大阪高等裁判所 平成25年(行コ)149号 判決 2014年3月18日
主文
1 一審原告X1らの控訴に基づき、原判決を次のとおり変更する。
2 一審被告は、別紙認容金額一覧表の「相手方」欄記載の各相手方に対し、同「金額」欄記載の各金員及びこれに対する平成23年5月26日から支払済みまで年5分の割合による各金員をそれぞれ支払うよう請求せよ。
3 一審原告らのその余の請求をいずれも棄却する。
4 一審被告の控訴をいずれも棄却する。
5 訴訟費用は、第1、2審を通じてこれを5分し、その3を一審原告X1らの、その1を被控訴人Y1らの、その余を一審被告の各負担とする。
事実及び理由
第3当裁判所の判断
1 当裁判所の判断の理由は、次のとおり補正し、次項に当審における当事者の主張に対する判断を付加するほかは、原判決の「事実及び理由」欄の「第3 当裁判所の判断」の1項ないし4項(原判決13頁16行目から40頁26行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。
(1) 原判決13頁17行目の「証拠」の次に「(甲5ないし27、29、97、99、104、105(枝番号のあるものは枝番号を含む。)、調査嘱託の結果)」を加える。
(2) 同14頁14行目の「16の3・11」を「16の2・3・11」に改める。
(3) 同15頁3行目の「B参議院議員事務所」を「B参議員事務所、奈良政策研究会」に改める。
(4) 同17頁10行目の「3150円」を「3530円(代引手数料380円を含む。)」に改め、同11行目の「甲10の1~6」の次に「、104、105」を加え、同15行目の「5月28日」を「6月21日」に改める。
(5) 同18頁5行目の「今が分かる時代が分かる」を「今がわかる時代がわかる」に改める。
(6) 同19頁8行目の「1940円」の次に「(代引手数料260円を含む。)」を、同11行目の「1835円」の次に「(代引手数料260円を含む。)」を加える。
(7) 同21頁8行目から9行目にかけての「同年4月に購入したパソコン」を「同年3月1日に購入したパソコン及び周辺機器」に改める。
(8) 同22頁14行目の「(1万6200円)、」の次に「同月6日ころ支払った」を加える。
(9) 同23頁15行目の「相手方らは」の前に「平成22年度の政務調査費に係る収支報告書の提出期限は平成23年4月30日であったところ(市規則6条1項)、」を加える。
(10) 同25頁6行目の末尾に改行の上、次のとおり加える。
「コ 相手方A4、同A5、同A9、同A14及び同A17は、いずれも、各自が所属する政治団体の事務所(相手方A4について「A4後援会」、相手方A5について上記「A5を育てる会」、相手方A9について「A9後援会」、相手方A14について上記「A14後援会」、同A17について「A17後援会」)と同一の場所に各自の議員事務所を置いている。(甲97の1・2、甲99の1・2)」
(11) 原判決28頁11行目の「が存在することも」を「が市の定めとして存在し(甲78、79)、これらによって公用文の文字用語の取扱い等が定められているとしても」に改める。
(12) 同30頁11行目の「内容のほか、」を「内容及び」に、同12行目から13行目にかけての「等の事情も踏まえれば」を「が認められる(甲16の2)ことからすれば」にそれぞれ改め、同18行目から19行目にかけての「うかがわれ、」の次に「同相手方が教育委員会の所管に属する事務を行う文教常任委員会の委員であったことが認められる(乙9)ことからすれば、上記書籍を」を加える。
(13) 同31頁21行目の「月刊「MOKU」」の次に「の平成22年4月号から平成23年3月号までの各号に」を加え、同25行目の「甲90の1~8」の次に「、弁論の全趣旨」を加える。
(14) 同32頁24行目の「教育旅行」から同25行目の「交流」までを「農家民泊を利用した教育旅行を誘致して、国内及び海外各地との交流を深めること」に改める。
(15) 同33頁10行目から25行目末尾までを次のとおり改める。
「ア 減価償却費
市規則に定める使途基準では、議員の行う調査研究活動のために必要な事務所の設置及び管理に要する経費である事務所費については、事務所の賃借料、維持管理費、備品代、事務機器購入代及びリース料等の支出が認められていることは前記認定のとおりであるところ、使途基準において、事務所費に係る物品の購入に関して特段の制限が設けられていないことからすれば、各議員が政務調査費で物品を購入し、当該物品が議員の個人財産となることがあるとしても、これをもって直ちに使途基準に反するということはできない。
