大阪高等裁判所 平成26年(行コ)39号 判決 2014年9月18日
主文
1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
第1控訴の趣旨
1 原判決を取り消す。
2 証券取引等監視委員会証券取引特別調査官が控訴人に対し平成22年6月8日付けでした原判決別紙5-1の「品名」欄及びこれに対応する「数量」欄記載の各物件(ただし,別紙5-2の「分割後」欄記載の番号20-①,24-①,26-①,27-①,31-①,33-①,33-②,34-①,40-①,42-①及び43-①の各物件を除いたもの。)に係る領置を取り消す。
第2事案の概要(以下,略称は原判決の例による。)
証券取引等監視委員会(委員会)の証券取引特別調査官は,控訴人に対し,金商法158条(風説の流布,偽計,暴行又は脅迫の禁止)違反の犯則嫌疑事実により,同法に基づく領置処分をした。控訴人は,この領置は,管理者から提出を受けたものではなく,任意性を欠き,専ら別件・余罪の調査を目的とし,犯則嫌疑事実との間に関連性がなく,差押え等の合理的必要性がない物件に対してされたものであり,違憲,違法であるなどと主張して,既に還付を受けた物件を除く物件に対する領置の取消しを求めた。
原審は,控訴人の請求を棄却した。
なお,原審では,同じ犯則嫌疑事実によって差押えを受けたa株式会社(以下「a」という。)及びbが被控訴人に対して提起した差押処分取消請求訴訟が併合され,いずれも請求が棄却されたが,これらの原告らは控訴しなかった。
1 前提事実,争点及び当事者の主張は,以下のとおり補正し,後記2及び3のとおり当審における当事者の主張を付加するほか,原判決「事実及び理由」第2・3,4のとおりである。
(1) 6頁9行目から13行目までを削る。
(2) 7頁22行目から9頁17行目までを削る。
(3) 9頁18行目の「(3)」を「(2)」と,「争点3」を「争点2」と改める。
(4) 9頁18行目以下の「本件各差押等物件」をいずれも「本件領置物件」と改める。
(5) 9頁21行目から10頁16行目までを削る。
(6) 11頁9行目以下の「本件各差押え等」を「本件領置」と改める。
(7) 11頁11行目の「(4)」を「(3)」と,「争点4」を「争点3」と改める。
(8) 11頁19行目及び20行目の「差押え等」を「領置」と改める。
(9) 12頁5行目から11行目までを削る。
(10) 12頁17行目の「(5)」を「(4)」と,同行目から18行目の「争点5」を「争点4」と改める。
(11) 13頁13行目から16行目までを削る。
(12) 13頁17行目の「(6)」を「(5)」と改め,同行目,20行目,23行目及び14頁8行目の「本件差押えA,本件差押えC1及び」をいずれも削り,13頁18行目の「争点6」を「争点5」と改める。
(13) 13頁20行目の「差押え又は」を削る。
(14) 14頁9行目の「本件差押え」から18行目末尾までを削る。
(15) 14頁19行目の「(7)」を「(6)」と,20行目の「争点7」を「争点6」と改める。
(16) 15頁4,5行目の「差押目録及び」をいずれも削る。
(17) 15頁4行目の「いずれも」を削る。
2 控訴人の当審での主張
(1) 本件領置場所への立入り等の違法性
ア 本件領置の前提である,本件領置場所への立入りとそこでの探索行為(以下併せて「本件立入り等」という。)は強制的な捜索に当たり,承諾の有無を問わず,令状がない限り違憲・違法である。金商法にいう「検査」は,犯則嫌疑者等が所持し又は置き去った物件の性質・形状・内容等を分析することをいい,場所への立入りやそこでの探索を含まない。
