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大阪高等裁判所 平成4年(ネ)2258号 判決 1994年2月01日

第二二四七号事件被控訴人、第二二五八号事件控訴人(以下「一審原告」という。)

西尾幸晴

右訴訟代理人弁護士

丹羽雅雄

大川一夫

池田直樹

井上二郎

太田隆徳

中島光孝

第二二四七号事件控訴人、第二二五八号事件被控訴人(以下「一審被告」という。)

大阪市

右代表者市長

西尾正也

第二二五八号事件被控訴人(以下「一審被告」という。)

辻本啓介

右両名訴訟代理人弁護士

江里口竜輔

主文

本件控訴をいずれも棄却する。

控訴費用は、一審原告と一審被告大阪市との間においてはそれぞれ各自の負担とし、一審原告と一審被告辻本啓介との間においては一審原告の負担とする。

事実及び理由

第一  当事者の求めた裁判

一  一審原告

1  原判決を次のとおり変更する。

2  一審被告らは一審原告に対し、各自二五〇万円及びこれに対する平成元年一月三〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

3  一審被告大阪市の控訴を棄却する。

4  訴訟費用は、第一、二審とも一審被告らの負担とする。

5  2項につき仮執行宣言

二  一審被告大阪市

1  原判決中、一審被告大阪市の敗訴部分を取り消す。

2  一審原告の請求を棄却する。

3  一審原告の控訴を棄却する。

4  訴訟費用は、第一、二審とも一審原告の負担とする。

三  一審被告辻本

1  一審原告の控訴を棄却する。

2  控訴費用は一審原告の負担とする。

第二  当事者の主張

原判決の「第二 当事者の主張」記載のとおりであるから、これを引用する。ただし、次のとおり付加、訂正をする。

一  原判決四枚目表六行目の「三通」を削除し、同七行目の「右申請書」を「本件申請書及びその控と、所定の本件音楽堂の使用許可書用紙(ただしそのコピー)に申請者が予め記載を求められている事項を記入したもの」と改め、同四枚目裏一〇行目から一一行目にかけての「憲法二一条、」の次に「地方自治法二四四条二項、」を加え、同行の「二条」を「三条」と、同一三行目の「三条」を「二条」と、同七枚目表一二行目の「同二四日」を「同月二四日」と、同八枚目表一二行目の「精神的損害」を「精神的苦痛」と改める。

二  同八枚目裏一〇行目の「音楽団」を「音楽団事務局」と、同九枚目表三行目の「申請書」を「本件申請書」と、同一〇行目の「同月一二日」を「同年一月一二日」と、同九枚目裏六、七、九行目及び同一〇枚目表九行目の「臨時休業」をそれぞれ「臨時休館」と改め、同九枚目裏一一行目の末尾に「同年一月一二日、教育長は、館長会議での右了解を受けて、休日法が制定されれば、本件音楽堂を臨時休館する旨の意思決定をした。」を加え、同一〇枚目表五行目の「同月」を「同年一月」と同一二行目の「同月二四日」を「同年一月二四日」と同一一枚目表三行目及び五行目の「臨時休業」をそれぞれ「臨時休館」と、同八行目から同一二枚目表四行目までの間にある「音楽堂」をすべて「本件音楽堂」と、同一二行目の「本件音楽」を「本件音楽堂」と、同一二枚目裏一行目の「臨時休業」を「臨時休館」と改める。

第三  証拠

原、当審での本件記録中の各証拠目録の記載を引用する。

第四  当裁判所の判断

当裁判所の判断は、原判決の理由欄記載のとおりであるから、これを引用する。ただし、次のとおり付加、訂正をする。

一  原判決一三枚目裏一〇行目の「結果」の次に「(いずれも原審)」を加え、同一二行目の「社会教育部」を「社会教育課」と、同一四枚目表五行目の「同部」を「同課」と、同一〇行目及び一二行目の「音楽堂」を「本件音楽堂」と、同一四枚目裏四行目の「決定された後に」を「可決、成立後に」と、同九行目の「音楽堂」を「本件音楽堂」と改める。

二  同一四枚目裏一二行目の「午後六時ころ、」から同一五枚目表二行目の「しかし、」までを「、音楽団事務局に電話をして同年二月二四日に本件音楽堂の使用許可申請をした者がいないことを確認したうえ、同日の本件音楽堂の使用許可申請をしたが、応対に当たった係員から当日は休館になるかも分からないから、自分だけでは判断できかねると言われ、同日午後六時三〇分ころ音楽団事務局を訪ねて同音楽団庶務係長三河に本件音楽堂の使用許可申請書用紙の交付を求めた。」と、同五行目及び一二行目の「社会教育部」をそれぞれ「社会教育課」と改める。