そして、相手方A4、同A5、同A8、同A9、同A14及び同A17は、各自が購入したパソコン、プリンター及び液晶プロジェクターの購入費用について、減価償却法によって計算した当該年度分の減価償却費を政務調査費で支出しているところ、これらの事務機器は、その機能や一般的な用途に照らし、議員の議会活動の基礎となる調査研究活動に用いられるものといえるから、これらの事務機器が上記各相手方の個人の所有物になるとしても、これをもって各購入費用全額についての支出が違法となるとはいえない。
もっとも、このうち相手方A8を除く相手方らは、各自の議員事務所と同一の住所に各自が所属する政治団体の事務所を置いていることは前記認定のとおりであるところ、同相手方らが購入したパソコン、プリンター及び液晶プロジェクターは政治団体の事務所をも兼ねる議員事務所に設置され、利用されているものと推認される。そして、上記相手方らが、これらの事務機器とは別個に政治団体の活動等のために用いる事務機器を設置しているなど、政務調査費により購入した上記事務機器が政治団体の活動その他の議員の議会活動の基礎となる調査研究活動に用いられることがないと認めるに足りる証拠がないことからすると、同相手方らが購入した上記パソコン、プリンター及び液晶プロジェクターは、議会活動に関する調査研究活動のみならず、政治団体の活動その他種々の活動にも利用されているものと推認できる。
そうすると、相手方A4、同A5、同A9、同A14及び同A17の上記事務機器に係る当年度分の減価償却費の支出については、その一部について議員の議会活動の基礎となる調査研究活動との間に合理的関連性を認めることができない。そして、これらの事務機器は、その性質上、適宜必要に応じて使用されるものであり、具体的な使途目的や使用頻度等を正確に把握することが困難と考えられるところ、その具体的な使用実態を裏付ける証拠もないことからすれば、その2分の1については議員の議会活動の基礎となる調査研究活動のために必要なものであると認められるが、それを超える部分については調査研究活動との間に合理的関連性が認められず、政務調査費から支出することは許されないというべきである。
したがって、相手方A4についてはノートパソコンに係る減価償却費2万0633円の50パーセントである1万0316円(1円未満切捨て、以下同じ。)、相手方A5についてはパソコン等に係る減価償却費4万7514円の50パーセントである2万3757円、相手方A9についてはパソコン等に係る減価償却費1万6825円の50パーセントである8412円及びカラープリンターにかかる減価償却費1万1360円の50パーセントである5680円、相手方A14についてはパソコン等に係る減価償却費9638円の50パーセントである4819円並びに相手方A17については液晶プロジェクターに係る減価償却費4万2076円の50パーセントである2万1038円及びパソコン等に係る減価償却費9万0523円の50パーセントである4万5261円について、それぞれ使途基準に反した違法な支出であると認められる。」
(16) 同35頁7行目の「相手方A10」の次に「、相手方A11」を加える。
(17) 同36頁22行目の「3万8920円」の次に「(1円未満切捨て)」を加える。
(18) 同37頁26行目の「及び」を「を視察するとともに同センターにおいて指定管理制度の導入成果等の説明を受け、登別市の」に、同末行の「室蘭市職員」を「室蘭市役所を訪問して、同市職員」にそれぞれ改める。
(19) 同38頁1行目の「に関して説明を受けるなどしたことがうかがわれるが」を「説明を受けたことが認められ」に改める。
(20) 同39頁1行目の「講演に参加したことがうかがわれるが」を「講演会に参加したものであり、同研修は奈良県の県議会議員や市町村議会議員、会社代表者らも参加して、日本の安全保障等についての理解を深めるものであったことが認められる(甲18の4)。そして」に、同21行目及び22行目の各「政策研究会」をいずれも「奈良政策研究会」に、同23行目の「参加していることがうかがわれるところ」を「参加しており」にそれぞれ改める。
(21) 同40頁2行目の末尾に改行の上、次のとおり加える。
「(6) 相手方らによる違法な支出
以上によれば、相手方らによる政務調査費の支出のうち、本判決別紙認容金額一覧表記載の「相手方」欄記載の各相手方が支出した同表「金額」欄記載の各支出額は、使途基準に反する違法なものであるから、一審被告は、同相手方らに対し、違法な支出に係る各金員の返還を請求すべきである。」
(22) 同40頁23行目の「提出期限日」の次に「である平成23年4月30日」を加える。
2 当審における当事者の主張に対する判断
(1) 一審原告X1らの主張について
ア 一審原告X1らは、資料購入費について、第2の3(1)ア(ア)ないし(ク)のとおり主張するところ、原判決を補正の上引用して認定説示したとおり、同(ク)の主張については採用できるが、その余はいずれも理由がない。
