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大阪高等裁判所 平成7年(う)855号 判決 1996年10月23日

裁判所書記官

谷口喜久治

本籍

和歌山市六十谷七五八番地

住居

同市六十谷一一三二番地

会社顧問

前田喬

昭和六年一一月二四日生

右の者に対する国土利用計画法違反、所得税法違反被告事件につき、平成七年七月一〇日大阪地方裁判所が言い渡した判決に対し、被告人から控訴の申立てがあったので、当裁判所は、検察官西尾精太出席の上審理して、次のとおり判決する。

主文

原判決中被告人に関する部分を破棄する。

被告人を懲役二年六月及び罰金一億一〇〇〇万円に処する。

右罰金を完納することができないときは、金三〇万円を一日に換算した期間(端数は一日に換算する。)、被告人を労役場に留置する。

この裁判確定の日から四年間右懲役刑の執行を猶予する。

理由

本件控訴の趣意は、弁護人細谷明、同田中森一及び同堤中良則連名作成の控訴趣意書記載のとおりであり、これに対する答弁は、検察官重冨保男作成の答弁書記載のとおりであるから、これらを引用する。

論旨は、被告人を懲役二年六月及び罰金一億一〇〇〇万円に処した原判決の量刑は、重すぎて不当であり、懲役刑には執行猶予を付すべきであり、罰金額も軽減すべきである、というのである。

そこで、記録を調査して検討する。

被告人が代表取締役をしていた原審相被告会社の和興開発株式会社は、昭和六三年九月ころ、金融機関及び大手建設会社の協力を得て、和歌山市六十谷及び園部周辺の山林一帯を開発し、分譲用の宅地、別荘地及びゴルフ場その他各種レジャー施設用等の土地を造成するなどの開発事業計画(フォレストシティ計画)を推進することとし、その用地を確保するため、和興開発が地権者から山林を買収しようとした。しかし、地価が高騰を続けていた時期とも重なって、地権者の中には、国土利用計画法の規制価格を超える価格でなければ売却に応じなかったり、あるいは、一旦売却を承諾してもその後翻意するなどしたため、平成二年五月ころには、計画区域内の山林の一部がいまだ買収できず、また、森林法の改正により、林地開発許可の基準が厳しくなる平成四年六月一〇日までに大部分の土地の買収を終えていなければ、開発事業計画そのものの達成がおぼつかなくなるおそれが生じた。

本件国土利用計画法違反の罪は、右のように用地買収に難航した被告人が、事態打開のため、単独又は和興開発の取締役と共謀の上、法定の除外事由がないのに、同社を買受人とする土地売買契約に関し、同法所定の和歌山県知事に対する事前の届出をしないまま、一八回にわたり土地売買契約を締結し、かつ、当該売買価額が同法による適正な価格であることを仮装するため、真実の売買価額を殊更に圧縮した金額を記載した同県知事宛の内容虚偽の土地売買等届出書を提出し(原判示第一の一の各事実)、また、同県知事に対する前記届出を事前にするに際し、前同様の仮装をするため、七回にわたり、真実の土地売買の予定価額を殊更に圧縮した金額を記載した同県知事宛の内容虚偽の土地売買等届出書を提出した(同第一の二の各事実)というものである。

これら土地売買等届出書の事前提出をしないで土地売買契約を締結した一八回分を含む内容虚偽の届出の回数は合計で二五回、これら虚偽の届出にかかる山林の総面積は約四〇平方メートルに及ぶ上、これら犯行の発覚をふせぐため、利用価値の低い雑木林に数千万円から億単位の金額を付したり、多額の裏金の支払いや和興開発側における税負担を約束したりするなどして、予定対価の額として真実の土地売買価額を平均約五七パーセントに圧縮して、合計二九億円余りの金額を除外したものである。原判示第一の各犯行は、被告人が、右開発事業計画を優先するあまり、多数回にわたり大規模かつ巧妙な方法で、主導的に行ったものであり、総合的かつ計画的な国土の利用を図ることを目的とし、土地の投機的取引等による地価高騰を抑制し、国土の適正かつ合理的な利用を確保するという同法の目的や規制の趣旨を無視した悪質な犯行というほかない。

