大阪高等裁判所 平成8年(ネ)1629号 判決 1998年10月23日
平成八年(ネ)第一六二九号被控訴人兼同第一七三五号控訴人
株式会社眞壁組
(以下「一審原告会社」という。)
右代表者代表取締役
眞壁明
平成八年(ネ)第一六二九号被控訴人(以下「一審原告明」という。)
眞壁明
平成八年(ネ)第一六二九号被控訴人(以下「一審原告和子」という。)
眞壁和子
平成八年(ネ)第一六二九号被控訴人(以下「一審原告カル」という。)
眞壁カル
右四名訴訟代理人弁護士
坂井良和
同
吉岡一彦
同
岸本淳彦
同
菅原英博
平成八年(ネ)第一六二九号控訴人兼同第一七三五号被控訴人
全日本建設運輸連帯労働組合関西地区生コン支部
(以下「一審被告」という。)
右代表者執行委員長
武建一
右訴訟代理人弁護士
森博行
同
永嶋靖久
主文
一 本件各控訴をいずれも棄却する。
二 各控訴費用は各控訴人の負担とする。
事実及び理由
第一申立
一 一審原告会社
1 原判決中一審原告会社敗訴部分を取り消す。
2 一審被告は、一審原告会社に対し、
(一) その組合員又は第三者をして、一審原告会社の取引先に対し、一審原告会社との取引を行わないこと又は一審原告会社との既存の取引にかかる契約を解除することを要請する旨を記載した書面を送付、持参させるなどして、一審原告会社の営業を妨害してはならない。
(二) その組合員又は第三者をして、一審原告会社との契約により生コンクリート会社が一審原告の取引先の工事現場へ生コンクリート及びその材料を搬入するのを実力をもって妨害してはならない。
(三) 原判決により認容された額のほか一億二一五六万〇〇五六円及びこれに対する平成二年二月一五日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。(一審原告会社が一億二二四二万五六五六円と控訴状に記載している部分は計算の誤りと解する。)
3 一審被告の控訴を棄却する。
4 訴訟費用は第一、第二審を通じて一審被告の負担とする。
5 2の(三)につき仮執行宣言
二 その余の一審原告ら
1 一審被告の控訴をいずれも棄却する。
2 控訴費用は一審被告の負担とする。
三 一審被告
1 原判決中一審被告敗訴部分を取り消す。
2 一審原告らの請求をいずれも棄却する。
3 訴訟費用は第一、第二審とも一審原告らの負担とする。
第二主張
原判決の事実欄第二に記載のとおりであるから、これを引用する。
第三当裁判所の判断
当裁判所も、原判決主文の限度で一審原告らの請求を認容すべきであると判断するものであるが、その理由は、以下に付加訂正する(ただし誤記等の形式的な訂正はしない。)ほかは原判決の理由欄に記載のとおりであるから、これを引用する。
一 原判決五三頁二、三行目「要請事項に付加して「尚、」を「要請事項の二番目のものに代えて、「労使紛争が解決するまで真(ママ)壁組グループ(日本一コンクリート、国土一コンクリート、五洋一コンクリート)との取り引きを見合わせていただくことを要請します。尚、」と、同五行目「右の記載」から同七行目「しかしながら、」までを次のとおりに、それぞれ改める。
「 右のうち、平成元年七月一八日付、同月二二日付の各要請書は、その当時は未だ一審被告が一審原告会社、三社及び成進に対し団体交渉を申し込んでいる段階であり、一審被告はその争議行為と称する後記搬入阻止行為等を行っていなかったのであるから、一審被告が一審原告会社らとの紛争を解決するについて、一審原告会社の取引先に協力を求める文書と見るべきであり、その配布行為をもって不法行為と認めることはできない。
しかしながら、平成二年四月三日付及び同年五月一日付の各要請書の配布行為は同様に解し得ない。すなわち、右各要請書の文面には真(ママ)壁組グループとの取引の抑制や契約の解除という取引先の業務に直接関係する要請事項が記載されているうえ、同年四月一一日以降一審被告は争議行為に入り、組合員を動員して生コンの搬出、搬入を阻止したりしており(<証拠略>)、また、」