三  同一五枚目裏三行目から四行目にかけての「(以下「水野」という。)が、」の次に「同年一月一四日」を加え、同一三行目の「社会教育部」を「社会教育課」と、同一六枚目表二行目の「訪ねた」を「尋ねた」と、同七行目の「同月」を「同年一月」と改め、同一六枚目裏二行目及び同一七枚目表一〇行目の「三通」をそれぞれ削除し、同六行目及び同一七枚目裏六行目の「臨時休業」をそれぞれ「臨時休館」と改め、同七行目及び八行目を「以上の事実が認められる。一審被告辻本は、平成元年一月一二日のうちに、教育長に対し、大阪市教育委員会事務局等専決規程(乙七)一七条の趣旨に従い、前記認定にかかる同年二月二四日の社会教育施設の開館、休館に関する館長会議の結果を口頭で報告し、教育長からその線で進めてもらってよい旨の承諾を得たと供述する(当審)が、甲二〇及び弁論の全趣旨に照らして右供述は採用できない。他に前記認定事実を覆すに足りる証拠はない。」と改める。

四  同一八枚目表二行目の「本件音楽堂は、」の次に「大阪市立中之島音楽堂とともに」を加え、同一八枚目裏六行目の「音楽団職員とのその勤務条件の変更についての協議」を「音楽団職員の勤務条件の変更について職員組合との協議」と改める。

五  同一八枚目裏一三行目の「成立に争いのない乙第一、第二号証」を「前掲乙第一号証、成立に争いのない乙第二号証」と改め、同一九枚目表一行目の「本件音楽堂の使用について、」を削除し、同五行目の「規定していると」を「規定し、また音楽堂条例四条は、「公安又は風俗をみだすおそれがあると認めるとき」等同条各号の一に該当するときは、使用を許可しない旨を定めていることが」と、同九行目の「また、」から同一九枚目裏七行目末尾までを「これを踏まえて地方自治法二四四条二項、三項は、普通地方公共団体は、正当な理由がない限り、住民が公の施設を利用することを拒んではならない旨を規定しているのであって、本件音楽堂の使用にかかる許可権者は、住民から本件音楽堂の使用許可申請がなされた場合、音楽堂条例四条各号に該当する事由がない限り、原則として使用を許可すべきものであり、その意味で、本件音楽堂の使用許可は、裁量の余地の少ない覊束裁量行為の性質を有するものというべきである。」と、同九行目の「これを許可しなければならないのが原則であり、」を「右申請を受理したうえ、音楽堂条例四条各号に該当する事由があるか否かを審査し、右使用を許可すべきものかどうかを判断すべきであって、」と改める。

六  同二〇枚目裏四行目冒頭の「2」を「3」と、同二一枚目表一〇行目の「3」を「4」と改め、同二一枚目裏五行目の「あったとしても、」の次に「一審原告は、臨時休館となる場合に迷惑を被ることがあることも十分考慮したうえで、あえてなお重ねて本件音楽堂の使用許可の申し込みをしているものであるし、」を、同二二枚目表一行目の「二、」の次に「乙七、」を同二行目の「結果」の次に「(いずれも原審)」を加え、同一一行目の「教育部所轄教育機関」を「教育課所轄教育施設」と、同行の「臨時休業」を「臨時休館」と、同二二枚目裏六行目の「4」を「5」と改める。

七  同二三枚目表九行目の次に行を変えて次項を加える。

「一審原告は、国家賠償法一条に基づき国ないし公共団体に損害賠償責任を問う場合に、当該不法行為をした公務員に対して民法七〇九条によりその個人責任を問うことができるか否かについては明文の規定はなく、解釈に委ねられているところであり、国家賠償法一条に基づく責任は、国ないし公共団体の自己責任であり、当該公務員個人の責任とは無関係なものであるから、国等が責任を負担することと公務員個人が責任を負担することとは別個の問題であって、国等が責任を負担することによって、公務員個人の責任が解除されるべき理由はない、当該公務員に対する責任追及を認めることこそ、公務員に対する国民の監督的作用にとって極めて有効な手段であり、もしも公務員の個人責任を認めないのであれば、国等から損害賠償を受けることによって経済的充足を受けたとしても、それだけでは満たされない国民の権利感情を著しく阻害する結果を招来することになる、したがって、一審被告辻本個人も、同大阪市とは別に民法七〇九条によって損害賠償の責に任ずるべきであると主張する。

しかし、国家賠償法一条は、公権力の行使に当たる公務員の不法行為につき、国等が当該公務員に代位して賠償責任を負うものとし、支払能力のある国等が当該公務員に代わって賠償責任を負担した以上、被害者は当該公務員に対し、直接賠償請求をする必要がないことから、当該公務員自身は賠償責任を負わない趣旨であると解される。

よって、一審原告の右主張は採用できない。」

第五  結論

以上の次第で、一審原告の請求のうち一審被告大阪市に対する請求だけを右限度で認容した原判決は相当であり、本件控訴はいずれも理由がない。

よって、本件控訴を棄却することとし、民訴法八九条に従い、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官野田殷稔 裁判官熊谷絢子 裁判官青栁馨)

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