大判例

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大阪高等裁判所 平成9年(ネ)948号 判決 1997年12月24日

東京都千代田区<以下省略>

控訴人

新日本証券株式会社

右代表者代表取締役

大阪府豊中市<以下省略>

控訴人

Y1

右両名訴訟代理人弁護士

玉井健一郎

宮﨑乾朗

大石和夫

板東秀明

辰田昌弘

関聖

田中英行

塩田慶

松並良

河野誠司

水越尚子

下河邊由香

兵庫県<以下省略>

被控訴人

右訴訟代理人弁護士

山﨑敏彦

主文

一  原判決を次のとおり変更する。

1  控訴人らは被控訴人に対し、連帯して金二八七万一二三七円及びこれに対する平成二年五月二二日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

2  被控訴人のその余の請求を棄却する。

二  訴訟費用は、第一、二審を通じて一〇分し、その七を控訴人らの負担、その余を被控訴人の負担とする。

事実及び理由

第一当事者の求めた裁判

一  控訴人

1  原判決を取り消す。

2  被控訴人の請求を棄却する。

3  訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。

二  被控訴人

1  本件控訴を棄却する。

2  控訴費用は控訴人の負担とする。

第二当事者の主張

次のとおり訂正するほか、現判決の事実摘示のとおりであるから、これを引用する。

一  原判決四頁末行の「B」を「Y1」と、六頁六行目の「ワラン」を「ワラント」と、八頁三行目の「ワラント代金」を「本件ワラントの代金合計」と、同七行目の「ワラント代金」を「本件日本電気ワラント及び本件住友化学ワラントの代金合計」と改める。

二  同九頁九行目の「のうち」から同一〇行目の「その余」までを削除する。

第三理由

次おとおり訂正するほか、原判決の理由説示のとおりであるから、これを引用する。

一  原判決一一頁八行目の「乙第四号証」を「甲第一号証の一、二、第一八号証、乙第一、二号証、第四号証」と、一二頁四行目の「二〇六万四一〇〇円」を「二〇六万四一一二円」と、同四、五行目の「ワラン」を「ワラント」と、同五行目の「一一四万三七〇〇円」を「一一四万三七五〇円」と同六行目の「ことがことが」を「ことが」と改める。

二  同一二頁八行目から一三頁七行目までを次のとおり改める。

2 控訴人らは、本件長谷工ワラントの取引も夫Cの取引であったと主張し、一方、被控訴人は、本件日本電気ワラント及び本件住友化学ワラントの取引も被控訴人自身の取引であったと主張している。しかしながら、前記の証拠によれば、夫Cは、当時、控訴人新日本証券との夫C名義及び被控訴人名義の継続的な株等の証券取引に関し、前記の約諾書、確認書、預り証及び受領書等のほとんどの書類に自署及び捺印をし、また、証券の受渡し等にも関与する一方、その取引における商品の選別等の交渉をほぼ全面的に妻の被控訴人に委ね、被控訴人名義で取引することも承認していたことが認められる。したがって、右1のとおり、本件ワラント取引も、被控訴人名義の取引については被控訴人が取引の当事者としてなされたものであり、夫C名義の取引については夫Cが取引の当事者であり、被控訴人がその代理人としてなされたものと認めるのが相当である。

三  同一三頁一〇行目の「並びに」を「、乙第一、二号証並びに」と、同行の「被告Y1」を「原審における控訴人Y1(後記措信しない部分を除く。)」と、一五頁一行目の「次の」を「次の平成元年四月の」と、同末行の「ワラン」を「ワラント」と、一六頁一〇行目の「従って、平成五年一月八日、被告Y1に面談し、」を「従って控訴人Y1と面談するつもりであったが、平成五年一月八日、控訴人Y1から被控訴人に架けられた電話において」と改める。

