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大阪高等裁判所 平成9年(行コ)41号 判決 1997年12月25日

兵庫県高砂市伊保三丁目一五番三八号

控訴人

木谷勝郎

神戸市長田区御船通一番四号

被控訴人

長田税務署長 青木佳幸

右指定代理人

森木田邦裕

長田義博

丸田昭和

大久保昭男

主文

一  本件控訴を棄却する。

二  控訴人の当審請求につき訴えを却下する。

三  当審における訴訟費用は控訴人の負担とする。

事実及び理由

第一当事者の求める裁判

一  控訴人

1  原判決を取り消す。

2  被控訴人が控訴人所有の神戸市長田区大橋町四丁目二番所在ダイヤパレス西神戸七〇一号及び同一一〇四号の震災補修費に対してなした平成七年度消費税課税処分のうち、金一万〇三二四円につきこれを取り消す。

3  被控訴人は、控訴人に対し、金一万〇三二四円及びこれに対する平成八年一〇月一六日から完済まで年五分の割合よる金員を支払え(当審請求)。

4  訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。

5  仮執行の宣言。

二  被控訴人

主文と同旨。

第二事案の概要

本件事案の概要は、次のとおり付加・訂正するほかは、原判決の「事実及び理由」欄の「第二 事案の概要」、「第三 争点」及び「第四 原告の主張」(原判決一枚目裏一〇行目冒頭から同三枚目裏八行目末尾まで)に記載のとおりであり、原審が控訴人の請求につき訴えを却下したので、控訴人から控訴の申立をし、当審において訴えの追加的変更をしているものである。なお、当審における控訴人の追加的請求は、消費税として支払った一万〇三二四円につき消費税課税処分が違法・無効であるとして消費税還付請求ないしは不当利得返還請求をする趣旨のものと解される。

一  原判決二枚目表九行目の次に、改行して次のとおり加える。

「三 消費税還付請求をなし得る法律上の根拠があるか。

四  不当利得返還請求の当事者適格(被告適格)はあるか。

二 同三枚目裏八行目の次に、改行して次のとおり加える。

「三 争点三について

原告が、消費税法上の還付請求権を主張するものかどうか、必ずしも明らかでない。

四  争点四について

被告適格を有するのは、抗告訴訟では法令によって権限を付与されている行政機関であり、当事者訴訟では権利主体たる国となるが、具体的に誰を被告とすべきかは、課税当局においてこれを明示すべき責任がある。

第三当裁判所の判断

一  争点一について

当裁判所も、被控訴人の控訴人に対する課税処分は存在せず、したがって右課税処分の存在を前提としてその取消を求める控訴人の請求につき本件訴えは不適法であると判断する。その理由は、原判決の理由説示(原判決三枚目裏一〇行目冒頭から同四枚目表一一行目末尾まで)のとおりであるから、これを引用する。

二  争点三について

控訴人の消費税還付請求がいかなる法的根拠に基づくものか、必ずしも明らかではない。

しかし、これを消費税法上の還付請求権に基づくものであるとすれば、消費税は税務署長と消費税の納税義務者である課税事業者との間で発生するものであって(消費税法五条一項)、消費者である個人と税務署長との間に直接に発生するものではないから、個人消費者である控訴人には消費税法上の還付請求権が生じる余地はない。したがって、控訴人にはこのような消費税還付請求をなし得る原告適格はないというべきであり、本件訴えは不適法とするほかない。

三  争点四について

控訴人の本件消費税還付請求が、不当利得返還請求権(課税処分の無効を原因とする。)に基づいて、控訴人が業者に支払った消費税相当額の支払を求める給付訴訟であるとすれば、控訴人は税務署長という国の行政機関であって、法律上権利義務の帰属主体にはなり得ないものであるから、税務署長たる被控訴人には給付訴訟の被告適格はないというべきであり、本件訴えは不適法とするほかない。

四  結論

以上の次第で、本訴請求中、消費税課税処分の取消請求は、訴えが不適法としてこれを却下すべきところ、これと同旨の原判決は相当であって、本件控訴は理由がないからこれを棄却し、当審請求の消費税還付請求(給付訴訟)は、それが消費税法上の還付請求であれ、不当利得返還請求であれ、訴えが不適法であるからこれを却下することとし、訴訟費用の負担につき行訴法七条、民訴法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 笠井達也 裁判官 孕石孟則 裁判官 小川浩)

(参考)

平成九年(行ク)一四号

決定

控訴人 木谷勝郎

被控訴人 長田税務署長

右当事者の平成九年(行コ)第四一号消費税還付請求控訴事件について、控訴人から、本訴の被告長田税務署長を被告国税庁消費税課税当局に変更することの被告変更許可の申立て(行訴法一五条一項の規定に基づく申立て)がなされたが、「国税庁消費税課税当局」なるものが、何を指すのか必ずしも明らかでないうえに、本訴請求中給付請求訴訟については、行訴法一五条一項所定の訴訟形態ではなく、また、本訴請求中行政処分の取消訴訟については、故意又は重大な過失によらないで被告とすべき者を誤ったということにならないので(控訴人は、被告を国税庁消費税課税当局に変更すべき根拠を説明せず、裁判所に対し被告とすべき者を教示するように求めている。)、当裁判所は、右申立てを理由がないものと認め、次のとおり決定する。

主文

本件被告変更許可の申立てを却下する。

平成九年一二月二五日

大阪高等裁判所第六民事部

裁判長裁判官 笠井達也

裁判官 孕石孟則

裁判官 小川浩

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