なお、一審原告X1らは、「2011年版奈良県年鑑」、「広辞苑」、「今がわかる時代がわかる日本地図2010年版」及び「a社電子辞書」は、汎用性が広く、議員としての調査研究活動と関係のない活動にも使用可能であるから、これらの購入に係る支出は全て違法であるか、又は支出を按分した一部が違法となる旨主張するが、これらの書籍は汎用性があるとはいっても、その用途はある程度限定されたものであり、これらの書籍を購入した相手方らが政治団体の活動その他議員としての調査研究活動以外の活動にこれを用いたことを認めるに足りる証拠もないことからすれば、一審原告X1らの上記主張を採用することはできない。
また、一審原告X1らは、「DT橿原市」及び「橿原市住宅地図」を販売する会社が同書籍を用いたサービスとして選挙支援を挙げていることを問題とするが、これらの書籍を購入した相手方らが、これを議員の議会活動の基礎となる調査研究活動に用いることなく、選挙活動に利用したことを認めるに足りる証拠はないから、一審原告X1らの上記主張は採用することはできない。
さらに、一審原告X1らは、相手方らが購入した資料等を用いた成果物がないことを問題とするが、使途基準によっても、政務調査費から経費を支出した調査研究活動による具体的な成果物が求められているものとはいえず、二審原告X1らの上記主張は採用することはできない。
イ 一審原告X1らは、事務所費に係る減価償却費の支出について、第2の3(1)イのとおり主張するところ、原判決を補正の上引用して認定説示したとおり、相手方A4、同A5、同A9、同A14及び同A17による減価償却費の支出のうち50パーセントは違法であるから、一審原告X1らの上記主張はその限度で理由がある。しかし、相手方A8が政務調査費から減価償却費を支出したパソコンを議員としての調査研究活動以外の活動に利用したことを認めるに足りる証拠はないから、同相手方についての一審原告X1らの上記主張は採用することができない。
ウ 一審原告X1らは、本件行政視察について、第2の3(1)ウのとおり主張するが、原判決を補正の上引用して認定したとおり、相手方視察参加者らは、指定管理者制度、中心市街地活性化、幼保一元化を課題として各視察地を視察し、各所で担当職員等から説明を受けるなどしたものであり、これらは議員の議会活動の基礎となる調査研究活動との間に合理的関連性が認められる。一審原告X1らは、相手方視察参加者らが北海道に約54時間滞在したうち、視察時間は約5時間30分にすぎず、私的な観光旅行であった旨主張するが、経験則上、その間には相当程度の移動時間や待機時間、宿泊・休憩時間等が含まれているものと推認され、視察地が遠方であることや観光シーズンであったことなど一審原告X1らが主張する事情を考慮しても、本件行政視察が私的な観光旅行であったということはできない。また、一審原告X1らは、高額な本件行政視察に係る経費を支出することは地方自治法2条14項の趣旨にも反する旨主張するが、本件行政視察に係る支出が市の使途基準に照らして議員の議会活動の基礎となる調査研究活動との間に合理的関連性が認められることは前記のとおりであるから、相手方視察参加者ら各自が、平成22年度の政務調査費として交付された50万円のうち約13万円を本件行政視察の経費として支出したことをもって、上記法条の趣旨に照らして相当でないということはできない。したがって、一審原告X1らの上記主張を採用することはできない。
エ 一審原告X1らは、8月研修について、第2の3(1)エのとおり主張するが、8月研修が外形的に観光旅行であるということができず、一審原告X1らの上記主張を採用することができないことは原判決を補正の上引用して説示したとおりである。なお、一審原告X1らは、8月研修で行われた講演会の参加者らは特定の政党に属する議員であり、同講演会は政党活動として行われたものであるから、同講演会への参加費用は政治活動に関する費用である旨主張するが、同講演会が特定政党の政治活動として行われたと認めるに足りる証拠はなく、同主張も採用することはできない。
オ 一審原告X1らは、奈良政策研究会の会費について、第2の3(1)オのとおり主張するところ、証拠(甲108)によれば、同研究会の平成22年度の活動として歌手のコンサートが催されたことが認められる。しかしながら、上記証拠によれば、同研究会は地域づくりや政策の研究等を目的として、年数回、講演会や研修等を行っていることが認められ、平成22年度中には8月研修のほか、「奈良県政」とのタイトルで奈良県知事による講演会が行われていることが認められることからすれば、上記コンサートが行われたことをもって同研究会の会費が議員の議会活動の基礎となる調査研究活動と合理的関連性がないものということはできない。したがって、一審原告X1らの上記主張は採用することができない。
