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大阪高等裁判所 平成4年(ネ)1789号 判決 1994年2月04日

兵庫県西宮市石刎町三番三号パイン苦楽園三階

控訴人

ツキタ興業株式会社

右代表者代表取締役

月田昌秀

右訴訟代理人弁護士

長池勇

神戸市中央区布引町一丁目一番五号

被控訴人

株式会社本家かまどや

右代表者代表取締役

金原弘周

右訴訟代理人弁護士

武田雄三

主文

一  本件控訴を棄却する。

二  控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

第一  当事者の申立

控訴人は、「原判決中、控訴人関係部分を取り消す。被控訴人の控訴人に対する請求を棄却する。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴人は、主文同旨の判決を求めた。

第二  当事者の主張

当事者の主張は、次のとおり付加、訂正するほかは、原判決事実摘示のうち、控訴人に関係する部分のとおりであるから、これを引用する。

一  原判決五枚目表七行目冒頭から同六枚目裏初行末尾までを削除し、同二行目の「6」を「4」と、同五行目の「7」を「5」と、同一一行目の「8」を「6」と、同七枚目表二行目の「9」を「7」とそれぞれ改める。

二  同六枚目裏六行目の「前記4(四)の未払実施料三五四万六五八九円」を「右三店舗についての未払実施料の合計金三五四万六五八九円〔その内訳は、東大島店については昭和六一年七月分の残金四万九九二二円及び同年八月分から昭和六三年一一月分までの金一四〇万円(月額金五万円の二八か月分)の合計金一四四万九九二二円、新伊丹店については昭和六二年四月分の残金四万六六六七円及び同年五月分から昭和六三年一二月分までの金一〇〇万円(月額金五万円の二〇か月分)の合計金一〇四万六六六七円、苦楽園店については昭和六二年五月分から平成元年一月分までの合計金一〇五万円(月額金五万円の二一か月分)〕」と、同八行目から九行目にかけての「右期間の経過をもって」を「控訴人が右期間内に右金員を支払わなかったときは」と、同七枚目表四行目の「6」を「4」とそれぞれ改める。

三  同七枚目裏五行目冒頭から同九行目末尾までを次のとおり改める。

「4 同4の事実は否認し、同5の事実は認め、同6の事実は否認する。」

四  同七枚目裏一一行目冒頭から同八枚目表四行目末尾までを次のとおり改め、同五行目の「3」を「2」と、同末行の「4」を「3」と改める。

「1(合意解除)

東大島店及び新伊丹店の経営状態が悪かったので、昭和六三年に入ってから控訴人が右各店舗の売却先を探していたところ、同年一〇月初旬、訴外松本博一(以下「訴外松本」という)が新伊丹店について、同年一一月下旬訴外有限会社ファーストフード・ホンダ(以下「訴外会社」という)が東大島店についてそれぞれ買受けの申込をしてきた。控訴人は、被控訴人から、控訴人が各店舗を譲渡した場合、譲受人との間でチェーン加盟契約を締結するとの確約を得た上、同年一〇月三一日訴外松本との間で新伊丹店の、同年一二月一九日訴外会社との間で東大島店の各譲渡契約を締結した。控訴人代表者は右各契約締結後、直ちに被控訴人代表者に対して右締結の事実を通知し、併せて東大島店及び新伊丹店に関する本件加盟契約をいずれも解除する旨合意した。なお、右各同日、被控訴人と各譲受人との間で各チェーン店加盟契約が締結されている。」

五  同八枚目裏九行目冒頭から同一二行目末尾までを次のとおり改める。

「4(実施料の一部弁済)

(一)  控訴人は被控訴人に対し、昭和六三年四月一八日に金一五万〇〇七八円、同年五月一七日に金一五万円、同年九月二〇日に金一五万円、同年一〇月一八日に金一五万五〇〇〇円(以上の合計金六〇万五〇七八円)を支払った。

(二)  右各支払いの際、控訴人は被控訴人に対し、右各金員を苦楽園店の未払実施料のうち旧い月の分から順に充当する旨指定した。」

六  同九枚目表初行冒頭から同二行目末尾までを

「1 抗弁1のうち、控訴人が主張の日時ころに東大島店及び新伊丹店を売却したこと及び被控訴人が右両店の譲受人との間でチェーン加盟契約を締結したことは認めるが、その余の事実は否認する。

2 同2の(一)(二)の各事実は否認する。」と、同三行目の「4」を「3」と、同六行目全部を「4 抗弁4の(一)の事実は認め、同(二)の事実は否認する。」とそれぞれ改める。

七  同九枚目表七行目冒頭から同裏九行目末尾までを次のとおり改める。

「五 再抗弁(一部弁済の抗弁に対し-弁済受領者の充当指定)