イ 仮に,本件立入り等が,管理権限を持つ者の任意の承諾によって適法となり得るとしても,cは控訴人の役員等ではなく(aの取締役であるにすぎない。),控訴人の事務所である本件領置場所の管理権限を持たないから,その承諾があっても本件立入り等は適法とならない。cが本件領置場所の鍵を持っていたのは,そこに居住するつもりで平成22年6月から数えて2年くらい前に預かったのがそのままになっていたにすぎず,控訴人は鍵の返還がないことを認識していなかった。この鍵はaの捜索で発見されたものであり,これに沿う報告書(甲D101)は信用できる。反対趣旨のdの原審証言は,cがe事務所で保管していた鍵とa(本件捜索場所A)にある鍵のいずれが本件領置場所の鍵かが明らかでないのに,移動経路から遠くないa事務所に立ち寄って後者の鍵を持ち出すことなく,本件領置場所に赴いたという点で,不合理である。また,cが,本件領置場所に控訴人の関係書類があることを知っていたのは,そこが控訴人の事務所として使用されていることを知っていたからにすぎない。aと控訴人との間の事業上の関係も,cの管理権限の根拠にはならない。なお,控訴人を差出人とする封筒に債務者a,連帯保証人fの金銭消費貸借契約書(乙A24)が入っていたが,これは,連帯保証人を控訴人代表者であるgに変更したため,その新契約の契約書とまとめて保存していたものである。
ウ 本件領置は,強制力を伴う捜索・差押えの影響を排除しないまま実施され,cの承諾を客観的に担保する資料はないから,仮に調査官が任意の調査である旨告げたとしても,cはこれを拒絶できると理解しないまま承諾したというべきであり,任意性は認められない。
(2) 本件領置における提出者
領置目録を交付する相手方は,「領置物件…の所有者若しくは所持者又はこれらの者に代わるべき者」であるから(金商法220条),領置における任意提出者(「犯則嫌疑者若しくは参考人」。同法210条1項)も,物件の所有者又は所持者に限られる。cは,本件領置場所を管理しておらず,本件領置物件を所持していないから,本件領置は同項の要件を満たさない。
(3) 嫌疑事実との関連性等
任意処分である領置にあっても,犯則嫌疑事実との関連性は必要である。また,領置の必要性も求められる。(金商法210条1項,211条1項,222条1項)。領置番号1,3,4,7,11,14,17,25は,明らかに本件犯則嫌疑事実と関連性がなく,領置の必要性もない。
(4) 別件・余罪捜査の目的
領置物件の内容を十分確認しない包括的領置処分がされたこと,本件差押え・領置等に際し,ほとんどの関係者が余罪について質問を受けたことなどから,監視委員会は別件・余罪捜査の目的で本件領置をしたと認められる。
(5) 外部との連絡遮断
aの事務所及びその付属施設での捜索の際,証券取引特別調査官は,hが弁護士を含む外部の者と電話で連絡することを違法に禁止した。そして,本件領置は,本件領置場所の鍵が前記捜索時に発見されたことを契機として実施され,cは前記捜索に居合わせたから,本件領置の際も外部との連絡は禁止されていると認識していた。
(6) 領置目録の記載
本件では,犯罪嫌疑事実と関連性のない資料も領置され,一括して領置目録に記載され,控訴人はその内容を監視委員会で逐一確認する作業を強いられた。領置目録に概括的な記載をすることが認められ得るとしても,このような処理は適正手続の保障に反する。
3 被控訴人の当審での主張
(1) 金商法210条1項にいう「所持」は,犯則嫌疑者等が物件を所持し携行することだけでなく,事務所や住居等で保管することも含み,同項の「検査」(物件の存在及び性質,形状,現象その他の状態を五感の作用によって知覚実験し,認識を得ることである。)をするために,対象物件が,委員会の職員がその状態を認識することができる状況に置かれることが当然に予定されている。そうすると,犯則嫌疑者等が,委員会の職員が事務所や住居等に立ち入ること及び事務所や住居等において委員会の職員に対し物件を提示することについて任意に承諾したときは,同項に基づき,事務所や住居等に立ち入り,犯則嫌疑者等から物件の提示を受け,その検査をすることが許されると解される。
なお,刑事訴訟法上の捜索は強制捜査の方法であるから,これが任意の承諾によって適法とならないとしても,任意の承諾を前提とする上記検査には当てはまらない。
