大判例

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大阪高等裁判所 平成9年(行コ)40号 判決 1998年6月30日

控訴人

滋賀県知事

稲葉稔

被控訴人

浅井秀明

主文

一  原判決を取り消す。

二  本件を大津地方裁判所に差し戻す。

事実及び争点

第一 申立

一 原判決を取り消す。

二 被控訴人の請求を棄却する。

三 訴訟費用は、一、二審とも被控訴人の負担とする。

第二 事案の概要

次のとおり付加、訂正するほかは、原判決第二事案の概要のとおりであるから、これを引用する。

一 原判決五枚目表八行目の「一項」を「一号」と、同裏二行目の「二項」を「二号」と、七行目の「三項」を「三号」と、それぞれ改め、一〇行目の「等」を削除する。

二 原判決五枚目裏の末行の次に、次のとおり付加する。

「更に、同条四号は「法令等の規定により明らかに公開することができない情報」を、五号は「法律またはこれに基づく政令により知事その他の執行機関の権限に属する国、他の地方公共団体その他の公共団体(以下「国等」という。)の事務に関して、主務大臣等から公開してはならない旨の明示の指示のある情報」を、六号は「県の機関内部もしくは機関相互間または県の機関と国等の機関との間における審議、協議、検討、調査研究等に関する情報であって、公開することにより当該または同種の審議、協議、検討、調査研究等に著しい支障が生ずるおそれのあるもの」を、七号は「県の機関または国等の機関が行う検査、監査、取締り等の計画および実施細目、争訟および交渉の方針、入札の予定価格、試験の問題その他の事務に関する情報であって、公開することにより、当該もしくは同種の事務の実施目的を失わせ、またはこれらの事務の円滑な実施を著しく困難にするおそれのあるもの」を、八号は「国等の機関からの協議、依頼等に基づいて実施機関が作成し、または取得した情報であって、公開することにより国等の機関との協力関係または信頼関係を著しく損うおそれのあるもの」を、非公開事由として定めている。」

三 原判決六枚目表九行目の次に、次のとおり付加する。

「次に、手続については、八条で、実施機関は、請求書を受理した日から起算して、原則として一五日以内に、当該請求に係る公文書の公開をするかどうかの決定をしなければならない旨(一項)、実施機関は、部分公開を含む非公開決定をしたときは、その理由を併せて請求者に通知しなければならない旨(四項)を定めている。」

四 原判決七枚目表二行目の「七月一日」の次に「、行政不服審査法六条の規定に基づき控訴人に対し」を付加し、同一〇行目の「3」を「4」に改める。

第三 争点

一 原決定に関する前訴判決の拘束力(行政事件訴訟法三三条)について

(被控訴人の主張)

1 行政事件訴訟法三三条一項の規定は、事件が裁判所と行政庁との間を往復して最終的に解決ないし救済が遅れることを防止し、行政処分に対する司法審査制度を実効あらしめるとの趣旨のもとに、行政庁に処分又は裁決を違法とした判決の判断内容を尊重し、その事件についての判決の趣旨に従ってすることを義務づけるものである。したがって、原決定とは別の理由に基づく反復同一処分が右規定に違反するかどうかは、右規定の趣旨から実質的に考察する必要がある。

2 前訴判決は、「本件公文書が本条例六条七号に該当するとは認められない」との実体的理由により原決定の取消を命じたものであるところ、本件処分も、本件公文書自体の内容が同条一ないし三号に該当するという実体的理由に基づくものであって、前訴判決の拘束力の範囲は、控訴人が本件処分の理由として主張する非公開事由の全部に及んでいると解されるから、控訴人は、原決定と同一内容の又は同一結果をもたらす反復非公開処分をすることはできない。

3 控訴人は、前訴において、控訴人が処分理由の差替をすることはできなかったと主張するが、取消訴訟における処分理由の差替については、特別の事由がない限り広く認められるべきものであり、仮に、理由差替の前後において処分の同一性が保たれるか否かにより差替の可否を決めるべきであるとの立場にたったとしても、本件の場合、本条例に基づく非公開処分は、処分日時、当事者、処分対象の文書によって同一性が判断される以上、原決定と本件処分との間でその処分の同一性が失われるものではないことが明らかである。

4 控訴人は、前訴において本件処分の理由を主張・立証することは不可能であったと主張するが、まず、本条例六条七号の規定に基づく原決定は全面非公開処分ではあったが、同号に基づく処分は全面非公開しかありえないということはできず、部分非公開もあり得るものである上、全面非公開の情報公開に関する訴訟においても米国のヴォーンインデックスを参考にするなどして、具体的には公文書の記載内容に関する目録を準備書面ないし書証の形で提出するなどの方法により主張・立証されている例があるのであるから、控訴人が前訴において本件処分の理由を主張・立証することが不可能であったということはできない。そして、控訴人が前訴の口頭弁論終結時までに本件処分の理由を主張・立証することが可能であった以上、前訴判決の拘束力の範囲は、控訴人が本件処分の理由として主張する非公開事由の全部に及んでいると解されるから、本件処分は前訴判決の拘束力に触れるものである。

