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大阪高等裁判所 平成26年(ネ)426号 判決 2014年10月03日

控訴人(一審原告)

ディー・エヌ・エー株式会社

同訴訟代理人弁護士

岩坪哲

速見禎祥

同訴訟代理人弁理士

上羽秀敏

同補佐人弁理士

坂根剛

被控訴人(一審被告)

株式会社横浜DeNAベイスターズ

同訴訟代理人弁護士

上田雅大

横山経通

主文

1  本件控訴を棄却する。

2  控訴費用は控訴人の負担とする。

事実及び理由

第1控訴の趣旨

1  原判決を取り消す。

2  被控訴人は,控訴人に対し,5000万円及びこれに対する平成24年11月30日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

3  訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。

4  仮執行宣言

第2事案の概要

1  本件は,被控訴人が原判決別紙被告標章目録2から20までの各標章(以下,これらを総称して「被告標章」といい,個別の標章を同目録記載の番号に従って「被告標章2」などという。)を原判決別紙被告商品目録1から33までの商品(以下,これらを総称して「被告商品」といい,個別の商品を同目録記載の番号に従って「被告商品1」などという。)に付し,又は被告標章を付した被告商品を販売するなどして被告標章を使用することが控訴人の有する商標権の侵害に当たるとして,控訴人が被控訴人に対し,①商標法36条1項及び2項に基づき,被告標章の使用の差止め及び侵害の予防に必要な行為を求めるとともに,②不法行為による損害賠償として,1億1000万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成24年11月30日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。

2  原審は,被告標章は,控訴人の登録商標に類似しないから,商標権侵害は認められないとして,控訴人の請求をいずれも棄却したところ,控訴人が前記1②の請求に対する判断を不服として控訴した。

3  控訴人は,当審において,前記1①の請求全部並びに同②の請求うち5000万円及びこれに対する平成24年11月30日から支払済みまで年5分の割合による金員を超える金員の支払請求に関する部分についての訴えを取り下げる旨の書面を提出したところ,被控訴人は,同書面の送達を受けた日から2週間以内に,前記1①の請求全部についての訴えの取下げに異議を述べた。

したがって,前記1②の請求のうち5000万円及びこれに対する平成24年11月30日から支払済みまで年5分の割合による金員を超える支払請求に関する部分についての訴えは,取下げにより終了したが,前記1①の請求全部についての訴えの取下げは効力が生じない。

ただし,前記のとおり,控訴人は,前記1①の請求に対する判断を不服申立ての対象としていないから,同請求は,当審における審理の対象とならない。

4  前提事実,争点及び争点に関する当事者の主張は,以下のとおり原判決を補正し,後記5のとおり,当審における当事者の補充主張を付加するほかは,原判決「事実及び理由」中の第2の1及び2並びに第3に記載のとおりであるからこれを引用する。

(1)  原判決2頁23行目の「以下まとめて「原告商標」といい。」を「以下,両商標を併せて「原告商標」といい,」と改める。

(2)  原判決3頁末行の「使用し」を「付し」と,4頁1行目の「若しくは」を「及び」とそれぞれ改め,2行目から3行目にかけての「電気通信回線を通じて」を削除する。

(3)  原判決6頁21行目の「が同字体であること」を「の文字の大きさ及び字体が同じであること」と改める。

(4)  原判決7頁11行目の「Yokohama」を「YOKOHAMA」と改める。

(5)  原判決8頁9行目の「被告標章2,ないし3から20」を「被告標章」と改める。

(6)  原判決9頁4行目の「また,本件球団は,」から7行目末尾までを次のとおり改める。

「改称時には改称後の球団名が大大的に報道されたから,被告商品の一部の販売を開始した平成24年1月29日に先立つ平成23年12月2日の改称時において,既に本件球団は,「横浜DeNAベイスターズ」として著名であり,同名称は,不正競争防止法2条1項2号の著名表示に当たるほどの著名性を獲得していた。」