二 原判決五四頁九行目「右各要請書は、」の次に「後記搬入阻止による妨害行為と相俟って、」を加え、同一二行目冒頭から同五五頁七行目末尾までを削除し、同八行目「(七)」を「(六)」と改め、同行「取引先に」の次に「平成二年四月以降」を、同五六頁一一行目末尾に「そして、このことにより、一審原告会社は予定されていた生コンクリートの納入をすることができなかったのであり、一審被告の組合員による一審原告会社の業務の妨害があったというべきである。」をそれぞれ加え、同六〇頁五行目「<証拠略>」を「<証拠略>」と改める。
三 原判決六六頁二行目「取締役」を「監査役」と、同四行目「吉川は、」を「一審原告会社は、」と、同六行目冒頭から同八行目「た。」までを「右土地は、一審原告明が昭和四五年に大阪府から払い下げを受けた公有水面埋立地であるが、一審原告会社は、右建設の際、従来の事業に加えて生コンクリートの製造を行う旨大阪府に届け出ている。」とそれぞれ改め、同六七頁二行目「付近の」の次に「岸和田市所在の」を加え、同四行目「原告明」を「一審原告会社」と改め、同九行目「原告会社所有の」を削除する。
四 原判決六八頁一一行目の次に行を改めて以下のとおりを加え、同一二行目「(6)」を「(7)」と改める。
「(6) 一審原告会社は、建設業者からの生コンクリートの注文を受けてこれを販売しているが、自らは生コンクリートの製造を行わず、条件の許す限りこれを三社に発注するとともに、三社に対し原材料である骨材及びセメントを販売し、三社は製造した生コンクリートを指定された現場に納入する方法で、これを一審原告会社に販売している。三社は独自の営業部門を有しておらず、原材料の購入先、生コンクリートの販売先はほとんどすべて一審原告会社である。」
五 原判決七〇頁七行目の次に行を改めて以下のとおりを加える。
「 なお、昭和六〇年一〇月一日の日本一の操業開始に先立ち、一審原告会社、日本一及び成進の間では、その取引関係について交渉、協議がなされ、契約書案や覚書案が作成されたり、一部の当事者がこれに記名押印したりしている。その書類の内容は次のとおりである。まず、(証拠略)は、一審原告会社、日本一及び成進間の商取引契約書案であり、日本一の記名押印のみがあるところ、これによると、日本一が成進に、成進が一審原告会社に順次生コンクリートを販売し、代金は一審原告会社が日本一の販売代金分を日本一に直接支払い、成進の販売代金と日本一の販売代金との差額を成進に支払うとされていた。(証拠略)は、右(証拠略)に基づく一審原告会社と成進との覚書案であり、一審原告会社の記名押印のみがあるところ、主として配送手数料を具体的に定めたものであり、ミキサー車一台についての一立方メートル当たりの単価、月間出勤稼働日数二五日、その過不足発生時の処理、有料道路通行料の一審原告会社負担等が記載されている。その内容は、一審原告会社が成進に運送を委託するという点と単価を除き、後記成進と運転手との間で実施された内容と同じである。(証拠略)も同内容の覚書案で一審原告会社のみの記名押印があるが、(証拠略)よりも簡略である。(証拠略)は、日本一を貸主とする大型ミキサー車八台、小型ミキサー車四台のリース契約書案であり、日本一の記名押印のみがあるところ、リース期間は三〇回で、リース料一回分の約束手形三〇枚を振り出して支払う旨の記載がある。(証拠略)は日本一と成進との間の看板契約書であり、両社の記名押印がある。これによると日本一が成進にリースしたミキサー車に日本一の社名及びマークを書き入れることとし、日本一は成進に看板料として毎月車両一台につき五〇〇〇円を支払うこととされている。(証拠略)は日本一と成進との間の無線取付契約書であり、両社の記名押印がある。これによると日本一が成進にリースしたミキサー車に日本一が業務用無線を取り付けることとされており、その使用料の項は抹消されている。」
六 原判決七二頁九行目「辻畑は、」から同一一行目末尾までを「辻畑は、右一二台分の購入代金を成進振出の約束手形による三〇回の分割払方式で支払うこととし、更に、これを運転手に負担させ、運転手が毎月の報酬の中からリース料名下にこれを三〇回に分けて支払い、完済後は運転手がミキサー車の所有権を取得するとの方法を採ることとした。」と改め、同七三頁三行目の次に行を改めて以下のとおりを加える。
