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大阪高等裁判所 平成3年(ネ)491号 判決 1992年9月04日

控訴人

大田博一

右訴訟代理人弁護士

大深忠延

被控訴人

右代表者法務大臣

田原隆

右指定代理人

手﨑政人

久木田利光

佐藤暉二

平山謙祐

池田義彦

主文

一  本件控訴を棄却する。

二  控訴人が当審において選択的に追加した国家公務員災害補償法一〇条、一一条五号に基づく入院中の付添看護費用の補償請求を棄却する。

三  控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

第一当事者の申立て

一  控訴人

1  原判決を取り消す。

2  被控訴人は控訴人に対し、三八九〇万九八三五円及び内金三五四〇万九八三五円に対する昭和五七年八月一七日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

(なお、控訴人の請求は、原審においては国家賠償法一条一項に基づく損害賠償請求のみであったが、右金額のうち入院中の付添看護費用五四四万六〇〇〇円〔及び右同様の遅延損害金〕については、当審において、選択的に、国家公務員災害補償法一〇条、一一条五号に基づく補償請求を追加した。)

3  訴訟費用は、第一、第二審を通じ被控訴人の負担とする。

4  仮執行の宣言

二  被控訴人

主文同旨

(なお、控訴人の請求が認容され仮執行の宣言が付される場合は、担保を条件とする仮執行免脱の宣言)

第二当事者の主張

当事者の主張は、次の一及び二のとおり付加訂正するほか、原判決事実摘示第二記載のとおりであるから、これを引用する。

一  原判決二枚目表一〇行目の「二七日」(本誌五八一号<以下同じ>6頁下段19~20行目)の次に「午後五時過、勤務を終えて帰宅する際」を加え、四枚目裏一二行目(7頁4段20~21行目)及び五枚目表一行目の(7頁4段24行目)の「一八日間」をいずれも「一八〇日間」に改める。

二  原判決五枚目裏一行目の「五七九万八三三五」(8頁1段1行目)を「五九七万八三三五円」に、八行目冒頭の「6」(8頁1段29行目)を「5」に、一一行目の「支払いを求める。」(8頁2段5行目)を「支払いを求め、更に、右金額のうち入院中の付添看護費用五四四万六〇〇〇円(及び右同様の遅延損害金)については、選択的に、国家公務員災害補償法一〇条、一一条五号に基づく補償請求としてもその支払いを求める。」に各改め、七枚目裏六行目(8頁4段30行目)の次に改行して次のとおり加える。

「7 控訴人は、入院中の付添看護費用につき選択的に国家公務員災害補償法一〇条、一一条五号に基づく補償請求を追加しているが、同法に基づく補償給付は法定されており、一体として給付されることになっていて、その一部のみを支給することは法律上認められていないから、右選択的併合にかかる請求は失当である。」

第三証拠関係

原審記録中の書証目録及び証人等目録並びに当審記録中の書証目録記載のとおりであるから、これを引用する(略)。

理由

一  当裁判所は、控訴人の被控訴人に対する国家賠償法一条一項に基づく損害賠償請求については、原判決同様理由がないと判断するものであり、入院中の付添看護費用について、控訴人が当審において選択的に追加した国家公務員災害補償法一〇条、一一条五号に基づく補償請求も理由がないと判断するものであるが、その理由は、次の1ないし5のとおり付加訂正するほか、原判決の理由第一項ないし第三項説示のとおりであるから、これを引用する。

1  原判決八枚目裏九行目の「第三七号証の一ないし一〇」(9頁2段10行目の(証拠略))の次に、「、第三八ないし第四二号証」を加え、一〇行目の「乙第五ないし第七号証」(9頁2段10行目の(証拠略))を「乙第五、第六号証」に改め、九枚目表一行目冒頭(9頁2段13行目の、「この認定~」)に「甲第四三、第四四号証を含め」を加える。

2  原判決一一枚目表一一ないし一二行目の「同年九月一五日及び一〇月一〇日の祝日にも出勤した。」(10頁2段10~12行目)を「同年九月一五日(月)の祝日にも出勤した(なお、一〇月一〇日(金)の祝日も出勤した。)」に、末行の「休日(合計六日)」(10頁2段13行目)を「九月一四日(日)、二一日(日)、二四日(水、祝日)、二八日(日)、一〇月四日(土)、五日(日)」に、同裏三ないし四行目の「出張」を「出発」に各改める。

