頁二二行目の末尾の次に改行の上、次のとおり加える。
「オ 後記(2)イの一審被告らの主張は争う。Bらの一審原告らに対する資金提供要請及びこれに基づく金員の受領は、自己や一審被告公社以外の第三者の利益を図るためにされたものではなく、現に同金員は新市街地開発事業のための地位譲受代金、土地取得代金、預託金支払資金、南都銀行からの借入金の返済資金等に充てられているのであるから、一審原告らに、重大な過失はない。」
(9) 原判決一四頁二四行目を次のとおり改める。
「ア 一審原告らの主張はいずれも争う。」
(10) 原判決一五頁一行目の末尾の次に改行の上、次のとおり加える。
「イ Bが一審被告公社の返済について「一審被告町が責任を持つ」と言ったとしても、一審原告らにおいてかかるBの行為が町長としての職務に属さないのではないかとの疑念を抱いて然るべきであり、一審被告町が保証する場合、債務負担として議会による議決が必要であるところ(地方自治法二一四条)、一審原告らは、地元の有力建設業者及びその代表者なのであるから、議会の議員や担当職員にかかる議決の有無を調査することは容易であったし、一審原告X1は、町民の立場でこれを調査することも容易であったのに、かかる調査を一切行うこともなく、一審被告公社の返済について一審被告町が責任を持つとのBの言葉を軽信したものであって、Bの上記行為がその職務行為に属さないことを知らなかったことにつき重大な過失があったというべきである。」
四 当審における新主張
(1) 共同不法行為
ア 一審原告ら
新市街地開発事業が一審被告町を挙げての大事業であり、一審被告らが一体となり、Bが町長と理事長を兼務して行っていたものであるから、両法人の代表機関を兼ねているBが行った不法行為には、一審被告町の町長としての行為という側面と一審被告公社の理事長としての行為の側面が共存、一体化しており、一審被告らの共同不法行為というべきである。
イ 一審被告ら
争う。
(2) 損害賠償請求権の時効消滅
ア 一審被告ら
一審原告らは、遅くとも鴻池組らが新市街地開発事業からの撤退を表明した平成一〇年七月の時点において、Bらの要請に基づき提供した資金について一審被告らから返済を受けられないということを認識していたといえるから、その時点で、Bらによる違法な資金提供の要請という不法行為について、損害及び加害者を知ったものであり、平成一三年七月三一日の経過により消滅時効が完成したから、平成二六年一月二二日の本件口頭弁論期日において、上記消滅時効を援用するとの意思表示をした。
イ 一審原告ら
争う。新市街地開発事業が確定的に断念されることになったのは、Bが刑事事件で町長の職を辞し、その後、町長となったAが一審被告公社の理事長にもなり、それまで新市街地開発事業の可能性を模索していたCが理事を辞任した平成二〇年三月のことである。そして、一審原告らが、Bの借入要請を違法なものであると知ったのは、本件訴訟を提起して、一審被告らの反論に接して以降のことである。
(3) 過失相殺
ア 一審被告ら
Bらによる資金提供の要請が一審被告町の町長及び一審被告公社の理事としての各職務に属さないことを知らなかったことについて、仮に重大な過失がないとしても、一審原告らには、それに比肩すべき著しい過失があったというべきであるから、相応の過失相殺がされるべきである。
イ 一審原告ら
争う。一審原告らの資金提供は、新市街地開発事業の遂行のためにされたものであり、現にそれらの資金は新市街地開発事業に用いられているのであるから、一審被告公社が借入れをするに当たっての一審原告らのあずかり知らない諸規定、諸手続、必要な書類等についての細々した不備を過失とみるのは相当ではない。
第三当裁判所の判断
一 当裁判所は、一審原告らの一審被告らに対する請求はいずれも理由がないものと判断する。その理由は、次のとおり補正し、後記二のとおり「当審における新主張に対する判断」を加えるほかは、原判決「事実及び理由」中の「第三 事実認定」及び「第四 争点に対する判断」(原判決一五頁二行目から三一頁一二行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。
(1) 原判決一六頁一四行目の「交渉を」から一五行目末尾までを「Dに依頼して交渉を進め、同年一二月頃には同人との間で仮契約を締結させた(甲一、二)。」に改める。