また、本件所得税法違反の罪は、被告人が、前記和興開発に土地を売却した七名の地権者の土地売却に関する所得税等の申告手続きに関し、同社の顧問税理士あるいは一部地権者と共謀の上、右七名の地権者の所得税を免れようと企て、譲渡所得の一部を秘匿するなどして、内容虚偽の所得税確定申告書を提出して、合計八億六〇〇〇万円余の所得税を脱税したものであり、そのほ脱率は約八五パーセントに上る(原判示第二及び第三の各事実)。殊に、原判示第二の犯行は、売買代金総額一八億円余のうち七億円を裏金にして、契約書上の売買代金額を大幅に圧縮したほか、正規の平成四年分の所得とせず、税率が低い平成三年分の所得として申告するため、内容虚偽の売買契約書を作成して、同年分の所得税の修正確定申告をするなどしているものであって、犯行の態様は、悪質かつ巧妙である。また、原判示第三の各犯行は、被告人が、後日の清算をしない約束のもとに、各地権者から納税等の資金として合計約五億円余を受取りながら、その中から被告人個人の債務の弁済費用等を捻出するため、顧問税理士に依頼し、真実の売却代金を大幅に圧縮したり、各地権者につき一律三〇〇〇万円の架空控除をするなどした上、原判示「企業連」を通じて所得を過少申告し、各地権者の所得税合計約三億六〇〇〇万円余をほ脱したほか、被告人自身右の操作により不法な巨利を得ているのである。

以上のような本件各犯行の罪質、動機、態様、被告人の利得状況等に照らすと、被告人の刑事責任はまことに重大である。

そうすると、被告人は、本件各犯行を率直に認め、和興開発の代表取締役を辞任して反省の態度を示していること、清水の分については、前記のとおりその一部約二億五〇〇〇万円を平成三年分の所得としてではあるが納税していること、本件開発計画を推進する立場にあった被告人としては、売買代金額、及びこれに伴う所得税の負担等に関する地権者らの要望にある程度応じざるを得ない状況にあったものであり、かつ、本件脱税が被告人自身の所得に関するものではないこと、本件各犯行については顧問税理士が相応の役割を果していることなど、所論指摘の被告人のために酌むべき情状を考慮しても、原判決の時点を基準としてみる限り、原判決の量刑は相当であり、これが重すぎて不当であるとはいえない。

しかしながら、当審における事実取調べの結果によれば、前記地権者らは、本件脱税の発覚後、その本税、重加算税、延滞税等合計一三億三五〇〇万円余を完納し、結果的にではあるが、国税収入等が確保されるに至っていること、原判決後、被告人は、本件各犯行について一層反省の念を深めるとともに、右地権者らが支払った右税金等の一部のほか、同人らに与えた前記損失の一部を補填すべく、園村滋に五〇〇〇万円(うち二〇〇〇万円支払済み)、廣﨑栄及び同恵子に計一六〇〇万円(全額支払済み)、南郷耕造他一名に五〇〇万円(全額支払済み)、村口正雄、同昌弘に一億六二五三万七八〇〇円(うち一〇〇〇万円と諸費用の五〇〇万円支払済み)を支払うことで、同人らと円満に示談ないし和解を遂げ、同人らや前記清水から被告人に対する宥恕の意思表示がなされているほか、地区の自治会長らが被告人に対する寛大な処分を望んでいること、その他被告人の家庭の事情、年齢、健康状態等、所論指摘の被告人のために酌むことのできる情状に、原判決当時から認められた前記の諸事情を総合し、現時点において改めて被告人の量刑を検討すると、罰金額についてはこれを維持するのが相当であるが、懲役刑については、その刑に執行猶予を付するのが相当と思料される。