(2) cは,本件領置場所の鍵を保管していたこと,aの取締役であること,本件領置場所に控訴人の関係書類が保管されていてcもこれを認識していたこと,gがaと控訴人の代表者であること,a事務所の捜索で発見された控訴人が差出人である封筒(乙A24)にaの金銭消費貸借契約書が入っていたことから,本件領置場所を管理し,その中に保管されていた関係書類等を管理・占有していたと認められ,このことは,控訴人主張の契約変更の経緯に関わらない。
(3) cが,本件領置場所への立入り等を拒むことができないと考えていたことの裏付けはない。cが本件領置場所の存在及び関係書類の保管の事実を自ら申し出たこと,dがcに任意の検査への協力を依頼し,承諾を得たこと等によれば,cは,本件領置場所への立入り,対象物件の提示及び提出を任意に承諾したと認められる。
(4) 領置物件と犯則嫌疑事実との関連性は必要がなく,本件領置の必要性が明らかにないとまでも認められない。また,本件領置が別件又は余罪調査のためにされたとは認められない。
(5) 証券取引特別調査官が,a事務所の捜索の際,外部との連絡ができる旨明示すべき義務があったという法的根拠は不明である。また,本件領置が外部との連絡を遮断してされたことはない。
(6) 領置物件に関する目録の記載はある程度包括的・概括的であることが許され,本件領置物件に関する目録の記載が金商法220条の趣旨に反するとはいえない。
第3当裁判所の判断
1 当裁判所も控訴人の請求は理由がないと判断する。その理由は,以下のとおり補正し,後記2のとおり控訴人の当審での主張に対する判断を付加するほか,原判決16頁16行目から51頁6行目までのとおりであるから,これを引用する。
(1) 16頁16行目の「2」を「1」と改める。
(2) 16頁25行目の「処分である」の次に「からだ」を加える。
(3) 16頁26行目の「少なくとも,」の次に「反則嫌疑者等(反則嫌疑者又は参考人)であって」を加える。
(4) 17頁9行目の「本件反則嫌疑事実に関し,」の次に「令状に基づき,」を加える。
(5) 19頁19行目から20行目にかけての「さらには,⑤本件差押えAで差し押さえられた差出人を原告iとする封筒」を「⑤控訴人の本店は,平成20年5月7日以降,大阪府東大阪市α×番2号(本件領置場所のあるビルの所在地)であり,他に同ビルに控訴人の本店がある別の部屋が存在するとも認められないから,本件領置場所が本店であったと認められるところ(甲D1),平成22年5月15日には,jグループの会社に属するkから,cに対し,本件領置場所の給湯がつかないのはガスが開通していないからで,部屋にlの案内があれば見てほしい,開通作業の立会は,cが忙しければ前記kが立ち会う旨の連絡がされて(乙D18,19,弁論の全趣旨),cが控訴人の本店の給湯やガス開通の手配に関与するなど,cと控訴人との間には密接な関係があったこと(仮に,前記給湯やガス開通の手配がcの居住のためであったとするなら,cにおいて控訴人の本店に居住する計画があるような親密な関係であることになる。),さらには,⑥本件差押えAで差し押えられた差出人を原告i,受取人をaとする封筒」と改める。
(6) 21頁4行目から13行目までを削る。
(7) 21頁14行目冒頭の「4」から15行目の「各差押等物件」までを「2争点2(本件領置物件の本件犯則嫌疑事実との関連性)及び争点3(本件領置物件」と改める。
(8) 24頁16行目から46頁18行目までを削る。
(9) 46頁19行目の「(6)」を「(2)」と改める。
(10) 46頁21行目の「2(1)」を「1(1)」と改める。
(11) 46頁24行目の「(1)ウ」を「(1)」と改める。
(12) 47頁5行目の「5 争点5(本件各差押え等」を「3 争点4(本件領置」と改める。
(13) 47頁7行目の「本件各差押物件」から11行目の「本件領置についても,」までを削る。
(14) 48頁5行冒頭の「6」から「C1及び」までを「4 争点5(」と改める。
(15) 48頁7行目から25行目の「また,」までを削る。
(16) 49頁1行目から8行目までを削る。
(17) 49頁9行目の「7 争点7(本件各差押等物件」を「5 争点6(本件領置物件」と改める。
