大阪高等裁判所 昭和24年(を)1128号 判決 1949年9月07日
被告人
板谷一雄
外一名
主文
本件控訴はこれを棄却する。
理由
弁護人渡部繁太郞控訴趣意第一点について。
刑事訴訟法第三百一條によれば被告人の自白である供述を録取した調書は犯罪事実に関する他の証拠が取調られた後でなければ取調を請求し得ない旨の規定があるが、これは他の証拠調に先だち被告人の自白を録取したこのような証拠の取調によつて裁判官に被告人に不利益な予断をいだかせない趣旨の規定であるから、かかる証拠調の施行を他の証拠調の後にすべしという意味を有するに止り、その申請を他の証拠調のすんだ後にすべしという意味ではないものと解するのが相当である。(刑事訴訟規則第百九十三條参照)從て、原審で檢察官が所論各証拠の取調を同時に申請したのに対し、裁判官が自白の供述調書の取調を最後に施行し、被告人または弁護人も証拠の取調を請求しなかつたのであるから、結局において何ら右法條に反することなく論旨は理由がない。