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大阪高等裁判所 平成7年(行コ)1号 判決 1997年10月30日

控訴人(原告) 中野光雄 外六名

被控訴人(被告) 兵庫県収用委員会

主文

一  本件控訴を棄却する。

二  控訴費用は控訴人らの負担とする。

事実及び理由

第一当事者の求めた裁判

控訴人らは、「一 原判決を取り消す。二 被控訴人が昭和六〇年一二月一八日付で控訴人らに対してした原判決別紙不動産目録(一)記載の各土地を収用する旨の裁決を取り消す。三 訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴人は、主文同旨の判決を求めた。

ただし、原判決別紙不動産目録(一)の二に「公簿上二九四平方メートル」とあるのを「公簿上二四九平方メートル」と改める。

以下、控訴人中野光雄を「原告光雄」、控訴人中野政子を「原告政子」、控訴人中野照海を「原告照海」、控訴人中野公子を「原告公子」、控訴人中野博之を「原告博之」、控訴人中野幸子を「原告幸子」、控訴人中野みどりを「原告みどり」、控訴人らを「原告ら」といい、被控訴人を「被告」という。その他の略称は原判決のそれによる。また、適用法条は当時のものである。

第二事案の概要

本件は、原告らが、神戸市を起業者とする神戸国際港都建設新住宅市街地開発事業横尾地区新住宅市街地開発事業(本件事業)に関し、被告が原告らに対してした本件収用裁決には、後記二1(一)ないし(八)の違法があること(本件収用裁決固有の違法)、さらに本件収用裁決の前提となる本件事業認可についても同2(二)ないし(六)の違法があり、右違法が本件収用裁決に承継されること(同2(一)、本件事業認可の違法を原因とする本件収用裁決の違法)を理由に、本件収用裁決の取消しを求めた事案である。

一  争いのない事実等

次のとおり訂正等するほか、原判決二丁裏七行目から三丁表一〇行目までに記載のとおりである。

【原判決の訂正等】

1 二丁裏八行目の「神戸市が」の次に「昭和四六年四月一二日」を、「事業認可の申請をし」の次に「(右申請年月日については甲第二二号証の一)」を各加え、八行目から九行目の「昭和四六年四月二〇日」を「同月二〇日」と改める。

2 二丁裏一〇行目と末行との間に次のとおり加える。

「なお、本件事業は都市計画事業である(新住法五条)から、都市計画法七〇条により、施行者である神戸市は、土地収用法二〇条所定の『事業の認定』に代わる都市計画法五九条所定の『事業の認可』を兵庫県知事から得たものである(以下、用語については、都市計画法〔新住法を含む〕関係においては「施行者」、「事業認可」、「事業地」、土地収用法関係においては「起業者」、「事業認定」、「起業地」といい、これらを併用することもある。)。」

3 三丁表八行目の「別紙不動産目録(一)記載の各土地(以下「本件収用地」という。)」を「別紙不動産目録(一)記載の各土地(東山上一一番一は原告照海の所有、同所一一番六は原告光雄、同博之、同幸子及び同みどりの共有〔持分各四分の一〕、同所一一番一六は原告照海、同政子及び同公子の共有〔持分各三分の一〕である。以下、一括して「本件収用地」という。)」と改める。

二  争点

1  本件収用裁決の違法性の有無

(一) 本件事業認可告示のあった事業地の中に東山上一一番一が含まれていないことによる本件収用裁決の違法

(二) 実測平面図及び事業計画に関する記載が都市計画法六〇条四項、一四条二項所定の「土地に関し権利を有する者が自己の権利に係る土地が・・・区域に含まれるかどうかを容易に判断することができるもの」との要件を充足していないこと(区域表示機能を果たしていないこと)等による本件収用裁決の違法

(三) 本件収用地につき収用の必要性がないことによる本件収用裁決の違法

(四) 本件収用地の一部につき収用の必要性がないことによる本件収用裁決の違法

(五) 本件収用裁決申請書添付の起業地を表示する図面の誤りによる本件収用裁決の違法

(六) 土地調書の違法による本件収用裁決の違法

(七) 原告らの替地による補償要求に対して替地補償の裁決をしなかったことにつき、被告に裁量権の逸脱があったことによる本件収用裁決の違法

(八) 本件収用裁決の申請につき申請権の濫用があったことによる本件収用裁決の違法

2  本件収用裁決の前提となる本件事業認可の違法性の有無と右違法性の承継の許否

(一) 違法性の承継(本件事業認可の違法が本件収用裁決の取消事由になり得るか。)

(二) 事業地の特定が欠けることによる本件事業認可の違法

(三) 事業地の特定が不正確なことによる本件事業認可の違法

(四) 実測平面図が区域表示機能を果たしていないことによる本件事業認可の違法

(五) 事業計画に関する記載が区域表示機能を果たしていないことによる本件事業認可の違法

(六) 新住法三条三号に違反していることによる本件事業認可の違法

三  争点に対する当事者の主張

次のとおり訂正等し、当審における原告らの補充主張(争点1(一)、同2(二)、(三)に関連する争点1(二)、同2(四)、(五)についての主張)及びこれに対する被告の反論を付加するほかは、原判決三丁裏四行目から二八丁表八行目までに記載のとおりである。

【原判決の訂正等】

1 七丁表二行目の「(二)」を「(三)」と、八丁裏三行目の「(三)」を「(四)」と、一三丁表八行目の「(四)」を「(五)」と各改める。

2 一三丁裏五行目の「異なっている。」の次に「すなわち、本件収用地付近で右両図面を比較すると、本件収用裁決申請書添付図面に記載の区域線の方が本件実測平面図に記載の区域線よりも下方に下がっている(東側に寄っている)。」を加える。

3 一四丁表九行目の「『設計の概要を表示する図書』」の次に「(右図書中の『設計の概要を表示する平面図』)」を加える。

4 一四丁裏五行目の「(五)」を「(六)」と、一五丁表末行の「(六)」を「(七)」と、二〇丁表一〇行目の「(七)」を「(八)」と各改める。

5 二六丁裏九行目と二七丁表七行目の「本件地目地積一覧表」(二箇所)を「本件地積一覧表」と、二七丁裏一行目の「(四)」を「(六)」と各改める。

【当審における原告らの補充主張】

―争点1(一)、同2(二)、(三)に関連する争点1(二)、同2(四)、(五)についての主張―

1 本件事業認可の違法―本件実測平面図が区域表示機能を果たしていないこと―を原因とする本件収用裁決の違法(争点1(二)、同2(四)についての主張)

(一) 「事業地(都市計画事業を施行する土地)を表示する図面」の意義

都市計画法六〇条三項一号所定の「事業地を表示する図面」については、同条四項により同法一四条二項が準用される結果、同図面による区域の表示は、土地に関し権利を有する者(以下「権利者」という。)が自己の権利に係る土地がこれらの区域に含まれるかどうかを容易に判断することができるものでなければならないとされ、区域表示の明確性の確保が施行者に義務づけられている。

ところで、同法施行規則四七条一号によれば、「事業地を表示する図面」を作成するためには、「イ 縮尺五万分の一以上の地形図によって事業地の位置を示すこと。ロ 縮尺二千五百分の一の実測平面図によって事業地の収用の部分は薄い黄色で、使用の部分は薄い緑色で着色し、事業地内に物件があるときは、その主要なものを図示すること。」(以下、右イにいう地形図を『位置図』、右ロにいう実測平面図を単に『実測平面図』という。)という二つの要件を遵守しなければならない。