(2) 原判決一七頁二〇行目の「発をし」を「発言をし」に改める。
(3) 原判決二〇頁一二行目の「デベッロッパー」を「デベロッパー」に改める。
(4) 原判決二一頁二一行目の「九八〇〇」の次に「万」を加える。
(5) 原判決二三頁二五行目から二四頁六行目までを削除する。
(6) 原判決二六頁一行目の「三一日」を「二八日」に改める。
(7) 原判決二八頁一七行目から一八行目にかけての「何らの借用書がない本件においては」を「何らの借用書もない。このようにBらが一審原告らと一審被告公社の間に貸付けの外形が生じることを避けていたことを考慮すると、単に貸付けの成立を証する書証がないというにとどまらず、Bらが個人的に前記各金員を借り受け、これを一審被告公社に転貸するなどしたものとみる余地もあり」に、二一行目の「追求する」を「追及する」に、それぞれ改める。
(8) 原判決二八頁二五行目から三〇頁二六行目までを次のとおり改める。
「前記前提事実のとおり、公拡法の規定によれば、一審被告公社は、民間の開発業者が一般的に行っている住宅地や工業団地の開発を目的とする開発事業を行うことはできず、新市街地開発事業のうち、公共ゾーン(福祉ゾーン)以外の事業主体になることはできないものであるから、一審被告公社が公共ゾーン以外の地区について、民間の事業者と同じ立場で開発することは、公拡法に違反する違法行為といわざるを得ないところ、前記認定したとおり(前記認定した六、八、一三、一五、一九、二五、二六、二七)、一審被告公社は、先行して宅地開発をしていた業者から買主としての地位の譲渡を受けた上で、その対価を支払い、Gとの間では、土地の売買契約を締結して、その代金を支払って、その土地について所有権の移転登記を経由したり、G以外の地権者には預託金を支払ったりなどして、実質的に、民間の事業者と同様の宅地開発事業等を行っていた。そして、これらの資金については、一審原告らが交付した金員も使用されていたものであり、E名義やF名義で一審被告公社の口座に振り込んだ金員は、前記認定説示のとおり一審原告会社が振り込んだものと推認できるにもかかわらず、一審被告公社の理事会において、一審原告らからの金員交付の件については、BやCから一切の説明がなく、一審原告らとの資金融通交渉は全くBやCの独断で行われていたものである。
そうすると、一審原告らは、B及びその意を受けたCの言動を信頼した結果、将来、一審被告公社からBを通じ、その返済を受けられると信じて、一審被告公社の新市街地開発事業に必要な資金を一審被告公社に振り込むなどしたにもかかわらず、実際には、Bが理事会の正式な承諾を得ないまま独断でその金員を一審被告公社の新市街地開発事業に支出したことによって、その返済を受けられなくなったものというべきであるから、一審被告公社は、公拡法二三条、民法四四条による責任を負うべきこととなる。
しかし、被用者の取引行為がその外形からみて使用者の事業の範囲内に属すると認められる場合であっても、それが被用者の職務権限内において適法に行われたものではなく、かつその相手方が上記事情を知り、又は少なくとも重大な過失によりこれを知らないものであるときは、その相手方である被害者は、民法七一五条により使用者に対しその取引行為に基づく損害の賠償を請求することができないのであって(最高裁昭和四二年一一月二日第一小法廷判決・民集二一巻九号二二七八頁参照)、この理は同条と同様の性質を有する同法四四条一項の責任についてもあてはまると解される。
これを本件についてみると、前記認定説示のとおり、一審被告公社が公拡法の規定に基づき一審被告町により設立された公的な性格を有する団体であるにもかかわらず、一審原告X1から交付を受けた五億円については、BやCの個人名義の借用書のみで、一審被告公社名義での借用書を一切出さず、その余の一審原告会社の振込金についても、D口座への振込あるいはE及びFからの振込の形を採り、一審被告公社名義での借用書を出さないという極めて不自然な取引態様を採っているのであるから、かかる態様による取引に応じようとする一審原告らとしては、その取引が真実一審被告公社の理事会決議に基づくものかどうか疑念を抱き、かかる疑念を晴らすために、少なくとも、B及びC以外の一審被告公社理事等に真実理事会決議がされたかどうかを照会すべきであり、しかも、そのことは容易にできたことであり、そうしていれば、その取引がBらの独断によるものであることが容易に判明したはずである。それにもかかわらず、一審原告らは、B及びC以外の理事等に照会することなく、その取引が適法にされたものと軽信して、Bらから請われるままに金員の交付又は振込を行ったのであるから、一審原告らには、Bらによる資金提供要請がその職務行為に属さないことを知らなかったことにつき重大な過失があったというべきである。