(7)  原判決10頁3行目から4行目にかけての「被告の誕生以降は」を「平成23年12月の本件球団の改称以後は」と改める。

(8)  原判決11頁18行目の「被告標章14は」を「被告標章14もまた」と改める。

(9)  原判決13頁7行目から8行目にかけての「被告標章2から20まで」を「被告標章」と,9行目の「被告各標章」を「被告標章」とそれぞれ改める。

(10)  原判決13頁26行目の「当該費用は1000万円を下らない。」を「当該費用に1000万円を要した。」と改める。

(11)  原判決14頁6行目及び7行目の「被告ら」をいずれも「被控訴人」と改め,12行目の「一般需要者が」を削除する。

5  当審における当事者の補充主張

(1)  控訴人

ア 商標の類否判断は,出所識別力のある部分(要部)の外観,称呼,観念を比較して行うべきである。

被告標章のうち「DeNA」の部分は,他の部分から分離して観察することができ,出所識別力を有する要部に当たるところ,同部分の称呼は「ディーエヌエー」である。したがって,被告商標の要部と原告商標は,称呼が同一である。

また,「DeNA」は,控訴人の親会社のDeNA社の略称であるから,DeNA社を想起させ得るが,DeNA社と控訴人とは社名の称呼が同一であるため,取引者,需要者において,緊密な営業上の関係又は同一の商品化事業を営むグループに属する関係が存すると誤信するおそれがあること,DeNA社の社名は遺伝子のDNAとeコマースのeを組み合わせたものであり,「DeNA」の部分からデオキシリボ核酸が想起されるのは不可避であることから,被告標章2の要部と原告商標は,観念も同一である。

したがって,両者は類似しているというべきである。

イ 原判決は,被告標章20の類否判断に当たって,被控訴人が同標章の上に「YOKOHAMA DeNA BAYSTARS」の文字を付記したものを商品に付しているとして,被告標章20と上記英文字表記を一体的に観察しているが,控訴人は,被告標章20の使用による商標権侵害に基づく請求をしているのであって,当事者の意思を確認することなく,証拠に基づき侵害行為の内容を変更することは,処分権主義に反し,違法である。

(2)  被控訴人

ア 被告標章から「DeNA」が分離して認識されたとしても,同部分から一般需要者が想起するのは著名なDeNA社又は本件球団であり,被告標章と世間に全く知られていない原告商標とでは,広義の混同を含め,出所の誤認混同が生ずることはない。また,「DeNA」は,大文字の「D」と「NA」の間に小文字の「e」が配置されており,原告商標とは観念,外観が類似しない。「DeNA」から「ディーエヌエー」の称呼が生ずるとしても,出所の誤認混同を生ずるものでないことは原審において主張したとおりであり,被告標章と原告商標とは類似しない。

イ 被告標章20について,原判決は,控訴人が特定した訴訟物たる請求権の存否に対する判断を示しており,何ら処分権主義違反はない。

第3当裁判所の判断

1  当裁判所も,被告標章はいずれも原告商標と類似せず,控訴人の不法行為に基づく損害賠償請求は理由がないから棄却すべきであると判断するが,その理由は,以下のとおり付加,訂正するほかは,原判決「事実及び理由」中の第4の1ないし12(原判決14頁18行目から30頁15行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。

(1)  原判決15頁7行目の「43の1から35まで,」の次に「46の54から56・58・60から83・85から112,120から122・128・129,」を加える。

(2)  原判決16頁2行目の「株式会社東京放送」を「株式会社東京放送ホールディングス」と改める。

(3)  原判決16頁5行目の末尾の次に,行を改め,次のとおり加える。

「本件球団は,そのいずれもが著名なプロ野球球団の一つであり,オーナー企業がDeNA社に変更したことに伴い球団名が変更された時も大大的に報道され,被告標章を付した被告商品の販売が開始された平成24年1月29日の時点で,「横浜DeNAベイスターズ」(よこはまディーエヌエーベイスターズ)の名称もプロ野球に関心を有する者を中心に広く浸透していた。」

(4)  原判決16頁10行目から18頁19行目までを次のとおり改める。

「3 被告標章2と原告商標との類否判断

(1)  被告標章2の構成

ア 外観

被告標章2は,漢字の「横浜」,アルファベットの「DeNA」,カタカナの「ベイスターズ」を,ゴチック体様の同じ大きさの文字で横一列に表記するものであり,いずれかの部分が特に目を引く構成にはなっていない。

イ 称呼及び観念

被告標章2は,我が国において著名なプロ野球球団である本件球団の名称を表記したものであるから,本件球団を直接観念させ,本件球団の名称と同じ「よこはまディーエヌエーベイスターズ」の称呼を生ずる。