(18) 49頁22行目の「甲A2」から「C2,4,」までを「乙」と改める。
(19) 49頁23行目の「本件各差押え等に」から「及び」までを削る。
(20) 49頁24行目の「別紙2-1」から「及び」までを削る。
(21) 49頁25行目の「各」を削る。
(22) 49頁26行目の「差押目録及び」を削る。
(23) 50頁1行目の「別紙2-1」から5行目の「(クリアーケース含む)」,」までを削る。
(24) 50頁13行目の「差押目録及び」を削る。
(25) 50頁14行目の「「総務部金庫」」から17行目の「といった」までを「「リビング」という」と改める。
(26) 50頁18行目の「本件」から19行目の「及び」までを「本件領置物件の内容等は,」と改める。
(27) 50頁19行目の「前記4」を「前記2」と改める。
(28) 50頁20行目の「差押目録及び」を削り,「本件各差押等物件」を「本件領置物件」と改める。
(29) 50頁24行目の「4(1)イ」を「2(1)イ」と改める。
2 控訴人の当審での主張について
(1) 本件立入り等の適法性について
ア 補正の上引用した原判決の判示のとおり,証券取引特別調査官は,本件領置の際,本件立入り等について本件領置場所を管理していたcの承諾を得たのであるから,これが強制的な捜索に当たり,令状なしに実施されたもので違憲・違法であるということはできない。なお,金商法210条にいう「検査」は,犯則嫌疑者等が所持し又は置き去った物件の性質・形状・内容等を分析することをいい,場所への立入りやそこでの探索を含まないと解されるが,本件のような態様での立入りは,管理者の承諾があれば,領置に付随するものとして許されると解される。
イ 補正の上引用した原判決の判示のとおり,cは控訴人の役員や従業員ではないが,控訴人と代表者を同じくするaの取締役(社長とされていた。乙A21,28)であり,本件領置場所の鍵を保管し,同場所に控訴人の関係書類が保管されていることを知っていたほか,本件差押えAで差し押さえられた封筒(乙A24)に,控訴人が差出人と記載され,かつ,aを債務者とする金銭消費貸借契約書が在中していたことに鑑みると,cは,本件領置場所(東大阪マンション住戸)を管理し,そこで保管されていた書類等を所持(管理・占有)していたと推認することができる。控訴人は,cが本件領置場所に居住するつもりで平成20年6月ころ(平成22年6月から数えて2年くらい前)に鍵を預かったのがそのままになっていたなどと主張するが,このことを認めるに足りる証拠はなく(甲D101中控訴人主張に沿う部分は,反対尋問を経ない伝聞証拠であり,基礎となる資料も明らかでなく,聴取したとされる時期(平成22年6月)から報告書作成(平成24年12月)まで2年以上が経過していることなどに照らし,にわかに採用できない。),控訴人が主張する居住の計画があった時期から本件領置まで約2年が経過していること,本件領置当時,本件領置場所は,がらんとして数十個の段ボールが置いてあるだけの状態であって(d証言),控訴人の業務遂行などの事実がうかがえないこと,それなのに前記居住の計画のあったという平成20年の翌年であって,居住の計画は既になくなっていると思われる平成21年のcのスケジュール帳には,本件領置場所の住所が,短縮電話のかけ方や携帯電話関係のIDなどとともに備忘録のような状態で記載されており(乙D21),この時点でもcは本件領置場所との関係を持っていたことがうかがえること,及び反対趣旨(cは,本件領置場所について,mの関係書類を預かっている,倉庫代わりに使っている部屋がある,控訴人の引越しのときに書類を一時的に保管した旨述べた等)の原審証人dの証言などに照らし,採用できない。なお,控訴人は,前記封筒に入っていた債務者aの金銭消費貸借契約書は,連帯保証人を控訴人代表者であるgに変更した新契約の契約書とまとめて保存していたものであると主張するが,そうだとしても,前記封筒自体控訴人からa宛のものであるうえ,平成19年に,aと本店所在地を同一にしてnが設立されたこと,aにおいてnの下にaが就くという組織が検討されたこと,nと控訴人との間には仮払金のやりとりがあること(甲共2,乙A1,乙A7,乙A13,乙A16)も併せれば,控訴人とaとの事業上の関係を示唆する一事情ということができる。