「 なお、辻畑は、当初は一人の運転手が複数のミキサー車を保有し、補助者に運転させて使うこと(二台持ち、三台持ち)を許さなかったが、昭和六二年以降のミキサー車の増車を機に、補助者について成進の承認を受けることを条件としてこれを認めるに至り、少なくとも三名はいた二台持ち、三台持ちの運転手にはその保有台数による運賃を一括して当該運転手に支払うようになった。」
七 原判決七三頁末行末尾に続けて「ただし、大型ミキサー車については運転手がそのリース料の支払いを終了した後は最低保障はないものとされるようになった。また、運転手の出勤日数が一か月二五日に満たないときには定額に不足日数を乗じた金額を報酬から差し引かれることとされていた。」を、同七四頁四行目末尾に「なお、消費税は、平成元年六月二五日の支払分以降、支払われている。」をそれぞれ加える。
八 原判決七五頁七行目冒頭に「次のとおりである。まず、一審原告会社は、建設業者等から注文を受けると、施工者名、工事現場名、品名、納入数量、納入時間及び現場見取り図等を日本一に連絡し、日本一に対し生コンクリートを発注する。日本一では、右連絡に基づき、施工者名、工事現場名、品名、納入数量、納入時間等が記載された出荷予定表を作成し、」を加え、同一一行目「右タイ」から同末行「運転手は、」までを「右タイムレコーダーは、一審被告日本一分会の公然化の直後頃に撤去された。指定された出勤時刻は、平均して午前七時ないし七時半頃が多く、早いときには午前三、四時頃、遅いときでも午前八時頃であったが、翌日の運送が見込まれない場合でも出勤時刻は指定されていた。運転手は、出勤後」と改める。
九 原判決七六頁三行目末尾に続けて次のとおりを加える。
「土井による呼び出しの順番は運転手と土井との話し合いで運転手相互間に不平等のないように決められており、出発時刻や現場到着時刻は生コンクリートの固結性に対処するためピッチと呼ばれる分単位で指定されていた。なお、運転手は土井又は辻畑が終業を伝えるまでは待機しておく必要があったが、右待機時間中は成進や日本一の他の業務に従事させられることはなく、運送がないことが見込まれる場合には、土井に告げて帰宅することも可能であった。しかし、空き時間中や休日に他業者の委託を受けて生コンクリートを搬送することは事実上不可能であった。また、運転手には別紙添付の「作業標準」と題する書面(<証拠略>)が配布されており、これに従うこととされていた。右作業標準は、その記載内容からして日本一が昭和六〇年九月二五日に制定したものと認められる。これには、積み込み前に関する待機位置・残り水の有無の確認・ドラムの回転方向・積み込み指示時の注意、積み込み中及び積み込み後に関する位置の確認・積み込み時の高速回転・積み込み完了の確認・ホッパー洗浄の禁止・水コックのゆるみ点検・納入伝票の確認、輸送中に関するドラムの回転方向確認・スピードの注意・荷こぼれ等のないような運転方法、現場到着時に関する作業時の行動・現場の確認・現場の事故防止・待機時間・進入路不良時の位置、荷卸し時に関する荷卸し直前の攪拌・現場での注水禁止・排出速度、荷卸し後に関する受領書の受け取り・掃除・余剰のコンクリート処理方法、水処理作業に関する洗浄作業手順・戻りコンクリートの処理手順などであり、その各項目毎に詳細な指示、注意事項が記載されている。」
一〇 原判決七六頁五行目「四枚綴り」の次に「。これには納入場所、運搬車番号、出発時刻、到着時刻、納入容積、納入品の種別・区分等が記載されている。」を加え、同一〇行目「後回しにされるだけで、」を「後回しにされ、当日の合計運送量に影響を受けることはあったが、その他には」と、同七七頁五、六行目の各「代金」を「リース料」とそれぞれ改め、同一〇行目「安全帽」の次に「合羽、防寒着」を加え、同八四頁七行目「同日付けの」を「平成元年六月一二日付けの」と改める。
一一 原判決八七頁一二行目「原告会社は、」の次に「労組法七条の」を加え、同末行「原告会社」の次に「の生コンクリート製造業界への参入を契機として、その主導のもとに設立ないし整備された会社であり、一審原告会社」を、同八八頁九行目の次に行を改めて以下のとおりを、それぞれ加える。