1  東大島店の未払実施料について

控訴人は、昭和六一年六月末において金七〇万円を滞納していた。控訴人がその後金七〇万〇〇七八円を支払った(その内訳は、(1)昭和六三年二月一七日までに金四五万円、(2)同年四月一八日に金五万〇〇七八円、(3)同年五月一七日に金五万円、(4)同年九月二〇日に金五万円、(5)同年一〇月一八日に金五万円、(6)同年一一月二二日に金五万円)ので、被控訴人は、右金員を、昭和六一年六月分までの滞納金七〇万円全額と同年七月分の実施料の内金に充当した。よって控訴人の東大島店の未払実施料は金一四四万九九二二円〔昭和六一年七月分の残金四万九九二二円及び同年八月分から昭和六三年一一月分までの金一四〇万円(月額金五万円の二八か月分)の合計額〕となったのである。

2  新伊丹店の未払実施料について

控訴人は、昭和六二年三月末において金七〇万円を滞納していた。控訴人がその後金七〇万三三三三円を支払った(その内訳は、(1)昭和六三年二月一七日までに金四〇万円、(2)同年四月一八日に金五万円、(3)同年五月一七日に金五万円、(4)同年九月二〇日に金五万円、(5)同年一〇月一八日に金五万五〇〇〇円、(6)同年一二月一六日に金四万八三三三円、(7)平成元年一月八日に金五万円)ので、被控訴人は、右金員を、昭和六二年三月分までの滞納金七〇万円全額と同年四月分の内金三三三三円に充当した。よって控訴人の新伊丹店の未払実施料は金一〇四万六六六七円〔昭和六二年四月分の残金四万六六六七円及び同年五月分から昭和六三年一二月分までの金一〇〇万円(月額金五万円の二〇か月分)の合計額〕となったのである。

3  苦楽園店の未払実施料について

控訴人は、昭和六二年四月末において金七五万円を滞納していた。控訴人はその後金七五万円を支払った(その内訳は、(1)昭和六三年二月一七日までに金四五万円、(2)同年四月一八日に金五万円、(3)同年五月一七日に金五万円、(4)同年九月二〇日に金五万円、(5)同年一〇月一八日に金五万円、(6)同年一一月二二日に金五万円、(7)同年一二月一九日に金五万円)ので、被控訴人は、右金員を、昭和六二年四月分までの滞納金七五万円に充当した。よって控訴人の苦楽園店の未払実施料は金一〇五万円〔昭和六二年五月分から平成元年一月分まで月額金五万円の二一か月分〕となったのである。」

4  被控訴人は、抗弁4の(一)の各弁済金の受領の際、控訴人に対し、右各弁済金を次のとおり充当する旨指定した。

(一) 昭和六三年四月一八日受領の金一五万〇〇七八円

1の(2)の金五万〇〇七八円、2の(2)の金五万円及び3の(2)の金五万円

(二) 同年五月一七日受領の金一五万円

1の(3)の金五万円、2の(3)の金五万円及び3の(3)の金五万円

(三) 同年九月二〇日受領の金一五万円

1の(4)の金五万円、2の(4)の金五万円及び3の(4)の金五万円

(四) 同年一〇月一八日受領の金一五万五〇〇〇円

1の(5)の金五万円、2の(5)の金五万五〇〇〇円及び3の(5)の金五万円

六  再抗弁に対する認否

否認する。」

第三  証拠

原審及び当審訴訟記録中の各証拠関係目録に記載のとおりであるから、これを引用する。

理由

一  本件加盟契約の成立-請求原因1ないし3-について

請求原因1ないし3についての判断は、次のとおり付加、訂正するほかは、原判決理由説示のうち、第一の一の1ないし3(原判決一二枚目表六行目冒頭から同一三枚目裏八行目末尾まで)記載のとおりであるから、これを引用する。

1  原判決一二枚目裏四行目冒頭に「証人田中義緒の証言及び弁論の全趣旨によると、控訴人と被控訴人間で、苦楽園店について、請求原因3の(五)の(1)のとおり、控訴人の債務不履行により契約が解除されたときは、控訴人は被控訴人に実施料六〇か月分に相当する金員を損害賠償として支払う旨の合意がなされ、後日右金額を実施料三〇か月分に変更する旨の合意がなされたことが認められる。これに対し、控訴人代表者は右合意を否定する趣旨の供述をするが、」を加え、同五行目の「よれば」を「右争いのない事実を総合すると」と改める。

2  同一三枚目表七行目冒頭から同裏八行目末尾までを「、東大島店及び新伊丹店については、その後損害賠償金の金額を実施料三〇か月分に減額する旨の合意がなされたこと(当事者間に争いがない)等の事実が認められ、右事実によれば、苦楽園店についても、他の店と同様の合意がなされたと認めるのが自然であるから、控訴人代表者の右供述によるも前記認定を左右するに足りず、他に右認定を左右するに足る証拠はない。」と改める。

二  被控訴人の損害金及び未払い実施料請求について

1  請求原因5の事実(条件付解除の意思表示)は当事者間に争いがない。

2  合意解除の抗弁(抗弁1)について

控訴人が昭和六三年一〇月三一日ころ新伊丹店を、同年一二月一九日ころ東大島店をそれぞれ売却したこと、被控訴人が右両店の譲受人との間でチェーン加盟契約を締結したことは当事者間に争いがなく、弁論の全趣旨によって真正に成立したと認められる乙第一〇、第一一号証によると、新伊丹店の買主が訴外松本であり、代金が金一五〇〇万円であったこと、東大島店の買主が訴外会社であり、代金が金二八〇万円であったことが認められるが、右各売却の後に控訴人と被控訴人間で新伊丹店及び東大島店の各本件加盟契約を解除する旨合意された事実については、これを認めるに足る証拠がない。