(2) 一審被告の主張について
ア 一審被告は、第2の3(2)アのとおり、市条例は政務調査費の使途基準を「市政に関する調査研究に資するための必要な経費」という緩やかな有益性に関する規律にとどめているから、調査研究自体が直接市政に関する場合に限らず、議員の知識や理解力等を高める調査研究活動に関する活動のための経費の支出も適法となる旨主張する。しかしながら、原判決を補正の上引用して説示したとおり、地方自治法100条14項の趣旨に照らし、市の使途基準に照らして政務調査費として必要な経費と認められるのは、議員の議会活動の基礎となる調査研究及び調査の委託に要する経費であり、議員としての議会活動を離れた活動に関する経費ないし当該行為の客観的な目的や性質に照らして議員の議会活動の基礎となる調査研究活動との間に合理的関連性が認められない行為に関する経費は、これに該当しないものというべきである。したがって、一審被告の上記主張は採用することができない。
イ 一審被告は、資料購入費について、第2の3(2)イ(ア)ないし(ウ)のとおり主張するが、原判決を補正の上引用して説示したとおり、同主張を採用することはできない。
ウ 一審被告は、再リース契約に係る再リース料について、第2の3(2)エのとおり、再リース契約ではリース期間の長短にかかわらず、契約期間の当初に全期間分の再リース料を一括して支払い、その金額も新規にリース契約を締結する場合に比して相当低額であるのが通例であるから、相手方らが当該年度中に一括払いした再リース料の全額を政務調査費として計上することに違法はない旨主張する。しかしながら、政務調査費は、議員の議会活動の基礎となる調査研究活動のために、年度ごとに定められた金額を交付されて、当該年度中に必要となった調査研究活動のために利用すべきものである。また、再リース期間にかかわらず、契約当初に一括して再リース料を政務調査費から支出することを認めると、その支出をした議員の任期を超えて再リース契約が継続する場合(当該議員が任期途中で議員資格を喪失する場合を含む。)には、議員資格のない者の利用する再リース契約の費用を政務調査費から支出する結果となり、相当ではない。したがって、再リース料についての政務調査費からの支出は、上記のとおり、単年度ごとに按分した金額によることが合理的かつ相当であり、一審被告の上記主張を採用することはできない。
エ 一審被告は、事務機器のリース契約等に係る支出について、第2の3(2)オ(ア)及び(イ)のとおり、同一人の活動が一面において政務調査に資する活動となるのであれば、その活動が政務調査活動以外の活動を含む面を有していたとしても、全体を政務調査に資する活動と認めるのが相当である旨主張する。しかしながら、原審判を補正の上引用して説示したとおり、議員に交付される政務調査費は、市の定める使途基準に合致する議員の議会活動の基礎となる調査研究活動に関してのみ支出することが許されていると解すべきであるところ、これらの事務機器は、同様の機能を有する事務機器を用途に応じて別に備え付けることは比較的容易であり、これによって議員の議会活動の基礎となる調査研究活動に用いる場合とそれ以外の活動に用いる場合とを区別することも可能であることからすれば、これらの事務機器の通常用いられる用途や頻度等に照らし、その全てを議員としての調査研究活動と合理的関連性があるものということはできない。また、これらの事務機器が議員としての調査研究活動以外に用いられることがないと認めるに足りる証拠もない。したがって、一審被告の上記主張を採用することはできない。
オ 一審被告は、事務機器のリース契約等に係る支出について、第2の3(2)オ(ウ)のとおり、一部の相手方らが政務調査費から経費を支出した事務機器と同様の機能を有する別の事務機器を政治団体の事務所に有している旨主張するが、同主張を認めるに足りる証拠はない。また、一審被告は、相手方A1、同A5、同A10、同A13、同A15、同A18及び同A23は、私生活に関する活動に供する別の事務機器を自宅に保有し、相手方A11は、同様の用に供する別の事務機器を自宅及び自宅兼議員事務所に保有している旨主張し、証拠(乙1ないし8)を提出するが、次のとおり、上記主張も採用することができない。
(ア) 相手方A1は、議員事務所と同一の住所に政治団体の事務所を置き、同所でカラー複合機のリース契約を締結し、同リース料金を政務調査費から支出しているところ、証拠(乙1)によっても、同相手方が自宅にプリンターを有していることがうかがわれるにとどまり、上記リース契約に係るカラー複合機が政治団体の活動その他の議員の議会活動の基礎となる調査研究活動以外の活動にも利用されているとの前記認定判断を左右するに足りない。