ウ 控訴人は,本件領置は強制力を伴う捜索・差押えの影響を排除しないまま実施されたと主張するが,何をもって影響の排除というのか明らかでなく,採用することができない。補正の上引用した原判決の判示のとおり,本件領置は,e事務所捜索の際のcの発言を契機とするものであり,証券取引特別調査官はcに,捜索・差押えとは別個の手続として,任意処分としての領置への承諾を求めたのであるし,a取締役を務めるcが,任意の調査である旨の告知を受けてなお,これを拒絶できると理解しなかったとは認め難い。
(2) 領置における提出者について
cが本件領置場所を管理し,本件領置物件を所持(管理・占有)していたと推認すべきであり,本件証拠上,本件領置場所での控訴人の業務遂行などの事実がうかがえないことは,補正の上引用した原判決判示及び前記(1)のとおりである。
(3) 嫌疑事実との関連性等について
領置にあって犯則嫌疑事実との関連性は必要ないと解すべきことは,補正の上引用した原判決判示のとおりである。
控訴人は,領置番号1(0466-36-0123と書き出しの書面等・1箱),3(雇用契約書等・1箱),4(oと書き出しの書面(クリアファイル入り)等・1箱),7(社員名簿pと書き出しの書面等・1箱),11(q出店契約書等・1箱),14(平成16年度都民税の均等割申告書(写)等・1箱),17(現在の経営状態と書き出しの書類等・1箱),25(土地,建物賃貸借契約書(写)等・1箱)の各物件(乙D1)について,明らかに領置の必要性がないとも主張するが,必要性がないことの具体的根拠の主張立証はなく,採用できない。
(4) 別件・余罪捜査の目的について
本件領置が専ら別件・余罪捜査の目的でされたと認められないことは,補正の上引用した原判決判示のとおりである。
控訴人は,領置物件の内容を十分確認しない包括的領置処分がされたと主張するが,仮にそのような事実があったとしても,前記(3)のとおり,領置にあって犯則嫌疑事実との関連性は必要とされないことも考慮すれば,直ちに別件・余罪捜査の目的が認められるわけではない。控訴人はまた,本件差押え・領置等に際し,ほとんどの関係者が余罪について質問を受けた旨主張するが,仮にそのような事実があったとしても,本件領置が本件犯則嫌疑事実に関する調査としてされたことと矛盾するわけではない。
(5) 外部との連絡遮断について
証券取引特別調査官が,本件領置の際,cに対し,外部と連絡しないよう要請した事実が認められないことは,補正の上引用した原判決判示のとおりである。控訴人は,調査官が,a(本件捜索場所A)等での捜索の際,hに対し外部の者との電話連絡を禁止したことを前提に,この捜索に居合わせたcも,本件領置の際外部との連絡が禁止されていると認識していた旨主張するが,このような事実を認めるに足りる証拠はない(甲D101にもそのような記載はない。)。また,甲A10によれば,rは,本件捜索場所Aでの捜索中に,パソコンとハードディスクを買うため外出したことが認められ,その間外部者と電話等で連絡を取ることは容易だったと推認できるから,同捜索において証券取引特別調査官が外部との連絡を禁止したとは考えられない。
(6) 領置目録の記載について
本件領置における領置目録の記載が違法といえないことは,補正の上引用した原判決判示のとおりである。
控訴人は,犯罪嫌疑事実と関連性のない資料も領置され,一括して領置目録に記載されたと主張するが,領置において関連性の有無を問う必要がないことは,前記(3)のとおりである。
第4結論
よって,控訴人の請求を棄却した原判決は相当であり,本件控訴は理由がないから,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 山田知司 裁判官 久保田浩史 裁判官 新谷祐子)