しかし、位置図は、その縮尺から考えて、事業地がこれを含む市町村のどこに位置するのかを表示するものにすぎないから、事業地の区域を権利者に対し明確に表示する役割、特に区域界付近に土地を所有する者が自分の土地が事業地に含まれるのか否か、含まれるとしても、どの範囲の土地が含まれるのかを表示する役割は、実測平面図が担うことになる。

(二) 実測平面図が備えるべき要件

実測平面図が右のような役割を担う以上、都市計画法施行規則四七条一号ロの要求する二千五百分の一以上という基準は最低限度のものにすぎず、最低限度の縮尺率では区域界が十分に表示されず、その結果、権利者にとって区域に含まれるかどうかの判断の容易性(区域表示の明確性)が確保されない場合には、同法六〇条四項、一四条二項により、右判断が可能になる程度まで拡大された縮尺率(例えば、五百ないし六百分の一程度)が要求されるというべきである(このような解釈の正当性は、二千五百分の一という縮尺率は同法施行規則の要求するものにすぎないところ、権利者に対する区域表示は同規則に優先して適用される都市計画法上の要求であることを考えれば、自明である。)。

具体的にいうと、事業地が山間の土地(山林地帯)であって、二千五百分の一の縮尺では区域界が十分に表示されない場合には、より大なる縮尺の図面を作成し、これにより区域界直近に存する目印となるべき不動物(例えば建物、送電タワー、大木など)が表示されるように配慮し、権利者が、複数の不動物の位置関係から、区域界を容易に識別・判断できるようにすることが考えられる。

また、単に縮尺率を上げただけでは、なお区域界が十分に表示されず、権利者が区域に含まれるか否かの判断を容易にすることができない場合には、同法六〇条四項、一四条二項により、縮尺率を上げる措置に加えて又はこれに代えて、権利者が実測平面図をもって右判断を行い得るための付加的措置をとることが要求されるというべきである。

具体的にいうと、事業地が新市街地、特に山間の土地(山林地帯)であって未開発な地域である場合には、区域界直近に目印となる適当な不動物(例えば公共施設や建築物等)もないから、単に縮尺率を上げても、隣接する二本の等高線の間が広がるだけで、素人である権利者が区域界線が現地のどこを走っているかを判断することが容易になるわけではない。そこで、このような場合には、付加的措置として、例えば区域界付近の内外の土地の境界の形状を実測平面図中に表示し、そこに各土地の地番が記載されておれば、土地所有者は実測平面図をもって容易に自分の土地がどこに位置していてその土地が事業地の範囲に含まれるか否かを知ることができると考えられる。特に事業施行区域の内外に跨って土地を所有する権利者は、右のような配慮がなされなければ、自分の土地が右区域に含まれるか否かを到底知ることができない。

(三) 本件実測平面図が右要件を具備しないこと

これを本件についてみるに、本件実測平面図(神戸市が保管していた乙第七号証の四と兵庫県が保管していた乙第一六号証とは、同内容の図面である。)は、縮尺二千分の一の図面であるから、都市計画法施行規則四七条一号ロの要求する縮尺率は一応満たしている。

しかし、本件事業の施行区域は、本件事業認可申請時には未開発の山林地帯を広く含むものであったために、縮尺二千五百分の一の図面ではもちろんのこと、縮尺二千分の一の本件実測平面図(乙第一六号証)でも、なお区域界が十分に表示されておらず、権利者である原告らが「自己の権利に係る土地(本件収用地)が・・・区域(本件事業の施行区域内)に含まれるかどうかを容易に判断すること」ができないのであるから、本件事業認可の申請にあたり、より大なる縮尺率の実測平面図を用いるか、又は、これに付加するか若しくはこれに代えて、例えば区域界内外に位置する右申請当時(昭和四六年四月一二日当時)の東山上一一番一と同所一一番六の境界の形状を表示し、そこに地番を表示するなどの付加的措置をとるべきであった。

それにもかかわらず、本件実測平面図(乙第一六号証)は、いずれの措置もとらず、現地測量やこれに基づく仮杭入れも行わないまま、単に図上の作業で区域界線を書き入れただけのものであるから、都市計画法六〇条四項及び同法一四条二項の要件を具備していない。したがって、本件収用裁決の前提となる本件事業認可には同法六〇条三項違反の違法がある。

2 本件事業認可の違法―本件事業計画に関する記載(事業地の表示方法)が区域表示機能を果たしていないこと―を原因とする本件収用裁決の違法(争点1(二)、同2(五)についての主張)

(一) 「収用又は使用の別を明らかにした事業地」の記載の程度

都市計画事業認可申請書の記載事項の一つである「事業計画」(都市計画法六〇条一項三号)については、「収用又は使用の別を明らかにした事業地」を定めなければならないとされている(同条二項一号)。そして、ここでも同条四項により同法一四条二項が準用される結果、事業地の表示は、事業計画に関する記載のみをもって、権利者が自己の土地が「区域に含まれるかどうかを容易に判断することができる」程度に明確にされなければならない。

そうだとすれば、「収用又は使用の別を明らかにした事業地」の記載として、字の全部が収用又は使用の対象となる場合には、字だけの表示で権利者は右判断を行い得るから適法であるけれども、字の一部のみが収用又は使用の対象となる場合には、字のみならず、対象となる土地の地番まで表示されなければ、権利者が事業計画に関する記載のみをもって「自己の・・・土地が・・・区域に含まれるかどうかを容易に判断すること」ができないので、後者の場合には、地番の表示をも記載しなければ、同法六〇条四項、一四条二項違反の違法が生じる。

(二) 本件事業計画に関する記載が右要件を具備しないこと

これを本件事業認可申請書(甲第二二号証の一)記載の事業計画(本件事業計画)についてみると、原告らの所有地を含む多井畑字東山上は、その一部のみが事業地(収用の対象となる起業地)となるのであるから、単に「多井畑東山上の一部」と記載しただけでは、原告らの所有地が本件事業地内に含まれるかどうかを判断することはできない。このような判断が可能になるためには、事業地(収用の対象となる起業地)の地番の表示が必要である。ちなみに、新住法三四条の三が「新住宅市街地開発事業を施行しようとする者又は施行者は、新住宅市街地開発事業の施行の準備又は施行のため必要がある場合においては新住宅市街地開発事業を施行しようとする、又は施行する土地を管轄する登記所に対し、無償で必要な簿書の閲覧若しくは謄写又はその謄本若しくは抄本の交付を求めることができる。」としていることに鑑みると、本件事業の施行者に地番表示を要求しても酷ではない。

しかし、本件事業計画にはそのような表示がないから、本件事業計画に関する記載は、都市計画法六〇条四項及び同法一四条二項の要件を具備していない。したがって、本件収用裁決の前提となる本件事業認可には同法六〇条二項違反の違法がある。

(三) 建設省の見解について

建設省は、事業計画に関する記載から事業地の範囲が明確にならない部分があるとしても、権利者は「事業地を表示する図面」を見ることで自己の土地が事業施行区域の範囲内か否かを知り得るのであるから、権利保護上問題を生じないことを理由に、都市計画法六〇条四項、一四条二項の要件を満たすためには、「収用又は使用の別を明らかにした事業地」の記載の程度として、一般的に町村、大字及び字までの表示で足りるとしている。

しかし、同法六〇条四項は、同条二項一号と同条三項一号の「事業地」の表示について各別に同法一四条二項を準用しているのであるから、事業地の範囲は、事業計画、事業地を表示する図面のいずれにおいても、単独で明らかにされなければならず、両者相まって範囲が表示されておれば足りるとの見解は、同法六〇条四項の解釈を誤るものである。