(イ) 相手方A5は、議員事務所と同一の住所に政治団体の事務所を置き、同所でコピー機のリース契約及びインターネットプロバイダ契約を締結し、同所でパソコンを保有して、リース料及びプロバイダ料並びにパソコン購入代金に係る当年分の減価償却費を政務調査費から支出しているところ、証拠(乙2)によっても、同相手方が自宅にプリンターを保有していることがうかがわれるにとどまり、上記リース契約に係るコピー機及びインターネット並びにパソコンが政治団体の活動その他の議員の議会活動の基礎となる調査研究活動以外の活動にも利用されているとの前記認定判断を左右するに足りない。
(ウ) 相手方A10は、議員事務所と同一の住所に政治団体の事務所を置き、同所でコピー機のリース契約を締結して同リース料金を政務調査費から支出しているところ、証拠(乙3)によれば、同相手方が自宅にコピー機を有していることがうかがわれるものの、同コピー機が上記リース契約に係るコピー機と異なるものか否かは判然とせず、上記政務調査費からリース料を支出したコピー機が政治団体の活動その他の議員の議会活動の基礎となる調査研究活動以外の活動にも利用されているとの前記認定判断を左右するに足りない。
(エ) 相手方A11は、議員事務所と同一の住所に政治団体の事務所を置き、同所でパソコンのリース契約を締結して同リース料金を政務調査費から支出しているところ、証拠(乙4)によれば、同相手方が自宅(議員事務所を兼ねていることがうかがわれる。)にパソコン2台を保有していることが認められるものの、これらのパソコンが上記リース契約に係るパソコンと異なるものか否かは判然とせず、上記政務調査費からリース料を支出したパソコンが政治団体の活動その他の議員の議会活動の基礎となる調査研究活動以外の活動にも利用されているとの前記認定判断を左右するに足りない。
(オ) 相手方A13は、議員事務所と同一の住所に政治団体の事務所を置き、同所でパソコンのリース契約を締結して同リース料金を政務調査費から支出しているところ、証拠(乙5)によっても、同相手方が自宅にプリンターを有していることがうかがわれるにとどまり、上記リース契約に係るパソコンが政治団体の活動その他の議員の議会活動の基礎となる調査研究活動以外の活動にも利用されているとの前記認定判断を左右するに足りない。
(カ) 相手方A15は、議員事務所と同一の住所に政治団体の事務所を置き、同所でパソコンのリース契約を締結して同リース料金を政務調査費から支出しているところ、証拠(乙6)によれば、同相手方が自宅にもパソコンを有していることがうかがわれるものの、同パソコンが上記リース契約に係るパソコンと異なるものか否かは判然とせず、上記政務調査費からリース料を支出したパソコンが政治団体の活動その他の議員の議会活動の基礎となる調査研究活動以外の活動にも利用されているとの前記認定判断を左右するに足りない。
(キ) 相手方A18は、議員事務所と同一の住所に政治団体の事務所を置き、同所でコピー機及びパソコンのリース契約を締結して同リース料金を政務調査費から支出しているところ、証拠(乙7)によっても、同相手方が自宅にコピー機能付きファックス電話を有していることがうかがわれるにとどまり、上記リース契約に係るコピー機及びパソコンが政治団体の活動その他の議員の議会活動の基礎となる調査研究活動以外の活動にも利用されているとの前記認定判断を左右するに足りない。
(ク) 相手方A23は、議員事務所と同一の住所に政治団体の事務所を置き、同所でパソコン及びプリンターのリース契約を締結して同リース料金を政務調査費から支出しているところ、証拠(乙8)によっても、同相手方が自宅にもパソコンを有していることがうかがわれるにとどまり、これが上記リース契約に係るパソコンと異なるものか否かは判然とせず、上記政務調査費からリース料を支出したパソコン及びプリンターが政治団体の活動その他の議員の議会活動の基礎となる調査研究活動以外の活動にも利用されているとの前記認定判断を左右するに足りない。
3 以上によれば、一審原告らの請求は、一審被告に対し、別紙認容金額一覧表の「相手方」欄記載の各相手方に対して、同「金額」欄記載の各金員及びこれに対する平成23年5月26日から支払済みまで年5分の割合による各遅延損害金の支払をそれぞれ請求するよう求める限度で理由があるから、これを認容し、その余の請求は理由がないからこれをいずれも棄却すべきである。
よって、一審原告X1らの控訴は一部理由があるから、原判決を上記判断と抵触する限度で変更し、一審被告の控訴はいずれも理由がないから、これをいずれも棄却することとして、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 金子順一 裁判官 田中義則 小池覚子)