「 ところで、一般に使用者とは労働契約上の雇用主をいうものであるが、労組法七条が団結権の侵害に当たる一定の行為を不当労働行為として排除、是正して正常な労働関係を回復することを目的としていることにかんがみると、雇用主以外の事業主であっても、労働者を自己の業務に従事させ、その労働者の基本的な労働条件について、雇用主と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にある場合には、その限りにおいて、右事業主は同条の使用者に当たるものと解するのが相当である(最高裁判所第三小法廷平成七年二月二八日判決、民集四九巻二号五五九頁参照)。
(一) そこで、まず、そもそも成進の運転手が成進との関係において労働者であるか否かについて検討すると、運転手は消費税を含む月々の報酬からミキサー車のリース料を支払い、完済後はその所有権を取得していること、その燃料費、維持管理費も運転者(ママ)が負担していたこと、運転手は確定申告をし、源泉徴収はなされていないこと、一部であるとはいえ、運転手の中には二台持ち、三台持ちの者がいたことからするならば、運転手について事業者としての性格を否定することはできない。しかしながら、ミキサー車のリースないし所有はもともと運転手の募集においてそのような条件を成進が定めたものであって、もともと所有していた車両の持ち込み運転手の場合とは趣を異にすること、二台持ち、三台持ちの場合もその補助者については成進の承諾を要していたことからするならば、これらの要素を決定的なものとして重視することはできない。のみならず、運転手は成進の業務従事の指示等に対し諾否の自由を事実上持たず、また、運送のない場合も出勤時刻を指定され、手待ち時間に他の業務に就くことを指示されることはなかったものの、配送のための呼び出しがあるまで即座に対応できる場所に待機し、出発時刻や到着時刻は分刻みで指定され、業務遂行方法についても積み込み前、積み込み時、積み込み後、輸送中、現場到着時、荷卸し時、荷卸し後、水処理方法等を配布された作業標準により極めて詳細に指示されており、右指示内容は、運送という業務の性格上当然と考えられるものを超えていたというべきこと(例えば水処理作業のうち戻りコンクリートの処理の項参照)、報酬も出来高制として定められているものの、最低保障があり、生活保障的要素が強く、特に小型車の場合は月間運送量が事前の説明に反して少なく最低保障額を超えることは少なかったこと(<証拠略>)、月間出勤日数を二五日と定められ、これを下回る場合には報酬額を減額されていたこと、運転手は成進の名前の入った制服を給付され、その着用を義務付けられていたこと等の事情をも総合するならば、運転手は成進の指揮監督の下で労務を提供していたと評価するのが相当である(以上につき最高裁判所第一小法廷平成八年一一月二八日判例時報一五八九号一三六頁等参照)。
(二) 次に、運転手と日本一との関係について検討すると、前記のとおり、運転手の日常業務についての(ママ)現実的かつ具体的に指示していたのは成進の土井ないし辻畑であり、日本一の従業員がこれを行っていたことを認めるに足りる証拠はない。もっとも、前記詳細な指示事項の記載された作業標準は日本一が作成したものと認められるが、それが運転手に配布されたのは成進を通じてのものであり、これをもとに指示をしていたのは成進であると評価することができるし、日本一の従業員がそのような具体的指示をしていたことを認めるべき証拠はないうえ、運転手の基本的労働条件のうち報酬、労働時間、休息、安全性、補償、訓練などについて日本一が現実的、具体的な支配、決定をしていたことを認めるべき事情も証拠上見当たらない。そうすると、日本一の吉川はミキサー車のリース料の支払いを終えるまではその使用名義人であり、日本一が当初ミキサー車を購入していた可能性が高いが、このことや日本一がミキサー車に業務用無線機を設置し、一審被告公然化まではミキサー車の保管場所を提供していたことを考慮しても、日本一を労組法七条の使用者に当たると評価することはできない。