また、仮に右の建設省の見解が正しいとの前提に立ったとしても、本件実測平面図(乙第一六号証)は、都市計画法の要求する区域表示機能を果たし得ていないのであるから、原告らがこれと本件事業計画に関する記載とを併せ考慮しても、その所有する土地が本件事業地内に含まれるかどうかを容易に判断することなどできず、結局、本件事業計画に関する記載が適法となるわけではない。

3 本件実測平面図及び本件事業計画に関する記載が区域表示機能を果たしていないこと等による―本件地積一覧表及び本件地籍図の法的性格からみた―本件収用裁決の違法(争点1(二)についての主張)

(一) 地目地積一覧表及び地籍図が実測平面図及び事業計画と法的に一体をなす補足資料であると解する場合

(1) 実測平面図に都市計画法六〇条四項、一四条二項違反がある場合でも、例えば事業地が山間の未開発土地(山林地帯)であり、区域界直近に目印となる適当な不動物もないため、縮尺率の大きな図面を用いても、権利者が「自己の権利に係る土地が・・・区域に含まれるかどうかを容易に判断すること」ができない場合には、実測平面図中において前記の付加的措置をとる代わりに、別添の補足資料として、事業地の区域に含まれる土地の地番、地積等の一覧表を用意して、同法の要求する表示の要件を充足することは許されると考えられる。

同様に、事業計画に関する記載に同法六〇条四項、一四条二項違反がある場合でも、字の一部に含まれるすべての土地の地番を記載することにより、事業計画についての記載が冗長になることを回避すべく、別添の補足資料として、土地の地番、地積等の一覧表を用意し、同法の要求する表示の要件を充足することは許されると考えられる。

そして、補足資料としての地目地積一覧表や地籍図がこのような趣旨で事業認可申請書に添付される場合には、これらの資料は、法的には実測平面図及び事業計画と一体をなすものとして評価されることになり、この場合、地目地積一覧表及び地籍図は、実測平面図及び事業計画と法的に一体となる以上、事業施行区域を画する効果を持つことになる。

(2) これを本件についてみると、本件事業地は本件事業認可申請時には未開発の山林地帯を広く含むものであったから、区域界直近に適当な不動物がなかったのならば、結局、縮尺率の大きな実測平面図を用いても、権利者が「自己の権利に係る土地が・・・区域に含まれるかどうかを容易に判断すること」ができなかったことになる。そうだとすれば、施行者である神戸市の合理的意思解釈として、同法六〇条四項、一四条二項の要件を遵守するために、本件実測平面図(乙第一六号証)の補足資料とする目的で、本件事業認可申請書(甲第二二号証の一)に本件地積一覧表(同号証の二)及び本件地籍図(同号証の三)を添付したものとみる余地は十分にある。

同様に、本件事業計画中の「収用又は使用の別を明らかにした事業地」の記載についても、神戸市の合理的意思解釈として、本件事業計画についての記載が冗長になるのを回避するとともに、右目的で本件地積一覧表及び本件地籍図を補足資料として添付したものとみる余地は十分にある。

(3) 本件地積一覧表及び本件地籍図の法的性格を補足資料であると考えるならば、単独では違法の評価を免れ得ない本件実測平面図(乙第一六号証)及び本件事業計画に関する記載は、右両資料と相まって都市計画法六〇条四項、一四条二項の要求する表示機能を充足することとなり、同条項違反の違法性は治癒され、これに伴い、本件事業認可の違法性も治癒されるともいえる。

しかし、このような理解を前提とした場合、本件事業地の区域を画する効果を持つ本件地積一覧表及び本件地籍図には「東山上一一番一」は事業地として記載されていないから、本件事業認可は適法であるが、「東山上一一番一」について神戸市に収用権は発生していないことになる。

そうだとすれば、施行者(起業者)が収用権を有しない土地について収用を認めた本件収用裁決のうち、権利取得裁決には「収用する土地の区域」の判断を誤ったものとして、土地収用法四八条一項違反の違法があり、明渡裁決には「収用する土地の区域」に含まれない「東山上一一番一」について誤って明渡しを求めた点において、同法四九条一項違反の違法がある。

(二) 地目地積一覧表及び地籍図が単なる参考図書にすぎないと解する場合

(1) 本件地積一覧表及び本件地籍図を単なる参考図書とした場合、本件実測平面図(乙第一六号証)及び本件事業計画に関する記載につき都市計画法六〇条四項、一四条二項違反の違法性は治癒されないことになるが、以下の理由により、この違法性は本件事業認可の違法原因となるのみならず、本件収用裁決固有の違法原因ともなる。

(2) 実測平面図は、設計の概要を表示する図書とともに、公衆の縦覧に供されていること(都市計画法六二条二項、一項、六〇条三項一号、二号)や前示の都市計画法六〇条四項、一四条二項の趣旨に鑑みると、実測平面図には、施行者が収用権を取得する事業地の範囲を特定する効果が付与されており、その特定は、同法六〇条四項、一四条二項の要件を満たす区域界線によってなされるべきである。すなわち、測量士等が専門知識や技術を駆使してはじめて区域界線を特定できるような実測平面図は違法であり、実測平面図によって施行者が収用権を取得できるのは、権利者が明らかに区域に含まれることを判断できる土地についてだけである。

(3) これを本件についてみると、本件実測平面図(乙第一六号証)を判断資料とした場合、特に同図中、西側の南北を走る区域界線の位置が不明確であるために、そもそも「東山上一一番一」が本件事業地の区域に含まれるのか否か、また、本件収用地である東山上一一番一のうち原判決別紙地積測量図表示の<4>、<5>、<6>、<7>及び<4>を順次結んだ直線で囲まれた部分と本件収用地である東山上一一番六及び同所一一番一六の全部が本件事業地の区域に含まれるのか、それとも一部だけが含まれるのかについて、原告らが容易に判断できる程度に表示されているとはいえない。そうだとすれば、本件収用地である右三筆の土地(仮に右三筆の土地すべてでないとしても、少なくとも東山上一一番一)は、法的には本件事業地の区域に含まれておらず、本件収用地(少なくとも東山上一一番一)について神戸市に収用権は発生していないから、本件収用裁決には、右(一)(3)の第三段で指摘したのと同様の違法がある。

【右補充主張(争点1(二)、同2(四)、(五)についての主張)に対する被告の反論】

1 実測平面図の縮尺等

実測平面図の縮尺の下限は、二千五百分の一とされ、事業地内に物件があるときは、その主要なものを図示することとなっている(都市計画法施行規則四七条一号ロ)。なお、右縮尺は、同法施行規則附則二項によって、当分の間三千分の一でもよいとされている。

2 都市計画法六〇条四項、一四条二項にいう「(権利者が)容易に判断することができるもの」の意義

土地収用法一八条四項にも、「(同条二項二号に規定する)起業地の表示は、土地所有者及び関係人が自己の権利に係る土地が起業地の範囲に含まれることが容易に判断できるものでなければならない。」との、右都市計画法の規定とほぼ同じ文言の規定がある。そして、土地収用法施行規則三条二号には、「(同法一八条二項二号の)起業地を表示する図面」の作成方法が規定されているが、さらに、昭和四二年一二月一九日付建設省計総発第三一三号の「改正土地収用法の運用について」と題する建設省計画局長から各地方建設局長・各都道府県知事宛通達1(3)は、起業地の表示方法について「起業地内及びその付近における顕著な地形、地物等(おおむね国土地理院発行の五万分の一の地形図に記載されている河川、道路、官公署等の程度)を記載した図面とし、これだけでは起業地の範囲がわかりにくいときは、主要な建物その他固定性の高い物件を記載すること」としている。以上から明らかなように、土地収用法は「起業地を表示する図面」に表示する起業地の範囲を、地形、地物等をもとに特定することとしているものである。しかも、図面上に道路、家屋等の地形、地物等の表示があれば境界点の座標値とか三角点、基準点の表示がなくても、地形、地物等から事業地の特定は可能であり、地形、地物等をもとに起業地の範囲を現地に測設することが可能である。