3  原判決一二枚目表二行目の「受けた。」(10頁3段11行目)を「受けたが、昭和四九年四月一八日に行われた定期健康診断の結果では、右高血圧症等の指摘はなく、健康管理指導区分の指定を受けなかった。」に、同行の「昭和四九年」(10頁3段11~12行目)を「同年」に、同裏五行目の「早朝から」(10頁4段11~12行目)を「夜明け前(午前三時ころ)に車で大阪を出発し二時間半ほどかけて」に、六行目の「の釣り船に乗って」(10頁4段14行目)を「まで出かけ、夜明けから午前中いっぱい釣り船に乗って」に各改め、一三枚目裏二行目の「継続している」(11頁1段26行目)の次に「(昭和五四年一二月一日から四時間勤務として復職)」を加える。

4  原判決一四枚目裏六ないし七行目の「早朝から出かけて」(11頁3段21~22行目)を「夜明け前から出かけて夜明けから午前中いっぱい」に改め、一一行目の「予約していたこと」(11頁3段30行目)の次に「(海釣りは、控訴人の趣味であり、気分転換して疲れを癒すためにするものであるとしても、疲労困憊の状態にあったのであれば、ひたすら休息をとりたいはずで、夜明け前に車で大阪を出発して遠方に出かけるような気にはならないはずであり、しかも、その海釣りを約一か月の間に三回も計画していた。)」を加える。

5  原判決一五枚目表七行目(11頁4段19行目)の次に改行して次のとおり加える。

「 前掲甲第一号証の一枚目は、控訴人の昭和五四年四月二日付公務災害認定申請書を取り次いだ総括課長から人事課長宛の『公務災害の認定申請について』と題する事務連絡文書であり、これには、『現在休職中の控訴人については、脊髄出血により療養加療中であるが、別添申請書のとおり公務による災害と認められるので、本省及び関係機関へ認定手続方よろしく配慮願う。』旨記載されていることが認められるが、証人原和夫の証言によれば、この記載は、本件事故の後、昭和五三年七月一日付で近畿財務局管財部部長に就任した原和夫が、同年一二月に控訴人を自宅に見舞った際、控訴人から公務災害認定申請の手続をとってくれるよう強く頼まれたため、もう既に三年も経過していることもあって唐突な感じを受け、相当因果関係があるのかどうか疑わしいと述べたものの、控訴人の病状に同情して、うまく行くかどうか分からないが努力してみようと答え、本件の公務上・公務外の認定は非常に難しい問題であるので専門家の判断を仰ぐしかないが、できれば公務災害として認定してやってほしいとの考えのもとに、部下の総括課長に対し控訴人のために公務災害認定申請の手続をとるよう指示した結果によるものであることが認められるから、右記載は何ら前記判断を左右するものではない。また、成立に争いのない甲第四号証は、証人大植春樹の証言によれば、控訴人の大手前病院入院当初から昭和五一年四月まで主治医であった医師大植春樹が、昭和五四年五月七日に控訴人の求めに応じて作成した意見書であり、これには、『当時の本人の身体状況及び指導区分より考え、過度の勤務状態が脊髄出血の誘因と考えられる転落及び腰部打撲を引き起こしたと十分考えられる。』旨記載されていることが認められ、右証言中にもこれにそう部分があるが、右証言によれば、これらの記載及び証言部分の判断の前提資料である本件事故当時の控訴人の勤務状況ないし疲労状態については、控訴人が同証人に述べたところに基づいて把握したものと認められ、前記1において詳細認定した勤務状況ないし疲労状態を前提資料としたものとは認められないから、前提を異にし、やはり前記判断を左右するに足りない。

3 してみれば、控訴人の被控訴人に対する国家賠償法一条一項に基づく損害賠償請求は、その余の点について判断するまでもなく、理由のないことが明らかである。

そして、右のように本件事故の発生と本件業務との間に相当因果関係が認められない以上、本件事故が公務上のものであるということはできないから、入院中の付添看護費用についての国家公務員災害補償法一〇条、一一条五号に基づく補償請求もまた、その余の点について判断するまでもなく、理由のないことが明らかである。」

二  よって、控訴人の被控訴人に対する国家賠償法一条一項に基づく損害賠償請求を棄却した原判決は相当であって、本件控訴は理由がないからこれを棄却し、控訴人が当審において選択的に追加した国家公務員災害補償法一〇条、一一条五号に基づく入院中の付添看護費用の補償請求を棄却することとし、控訴費用の負担につき民訴法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 潮久郎 裁判官 山崎杲 裁判官 水野武)

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