また,報道等においてプロ野球球団(チーム)を表現する場合,チームの愛称だけで表現する場合(例えば,「北海道日本ハムファイターズ」を「ファイターズ」と表現する場合)や,オーナー企業の名称,通称等で表現する場合(例えば「埼玉西武ライオンズ」を「西武」と表現する場合)がみられるほか,本拠地名で表現する場合(例えば「広島東洋カープ」を「広島」と表現する場合)があることは,公知の事実である。本件球団は,「横浜ベイスターズ」がその名称として長年にわたり使用された後,オーナー企業を示すものとして「DeNA」が挿入され,これが著名なものとなったのであるから,被告標章2からは,本件球団の略称である「よこはま」「ディーエヌエー」「ベイスターズ」などの称呼も生ずる。現実に,プロ野球の報道等において,本件球団が「ディーエヌエー」と称呼されていることは,証拠(乙43の38,40,42,43,47,54)からも明らかである。

(2)  ところで,商標の類否は,対比される両商標が同一又は類似の商品又は役務に使用された場合に,商品又は役務の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきであり,商標の類否の判断に当たっては,同一又は類似の商品又は役務に使用された商標が,その外観,観念,称呼等によって取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等を総合して,かつ,その商品又は役務に係る取引の実情を踏まえた上で全体的に考察すべきものである。そして,商標の外観,観念又は称呼の類似は,その商標を使用した商品又は役務につき出所を誤認混同するおそれを推測させる一応の基準にすぎず,上記三点のうち類似する点があるとしても,他の点において著しく相違するか,又は取引の実情等によって,何ら商品又は役務の出所を誤認混同させるおそれが認められないものについては,これを類似商標と解することはできない(最高裁昭和39年(行ツ)第110号同43年2月27日第三小法廷判決・民集22巻2号399頁,最高裁平成6年(オ)第1102号同9年3月11日第三小法廷判決・民集51巻3号1055頁参照)。本件における原告商標と被告標章の類否の判断においても,上記の観点から検討すべきである。

そこで検討すると,上記のとおり,被告標章2から生ずる複数の称呼のうちの一つである「ディーエヌエー」が原告商標の称呼と同一であるものの,原告商標と被告標章2とでは,他の称呼並びに外観及び観念は全く異なり,類似しないことが明らかである。そして,被告標章2の称呼のうち「ディーエヌエー」はそれが本件球団の略称又は本件球団のオーナー企業の社名であるが故に生ずるものであり,本件球団又はそのオーナー企業の観念と不可分に結びついていることからすると,被告標章2から「ディーエヌエー」の称呼が生ずる場合においても,被告商標2を付した商品と原告商標を付した商品との間で出所の誤認混同のおそれはないというべきである。

したがって,被告商標2が原告商標に類似するということはできない。

(3)  これに対し,控訴人は,被告標章2のうち「DeNA」の部分は,他の部分から分離して観察することが可能な要部に当たり,被告標章2の要部の称呼と原告商標の称呼が同一である以上,両者は類似していると主張する。

被告標章2は,「横浜」「DeNA」「ベイスターズ」の3つの文字部分を組み合わせた結合商標であるところ,複数の構成部分を組み合わせた結合商標については,商標の構成部分の一部を抽出し,この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは,その部分が取引者,需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や,それ以外の部分から出所識別標識としての称呼,観念が生じないと認められる場合などを除き許されない(最高裁平成19年(行ヒ)第223号同20年9月8日第二小法廷判決・裁判集民事第228号561頁参照)。

控訴人の主張は,被告標章2のうち「DeNA」の部分のみを抽出し,同部分だけを原告商標と比較して,被告標章2と原告商標の類否を判断すべきというものである。確かに,被告標章2から本件球団の略称である「ディーエヌエー」の称呼も生じることは前示のとおりである。しかし,被告標章2において「DeNA」の部分が取引者,需要者に対し商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものとは認められない。また,被告標章2は,全体として出所識別標識としての称呼及び観念を生ずるほか,造語であり,本件球団の略称として著名な「ベイスターズ」の部分だけでも出所識別標識としての称呼及び観念を生ずるのであり,それにもかかわらず,被告標章2のうち「DeNA」の部分のみを抽出して原告標章との類否判断をすることを相当とする事情も見当たらない(控訴人は,DeNA社と控訴人とは社名の称呼「ディーエヌエー」が同じであるから,両者が同一のグループ企業に属する関係があるとの誤信を招くおそれがあると主張するが,被告標章2に接した者が控訴人を想起するとは認められないから,失当である。)。したがって,控訴人の上記主張は採用することができない。」