そうだとすれば、都市計画法六〇条四項で準用される同法一四条二項による「事業地を表示する図面」の表示方法については、当然、右土地収用法の「起業地を表示する図面」の表示方法が類推されるべきであり、都市計画法が規定する「容易に判断することができるもの」とは、事業地の範囲を測量学的(専門的)な境界点の座標値とか三角点、基準点により特定することではなく、一般住民が一見して(容易に)わかる河川、道路、建物等の地形、地物等により特定することをいうものと解すべきである。すなわち、測量の素人である権利者が、事業地を表示する図面(実測平面図)を見て判断する場合、そこに表示された地形、地物等の位置関係から、「自己の権利に係る土地が・・・区域に含まれる(ときには、その可能性がある)」との認識を得ることができれば、「容易に判断できるもの」という要件を満たすというべきである。

3 本件実測平面図が右要件を具備していること

本件実測平面図(乙第一六号証)の場合、本件事業地が利用度の低い山間地であり、図面の縮尺は二千五百分の一でも足りるところ、実際の縮尺は二千分の一であり、しかも、本件事業地内及びその付近の顕著な地形、主要な道路、建物等の固定性の高い物件が記載されているから、都市計画法施行規則四七条一号ロに定めるところに適合している。そして、本件事業地の範囲は、本件実測平面図(乙第一六号証)に表示された地形、地物等から特定されており、これらの地形、地物等をもとに現地測設が可能である。したがって、本件実測平面図(乙第一六号証)は、同法六〇条四項、一四条二項の要件を具備している。

なお、本件実測平面図(乙第一六号証)には、法的要件ではないが、三角点の表示があり、この三角点及び座標方眼の交点である×印をもとに現地測設することも可能である。

4 「事業地」の表示として地番の記載が要求されていない理由

前示のとおり、事業認可申請書に記載すべきものとされている都市計画法六〇条二項一号の「事業地」は、都道府県、郡、市、区、町村、大字及び字をもって表すこととされ(同法施行規則四五条による「様式一二」)、「地番」まで記載すべきことは要求されていない。その理由は、地番まで記載したところで、結局は図面を用いなければ、事業地を精密に特定することができないこと、別途、実測平面図において事業地を特定することとしており(同法六〇条三項一号)、その公衆の縦覧(同法六二条二項、一項、六〇条三項一号)により、関係者は事業地の範囲を了知し得ること、施行者による周知措置(同法六六条)という補完的な措置も講じられること、筆の区分は事業認可の要件とは無関係であることから、字までの表示で足りることとされたものと解せられる。これは、字の一部のみが収用又は使用の対象となる場合についても同様である。

第三当裁判所の判断

当裁判所も、原告らの本訴請求は理由がないものと判断する。その理由は、次のとおりである。

一  争点1(一)(事業地の中に東山上一一番一が含まれていないことによる本件収用裁決の違法)、同(二)(実測平面図及び事業計画に関する記載が区域表示機能を果たしていないこと等による本件収用裁決の違法)について

右各争点についての判断は、次のとおり訂正等し、当審における原告らの補充主張(争点1(一)、同2(二)、(三)に関連する争点1(二)、同2(四)、(五)についての主張)に対する判断を付加するほかは、原判決二八丁表末行から三二丁裏一〇行目までに示されているとおりである。

【原判決の訂正等】

1 (判断の前提となる事実認定に関する部分)

二八丁表末行から三〇丁表九行目までを次のとおりに改める。

「 甲第一号証、第七号証の一ないし三、第二二号証の一ないし三、第二八号証の二、第四六号証の一ないし三、第四七号証、第五二号証ないし第五七号証、第六二号証の九、一〇、第八〇号証、乙第二号証の二ないし四、第一五号証ないし第一八号証、第二〇号証の一ないし三、第二七号証ないし第三二号証、原審証人管村謙一、同安藤嘉茂、同広田美清、同長井宏の各証言及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。

(一) 旧東山上一一番一の土地の分筆と保安林指定の解除等

(1) 旧東山上一一番一の土地は、昭和三〇年三月九日付農林省告示第二〇二号による保安施設地区の指定の有効期間(一年間)満了に伴い保安林に指定(指定の目的は土砂流出の防備)されたが、昭和四五年三月六日に、同土地から神戸市須磨区多井畑字東山上一一番六ないし九の各土地(以下『東山上一一番六』、『東山上一一番七』等という。以下同じ)が分筆された。したがって、右四筆の土地は、いずれも保安林の指定区域であり、本件事業の施行に際し、昭和四六年一〇月一六日付農林省告示第一七五四号により保安林指定の解除がなされたが、右分筆後の東山上一一番一については保安林指定の解除がなされなかった。しかるに、神戸市は、本件事業の施行に伴い、右分筆後の東山上一一番一についても立木の伐採、斜面の造成等を行った。

(2) 旧東山上一一番一は原告光雄の所有であり、同土地には、昭和四五年二月一九日に東山上一三番一が合筆され、右(1)のとおり同年三月六日にこれから東山上一一番六ないし九が分筆されたが、原告光雄は、原告照海に右分筆後の東山上一一番一を贈与し、同月一一日その旨の所有権移転登記がなされた。その後、昭和五二年一〇月二五日に東山上一一番六から東山上一一番一三ないし一六が、同年一二月二日に東山上一一番一六から東山上一一番一七がそれぞれ分筆された。そして、原告光雄は、東山上一一番六の持分四分の三を原告博之、同幸子及び同みどり(持分各四分の一)に、東山上一一番一六を原告照海、同政子及び同公子(持分各三分の一)に、それぞれ贈与し、同月五日その旨の所有権移転登記がなされた。その後、原告光雄は、原告照海に東山上一一番一七を贈与し、昭和五五年一二月八日その旨の所有権移転登記がなされ、同土地は、同月二三日に東山上一一番一に合筆された。

(二) 本件事業認可申請書の添付図書

本件事業認可申請書(甲第二二号証の一)には、本件地積一覧表(同号証の二)、本件地籍図(同号証の三)、位置図(乙第一五号証)、本件実測平面図(乙第一六号証)、計画図(乙第一七号証)が添付されていた。本件事業認可申請書には、収用する部分として『多井畑字東山上・・・の各一部』と記載されていたが、本件地積一覧表及び本件地籍図には『東山上一一番一』は記載されていなかった。本件事業認可申請書に添付されていた位置図は縮尺三万分の一であり、本件実測平面図(乙第一六号証)の縮尺は二千分の一である。

なお、地目地積一覧表と地籍図は、公衆の縦覧に供する必要のないものであり(都市計画法六二条二項、一項、六〇条三項参照)、事業認可申請書に参考図書として添付されているにすぎないものと解するのが相当である(後記3の判示参照)。