四  同一九頁二行目の「しかしながら」から同一〇行目の「できない。)。」までを次のとおり改める。

そこで検討するに、原審における控訴人Y1本人の右(1)の供述は、控訴人Y1が森永乳業ワラントの取引の際には被控訴人や夫Cにワラント取引説明書を交付していないことが同(3)の供述によっても明らかであるところ、乙第一五号証に記載されているワラント取引の仕組みについては、到底電話等の口頭での説明で容易に理解できるものではないと認められるから、控訴人Y1が右(1)の供述どおりの説明を被控訴人にしたことに疑問がある(ワラント取引の仕組みについては、具体的な数字を上げ計算式を記載して説明するのが通常であると考えられる。)上、これに反する原審における被控訴人本人の供述、被控訴人と控訴人Y1との前記電話での会話内容を照らして、到底措信することはできない。控訴人Y1は、乙第一八号証中において、控訴人Y1が被控訴人に電話した当時は、本件ワラント取引から二年半以上前のことである、控訴人新日本証券の子会社に出向していて証券取引とは無縁のコンピューターの仕事をしていた、被控訴人の気分をそこねるようなことをして事を荒立てないように被控訴人に対応した旨陳述するが、右電話には控訴人Y1から架けたものであり、控訴人Y1もそれなりの心積もりをして被控訴人に対応したと推認できること、控訴人Y1は、右電話において右(1)の供述に沿う内容を一切発言していないこと、右電話での会話内容には真実味があることから、控訴人Y1の右陳述は、右判断を左右するに足りるものではない。また、原審における控訴人Y1の右(2)の、日商岩井のワラントの取引の際にも再度ワラントについて詳しい説明をしたとの供述部分は、右同様、措信することはできない。次に、原審における控訴人Y1の右(3)の供述中、控訴人Y1が、平成元年五月ころ、夫Cにワラント取引説明書を交付したことは認められる(乙第五号証)が、控訴人Y1の右(3)の供述内容によれば、結局、控訴人Y1はワラント取引説明書を夫Cに交付したのみであって、ワラント取引の仕組みについては何ら夫Cに説明しなかったというものであるところ、夫Cが既にワラント取引の仕組みについて十分理解していたとか、右ワラント取引説明書を交付されて直ちにワラント取引の仕組みを理解したと認めるに足りる証拠はない(前記1(7)の認定に照らしても、夫Cがワラント取引の仕組みを理解していたとは認め難いし、夫Cは前記のとおり昭和五八年以降は実質的な弁護士活動をしていなかったものであるから、弁護士であったからといって直ちにワラント取引の仕組みを理解していたと推認することはできない。)から、控訴人Y1の右(3)の供述をもってしても、控訴人Y1が夫Cに対し、ワラントの仕組みについての説明義務を尽くしたということはできない。

五  同二〇頁七行目の「原告」を「控訴人ら」と、同末行の「十分していた」を「十分知っていた」と、二一頁二行目の「右の主張に沿う被告Y1の供述は到底信用することが」を「夫Cがワラント取引の仕組み及び危険性を十分理解していたと認めることは」と改める。

六  同二一頁末行の「被告Y1の」を「前記事実及び第一、二号証並びに弁論の全趣旨によれば、控訴人Y1の」と、二二頁一行目の「支出して」を「支出したが、本件長谷工ワラントは無価値になったため」と、同三行目の「二〇六万四一〇〇円を支出し」を「二〇六万四一一二円を支出したが、本件日本電気ワラントは最終的に六一六円で処分され、二〇六万三四九六円の損害を受け」と、同三、四行目の「ワラン」を「ワラント」と、同四、五行目の「一一四万三七〇〇円を支出して合計三二〇万七八〇〇円の損害」を「一一四万三七五〇円を支出したが、本件住友化学ワラントは無価値となったため同額の損害(ただし、被控訴人主張の一一四万三七〇〇円の範囲内でこれを認める。)」と改め、同五行目の「(被告Y1」から同一〇行目の「思われる。)」までを削除する。

七  同二三頁八行目の「考えられる。」の次に「また、前記のとおり夫Cは控訴人Y1からワラント取引説明書を受け取っており、ワラント取引の内容を吟味する機会があったというべきであるから、この点において被控訴人や夫Cに過失が認められる。」を加え、同一〇行目の「二五七万一六六〇円」を「二五七万一二三七円」と、二四頁四行目の「二八七万一六六〇円」を「二八七万一二三七円」と改める。

第四結論

よって、右一部異なる原判決を変更し、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 蒲原範明 裁判官 糟谷邦彦 裁判官 塚本伊平)

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