(5)  原判決19頁7行目(なお,原判決の行数については,被告標章の図柄を表示した部分を独立した1行と数える。以下同じ。)の「文字全体に着目すれば,」の次に「本件球団の名称である」を,8行目の「生ずる」の次に「ほか,本件球団の略称である「よこはま」「ディーエヌエー」「ベイスターズ」などの称呼を生ずる」をそれぞれ加える。

(6)  原判決19頁17行目から22行目までを次のとおり改める。

「上記の被告標章3及び10から生ずる複数の称呼のうちの一つである「ディーエヌエー」が原告商標の称呼と同一であるものの,他の称呼並びに外観及び観念は類似せず,出所の誤認混同のおそれはないから,被告標章3及び10は,原告商標に類似しているとはいえない。

控訴人は,被告標章3及び10のうち「DeNA」の部分を要部として抽出し,同部分だけを原告商標と比較して両者の類否を判断すべきであると主張する。しかし,被告標章3及び10は,「BAYSTARS」の文字をかなり大きく配置しており,看者の注意は同部分に向けられることに加え,前記3補正後のもの。以下同じ。)で述べたところからすると,上記主張は採用することができない。」

(7)  原判決20頁12行目の「文字の全体に着目すれば,」の次に「本件球団の名称である」を,13行目の「生ずる」の次に「ほか,本件球団の略称である「よこはま」「ディーエヌエー」「ベイスターズ」などの称呼を生ずる」をそれぞれ加える。

(8)  原判決20頁22末行から同21頁5行目までを次のとおり改める。

「上記の被告標章4及び7から生ずる複数の称呼のうちの一つである「ディーエヌエー」が原告商標の称呼と同一であるものの,他の称呼並びに外観及び観念は全く異なり,類似しないことが明らかであり,出所の誤認混同のおそれはないから,被告標章4及び7は,原告商標に類似しているとはいえない。

控訴人は,被告標章4及び7のうち「DeNA」の部分を要部として抽出し,同部分だけを原告商標と比較して両者の類否を判断すべきであると主張する。しかし,被告標章4及び7は,星形の背景と文字とが一体的にデザインされており,「DeNA」の文字が占める割合は小さいことに加え,前記3(3)で述べたところからすると,上記主張は採用することができない。

(9)  原判決22頁3行目から4行目にかけての「マスコット(スターマン)を右上に,」を「マスコット(スターマン)を,左上に」と改め,13行目から14行目にかけての「文字部分に着目したときには,」の次に「本件球団の名称である」を,15行目の「生ずる」の次に「ほか,本件球団の略称である「よこはま」「ディーエヌエー」「ベイスターズ」などの称呼を生ずる」をそれぞれ加える。

(10)  原判決23頁7行目から15行目までを次のとおり改める。

「上記の被告標章5,15及び16から生ずる複数の称呼のうちの一つである「ディーエヌエー」が原告商標の称呼と同一であるものの,他の称呼並びに外観及び観念は全く異なり,類似しないことが明らかであり,出所の誤認混同のおそれはないから,被告標章5,15及び16は,原告商標に類似しているとはいえない。

控訴人は,被告標章5,15及び16のうち「DeNA」の部分を要部として抽出し,同部分だけを原告商標と比較して両者の類否を判断すべきであると主張する。しかし,被告標章5,15及び16は,本件球団のマスコットであるスターマンを中心に,ユニフォーム,文字等と一体にデザインされており,「DeNA」は,「YOKOHAMA DeNA BAYSTARS」の一連のまとまりの一部にすぎない上,当該文字が同標章に占める割合は小さく,「BAYSTARS」の文字が相対的に大きく配置されており,看者の注意は,これらの部分に向けられることに加え,前記3(3)で述べたところからすると,上記主張は採用することができない。」

(11)  原判決24頁12行目(下から5行目)の「生ずる」の次に「ほか,本件球団の略称である「よこはま」「ディーエヌエー」などの称呼を生ずる」を加える。

(12)  原判決25頁3行目の「登録5574567号」を「登録5536436号」と改める。

(13)  原判決25頁9行目から14行目までを次のとおり改める。

「上記の被告標章6,8及び9から生ずる複数の称呼のうちの一つである「ディーエヌエー」が原告商標の称呼と同一であるものの,他の称呼並びに外観及び観念は全く異なり,類似しないことが明らかであり,出所の誤認混同のおそれはないから,被告標章6,8及び9は,原告商標に類似しているとはいえない。