よって、刑訴法三九七条二項により、原判決中被告人に関する部分を破棄し、同法四〇〇条但書により、さらに次のとおり判決する。

原判決が認定した各事実に、原判決と同一の法条(刑種の選択、併合罪の処理、労役場留置を含む。)のほか、平成七年法律第九一号による改正前の刑法二五条一項を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 宮嶋英世 裁判官 政清光博 裁判官 遠藤和正)

控訴趣意書

国土利用計画法違反、所得税法違反 被告人 前田喬

表記事件の、弁護人らの控訴趣意は次のとおりである。

平成七年一一月二七日

右被告人弁護人

弁護士 細谷明

弁護士 田中森一

弁護士 堤中良則

大阪高等裁判所 御中

第一、原判決は、公訴事実と同一の事業を認定し、被告人を懲役二年六月及び罰金一億一、〇〇〇万円と宣告した。

しかし原判決は被告人に対し刑の執行を猶予せず、実刑判決を科した点及び罰金一億一、〇〇〇万円という多額の罰金を科した点で、その量刑は重きに失し、到底破棄を免れえない。

第二、原判決は、量刑の理由として、

「一、判示第一の本件国土利用計画法違反は、被告会社の当時の代表取締役であった被告人前田が単独または当時の専務取締役であった被告人東山と共謀の上、同社の業務に関し、同社が各地権者から山林を買収することについて同法所定の届出をするに当たり、二五回にわたって、合計約四〇万平方メートルの山林について、予定対価の額として真実の土地売買価格を平均約五七パーセントに圧縮して合計二九億円余りの金額を除外した金額を記載した内容虚偽の土地売買届出書を和歌山県知事宛てに提出し、また、そのうちの一八回、合計約一一万平方メートルの山林については、同法所定の届出をしないまま一七名の地権者との間で土地売買契約を締結した上で、その後提出した右の各土地売買等届出書は、届出日以降に土地売買契約を締結することを装ったという点でも内容虚偽であったという事案であるが、内容虚偽の届出をした回数も届出前に契約した回数もいずれも多数回で、かつ広大な山林に関するものであり、しかも届出から除外した金額は巨額でその割合も高く犯情は悪質である。

ところで、同法は、総合的かつ計画的な国土の利用を図ることを目的とする法律であるところ、土地の投機的取引等による地価高騰を抑制し、国土の適正かつ合理的な利用を確保することによって右の目的を実現するため、一定面積以上の土地の権利移転等については、契約当事者に都道府県知事に対する届出義務を課した上、知事に契約の中止、変更の勧告権限を付与している。

そこで、本件国土利用計画法違反の動機についてみると、被告会社では、紀泉総合開発計画(フォレストシティ計画)の名称で本件山林周辺での大規模土地開発のための用地買収を開始したが、平成二年ころからいわゆるバブル景気に伴い地価が高騰し、地権者が買収価格を吊り上げようとしたこともあって、同年三月ないし四月ころには周辺山林の単価が一平方メートル当たり約一万円にまでなり、地権者側は右単価以下の代金額では買収に応じなかったことなどから、被告会社としては用地買収を推進してフォレストシティ計画を実現するため、土地売買等届出書に虚偽過少の予定対価を記載するようになったものであり、また右のように地権者からの用地買収が難航したため、地権者が山林を売却する意向を示したときにはその意向の変わらないうちに売買契約を締結すべく、土地売買等届出書を提出する以前に土地売買契約を締結し、同届出書を提出する際には届出日以降に売買契約を締結するかのように装っていたものであるが、いずれの動機も法の規制よりも企業の経済活動を優先する発想によるものであり、また同法の前記目的に正面から背反し、かつその規制の趣旨をも没却するものであって、同情の余地はない。