(三) 本件実測平面図の様式、体裁等

(1) 本件実測平面図(乙第一六号証)は、神戸市が昭和四四年度に航空写真測量業者に依頼して空中写真測量により作成された縮尺千分の一の実測現況図を縮尺二千分の一に縮小し、それを神戸市が新住宅市街地開発事業の事業区域が表現できるように編纂した(すなわち、図面の名称、縮尺、事業境界、区、町村、大字及び字等を手書きで書き込んだ)ものである。右縮尺千分の一の実測現況図は、専門の測量会社である東日本航空株式会社(現在の東武計画株式会社)が担当して作成したもので、測量機関、撮影年月日、測図年月日、座標方眼の交点、座標方眼の座標値、方位、縮尺、三角点、水準点、多角点、標高点が表示されている。本件実測平面図(乙第一六号証)から三角点の表示は明らかには読み取れないが、一〇〇メートル間隔の座標方眼の交点(×印)は記入されており、国土地理院に赴いて横尾山の三角点の座標値を調べることによって、本件実測平面図(乙第一六号証)上の3、4、5の各ポイントを現地において測設することができる。さらに、本件実測平面図(乙第一六号証)上の3、4、5の各ポイントは、同図中に表示された地形や地物等のうちに固定性の高い適当な物件があればそれを基準に現地において測設することができる。

(2) ちなみに、本件実測平面図(乙第一六号証)は、九枚の実測現況図(右(1)の縮尺千分の一の実測現況図)をもとに作成されているが、右九枚の実測現況図のうち、本件収用地をその一部として含む実測現況図は、本件実測平面図(乙第一六号証)作成当時の状態のままでは現存していない(すなわち、実測現況図は、神戸市開発局が行っている埋立事業に伴う土砂採取及び運搬工事のために、昭和四〇年代前半から毎年、専門の航空写真測量業者が空中写真測量により作成しているものであるが、同一年度中に複数回空中写真撮影が行われた場合には、そこに写された地形の変化に応じて実測現況図を更新し、新たな実測現況図のみを保存することもあり、本件の場合もそのような場合であったと考えられる。)。右実測現況図と同様に神戸市が昭和四四年度に同じ航空写真測量業者(東日本航空株式会社)に依頼して空中写真測量(昭和四四年一二月二五日撮影、昭和四五年一月測図)により作成された縮尺千分の一の実測現況図(乙第二八号証)と本件実測平面図(乙第一六号証)とを比較照合すると、本件事業地外の地形に若干変化があるものの、本件事業地内の地形は一致する。乙第二八号証は、現在神戸市において保管しているが、作成当時の鮮明なマイラー図面(ポリエステルフィルムに表示した図面)であり、それから湿式複写(青焼き)により作成した写しも鮮明である。一方、本件実測平面図(乙第一六号証)は、もともと乙第二八号証と同じ様式、体裁の実測現況図を含む九枚の実測現況図から、同図面を作成した航空写真測量業者により、同図面の正確さを維持しながら、縮小編纂されたものであるが、本件実測平面図(乙第一六号証)自体は、湿式複写(青焼き)図面そのものであるため、経年変化により鮮明さが失われているから、その写しも不鮮明にならざるを得ないものと考えられる。

(四) 本件実測平面図上の3、4、5の各ポイントの現地測設等

(1) 原告らが本訴を提起したのは昭和六一年三月一八日である(記録上明らかな事実)が、その後である昭和六三年に、山本設計工務株式会社神戸事業所測量事業部の測量士管村謙一(以下『管村』という。)は、神戸市の依頼を受けて、現況図を元図としてこれに本件収用地の区域と本件実測平面図(乙第一六号証)上に新住区域線として示された3、4、5の各ポイントとを表示した図面を作成し、同年七月二一日、現地において右各ポイントを測設する作業を行い、同年八月一七日に神戸市の現地確認を受けた(右作図及び現地測設の方法については後記2(二)の判示参照)。

(2) 右図面が新住線測設測量図(乙第一八号証。以下『本件測量図』という。)であり、これによれば、本件収用地は新住区域線よりも一〇・八三メートルから一五・四七メートルほど東側、すなわち本件事業地の内側に位置している。」

2 (私的鑑定に基づく批判に関する部分)

三〇丁表一〇行目から三一丁表八行目までを次のとおりに改める。

「(一) ところで、松井啓之輔作成の鑑定書(甲第六〇号証。以下『本件第一回私的鑑定』という。)及び横尾地区第二回鑑定書(甲第六五号証。以下『本件第二回私的鑑定』という。)は、本件実測平面図(乙第一六号証)に記載されたポイントを現地において測設することは、(1)座標方眼による方法、(2)道路・建物による方法(地物与点からの見通しによる方法)、(3)右(1)、(2)を組み合わせた方法及び(4)三角点からの多角測量による方法のいずれによっても不可能であるとし、その理由として、基本的には本件実測平面図(乙第一六号証)が三角点及び基準点のみならず、測量方法、測量機関、測量者、測量年月日等の記載がない信頼性の乏しい図面であることや、現地には地形的な難所が多く、測点間の距離が遠く、かつ測量ルートの確保が困難であって正確な測量結果が得られないことを挙げている。また、本件第二回私的鑑定は、与点と求点との間が見通せない場合には、右(2)の方法(地物与点からの見通しによる方法)によっては各ポイントを現地において測設できないとしている。そして、右各私的鑑定は、いずれも昭和四六年四月一二日付の本件事業認可申請書添付の本件実測平面図(乙第一六号証)を鑑定対象にしているところ、同図面は年月の経過により色褪せ、不鮮明になっている。

原告らは、右各私的鑑定を援用して、『原審証人管村が本件測量図(乙第一八号証)を作成するにあたり、神戸市から資料として提供を受けたとする本件事業地を表示する図面(本件実測平面図〔乙第一六号証〕と同内容の図面)の正確性、信頼性には問題があり、仮に同図面からポイント3、4、5の各座標値を読み取ることができたとしても誤差等のために現地において正確に各ポイントを測設することは不可能である。また、同証人管村のいう二つの与点(乙第二二号証の一、二の<1>〔建物の角〕、<2>〔石積みの角〕)から右各ポイントを現地において測設する方法について、右各ポイントと<2>の石積みとの間に昭和六二年三月に新築された建物が存在し(甲第六六号証、乙第二二号証の三)、昭和六三年当時も現地において右各ポイントと<2>の石積みとの間を見通すことができない状態であったから、右方法は取り得ないはずである』旨主張する。

(二) しかしながら、右1(三)(1)で認定したように、本件実測平面図(乙第一六号証)は、専門の測量会社が空中写真測量により作成し、測量機関、撮影年月日、測図年月日、座標方眼の交点、座標方眼の座標値、方位、縮尺、三角点、水準点、多角点、標高点が表示されている実測現況図をもとに神戸市が新住宅市街地開発の事業区域が表現できるように図面の名称、縮尺、事業境界、区、町村、大字及び字等を手書きで書き込んだものである。そして、同(四)(1)の本件測量図の作成及び現地測設にあたり管村が採用した後記方法によれば、実際、本件実測平面図(乙第一六号証)に表示されている座標方眼の交点(×印)をもとに新住区域線上の3、4、5の各ポイントを現地において測設することができたというのである。

(1) 管村は、神戸市から提供された本件事業地を表示する図面、すなわち本件実測平面図(乙第一六号証)と同じ大きさ(縮尺二千分の一)で、実質的には同一内容の鮮明な図面(以下『事業地表示図』という。)上で、本件事業地の区域を表示する線(新住区域線)として表示された3、4、5の各ポイントの座標値を、同図面に表示されていた座標方眼の交点(×印)に基づき、三角スケールを使用して読み取った(乙第二九号証は、右作業にあたり、管村が神戸市から提供を受け使用した湿式複写〔青焼き〕の事業地表示図のうち、当該作業の対象となった新住区域線のうちの3、4、5の各ポイントが表示されている部分だけを複写し、山本設計工務株式会社で保管しているものである。)。