(控訴人の主張)

1 行政事件訴訟法三三条に規定する取消判決の拘束力は、同判決によって違法と判断され、当該処分の取消原因とされたところの具体的事由のみについて生じるものである。

2 本件処分の理由とされた本条例六条の一ないし三号の規定は、その内容に照らせば、右各規定に該当する部分のみを非公開とする部分非公開処分を予定していることが明らかであるところ、原決定は全面非公開処分であるから、控訴人が前訴において本件処分の理由を主張・立証することができたということはできないし、まして、その義務があったということはできない。

3 原決定と本件処分の間には、全面非公開か部分非公開かの点で異なるほか、処分の理由とされた条項の性格の違い等からして、同一性があるとはいえない。

4 前訴判決の拘束力を不当に拡大することは、司法による行政介入をもたらす義務づけ訴訟を容認することと結果的に変わりがなくなるものであり、許されない。

二 本件公文書のうち、「県以外の出席者の職及び氏名並びに請求者の氏名及び印影」が本条例六条一号に、「請求者の預金口座」が同条二号に、「請求者の印影が」同条三号に、それぞれ該当するか。

第四 証拠

原審及び当審訴訟記録中の書証目録記載のとおりであるから、これを引用する。

理由

第一  前訴判決の拘束力について

一  当裁判所は、本条例六条一ないし三号を理由とする本件公文書一部非公開処分は、本件条例六条七号を理由とする原決定を取り消した前訴判決との関係で、行政事件訴訟法三三条に反するものではないと判断する。その主な理由は次のとおりである。

二  同法三三条二項は、申請却下処分が判決により取り消されたときは、申請を認容すべきことは命じておらず、判決の趣旨に従って申請に対する処分をすることを命じている。このことは再び申請却下処分をすることも、判決の趣旨に反しなければ許されることを示している。

三  被控訴人は、判決が実体的理由により処分を取り消したときは、行政庁は再び実体的理由により申請却下処分をすることはできないと主張する。しかし、前訴判決の趣旨は原決定につきどの非公開事由も存しないとしたものではないから、拘束力が全ての実体的理由に及ぶとすることはできない(なお後記最高裁判決参照)。

四  本条例六条七号は県や国の行政に関わる利益を保護しようとするのに対し、同条一ないし三号は私人の利益を保護しようとするものであって、全く保護法益を異にしている。このことからすると、同条七号に該当しないとする判決は、同条一ないし三号を理由とする処分を禁じる効力があるとすることはできない。

五  被控訴人は、前処分の処分の取消訴訟で同条一ないし三号にも該当する旨の主張をすることができたことを理由に、本件処分が同法三三条に反すると主張する。しかしながら、行政処分の適法性審査においては、まず処分の時点で行政庁がその理由の判断をした上で、裁判所の判断を受ける構造が望ましいところである。この点からすると、本件処分の理由を前訴訟で主張できた場合であっても、本件処分が同法三三条に反するとすることはできない(最高裁判所平成二年行ツ第四五号同五年二月一六日第三小法廷判決、民集四七巻二号四七三頁)。

第二  結論

以上によれば、その余の点について判断するまでもなく、本件処分が前訴判決の拘束力に反して無効であるとして、被控訴人の無効確認請求を認容した原判決は相当ではないので、これを取り消すこととし、その余の争点の審理のため本件を原審に差し戻すこととして、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官井関正裕 裁判官前坂光雄 裁判官高田泰治)

別紙代理人目録

(控訴人訴訟代理人弁護士)

肱岡勇夫、中坊公平、藤本清、飯田和宏、長尾博史、東岡弘高

(控訴人指定代理人)

村木安雄、上山哲夫、村井達、中井貞司、土井典

(被控訴人訴訟代理人弁護士)

折田泰宏、秋田仁志、宮塚久、市川守弘、太田賢二、虻川高範、佐藤欣哉、内田正之、小野寺信一、齋藤拓生、佐川房子、十河弘、高橋輝雄、土井浩之、半沢力、藤田紀子、増田隆男、松沢陽明、吉岡和弘、鵜川隆明、深田正人、牧野丘、佐々木新一、福地輝久、清水勉、森田明、新海聡、青島明生、井上善雄、高橋敬幸、佐々木猛也、名和田茂生、河野聡、國宗直子、蔵元淳、牧野聡、新谷正敏、島﨑哲朗

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