よって、合意解除の抗弁は、これを採用することができない。

3  公序良俗違反の抗弁(抗弁2の(一))について

前掲甲第九号証、成立に争いのない甲第八号証、乙第一、第二号証、証人田中義緒の証言、控訴人代表者尋問の結果及び弁論の全趣旨によると、控訴人は、元来、土木建築工事の施工請負等を主たる目的とする株式会社であるが、昭和五六年四月一一日、被控訴人との間で西大島店について本家かまどやチェーン加盟契約を締結して持ち帰り弁当店の経営に乗り出し、以後着々と事業を広げ、同年五月に伊丹店と東大島店、昭和五七年一一月に苦楽園店、昭和五八年五月ころ広田店、同年九月に新伊丹店についてそれぞれ右加盟契約を締結して開店したこと、右各契約には、いずれも請求原因3(五)(1)の損害賠償金支払い条項が付されており、控訴人はそのことを知った上で、自らの経営判断に基づき右のとおり事業を拡大したことが認められるから、控訴人が右条項を付すことを被控訴人から一方的に強要されたということはできない。また、加盟店が加盟契約に違反する行為をした場合、被控訴人のみならず、チェーン店全体の名誉や信用の毀損、チェーン店相互間の信頼や秩序の破壊等につながる恐れがあるから、被控訴人が本件加盟契約において損害賠償額の予定条項を設けることによって契約違反行為を防ごうとすることに合理性がないとはいえず、被控訴人が受ける可能性のある損害の程度、内容に照らしてその予定額が著しく均衡を失するものともいえない。

そして、他に請求原因3(五)(1)の損害賠償金支払いの合意が公序良俗に反するというべき事情は認められないから、控訴人の本抗弁も採用できない。

4  実施料額変更の抗弁(抗弁3)について

控訴人は、控訴人及び被控訴人間で、実施料の額について、「経済情勢の変動が著しいときは、双方合意の上改定する」旨の合意が存在したことを根拠に、本件における実施料額が変更された旨主張するが、控訴人及び被控訴人間で改定の合意があったことを何ら主張しないから、その余について検討するまでもなく、右主張はそれ自体で失当である。

5  実施料の一部弁済の抗弁(抗弁4)について

(一)  抗弁4の(一)の事実は当事者間に争いがない。

(二)  同(二)の事実を認めるに足る証拠はない。

(三)  そこで、再抗弁(弁済受領者の充当指定)について検討するに、証人田中義緒の証言、右証言により真正に成立したと認められる甲第三ないし第五号証及び弁論の全趣旨によると、再抗弁1ないし4の事実が認められ、右認定を左右するに足る証拠はない。そうすると、控訴人が抗弁4で主張する一部弁済金は、いずれも被控訴人が本訴で請求する未払実施料よりも以前の月の実施料に充当されたものであるから、控訴人の一部弁済の抗弁は理由がないことに帰する。

6  以上の次第で、控訴人の抗弁はいずれも失当であるから、控訴人は被控訴人に対し、未払実施料合計金三五四万六五八九円、本件各加盟契約解除に伴う約定損害金四五〇万円の支払い義務があるというべきである。

三  被控訴人の売買代金請求について

弁論の全趣旨によって真正に成立したと認められる甲第一〇号証の一ないし四によると、請求原因4の事実が認められ、右認定を左右するに足る証拠はない。

そうすると、控訴人は被控訴人に対し、メニューチラシ代金として金八六四〇円を支払う義務がある。

四  被控訴人の営業差止め請求について

1  本件加盟契約に解除後の競業禁止特約(請求原因3(五)(3))が付されていたことについて当事者間に争いがないことは、前判示のとおりである。

2  控訴人代表者尋問の結果によると、請求原因6の事実が認められ、右認定を左右するに足る証拠はない。

3  控訴人は、右競業禁止特約は公序良俗に違反して無効である旨主張する(抗弁2(二))が、右主張に対する判断は、原判決の一七枚目裏四行目冒頭から同一八枚目表七行目までに記載のとおりであるから、これを引用する。

4  よって、控訴人は被控訴人に対し、本件加盟契約に基づき、もと苦楽園店が営業されていた場所において、持ち帰り弁当等飲食物の加工販売の営業をしない旨の不作為義務を負っているというべきである。

五  結論

以上のとおりであって、控訴人に対し、未払い実施料、約定損害金、売買代金合計金八〇五万五二二九円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成元年二月二六日から支払い済みまで商事法定利率年六分の割合による遅延損害金の支払い並びに西宮市石刎町一番一八号における持ち帰り弁当等飲食物の加工販売の営業の差止めを求める被控訴人の請求はいずれも理由があり、これを認容した原判決は正当である。

よって、本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし、控訴費用の負担について民事訴訟法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 山中紀行 裁判官 寺﨑次郎 裁判官 井戸謙一)

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