(2) 事業地表示図の座標方眼には、交点(×印)の表示はあるものの、座標値の表示はなかったので、座標方眼の交点及び座標値が表示されている他の図面(国土地理院の承認を受けた神戸市作成の縮尺二千五百分の一の地形図)から、事業地表示図に表示された座標方眼の座標値を得た。

(3) ポイント4については、事業地表示図に表示された一八〇度〇〇分〇〇秒を尊重し、ポイント3と5を結ぶ直線上で、ポイント5からポイント3の方向に、事業地表示図から三角スケールを使用して読み取ったポイント5から4までの間の距離の位置を求め、その位置をポイント4として、計算により座標値を求めた。

(4) 右(1)ないし(3)の方法により座標値を求めた3、4、5の各ポイントを、神戸市から事業地表示図とともに提供を受けた縮尺二千分の一の現況図(本件測量図の元図)に、同図面に表示されている座標方眼(座標方眼の座標値は右(2)の方法で得た。もっとも同図面には、座標値が表示されている部分もある。)に基づき書き入れるとともに、本件収用裁決の裁決書(甲第一号証)末尾添付の地積測量図(原判決別紙地積測量図と同じもの)に表示された境界点の座標値、土地調書(乙第一号証の二ないし四)添付の丈量図の記載を資料として、本件収用地の区域を書き入れた。

(5) 右地積測量図に表示された<1>及び<2>の点から、ポイント3と5を結んだ新住区域線までの距離については、右現況図(本件測量図の元図)上で垂線に基づく測点計算(コンピュータによる計算)により求め、同図面に書き入れた(乙第三〇号証は、右測点計算の結果をまとめた成果表である。)。

(6) 右(4)及び(5)の方法により本件測量図(乙第一八号証)を作成した。

(7) 右(1)ないし(3)の方法で座標値を求めた新住区域線上の3、4、5の各ポイントの現地測設については、山本設計工務株式会社が、かつて本件事業地内の道路台帳作成(昭和六〇年二月作成)に伴う測量を行った際、右各ポイントの近辺に設置していた四箇所の既設点(乙第三二号証)を基準点として使用した。すなわち、右現地測設の前に、右各ポイント及び基準点の座標値に基づき、基準点と測設点との位置関係を示す距離、角度の数値をコンピュータで求め、その結果を整理した計算書(乙第三一号証)を作成しておき、右現地測設の際、同計算書に記載の右各ポイントと基準点との位置関係を表す数値に従い、トータルステーション(距離測定のための光波測距儀と角観測のためのトランスシットがセットになった器械。以下「器械」という。)を使用した多角測量を行った。具体的には、ポイント5については、現地で基準点B―四に器械を据え付けて基準点B―三を、ポイント4については、現地で同B―三に器械を据え付けて同B―四を、ポイント3については、現地で基準点T―四七二に器械を据え付けて基準点T―四七三をそれぞれ後視して、計算による角度を振ったうえ、その方向に距離を取って測設した。

(三) しかるところ、本件第一、二回私的鑑定は、いずれも管村が実際に行った測量方法・作業を把握したうえでその間題点を指摘したものではなく、本件実測平面図(乙第一六号証)の体裁と一般的な測量方法・作業に伴う誤差等に基づく問題点を指摘したものにすぎず(もっとも、本件第二回私的鑑定が、与点と求点が見通せない場合には、地物与点からの見通しによる方法によって各ポイントを現地において測設できないとしている点は、具体的な測量方法に関するものではあるが、管村が実際に行った測量作業と全く異なる測量方法に関するものであり)、その前提を異にするから、右各私的鑑定の結果は、いずれも直ちに採用することはできない。

したがって、右各私的鑑定を援用して、本件実測平面図(乙第一六号証)が公的地形図としては不完全で、信頼性の乏しい図面であり、これをもとに新住区域線上の3、4、5の各ポイントを現地において測設することができないとする原告らの主張も採用できない。」

3 (地目地積一覧表、地籍図の記載に関する部分〔当審における原告らの補充主張に対する判断を含む〕)

三一丁表九行目から一〇行目の「本件地積図」を「本件地籍図」と、同丁裏六行目の「一方」から八行目末尾までを「一方、都市計画法施行規則四五条による『様式一二』では、事業認可申請書に記載すべきものとされている同法六〇条二項一号の『収用又は使用の別を明らかにした事業地』は、都道府県、郡、市、区、町村、大字及び字をもって表すこととされ、『地番』まで記載することは要求されていない。これは、被告主張のとおり、地番を記載したとしても、それによって事業施行区域の具体的範囲を明らかにすることができず、結局は図面を用いなければ、事業地を精密に特定することができないこと(ちなみに、筆の区分がどのようになっているかは事業認可の効力とは直接的には関係がない。)、別途、実測平面図において事業地を特定することとしており(同法六〇条三項一号)、その公衆の縦覧(同法六二条二項、一項、六〇条三項一号)により関係者は事業地の範囲を了知し得ること、施行者による周知措置(同法六六条)という補完的な措置も講じられること、以上の理由によるものと解せられる。右のとおりであるから、地目地積一覧表及び地籍図は、実測平面図及び事業計画と法的に一体をなす補足資料と解するのは相当でなく、参考図書として添付されるにすぎないものと解するのが相当である。」と、三二丁表一行目の「起業者」を「施行者」と各改める。

4 (事業地の位置に関する部分)

三二丁裏一〇行目と末行との間に次のとおり加える。

「 原告らは、本件事業においては、事業地の範囲を縮小的に変更する手続き(都市計画法六三条)を取っていないとして、本件事業が違法である旨の主張もしているが、右説示によれば、前提において失当というべきである(ちなみに、昭和四六年四月二〇日付事業認可、昭和五二年三月二五日付、昭和五三年三月二八日付、昭和五八年三月二九日付及び昭和六〇年三月二六日付各事業計画変更認可の申請書に記載された『事業地』及び右各申請書に添付された『事業地を表示する図面』のうちの実測平面図〔乙第七号証ないし第九号証の各一、四及び第一〇、一一号証の各一、三〕を対比照合すれば、本件事業地の区域については、昭和四六年四月二〇日の事業認可以降昭和六〇年三月二六日の事業計画変更認可に至るまで、変更はなく同一であり、本件収用裁決時においても同様であることは明らかである。)。」

【当審における原告らの補充主張に対する判断】

―争点1(一)、同2(二)、(三)に関連する争点1(二)、同2(四)、(五)についての主張に対する判断―

1 原告らは、当審において、本件実測平面図(乙第一六号証)による本件事業地の区域の表示は「(権利者が)自己の権利に係る土地が・・・区域に含まれるかどうかを容易に判断することができるものでなければならない。」との都市計画法六〇条四項(三項一号)、一四条二項の要件を具備していないこと等を理由に、本件収用裁決ないしその前提となる本件事業認可の違法を主張(補充主張)する。

