大阪高等裁判所 平成3年(ネ)1307号 判決 1991年10月31日
控訴人
沖野敏男
被控訴人
国
右代表者法務大臣
左藤恵
被控訴人
兵庫県
右代表者知事
貝原俊民
右両名指定代理人
田中素子
同
北村博昭
被控訴人国指定代理人
中筋孝二
同
福本裕次
被控訴人兵庫県指定代理人
西村信行
同
嶋津良純
主文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
事実
一 控訴人は、「原判決を取消す。被控訴人らは控訴人に対し、連帯して、金九〇〇万円及びこれに対する昭和六一年一〇月一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。控訴費用は第一、二審とも被控訴人らの負担とする。」との判決を求め、被控訴人らは主文同旨の判決を求めた。
二 当事者双方の主張は、次のとおり当審における主張を付加するほかは、原判決の事実摘示のとおりであるから、これを引用する。
(当審における控訴人の主張)
原判決は、原審において表れた判決に影響を及ぼす重要な事実を摘示していないなど、その手続が民事訴訟法第一九一条第一項、第二項、第一二五条第二項、第一二七条第一項、第一四〇条、第一八五条、第二五七条等の規定に違反しているうえ、事実を誤認して誤った判断をしているから、いずれにしても同法第三八六条、第三八七条によりこれを取消すべきである。
三 証拠関係は、原審訴訟記録中の書証目録及び証人等目録に各記載のとおりであるから、これを引用する(略)。
理由
一 当裁判所も、控訴人の被控訴人らに対する本訴請求は理由がないのでこれを棄却すべきものと考える。その理由は、次のとおり訂正・付加する外は、原判決理由説示のとおりであるから、これを引用する。
(原判決の訂正)
1 原判決六枚目表二行目の「甲一」(本誌五九一号<以下同じ>16頁1段18行目の(証拠略))を「書き込み部分以外の成立に争いのない甲第一号証〔以下『甲一』と表記し、他の書証についても同様に表記する。また、以下において、特に説示する外は成立(書き込み部分がある場合は、書き込み部分以外の部分の成立)に争いがなく、写しである場合には原本の存在と成立に争いがない。〕」と改める。
2 同七枚目裏七行目の「六ないし八」(16頁3段20行目の(証拠略))を「六、七、乙一一の記載によって成立を認める乙八」と、同八枚目表七行目の「認めたのであり、」(16頁4段6行目)を「認めた。そして、」と改める。
3 同一三枚目表七行目の「主張するが、」(18頁2段12行目)を「主張し、乙一四の記載及び控訴人本人の供述中には右主張に副う部分があるが、」と、同八行目の「認定したとおりであり、」(18頁2段14行目)を「認定したとおりであって、右記載及び供述は憶測の域を出るものではなく、」と、それぞれ改め、同一四枚目表三行目の「あったので、」(18頁3段15行目)の次に「従前からの慣例に従って、」を加える。
(当審における控訴人の主張について)
1 控訴人は、原判決は、原審において表れた判決に影響を及ぼす重要な事実を摘示していないなど、その手続が民事訴訟法の諸規定に違反している旨主張する。
ところで、判決には「事実及争点」を記載することを要するが(民事訴訟法第一九一条第一項第二号)、「事実及争点ノ記載ハ口頭弁論ニ於ケル当事者ノ陳述ニ基キ要領ヲ摘示シテ之ヲ為スコトヲ要ス」(同条第二項)のであるから、判決においては、口頭弁論に表れた当事者の主張をそのまま記載するのではなく、主要事実を論理的に整序して摘示すべきところ、原判決の事実摘示は、右趣旨に従って当事者の主張を論理的に整序して正確に摘示しており、本件記録を検討しても、主要事実の摘示の欠落や誤りは認められない。
控訴人は、原審の手続が民事訴訟法第一四〇条、第一八五条、第二五七条等の規定に違反している旨主張して当事者間に争いのない事実を事実摘示において欠落させている旨主張するようであるが、擬制自白の対象となるのは主要事実であるから、それ以外の事実について当事者間に争いがないとしても、これを事実摘示に記載する必要はないところ、原判決の事実摘示において主要事実の摘示に欠落がなく、誤りがないことは前記のとおりである。したがって、当裁判所も、原判決の事実摘示のとおり当事者の主張を整理するのが相当と考える。
そして、本件記録を検討しても、原判決には釈明義務の違反等控訴人主張の他の訴訟手続の違反は認められないから、控訴人の右主張は到底採用できない。
2 次に、控訴人は、原判決は事実を誤認して誤った判断を行っている旨主張するけれども、前記のとおり原判決の認定判断は相当であるから、控訴人の右主張は到底採用できない。
してみれば、原判決は相当であって、本件控訴は理由がないからこれを棄却し、控訴費用の負担につき民事訴訟法第九五条、第八九条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 篠原幾馬 裁判官 寺﨑次郎 裁判官 永松健幹)