よって、一審原告らの一審被告公社に対する予備的請求その一は理由がない。」
(9) 原判決三一頁二行目冒頭から六行目の「負わない。」までを次のとおり改め、その次に改行を加える。
「地方公共団体の長の権限は法定されており(地方自治法一四七条、一四九条)、保証等債務負担行為をするには予算で定めておかなければならず(同法二一四条)、予算を定めることは議会の権限であるから(同法九六条二号)、議会の議決のない地方公共団体の長による保証等債務負担行為は、権限外行為として違法かつ無効であるというべきであるが、地方公共団体の長が当該地方公共団体を代表して保証等債務負担行為をすることは、外見上地方公共団体の長の職務行為とみられるから、民法四四条一項の類推適用により、当該地方公共団体は上記行為により相手方の被った損害の賠償責任を負うものというべきである(最高裁昭和三七年九月七日第二小法廷判決・民集一六巻九号一八八八頁参照)。しかし、地方公共団体の長がした行為が、その行為の外形からみてその職務行為に属するものと認められる場合であっても、相手方において、上記行為がその職務行為に属さないことを知っていたか、又はこれを知らなかったことにつき重大な過失があったときは、当該地方公共団体は、相手方に対して損害賠償の責任を負わないものと解するのが相当である(最高裁昭和五〇年七月一四日第二小法廷判決・民集二九巻六号一〇一二頁参照)。
これを本件についてみると、Bは、一審被告町の町長として、一審原告らに対し、一審被告町も一審被告公社の返済に責任を持つと言明しているところ(前記認定した二三)、これが一審被告町が一審被告公社の一審原告らに対する債務を保証する趣旨の債務負担行為に当たるとすれば、民法四四条一項の類推適用により、一審被告町には上記行為によって一審原告らが被った損害を賠償する責任があることになる。しかしながら、前記のとおり、一審原告らと一審被告公社との取引が極めて不自然な態様を採っているのであるから、かかる態様による取引に応じようとする一審原告らとしては、その取引に対するBの上記言明が真実一審被告町の決議に基づくものかどうか疑念を抱き、かかる疑念を晴らすために、少なくとも、B及びCだけではなく、一審被告町議会議員又は一審被告町職員に真実その旨の議会決議がされたかどうかを照会すべきであり、しかも、そのことは容易にできたことであり、そうしていれば、かかる言明がBの独断によるものであることが容易に判明したはずである。それにもかかわらず、一審原告らは、一審被告町議会議員又は一審被告町職員に照会することなく、かかる保証の趣旨の言明が適法にされたものと軽信して、Bらから請われるままに金員の交付又は振込を行ったのであるから、一審原告らには、Bによる保証の趣旨の上記言明がその職務行為に属さないことを知らなかったことにつき重大な過失があったというべきである。」
(10) 原判決三一頁九行目の「Bや」から一一行目の「公務に該当せず」までを「国家賠償法一条にいう「公権力の行使」とは、国又は公共団体の作用のうち純粋な私経済作用と国家賠償法二条によって救済される営造物の設置又は管理作用を除くすべての作用を意味するところ、BやCの行為は、純粋な私経済作用にほかならないから、公権力の行使に該当せず」に改める。
二 当審における新主張に対する判断
前記のとおり、重過失の抗弁が認められるから、これらの点については判断するまでもない。
三 その他、当審における一審原告らの主張・立証を検討しても、上記認定・判断を左右するに足りない。
四 以上によれば、一審原告らの一審被告らに対する請求はいずれも理由がないからこれを棄却すべきであるから、これと結論を一部異にする原判決は一部相当ではない。よって、一審原告らの各控訴をいずれも棄却し、原判決中一審被告公社敗訴部分を取り消し、一審原告らの一審被告公社に対する請求をいずれも棄却することとし、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 小佐田潔 裁判官 浅井隆彦 杉村鎮右)