大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

大阪高等裁判所 平成27年(ラ)241号 決定 2015年4月22日

抗告人

Y

相手方

X

未成年者(長女)

A

未成年者(二女)

B

主文

1  原審判を次のとおり変更する。

2  抗告人は,相手方に対し,○万円を支払え。

3  抗告人は,相手方に対し,平成27年4月から,未成年者Cが満22歳に達する年の翌年の3月まで月額3万円を毎月末日限り支払え。

4  抗告人は,相手方に対し,平成27年4月から,未成年者Dが満20歳に達する日の属する月まで,月額2万1000円を毎月末日限り支払え。

5  手続費用は,第一,二審を通じ各自の負担とする。

理由

第1  抗告の趣旨及び理由

別紙のとおり

第2  当裁判所の判断

1  当裁判所は,抗告人が相手方に支払うべき養育費を,未成年者C(長女)については,月額3万円を同人が満22歳に達する年の翌年の3月まで,未成年者D(二女)については,月額2万1000円を満20歳に達する日の属する月までとするのが相当であると判断する。その理由は,次のとおり補正するほかは,原審判の理由説示のとおりであるから,これを引用する。

(1)原審判2頁15行目の「現在」から同16行目の末尾までを「平成26年3月に私立高等学校を卒業後,同年4月に私立大学に進学した。なお,長女の高等学校の学費等は主に奨学金で賄われた。」に改める。

(2)同3頁23行目の「長女の」から同24行目の「覚えはない」までを「長女が将来国立大学に進学するというので,公立高校に比べて学費の高い私立高校への進学を了承したのであり,私立大学への進学を了承したことはない」に改める。

(3)同5頁18行目から同25行目までを次のとおり改める。

「 確かに,長女の私立大学進学を前提とした学費の負担について抗告人が負担を了承していたと認めるに足りる的確な資料はない。しかし,抗告人の上記主張によっても,長女が高等学校に進学する際に,抗告人も長女が国立大学に進学することを視野に入れていたと認められるのであるから,国立大学の学費標準額及び通学費用分については抗告人も応分の負担をするものとして養育費の額を算定するのが相当である。

この点,抗告人は,大学の学費等の負担について,当事者間に具体的な合意といえるものはないこと,長女の進学に対する承諾は,奨学金等の利用により抗告人の負担を伴わない前提での承諾であったこと,離婚時長女の私立高校の学費は大学の学費と同程度かかっていたが,養育費は長女及び二女につきそれぞれ月額2万円とすることを当事者双方が了解しており,長女の大学進学の前後を通じて相手方から抗告人に対する養育費の増額の請求はなかったこと,本件手続(先行する調停手続を含む)においても大学学費等を別個の費用として請求していないことなどからすると,抗告人が長女の大学進学に伴う費用を負担する前提で養育費の分担額を算定するのは相当ではない旨主張する。

しかし,当事者間で,抗告人が経済的な負担をしない前提で長女の大学進学の話がされていたこと及び長女及び二女の養育費をそれぞれ月額2万円とすることを当事者双方が了解していた旨の抗告人の主張については,相手方はこれを否定しており,抗告人の上記主張を認めるに足りる的確な資料はない(なお,長女の高等学校の学費等は主に奨学金で賄われたことは認められるが,相手方は,抗告人が応分の負担をしない結果,奨学金を利用した旨述べており,奨学金を利用した事実が前記判断を左右するものではない。)。また,相手方は,長女が大学に進学した平成26年4月の×か月後である同年×月×日には本件に先行する調停を申し立て(記録上明らかな事実),その後の手続では,長女の大学の学費等の負担を考慮して養育費を算定すべきである旨主張しているのであって,相手方が長女の大学の費用について抗告人に分担を求めない意向であったと認めることはできない。

したがって,抗告人の上記主張はいずれも採用することができない。

イ(ア)長女の学費は85万円程度であるが,国立大学の学費の標準額は,国立大学等の授業料その他の費用に関する省令で年53万5800円と定められていることから,長女の学費としては53万5800円として,抗告人が負担すべき養育費の分担額を算定する。」

(4)同6頁4行目から同9行目までを次のとおり改める。

「ウ 上記イによれば,長女の大学の学費等は年額66万5800円(53万5800円+13万円)となるところ,標準的算定表では基礎収入の算定において公立高校を前提とする標準的学習費用として年33万3844円を要するものとして予め考慮されていることからすると,標準的算定表の試算額を超える長女の学費等は33万1956円(66万5800円-33万3844円)となる。そして,当事者双方の収入等からすると,仮に,当事者双方が離婚していなかったとしても,当事者双方の収入で長女の学費等の全額を賄うのは困難であり,長女自身においても,奨学金を受けあるいはアルバイトをするなどして学費等の一部を負担せざるを得なかったであろうことが推認されることなどからすれば,上記超過額のうち,抗告人が負担すべきものは,その3分の1とするのが相当である。したがって,抗告人が負担すべき長女の学費等は年間11万0652円(33万1956円×1/3)となり,1か月当たり9000円(1000円未満切捨て)となる。」

(5)同6頁19行目から同7頁4行目までを次のとおり改める。

「(3)以上によれば,抗告人は,長女の養育費として月額3万円(2万1000円+9000円)を,二女の養育費として月額2万1000円をそれぞれ負担すべきである。」

(6)同7頁21行目の「満22歳に達する月までとし」を「大学を卒業する見込みの満22歳に達する年の翌年の3月までとし」に改める。

(7)同8頁1行目の「上記のとおり」から同2行目の「同月以降」までを「したがって,抗告人は,相手方に対し,平成26年×月から平成27年3月までの長女及び二女の養育費として○万円((3万円+2万1000円)×△)を直ちに,同年4月以降,長女については満22歳に達する年の翌年の3月まで毎月末日限り3万円を,二女については満20歳に達する日の属する月まで毎月末日限り2万1000円を支払わなければならない。なお,平成26年×月以降」に改める

2  抗告理由については,原審判を補正の上引用して認定説示したとおりであり,上記判断と抵触する限度で理由がない。

3  よって,上記判断に抵触する限度で原審判を変更することとし,主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 金子順一 裁判官 田中義則 裁判官 渡辺真理)

別紙<省略>

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例