(一) そこで検討するに、都市計画は、都市における土地利用に関する計画であり、土地に権利を有する者に対して、直接土地利用上の制限が課せられるものであるから、実測平面図による事業施行区域の表示が不明確であってはならず、権利者が自己の権利に係る土地がその区域に含まれるかどうかを容易に判断することができるように表示されたものでなければならないことはいうまでもない。言い換えれば、右都市計画法の規定は、この趣旨に沿って事業施行区域を表示すべきことを都市計画事業の施行者に義務づけたものと解せられる。そして、実測平面図が事業認可の段階で作成されるものであって土地収用のための個別、具体的な手続きは別個に予定されていることを考慮すると、同規定のいう「(権利者が)自己の権利に係る土地が・・・区域に含まれるかどうかを容易に判断することができるもの」とは、実測平面図に表示された地形、地物等を基礎としつつ、権利者が既に知っていたか、若しくは知り得た事項をも参酌して、客観的、総合的にみて「自己の権利に係る土地が・・・区域に含まれるか、その可能性がある」との認識に一応達し得るならば、「容易に判断することができるもの」との要件を充足するものと解するのが相当である。

(二) これを本件についてみるに、以下の理由により、原告らが当然有しているはずの、原告らの権利に係る土地(本件収用地)の位置及び形状についての認識も参酌すれば、本件実測平面図(乙第一六号証)に表示された特徴のある地形に注意を払ったりスケールで測ったりすることによって、本件収用地が本件事業地の区域内(新住区域線の内側)に含まれるか否かを判断することは格別困難なことではなかったというべきである。

すなわち、本件収用裁決の裁決書(甲第一号証)末尾添付の地積測量図(原判決別紙地積測量図と同じ)の上部に表示された半月型の地形は、本件実測平面図(乙第一六号証)では、丸井パン須磨工場南東側にある溜池に該当するものであるが、甲第二号証(昭和四四年一二月二六日付の旧覚書)、甲第六八号証(原告光雄の陳述書)及び原審における原告中野照海本人尋問の結果によれば、原告光雄は、本件事業認可(昭和四六年四月二〇日)のかなり前から施行者である神戸市と旧東山上一一番一の取扱いに関して交渉を行っていたこと、原告政子は、同光雄の妻、原告照海は同光雄の子、原告公子は同照海の妻、原告博之、同幸子及び同みどりは、いずれも同照海の子であることが認められ、これに甲第五号証(神戸市作成の図面)には、半月型の地形に、溜池、99m2、12、中野照海の記載があること、甲第四六号証の一(昭和四五年二月二八日、中野光雄作製の土地所在地と題する図面)には、12、溜池の地形記載があること、甲第六二号証の一、二(昭和三八年一〇月一九日付地積測量図、昭和三九年三月一七日付地籍図〔いずれも土地家屋調査士作製、申請人中野光雄〕)には、12、溜池と記載した半月型の地形記載があることを併せ考慮すると、本件実測平面図(乙第一六号証)では、右半月型の地形に該当する箇所がやや不鮮明ではあるが、本件事業認可の時点において、原告らは、丸井パン須磨工場の建物との位置関係から、右該当箇所を容易に知ることができたものと推認される。そうだとすれば、原告らにおいて、本件実測平面図(乙第一六号証)で、丸井パン須磨工場南東側にある溜池を探し出し、右溜池から同図面に表示された本件事業地の区域線(新住区域線)までの距離をスケールで測り、同図面の縮尺表示に従い二千倍して距離を求める等すれば、溜池と新住区域線との位置関係や右距離から、「自己の権利に係る土地が・・・区域に含まれる」との認識を得ることはできたものというのが相当である。

ちなみに、(1)右地積測量図(原判決別紙地積測量図と同じ)の上部に表示された半月型の地形から、同図面表示の<1>及び<2>を結んだ収用線(本件収用地の西側境界線)までの距離をスケールで測り、同図面の縮尺表示に従い千倍して、距離(単位はメートル)を求め、(2)次に、本件実測平面図(乙第一六号証)で、右(1)の半月型の地形に該当する箇所(丸井パン須磨工場南東側にある溜池)を探し、同地形から新住区域線までの距離をスケールで測り、同図面の縮尺表示に従い二千倍して、距離(単位はメートル)を求め、(3)最後に、右(1)及び(2)で求めた距離を比較し、(1)で求めた距離の方が(2)で求めた距離よりも長ければ、本件収用地が本件事業地の区域内に含まれるということになるところ、実際の結果もそのようになっている。

2 原告らは、「都市計画法六二条二項及び一項並びに同法六〇条三項一号及び二号が、設計の概要を表示する図書のほか、実測平面図のみを公衆の縦覧に供すべきことを求めていること、実測平面図は、施行者が収用権を取得する事業施行区域を特定する唯一の図面であることからすると、権利者に代わり、測量士等が、実測平面図から特定の権利者の『権利に係る土地がこれらの区域に含まれるかどうか』を判断する場合にも(そのような判断が、同法六〇条四項及び同法一四条二項に鑑み、法的意味を持つか否かの議論は別として)、実測平面図のみが資料とされなければならない。しかるに、管村は、本件測量図(乙第一八号証)を作成するにあたり、本件実測平面図(乙第一六号証)以外の資料を基礎としているから、本件実測平面図(乙第一六号証)のみを唯一の資料として、同図面上の3、4、5の各ポイントの測設及び区域界線(新住区域線)の設定をすることはできず、結局、実測平面図だけで特定の権利者の『権利に係る土地がこれらの区域に含まれるかどうか』を判断することができないものといわざるを得ない」旨主張する。

しかしながら、右1(二)で認定したように、本件事業認可の時点(昭和四六年四月二〇日)で、原告らにおいて本件実測平面図(乙第一六号証)によって『自己の権利に係る土地が・・・区域に含まれる』との認識を得ることができたのであるから、たとえ、管村が、本件事業認可の時点から一七年余が経過し、現地及びその周辺の現況が変化したことが窺える昭和六三年七月から八月にかけて、本件測量図を作成し、右各ポイントを現地において測設する等の作業をするにあたり、本件実測平面図(乙第一六号証)のみならず、それ以外の資料を用いたとしても、それはいわば当然の措置であって、そのことをもって、本件実測平面図(乙第一六号証)がもともと都市計画法六〇条四項、一四条二項所定の区域表示機能を有していなかったとすることはできない。ちなみに、管村が用いた本件実測平面図(乙第一六号証)以外の資料のうちには、本件実測平面図(乙第一六号証)に表示されている座標方眼の交点(×印)の座標値を読み取るための公知資料ともいうべき国土地理院に由来する資料が含まれているし、管村がこれらの資料を用いたのは、時の経過に伴う現地及びその周辺の現況の変化に鑑み、本件測量図作成や現地測設の成果をより精度の高いものにするためであったものと推認される。したがって、原告らの右主張は採用できない。

3 原告らは、「神戸市と原告光雄とが旧東山上一一番一の取扱いについて交渉を重ねていたことは、昭和四四年一二月二六日付で両者の間に旧覚書(甲第二号証)が交わされていることから明らかである。そして、旧東山上一一番一の分筆(昭和四五年三月六日)当時、既に実施が予定されていた本件事業の必要上、施行者である神戸市において、旧東山上一一番一の一部を収用する必要が生じていたが、その全部を収用する必要はなかったため、当時の交渉担当者らが、原告光雄に対して、旧東山上一一番一を分筆し、右分筆後の東山上一一番一と東山上一一番六との境界線(分筆線、すなわち原判決別紙地積測量図表示の<3>、<4>、<7>及び<8>を順次結んだ直線。以下『<3>―<8>線』という。)を本件事業地の区域界線に一致させることで、旧東山上一一番一のどの部分が本件事業地の区域(新住区域線内)に含まれ、どの部分が含まれないかを明らかにするように行政指導した。そうだとすれば、本件事業認可時(昭和四六年四月二〇日)において、施行者である神戸市が<3>―<8>線を新住区域線として認識していたことは明らかであり、本件実測平面図(乙第一六号証)は、既に述べた理由により都市計画法六〇条四項、一四条二項に違反しているものの、右違反は、本件事業認可前に神戸市が取った代替措置、すなわち本件事業認可に先立つ右行政指導により、原告光雄の協力を得て分筆を実施し、同原告に対して新住区域線を明らかにすることによって解消したというべきである。したがって、東山上一一番一は本件収用地に含まれていない」とも主張する。