控訴人は,被告標章6,8及び9のうち「DeNA」の部分を要部として抽出し,同部分だけを原告商標と比較して両者の類否を判断すべきであると主張する。しかし,被告標章6,8及び9は,本件球団のマスコットであるスターマンを描くものであり,文字としては,マスコットが着用するユニフォームの胸部に被告標章3と同じ物が記されているにすぎないことに加え,前記3(3)で述べたところからすると,上記主張は採用することができない。」

(14)  原判決25頁15行目冒頭の「7」を「8」と改め,21行目の「被告標章11ないし13は,」の次に「本件球団の名称である」を,22行目の「生ずる」の次に「ほか,本件球団の略称である「よこはま」「ディーエヌエー」「ベイスターズ」などの称呼を生ずる」をそれぞれ加える。

(15)  原判決26頁1行目から6行目までを次のとおり改める。

「上記の被告標章11ないし13から生ずる複数の称呼のうちの一つである「ディーエヌエー」が原告商標の称呼と同一であるものの,他の称呼並びに外観及び観念は全く異なり,類似しないことが明らかであり,出所の誤認混同のおそれはないから,被告標章11ないし13は,原告商標に類似しているとはいえない。

控訴人は,被告標章11ないし13のうち「DeNA」の部分を要部として抽出し,同部分だけを原告商標と比較して両者の類否を判断すべきであると主張する。しかし,被告標章11ないし13のうち「DeNA」の文字は,他の文字と字体・大きさが同じであり,同部分が他と異なる特徴を有するものではないことに加え,前記3(3)で述べたところからすると,上記主張は採用することができない。」

(16)  原判決26頁7行目冒頭の「7」を「9」と改め,14行目の「被告標章14は,」の次に「本件球団の名称である」を,15行目の「生ずる」の次に「ほか,本件球団の略称である「よこはま」「ディーエヌエー」「ベイスターズ」などの称呼を生ずる」をそれぞれ加える。

(17)  原判決26頁20行目から25行目までを次のとおり改める。

「上記の被告標章14から生ずる複数の称呼のうちの一つである「ディーエヌエー」が原告商標の称呼と同一であるものの,他の称呼並びに外観及び観念は全く異なり,類似しないことが明らかであり,出所の誤認混同のおそれはないから,被告標章14は,原告商標に類似しているとはいえない。

控訴人は,被告標章14のうち「DeNA」の部分を要部として抽出し,同部分だけを原告商標と比較して両者の類否を判断すべきであると主張する。しかし,被告標章14の外観上,「DeNA」と「BAYSTARS」の文字はほぼ同じ大きさであり,同部分が他と異なる特徴を有するものではないことに加え,前記3(3)で述べたところからすると,上記主張は採用することができない。」

(18)  原判決26頁26行目冒頭の「8」を「10」と改め,27頁11行目の「生ずる」の次に「ほか,本件球団の略称である「よこはま」「ディーエヌエー」などの称呼を生ずる」を加える。

(19)  原判決27頁16行目から22行目までを次のとおり改める。

「上記の被告標章17から生ずる複数の称呼のうちの一つである「ディーエヌエー」が原告商標の称呼と同一であるものの,他の称呼並びに外観及び観念は全く異なり,類似しないことが明らかであり,出所の誤認混同のおそれはないから,被告標章17は,原告商標に類似しているとはいえない。

控訴人は,被告標章17のうち「DeNA」の部分を要部として抽出し,同部分だけを原告商標と比較して両者の類否を判断すべきであると主張する。しかし,被告標章17は,文字,横線,星が一体としてデザインされており,「DeNA」の文字が同標章に占める割合は小さく,看者の注意は,相対的に大きい「BAYSTARS」の部分に向けられることに加え,前記3(3)で述べたところからすると,上記主張は採用することができない。」

(20)  原判決27頁23行目冒頭の「9」を「11」と,同28頁2行目の「YOKOHAMA」を「Yokohama」と,3行目の「BAYSTARS」を「BayStars」とそれぞれ改める。

(21)  原判決28頁5行目の「被告標章18は,」の次に「本件球団の名称である」を,6行目の「生ずる」の次に「ほか,本件球団の略称である「よこはま」「ディーエヌエー」「ベイスターズ」などの称呼を生ずる」をそれぞれ加える。

