大判例

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大阪高等裁判所 平成9年(う)916号

右の者に対する所得税法違反被告事件について、平成九年八月二五日和歌山地方裁判所が言い渡した判決に対し、被告人から控訴の申立があったので、次のとおり判決する。

検察官 村上秀夫 出席

主文

本件控訴を棄却する。

当審における未決勾留日数中一五〇日を原判決の懲役刑に算入する。

理由

本件控訴の趣意は、弁護人滝口克忠作成の控訴趣意書及び控訴趣意補充書記載のとおりであるから、これらを引用する。

論旨は、原判決の量刑不当を主張し、懲役刑については刑の執行を猶予すべきであり、罰金刑についても高額すぎるというものである。

しかし、記録を調査し、当審における事実調べの結果を併せて検討しても、原判決が量刑の理由として説示するところにより懲役一年の実刑及び一二〇〇万円の罰金刑に処したのはいずれも相当であって、被告人に同種の前科がないこと、本件各逋脱所得税については、本税のほか重加算税等の付加税も既に納付済みであること、その他被告人の健康状態や反省状況等所論の諸点を十分考慮しても(なお、所論は、本件各逋脱工作における被告人の関与の程度について、被告人は、北島産業株式会社の下請作業をしたにすぎず、従犯的であった旨主張するが、被告人と他の共犯者との関係は、それぞれの業種に応じて役割を分担し、互いに能力を利用しあって協力したことが認められるのであって、被告人が従犯的であったとみるのは相当ではない。)、懲役刑の執行を猶予すべき事案とは考えられず、罰金額についても原判決の量刑が不当に重いとはいえない。論旨は理由がない。

よって、刑事訴訟法三九六条により本件控訴を棄却することとし、当審における未決勾留日数の算入につき平成七年法律第九一号による改正前の刑法二一条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 青木暢茂 裁判官 梶田英雄 裁判官 佐野哲生)

控訴趣意書

所得税法違反 川波重信

右の者に対する頭書被告事件につき、平成九年八月二五日和歌山地方裁判所が言い渡した判決に対し、弁護人から申し立てた控訴の理由は左記のとおりです。

平成九年一一月一八日

右被告人弁護人

弁護士 滝口克忠

大阪高等裁判所 第一刑事部 御中

原判決は検察官の求刑懲役二年及び罰金一八〇〇万円に対し、被告人を懲役一年、罰金一二〇〇万円、未決勾留日数五〇日を刑に算入する旨の判決を言い渡しましたが、右刑の量刑は実刑である点また罰金金額が高額である点、本件諸情状に鑑み著しく重きに失し不当であるから、原判決は到底破棄を免れないものと思料します。

右量刑はつまるところ被告人が本件各犯行に関与し、その報酬等として合計一〇〇〇万円余りの利得を得ながらこれを本件納税者に返還する等し、いわゆる利得の吐き出しをしていないことに基因していると思料されるが、被告人にはなお以下の諸情状があります。

第一 被告人にはこれまで業務上過失傷害、覚せい剤取締法違反幇助の前科二犯ありますが、いずれも相当年数を経た上、罰金刑になるか執行猶予を付された軽微な事案で本件は実質上初犯というべきであり、勿論、本件同種前科、前歴はないので、この点は量刑上強く斟酌されるべきであります。

第二 本件逋脱の規模ですが、共犯者上野俊数分が約三二三四万円余りで、共犯者藤井秀紀分が約五七七七万円余りの合計約九〇一一万円余りであって多額な事案ではなく、近時逋脱額が億単位にのぼる逋脱事犯が続出していることと対比すると、ごく小規模にして軽微な事案であることは明らかであり、この点も量刑上斟酌されるべきであります。

第三 本件逋脱の手段、方法についても納税者に架空の連帯保証債務があるように各書類を偽造するなどして一見悪質であるかのようですが、国税当局がこれら連帯保証債務の有無を裏付け調査をすれば、たちまちにして架空であることが発覚するように極めて稚拙なもので、強い反倫理性は認められません。

被告人は本件逋脱の実行行為を主になってやっていますが、これら逋脱は元々、北島産業株式会社の関係者らが発案し、被告人はその下請作業をしていたもので、その見地からすれば従犯的存在であります。

第四 被告人は本件により一千万円余りの報酬を得て不法な利得を得ておりますが、これを納税者である右上野及び藤井に返還することを堅く決意しており、自己において金員を貸し付けた先からこれを回収すべく努力し、拘置所においても各貸付先に手紙を出すなどしているものの、被告人が本件で実刑となったため、これまで被告人から金員を借用していた者らは何とか返済すると言っていたのが、被告人が収監中であるのを奇貨とし手のひらを返した如く被告人に返済しないままとなっております。

即ち、被告人は本件利得が手元にありながら本件納税者に返還しないのではなく、返還したくてもできない状態になっているのであります。

ともあれ、被告人が何とか本件控訴中に右返還に努力する意思に変わりはないのです。

第五 前記上野及び藤井の努力、尽力により本件本税は既に納付済で、また重加算税等の付加税についても納付済であるので国の課税権についてもいわば被害回復済みというべきであります。

第六 被告人の反省の情、顕著である上、既に十分に精神的、肉体的制裁を受けています。

被告人は平成八年一〇月、脳溢血で倒れ、その予後が思わしくなかったところ、本件で平成九年二月五日から勾留され、既にその期間も九ヶ月半となり、実質上懲役刑の服役を済ませたというべきであります。

また本件罰金刑についても前記のとおり、被告人に支払能力もなく金一二〇〇万円を支払えないと三〇〇日即ち約一〇ヶ月の労役場留置とならざるを得ず、被告人にとっては余りにも苛酷でありますので、大幅に減額されるべきであります。

以上の理由により、被告人に対し、懲役一年及び罰金一二〇〇万円を言い渡した原判決の量刑は著しく重きに失し不当であるから、これを破棄した上、懲役刑については執行猶予に付し、また罰金刑については大幅に減額された相当な裁判を求めるため、本件控訴に及んだ次第です。

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