大阪高等裁判所 平成8年(行コ)29号 判決
事実及び理由
第三 争点に対する判断
一 争点1(住民監査請求前置の有無について)
当裁判所も、本件訴えは、適法な住民監査請求を経ているものと判断する。その理由は、原判決九枚目表四行目から同一〇枚目裏四行目までに記載のとおりであるから、これを引用する。
二 争点2(差止請求の適法性について)
1 公金支出の差止請求について
原判決は、地方自治法二四二条の二第一項一号に基づく差止請求は、違法な財務会計上の行為が行われることが相当の確実さをもって予測される場合に限り許されるところ、本件においては、本件建替事業に係る違法な公金支出が行われることが相当の確実性をもって予測される場合に該当しないとして、右公金支出に係る差止請求を不適法な訴えと判断した。しかし、地方自治法二四二条の二第一項一号に基づく差止請求は、差止めの対象である財務会計上の行為が行われることが相当の確実さをもって予測される場合に限り許されるものと解されるが、当該行為が違法であるか否かは専ら実体法上の判断であり、当該行為に違法性のあることが右差止請求の訴えの適法要件であると解することはできない。これと異なる原判決は差止請求の適法性の要件を誤ったもので、失当である(なお、本件建築請負契約が締結されていることからしても、右公金支出がなされること自体は確実であると認められる。)。
もっとも、原判決は、本件建替事業に係る公金支出が違法でないとの実体判断を既にしていると解されないではないが、当審において控訴人は、右公金支出の違法事由として本件建築請負契約が指名競争入札によったことを新たに主張しており、この点についても更に審理を尽くす必要が認められるので、原則に従い、右不適法とされた訴えを差し戻すのが相当である。
2 建築工事の続行の差止請求について
地方自治法二四二条の二第一項一号に基づく差止請求の対象は、財務会計上の行為に限ると解されるところ、建築工事の続行は、右にいう財務会計上の行為ということはできないことが明らかであるから、同請求に係る訴えは不適法というほかない。
三 争点3(請求の特定の有無について)
本件建築請負契約に係る被控訴人山田勇、同今堀富三、同川崎政嗣、同株式会社淺沼組、同株式会社安藤建設に対する請求及び本件委託契約に係る被控訴人中川和雄、同川上勇、同難波敏廣、同株式会社ジャスに対する請求については、当審において請求の趣旨が補正され、いずれもその違法事由及びこれに基づく少なくとも一〇〇円の損害賠償金ないし不当利得金の発生があると主張されており、請求の特定に欠けるところはなく、右各訴えは適法である。
第四 結論
以上のとおり、当審で変更された訴えである被控訴人大阪府知事、同大阪府出納長、同大阪府建築部住宅建設課長に対する本件建替事業に係る建築工事の続行の差止請求は不適法であるから、右訴えを却下し、その余の本件控訴に係る訴えはいずれも適法であるところ、これと異なる原判決は失当であるから、これを取り消した上、同部分を大阪地方裁判所に差し戻すこととし、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 蒲原範明 裁判官 下方元子 塚本伊平)