(22)  原判決28頁11行目から17行目までを次のとおり改める。

「上記の被告標章18から生ずる複数の称呼のうちの一つである「ディーエヌエー」が原告商標の称呼と同一であるものの,他の称呼並びに外観及び観念は全く異なり,類似しないことが明らかであり,出所の誤認混同のおそれはないから,被告標章18は,原告商標に類似しているとはいえない。

控訴人は,被告標章18のうち「DeNA」の部分を要部として抽出し,同部分だけを原告商標と比較して両者の類否を判断すべきであると主張する。しかし,被告標章18は,三段に分けた文字が同種の字体で構成されており,その中で,「DeNA」の文字は他の字と同じ大きさであり,同部分が他と異なる特徴を有するものではないことに加え,前記3(3)で述べたことからすると,上記主張は採用することができない。」

(23)  原判決28頁の18行目冒頭の「10」を「12」と改め,26行目の「生ずる」の次に「ほか,本件球団の略称である「よこはま」「ディーエヌエー」などの称呼を生ずる」を加える。

(24)  原判決29頁5行目から10行目までを次のとおり改める。

「上記の被告標章19から生ずる複数の称呼のうちの一つである「ディーエヌエー」が原告商標の称呼と同一であるものの,他の称呼並びに外観及び観念は全く異なり,類似しないことが明らかであり,出所の誤認混同のおそれはないから,被告標章19は,原告商標に類似しているとはいえない。

控訴人は,被告標章19のうち「DeNA」の部分を要部として抽出し,同部分だけを原告商標と比較して両者の類否を判断すべきであると主張する。しかし,被告標章19の外観上,「DeNA」の文字が占める割合は小さく,看者の注意は,相対的に大きい「BAYSTARS」の部分に向けられることに加え,前記3(3)で述べたことからすると,上記主張は採用することができない。」

(25)  原判決29頁11行目冒頭の「11」を「13」と,18行目から19行目にかけての「同標章と」を「同標章中の文字と」とそれぞれ改める。

(26)  原判決29頁20行目の末尾の次に,行を改め,次のとおり加える。

「被告標章20と上記英文字は,その位置関係,外観等から,一体として出所識別機能を有する表示として用いられているものと認められる。」

(27)  原判決29頁26行目の「英文字一体でみた場合,」の次に「本件球団の名称である」を,30頁1行目の「生ずる」の次に「ほか,本件球団の略称である「よこはま」「ディーエヌエー」「ベイスターズ」などの称呼を生ずる」をそれぞれ加える。

(28)  原判決30頁6行目から13行目までを次のとおり改める。

「被告標章20は,実際の被告商品(被告商品33)での使用においては,上記英文字と一体となって自他識別機能を有する標章として使用されているから,類否判断に当たっては,上記英文字を含む全体を考察の対象とすべきところ,上記標章全体から生ずる複数の称呼のうちの一つである「ディーエヌエー」が原告商標の称呼と同一であるものの,他の称呼並びに外観及び観念は類似せず,出所の誤認混同のおそれはないから,被告標章20を含む上記標章は,原告商標に類似しているとはいえない。

控訴人は,被告標章20のうち「DeNA」の部分を要部として抽出し,同部分だけを原告商標と比較して両者の類否を判断すべきであると主張する。しかし,被告標章20の外観上,「横浜」と「DeNA」の文字は字体,大きさが同じであり,上記英文字と一体として見た場合,「DeNA」の部分が特に看者の注意を引くものではないことに加え,前記3(3)で述べたことからすると,上記主張は採用することができない。

控訴人は,被控訴人が被告標章20を使用したことを商標権侵害に当たるとして損害賠償請求をしているのに,被告標章20と上記英文字表記を一体として観察して商標権侵害の有無を判断することは処分権主義に反すると主張する。しかし,被告標章20の使用が商標権侵害に当たるか否かを判断するに当たって,被告標章20と一体として使用され,自他識別機能を発揮している英文字表記の存在を考慮しているにすぎず,控訴人が申し立てていない事項を判断したものではないから,何ら処分権主義に反するものではなく,上記主張は失当である。」

2  以上によれば,控訴人の不法行為に基づく損害賠償請求を棄却した原判決は相当であり,本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 小松一雄 裁判官 髙松宏之 裁判官 寺本佳子)

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