しかしながら、都市計画事業に先行して行われる事業用地の買収交渉において、施行者が権利者と買収区域についての交渉や現地立会い確認等を行ったとしても、それは相互に任意売買する土地の範囲を確認等するための作業にすぎず、それによって、事業地の範囲が確定されるものではないことは明らかである。そして、事業地の範囲は、その性質上、あくまでも事業認可申請書に記載された「収用又は使用の別を明らかにした事業地」及び同申請書に添付された「事業地を表示する図面」(位置図及び実測平面図)に基づく事業認可によって、当該事業計画に関連づけて、客観的に特定されるべきものである。したがって、事業認可前に施行者が行った個々の権利者との任意買収交渉や現地立会い確認等が、その後に作成される事業認可申請書や実測平面図及びこれらを前提とする事業認可の内容・効力を当然に羈束したり左右するものではないから、原告らの右主張は採用できない。

4 以上によれば、本件収用裁決は、本件事業認可で定められた事業地の範囲内にある土地について収用する旨の裁決をしたものであるから、何ら違法な点はない。

したがって、その余の点について判断するまでもなく、本件実測平面図(乙第一六号証)が都市計画法六〇条四項、一四条二項の要件を具備していないこと等を前提とする原告らの当審における補充主張はたやすく採用できない。

二  争点1(三)(本件収用地につき収用の必要性がないことによる本件収用裁決の違法)について

右争点についての判断は、原判決三三丁表一行目から三四丁裏一行目までに示されているとおりである。

ただし、原判決三三丁表一行目の「甲第二号証、第三号証、」の次に「第七号証の一、第一二号証、乙第二三号証、第二四号証、」を加え、三四丁表五行目)の「収用地上道路」を「本件収用地上道路」と改める。

三  争点1(四)(本件収用地の一部につき収用の必要性がないことによる本件収用裁決の違法)について

右争点についての判断は、次のとおり訂正等するほかは、原判決三四丁裏三行目から三八丁表一行目までに示されているとおりである。

【原判決の訂正等】

1 三四丁裏四行目の「乙第一八号証」を「乙第三号証、第一八号証」と、末行の「加えられたこと、右覚書によれば」を「加えられたこと(『その覚書』とは旧覚書のことである。)、新覚書によれば」と各改める。

2 三五丁表七行目の「本件測量図」を「横尾地区昭和五七年四月現況図」と改め、同丁裏一行目の「完成した道路」の次に「(本件収用地上道路)」を加える。

3 三七丁表四行目の「本件収用地上の道路」を「本件収用地上道路」と改める。

四  争点1(五)(本件収用裁決申請書添付の起業地を表示する図面の誤りによる本件収用裁決の違法)について

右争点についての判断は、原判決三八丁表三行目から同丁裏九行目までに示されているとおりである。

ただし、原判決三八丁裏二行目の「本件収用裁決申請は違法である」を「本件収用裁決申請は違法であり、これを看過した本件収用裁決も違法である」と、五行目の「しかし」から七行目末尾までを「そうすると、いずれの図面によっても本件収用地は本件事業地内にあるから、被告が、本件事業認可申請書添付の本件実測平面図(乙第一六号証)と本件収用裁決申請書添付図面(乙第一号証の六)とを比較照合した結果、本件収用地が事業認定を受けた起業地内にあるものと判断し、本件収用裁決をしたことが違法であるとはいえない。」と各改める。

五  争点1(六)(土地調書の違法による本件収用裁決の違法)について

右争点についての判断は、原判決三八丁裏末行から三九丁表五行目までに示されているとおりである。

六  争点1(七)(原告らの替地による補償要求に対して替地補償の裁決をしなかったことにつき、被告に裁量権の逸脱があったことによる本件収用裁決の違法)について

右争点についての判断は、次のとおり訂正等するほかは、原判決三九丁表七行目から四二丁表七行目までに示されているとおりである。

【原判決の訂正等】

1 三九丁表七行目の「甲第一号証ないし第四号証、第一〇号証の一ないし七」を「甲第一号証ないし第四号証、第七号証の一、第一〇号証の一ないし七、第五二号証」と改める。

2 四〇丁表九行目から一〇行目の「合計六三六一・四二平方メートルの造成済みの土地」を「合計八〇七四・八七平方メートルの土地」と、同丁裏末行の「本件収用裁決申請書」を「本件収用裁決書(甲第一号証)」と各改める。

七  争点1(八)(本件収用裁決の申請につき申請権の濫用があったことによる本件収用裁決の違法)について

右争点についての判断は、原判決四二丁表九行目から四五丁裏六行目までに示されているとおりである。

ただし、原判決四五丁表一行目の「右一1」を「右一1(一)(1)」と改める。

八  争点2(一)(違法性の承継)について

右争点についての判断は、次のとおり訂正等するほかは、原判決四五丁裏八行目から四六丁裏九行目までに示されているとおりである。

【原判決の訂正等】

1 四五丁裏一〇行目の「限られることなる。」を「限られることになる。」と改める。

2 四六丁裏三行目の「事業認定」の次に「(なお、本件事業は都市計画事業である〔新住法五条〕ところ、都市計画法七〇条により、施行者である神戸市は、土地収用法二〇条所定の『事業の認定』に代わる都市計画法五九条所定の『事業の認可』を兵庫県知事から得ている。)」を加える。

九  争点2(二)(事業地の特定が欠けることによる本件事業認可の違法)、同(三)(事業地の特定が不正確なことによる本件事業認可の違法)、同(四)(実測平面図が区域表示機能を果たしていないことによる本件事業認可の違法)及び同(五)(事業計画に関する記載が区域表示機能を果たしていないことによる本件事業認可の違法)について

争点2(二)、(三)についての判断は、原判決四六丁裏末行から四七丁表四行目までと同六行目から同丁裏七行目までに示されているとおりであり、原告らの当審における補充主張(争点1(一)、同2(二)、(三)に関連する争点1(二)、同2(四)、(五)についての主張)に対する判断は、前記一のとおりである。

ただし、原判決四七丁表二行目の「右一2」を「右一2(二)」と、三行目の「現地に復元することができる」を「現地において測設することができる」と、七行目と末行の「本件地目地積一覧表及び本件地積図」(二箇所)を「本件地積一覧表及び本件地籍図」と、一〇行目の「右一1」を「右一1(二)」と、同丁裏二行目の「地目地積一覧表及び地積図は正式な図書ではなく」を「地目地積一覧表及び地籍図は」と、三行目から四行目の「本件地目地積一覧表及び本件地積図」を「本件地積一覧表及び本件地籍図」と各改める。

一〇  争点2(六)(新住法三条三号に違反していることによる本件事業認可の違法)について

右争点についての判断は、原判決四七丁裏九行目から四八丁裏五行目までに示されているとおりである。

一一  結論

以上の次第で、原告らの本訴請求を棄却した原判決は相当であり、本件控訴は理由がないから棄却することとし、控訴費用の負担につき、行政事件訴訟法七条、民事訴訟法九五条、八九条、九三条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 上野茂 高山浩平 長井浩一)

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