そしてその犯行態様についてみると、予定対価の額として虚偽の金額を届け出るに際し、実際には本件山林のほとんどは立木としての価値のない雑木林であるのに、土地売買代金の一部を立木売買代金として契約書に記載し、又は記載することとした上、土地売買等届出書にはこの立木売買代金の額を記載せず、予定対価の額としては右立木代金額を除外した金額しか記載しない方法を多用したほか、被告会社から各地権者に裏金を渡して売買契約を締結した場合や土地売買にかかる譲渡所得の税金を被告会社側で負担する条件で売買契約を締結した場合にも、右裏金や右税金額を同届出書に記載しないなどの方法によっていたものであり、いずれも巧妙かつ大胆な手口である。

被告会社では従来から宅地開発をしており、被告人前田、被告人東山ともに土地売買に際しては同法所定の届出手続が必要であることを知悉していたことなども考え会わせれば、被告会社及び被告人両名の刑事責任は重い。

二、判示第二、第三、の本件所得税法違反は、被告人前田喬が、被告会社に山林を売却譲渡した七名の地権者の譲渡所得に関し、被告会社の当時の顧問税理士と共謀し、さらに判示第二の事実については地権者とも共謀の上、右地権者七名の税務申告手続等に関与して合計八億六、八四四万円余りもの巨額の所得税を脱税したもので、ほ脱率は平均約八五・八六パーセントにも達し、重大事案である。その犯行態様についてみると、判示第二の事実については売買代金のうち七億円もの巨額を裏金とし、また残りの一一億〇、九八一万円余りの金額を代金額として記載した売買契約書についても、長期譲渡所得の分離課税の税率が高くなる以前の平成三年一二月三〇日に未だ売買契約は成立していないのに手付金として地権者名義の一億円の定期預金証書を用意した上、契約日付を同日に遡らせて右売却所得について平成三年分の修正申告として所得を申告し、結局本来申告すべき平成四年分としては右所得を全く申告しなかったというものである。また判示第三の各事実については、地権者六手の各所得税確定申告書に各山林売買の代金額を実際の売買代金額の三〇ないし四〇パーセントに圧縮して記載し、さらにそれぞれ三、〇〇〇万円の架空の控除を計上して、右各譲渡所得の一部を除外した上、右顧問税理士が顧問として関与していた部落開放和歌山県企業連合会(以下「企業連」という。)を通じて売買契約書を添付せずに右各申告書を税務署に提出したというものであって、いずれも巧妙、悪質な犯行である。

三、本件所得税法違反のうち、判示第二の事実は、前記のとおりフェレストシティ計画に関する地権者との用地買収交渉が難航する中で、森林法改正の関係で平成四年六月一〇日までに大部分の用地買収を終えていなければ土地開発規制が強化されることから、その前に売買契約を締結すべく、被告人前田が、直接の納税義務者ではないものの地権者からの用地買収を促進するため、七億円の裏金の支払や平成三年分として税務申告することなど前記の犯行方法を発案して地権者に持ちかけ、その際には地権者を安心させるため前記顧問税理士に売買交渉の場に同席するよう依頼するなどしたものであって、特に動機に同情の余地はなく、また被告人前田が主体的立場に立って犯行に及んだものである。

