大阪高等裁判所 昭和24年(を)174号 判決 1949年9月28日
事務所
大阪市東成区森町南一丁目五十五番地
小川徽章株式会社
右代表者
代表取締役 岡田貞雄
本籍
大阪市東成区森町南二丁目四十九番地
住居
同町南一丁目五十五番地
右会社取締役
岡田貞雄
当二十六年
右に対する法人税法違反被告事件について昭和二十四年三月十七日大阪地方裁判所の言渡した判決に対して原審検事から控訴の申立があつたので当裁判所は次の通り判決する。
主文
本件控訴を棄却する。
理由
原審検事の控訴趣意は末尾添附の控訴趣意書のとおりであつて要するに原審の量刑の不当を主張するものである。
およそ税法違反事件についてはわが国財政の現状に鑑み嚴重に処罰し、ことに被告人に科刑する場合に刑の執行猶予を言渡すについては慎重を期すべきこと検事所論のとおりであるが、本件記録および原審において取調べた証拠に現われている総ての事実を精査してみても原審の科刑が軽きに失するとは考えられないから論旨は採用し難い。
よつて刑事訴訟法第三百九十六條に従い主文のとおり判決をする。
検事 森山良 関與
(裁判長判事 荻野益三郞 判事 中治武二 判事 梶田幸治)
参照(検事控訴趣意書)
控訴趣意書
被告人 岡田貞雄
他一名
右被告人等に対する法人税法違反被告事件につき昭和二十四年三月十七日大阪地方裁判所が言渡した判決に対し控訴の申立をした理由は左の通りである。
理由
原審判決は被告会社に対して第一公訴事実につき罰金二万円第二の事実につき罰金三万円、第三の事実につき罰金十万円、被告人に対し懲役八月三年間執行猶予の判決を言渡したが右量刑は軽きに失すると思料す。
第一 被告会社の昭和二十三年三月一日から同年八月三十一日までの事業年度の実際所得額は三十万四千二百九円であるに拘らず被告会社は昭和二十三年十一月二十六日所轄税務署に一万五千二十四円の虚僞の所得申告書を提出して法人税十五万六千九百三十八円を逋脱した(原判決摘示第三の事実)すなわち申告所得額は約三十分の一で本件は逋脱額は此の種の事件としては僅少であるが、隠匿所得と申告所得との割合が比較的大きい点において惡質なる逋脱犯というべきである。
第二 原審第三回公判調書中岩崎武夫の供述にある通り(記録第八十五丁裏)大蔵事務官鈴江佳美の本件調査に対し被告人はその調査を妨害し公務執行妨害の嫌疑を受けたる程でその点においても本件は相当惡質な犯罪である。
第三 現下の財政状態より脱税事犯は一般的に嚴重に処罰すべきものと認められるのでこの種事犯に対して刑の執行猶予は慎しまねばならぬと思料する。
右の理由によつて控訴を申立てた次第である。
昭和二十四年八月三十日
大阪地方検察庁
検察官検事
大阪高等裁判所長官 垂木克己殿