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大阪高等裁判所 平成9年(ネ)698号 判決 1998年3月18日

大阪市北区松ヶ枝町六番三号

控訴人(原告)

篠原電機株式会社

右代表者代表取締役

篠原耕一

右訴訟代理人弁護士

武藤信一

右訴訟復代理人弁護士

渡部雄策

右補佐人弁理士

折寄武士

大阪府守口市南寺方東通五丁目一九番一八号

被控訴人(被告)

株式会社カメダデンキ

右代表者代表取締役

亀田喜一

右訴訟代理人弁護士

谷口由記

右補佐人弁理士

杉本丈夫

主文

一  本件控訴を棄却する。

二  控訴費用は控訴人の負担とする。

事実及び理由

第一  控訴の趣旨

一  原判決を取り消す。

二  被控訴人は、原判決別紙第一物件目録(一)記載の物件を生産し、譲渡し、貸し渡し、譲渡若しくは貸渡しのために展示し又は輸入してはならない。

三  被控訴人は、控訴人に対し、四五〇万円及びこれに対する平成六年三月一九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

四  訴訟費用は第一・二審とも被控訴人の負担とする。

第二  事案の概要

(以下において、控訴人を原告、被控訴人を被告といい、その他の略称は原判決の例による。)

事実関係、原告の請求及び争点については、原判決の「第二 事案の概要」に記載のとおりであるから、これを引用する。

第三  争点に関する当事者の主張

次に付加・訂正する他は、原判決の「第三 争点に関する当事者の主張」に記載のとおりであるから、これを引用する。

一  原判決二八頁初行「アルミ押出形材」の前に「アルマイト加工仕上げをした」を、同三行目「四角形」の前に「アルミ押出形材を四角形に曲げ加工したのち、端どおしを突き合わせ溶接することにより、」を、同四行目「丸く」の前に「アール度が約五八ミリメートルの曲率半径となるように」を各加える。

二  原告の当審における新たな主張

1  原判決は、本件特許公報第二欄第一七行ないし第一九行の「窓ガラス取付に熟練を要しないものとしてはガラスの周辺にパッキングを装着してこのパッキングを表裏の金属枠で挾む」形態が、従前の技術として存在したものであり、格別新規な構成ということができないとしている。

2  しかし、特許明細書に従前技術として挙示されていても、それが直ちに公知公用の技術であることを意味するものではない。公知でなくても発明の特徴を明確にするために、特許出願人の試作の過程での実施形式が従来技術として表明されることもある。

本件の発明の場合もまさにこれに該当する。

第四  当裁判所の判断

一  当裁判所も原告の請求は理由がないものと判断するが、その理由は、次に付加・訂正する他は、原判決四八頁五行目から同七九頁末行目までに記載のとおりであるから、これを引用する。

1  原判決四九頁六行目「とからなるパッキング5」を削除する。

2  同五六頁四行目冒頭に「そして、」を加える。

3  同五八頁六行目「そして」を「ところで」に改める。

4  同六二頁六行目「本件明細書記載の<2>」を「本件特許公報2欄17行ないし22行、別添実用新案公報<乙第二号証>2欄7行ないし12行)」に改める。

5  原判決六九頁三行目「アルミ」の前に「アルマイト加工仕上げをした」を、同五行目「四角形」の前に「アルミ押出形材を四角形に曲げ加工したのち、端どおしを突き合わせ溶接することにより、」を、同六行目 「丸く」の前に「アール度が約五八ミリメートルの曲率半径になるように」を各加える。

6  同七三頁末行「明らかであり、」から同七五頁六行目までを「明らかであるが、原告製品の形態の独自性について原告が主張する事由、すなわち、<1>アルマイト加工をしたアルミ押出形材を用いて銀白色の質感を出していること、<2>主・副両枠体の溶接による継ぎ目が一箇所のみであること、<3>両枠体の四隅の各コーナー部を曲率半径約五八ミリメートルに曲げ加工してあること、<4>ボルト6の頭部が主枠体3の前面から見えないように植設してあること、の各点は、原告製品がボックス等の壁面に穿たれた窓孔にガラス板等を嵌め込むという技術的課題を解決するため採用した不可避の構成ではなく、それを超えた原告独自の商品形態と認められる。」に改める。

二  原告の当審における新たな主張について

1  特許明細書に従前技術として挙示されたものが、必ずしも公知公用の技術とは限らないとしても、そのような場合は希有なものと考えられるばかりでなく、乙第一、二号証によれば、本件特許出願のなされた以前からすでに、部材を特定しない掛止壁とゴム質、合成樹脂等の弾褥版でガラスを固定したり、或はサッシと緩衝材を使用してガラスを固定する技術が公知であったと認められる。

したがって、ガラスの周辺にパッキングを着装してこのパッキングを表裏の金属枠で挾む技術が公用されていたことを推認することは困難ではない。

そうすると、この点に関する控訴人の主張は認められない。

2  そして乙第七、八号証、九号証の一、二、一〇号証の一、二によれば、熟練者でない者でも簡単に窓に取り付けられる計器読取用窓枠(表面はゴム枠、内側はアクリル板を用い、窓孔のあるパネル自体にはボルト通し用の孔を設けることなく、表側と内側との枠に取付ネジを通し、押さえ金具とナットをもって固定する方法)が本件特許出願のされた昭和五五年九月八日より前の昭和四九年よりすでに製造販売されていたことが認められる。

3  本件特許考案の要部は、当然従前技術との関連において判断すべきものであるところ、本件特許においては、すでに説示のとおり、主枠体3に背面に向けてボルト6を適当な間隔で植設した点(構成要件D)にあるというべきである。

第五  以上の次第で、原告の本訴請求はその余の点について判断するまでもなく理由がないので棄却すべきである。

よって、これと同旨の原判決は正当であり、本件控訴は理由がないので主文のとおり判決する。

(弁論終結日 平成九年一一月六日)

(裁判長裁判官 小林茂雄 裁判官 小原卓雄 裁判官 高山浩平)

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