さらに、判示第三の各事実については、前記同様に地権者との用地買収交渉が難航する中で、譲渡所得にかかる税金を被告会社で負担するとの条件で地権者から山林を買収した上、右税金負担を軽減しようとして本件脱税に及んだのであるが、一方では、被告人前田が、自らの抱える借金を少しでも返済するために、被告会社に山林を売却した地権者らから税務申告の受任を得て納税資金を預かった上、右納税資金の額よりも低い金額で申告し、その差額を利得して右返済に充てるために脱税したものであり、このような動機は悪質かつ卑劣であって、同情の余地はない。そして、被告人前田は、被告会社に山林を売却した地権者らに対し、右のような動機を秘して税務申告の委任を持ちかけ、その上、被告人前田を通じて税務申告すれば譲渡所得の税率が正規税率の約半分の一五パーセントで済むなどと話して脱税の請負とも見うる言葉で税務申告の依頼を勧誘したこと(しかも、実際には右税率よりもさらに低い税額で申告した。)や、納税資金を受け取る際に以後その返還を求めない旨の念書を地権者から徴するなどしたこともあり、その一方で、前記顧問税理士に対しても、右の動機を秘して、用地買収に際して地権者から譲渡所得にかかる税金を被告会社で負担するとの条件を付けられたがその資金負担で大変であるなどと話して脱税の方法を相談してこれを依頼し、また、土地売買価格を坪当たり二万円として税務申告することを自ら決定した上で、被告会社の社員に右単価で各土地売買価格を計算させた一覧表を作成させてこれを同税理士に渡し、同人に右価格で税務申告させていたものであって、積極的、主体的に本件脱税を敢行しており、かつ、その態様は巧妙、悪質であり、被告人前田の刑事責任は重大である。そしてその利得状況についてみるに、被告人前田は各地権者から五名分の納税資金としてそれぞれその正規税額又はその半分程度の合計約三億一、四〇〇万円を受け取り、その一方、右顧問税理士に対して、右地権者らの申告所得税等の納税資金及び企業連や同税理士に対する脱税報酬として合計一億八、〇〇〇万円、地方税の納税資金として合計約四、三〇〇万円をそれぞれ渡し、また、同税理士に対しさらに脱税報酬として一、〇〇〇万円を支払ったが、企業連からは本件起訴後同税理士を経て右報酬のうち三、〇〇〇万円の返還を受け、以上からすれば被告人前田は判事第三の脱税により結局約一億一、〇〇〇万円余りもの巨額の利得を得たものと認められ、その犯情は悪質である。

本件国土利用計画法違反については、被告人前田は、起訴された違反行為全てに関与し、また、被告会社の代表取締役として、全ての用地買収について報告を受けて、被告人東山が関与した分を含めて、予定対価の額を一平方メートル当たり約一万円とした内容虚偽の土地売買等届出書を提出するよう指示するなど、犯行に積極的に関与している。」

旨あげる。

しかし原判決があげた量刑の理由は以下のとおり誤りである。

(一) 原判決は、国土利用計画法違反の犯行の動機について悪質というが、右法律自体、契約自由の原則に反し、当時の不動産取引においても、本件と同種の方法による脱税行為が広範に行なわれており、行政当局もそのことをなかば認めていたことからすると、被告人の本件犯行の動機を、特に悪質ととらえる理由はない。

(二) 原判決は、国土利用計画法違反の犯行態様を巧妙かつ大胆な手口とするが、土地売買価格の規制を脱法するため、立木代金として上乗せする方法は、極めて幼稚かつ単純である。

また不動産売買契約をするために、各地権者に裏金を渡したり、土地売買にかかる税金を被告人側で負担するという方法も、いわゆる足元をみて土地を故意に売り渋る地権者側が要求した方法にすぎないとも認められる面が多分にあり、原判決の様にどん欲で狡猾な売主即ち地権者側の責任を捨象し、そのすべてを被告人一人に押しつけるような見方は正しくない。

(三) 所得税法違反については、前記(二)でのべたように、地権者側の強欲さが犯行の動機となり、そしてその方法については税理士が主導的役割を果たしていることを原判決は看過していると言わざるを得ない。

第三、被告人は、現在本件で頓挫しかかったフォレストシティ計画の実現にむけ、粉骨砕身の努力を傾けている。そして右計画の実現がいかに和歌山県にとり、有意義なものであるかは、原審で充分に立証している。

しかも被告人は本件の脱税事件で共同被告人となった者も含め、すべての経済的損失を与えたものに対してその損失額を補填すべく奮闘している。残念ながら今までのところ被告人の右意図は実現していないが、本件の高等裁判所の公判中には、右損失の一部でも補填ができるよう今後も努力を継続するつもりである。

従って右補填が実現すれば、原判決が認定した罰金額も当然軽減されるべきである。

第四、被告人に対し懲役二年六月及び罰金一億一、〇〇〇万円という量刑をした原判決は、以上述べた理由で、重きに失することは明白であり、当公判廷において、刑の執行を猶予された上、罰金額を大幅に下げる正当な評価をしていただくよう強く希望する。

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