(三) また、一審原告会社も労組法七条の使用者に当たるとは認めがたい。確かに、一審原告会社は、日本一(ないし三社)及び成進の設立ないし整備に主導的な役割を果たしているし、前記認定の当初の契約書案や覚書案の内容からして明らかなように、一審原告会社と成進とは運転手の報酬額や労働時間に関して協議をしており、現実に実施された報酬額の決定方式もその単価を除いて右覚書案の内容に沿っていること、生コンクリートの固結性からして生コンクリートの販売においては製造した生コンクリートを速やかに現場に配送することが必要不可欠であり、その意味において成進の行っていた生コンクリート運送業務は、一審原告会社の行う生コンクリートの販売業務の完成行為としてその一部に組み込まれているといえ、一審原告会社にとって成進をその統制下におくことは重大な関心事項であったと考えられること、一審原告会社のする生コンクリートの受注内容が成進と運転手との間の報酬額、勤務時間に影響を及ぼすことは否定できないこと、成進は株式会社であるとはいえ、実質的には固有の事務所も所有せず、日本一の事務所に机と電話を持ち込んでミキサー車の手配をするのがほとんど唯一の業務であり、しかも、いわゆる白ナンバーの荷主限定会社であり、その収益も運転手の報酬から一定割合の金額を取得することによるものであって、その会社としての実態は甚だ脆弱であることなどからするならば、抽象的には一審原告会社は運転手の基本的労働条件である報酬や労働時間、休息に関して影響を及ぼす地位にあることは否定できない。
しかしながら、一審原告会社と成進との間には資本関係、役員関係において深いつながりがあるとは認められないうえ、一審原告会社が、具体的に運転手の労働条件について指示をしたというような事実も見当たらないし、そのような体制になっているとも認めがたい。そうすると、一審原告会社が、運転手の基本的労働条件について、成進と同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にあるとまではいいがたい。
もっとも、前記認定のとおり、一審原告明と武が一審原告会社、日本一、国土一や成進との間の紛争を解決するため、田中を仲介に立てて協議を行ったのではあるが、右紛争が日本一、国土一などと連携関係を持つ一審原告会社の営業にも影響を及ぼすことは明らかであり、一審原告会社としてもこれに無関心でいることはできないものであることを考えれば、一審原告明が、一審原告会社の代表者としての立場から、右紛争の早期かつ一括的な解決を目指して右協議に臨んだことも理由があるといえるのであり、このことをもって、一審原告会社が運転手の使用者たる立場にあることを根拠付けることはできない。」
一二 原判決八九頁一二行目から同九二頁九行目までを次のとおりに改める。
「4 前記2の(一)のとおり、成進は労組法七条の使用者に該当するものというべきであり、成進が一審被告の団体交渉の申し入れに対しこれを拒否した行為は不当労働行為に該当する。そこで、一審被告がこれに対抗する手段としてした要請書の配布ないし生コンクリートの搬入阻止行為が、争議行為として適法か否かについて判断すると、争議行為の本質は労働者が団結して労働力を使用者に利用させないことにあるのであって、本件のように、単に労務の不提供に止まらず、成進の取引先である日本一やその取引先である一審原告会社も労組法七条の使用者であるという前提のもとに、一審原告会社の取引先に対して言外に一審原告会社の生コンクリートの搬入、搬出の阻止をほのめかして取引の停止や解除を求めたり、取引先現場に多数で押し掛けて一審原告会社の生コンクリートの搬入を阻止する行為は、争議行為の範囲をはるかに越えており、その正当性を認めることはできないものというべきである。また、一審原告明、同和子、同カルに対する前記街頭宣伝による侵害行為が、一審被告の争議行為として正当性を認め得ないのも明らかというべきである。」
一三 原判決九七頁九、一〇行目「本件口頭弁論終結時(平成七年一二月二二日)までの間に五年以上を経過していること」を「当審口頭弁論終結時(平成九年一二月四日)までの間に七年以上を経過していること」と改める。
よって、原判決は相当であるから、本件各控訴をいずれも棄却することとし、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 福富昌昭 裁判官 古川正孝 裁判官 塩川茂)