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大阪高等裁判所 平成5年(行コ)20号 判決

事実及び理由

第四 主要な争点に対する判断

一  主要な争点1についての当裁判所の判断は、次のとおり訂正、削除するほかは、原判決五枚目表一〇行目の冒頭から同九枚目裏七行目の終わりまでと同一であるから、これを引用する。

1  原判決八枚目表一〇行目の「町長分」から同裏一行目の「節の異なる」までを「町長分の旅費のうちの七三六八円及び職員分の旅費のうちの合計一万四七三六円が最終的に」と改める。

2  同裏三行目の「右のうち、」から同一〇行目の「ことではない。」までを「ところで、本件視察研修は後記のとおり行政視察旅行として違法とはいえず、町長がこのような旅行に同行すること自体は、町長が議会に対する議案提出権を有していること(法一四九条一項)、町長と議長は懸案事項や政策課題について日頃から十分な意思疎通を図るべき必要があることなどから違法とまではいい難いところ、昼食代や入館料等の支出内容と合計七三六八円という金額からすると、公的な委員会活動に伴う必要経費の負担とみなし得るもので、右費用を議員研修負担費から支出しても流用に濾ならないと解するるのが相当である。」と改める。

3  同末行の「これに対し、」を「また、」と改め、同行の「前記のように」を削除する。

二  主要な争点2について

1  町長の執行行為は議会の議決に従ったものである限り違法となることはないのが原則であるが、議決に重大かつ明白な瑕疵があるか、執行行為が議決の趣旨目的を明らかに逸脱する場合は、議決に基づく執行行為であっても違法となる旨の、原判決九枚目裏九行目の冒頭から同一〇枚目裏三行目の終わりまでの判示は、当裁判所の見解と同一であるから、これを引用する。

2  そこで、まず、本件議決に重大かつ明白な瑕疵があったか否かを検討する。

(一)  普通地方公共団体の議会に設置された常任委員会は、議会の会期中、その部門に属する当該普通地方公共団体の事務に関する調査を行うものとされ(法一〇九条三項)、議会の議決により付議された特定の事件については、閉会中も、これを審査することができるとされている(同条五項)。この場合、特定事件とは、議会の閉会中の委員会活動を例外的に許す法の趣旨からすると、特定かつ具体的な案件に限定されると解すべきであり、当該常任委員会が担当すべきものとされている一般的抽象的な案件はこれに当たらないというべきである。そうすると、本件議決において示された、行財政運営及び議会運営、産業振興及び建設事業の取り組み、福祉行政全般という調査事項は、いずれも一般的かつ抽象的なものであるから、前記特定性ないし具体性の要請を満たしていないといえないでもない。

(二)  しかしながら、地方議員のいわゆる行政視察旅行は、当面の政策課題に直接結びつかなくても、目的を持ってまじめに行われるものであれば、議員の視野を広め識見を養う糧となるものであって、それが議会活動のうえに有益であり、ひいては住民の福利厚生に還元されることが期待されるところであり、現に全国の多くの自治体で繰り返し行われている実情にある。そして、地方議会には国会法一〇三条のような議員の派遣についての直接の根拠規定が存在しないけれども、地方議会は議決機関としての機能を適切に果たすために必要な限度で広範な権能を有しているから、合理的な必要性があるときは、その裁量により議員を国の内外に派遣することができると解されるところ、右議員の派遣には公費の支出を伴うものであるため、慎重を期して、法一〇九条三項、五項を根拠とする所管事務調査として、行政視察旅行が行われることがあるのである。

(三)  本件視察研修に関しても、証人福井健の証言によれば、町議会事務局長であった同人が、違法と評価されることを懸念し、これを避けるために右法条による手続を取ることを進言して、本件議決がなされた経緯が窺われる。そして、前記の行政視察旅行の効用についての見方や全国の自治体におけるその実施状況に照らすと、本件議決が承認した一般的な行政視察旅行が町議会の活動として必要のないものであったと決めつけることはできない。そうすると、本件議決は、法一〇九条五項の特定事件を付議する議決としては要件を欠くものであったとしても、実質的には地方議会の広範な裁量に委ねられた権能に基づく議決と解せられるから、本件議決に重大かつ明白な瑕疵があったということはできない。

3  次に、実施された本件視察研修の内容が、本件議決の趣旨目的に明らかに逸脱するものであったか否かを判断するに、判断の前提となる事実の認定は、次のとおり付加するほかは、原判決一二枚目表三行目の「証拠」から同一三枚目裏八行目の「斑鳩町役場に戻った。」までと同じであるから、これを引用する。

〔証拠略〕によれば、昭和六三年一〇月一一日、常任委員長二名と副委員長一名を作成者とする議長あての常任委員会合同視察研修報告書一通及び同行職員二名を作成者とする視察内容を報告した復命書一通が作成され、第一日目の釧路市における前記認定の視察状況のほか、二日目以降の視察について、バスで通過した農漁村の様子、観光地としての道路整備状況や駐車場対策、網走市、北見市、旭川市など地方の中核都市の現況、最後の訪問先である新十津川町での視察状況や町長、町議会議長をはじめとする町の関係者の接遇ぶりなどの概要が明らかにされていること、当時、斑鳩町では公共下水道の整備が懸案事項になっており、また、観光地としての道路整備や駐車場対策、同町内で発掘中の藤ノ木古墳の資料館設置なども重要な政策課題とされていたことが認められる。

以上の認定事実によれば、初日の釧路市における事務調査が斑鳩町の当面の懸案事項や政策課題に係わりを持つ内容であったというだけではなく、観光ルートに沿っていたものであるとはいえ、二日目以降の日程も本件議決の調査項目に関連して斑鳩町の現在及び将来の行政に役立ち得るところがあったし、奈良県ゆかりの新十津川町における町関係者との交流は友好の輪を広げるという意味で町政上積極的に評価できるところがあったともいえるのである。

そうすると、本件視察研修が一般的な行政視察旅行として容認し難い内容のものであったと断定することは困難であり、本件視察研修が本件議決の趣旨目的を明らかに逸脱するものとまではいい難いといわざるを得ない。

4  右のとおりであって、本件議決には重大かつ明白な瑕疵は存在せず、また、本件視察研修が本件議決の趣旨目的を明らかに逸脱することもなく、さらに、本件視察研修に議会事務局職員二名及び町長が同行したことも違法とまではいえない(前記一)から、町長である控訴人小城が本件視察研修について本件支出を負担及び命令した行為、及び、控訴人森山がこの命令に従って本件支出をした行為は、違法とはいえない。

三  まとめ

したがって、被控訴人の本訴請求は、理由がないから、これを棄却すべきである。

第五 結語

よって、これと異なる原判決は不相当であり、本件控訴は理由があるから、原判決中控訴人ら敗訴部分を取り消し、被控訴人の本訴請求を棄却することとし、訴訟費用の負担につき民訴法九六条、八九条に従い、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 宮地英雄 裁判官 山﨑末記 富田守勝)

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