大阪高等裁判所 昭和24年(を)3191号 判決 1950年4月15日
被告人
吉野田吉
主文
本件控訴を棄却する。
理由
弁護人竹内岩男の控訴趣意について。
論旨は原判決は被告人の賍物故買の犯意認定について事実誤認があるというのである。しかし、賍物罪における犯人の賍物認識の程度は賍物であることを確定的に知つていることを必要としないのであつて、犯人が取引物品の性質売渡人の態度等諸般の事情から或は賍物ではないかとの疑を持つていた事実が認められれば足るのである。ところで、証人武据実の証言によれば、被告人は昭和二十四年二月二十七日武据から女物オーバー等を買受ける際知人の名前をあげて、これは同人の物ではないかと尋ねているのであり、検察官に対する被告人の供述調書によれば、被告人は昭和二十四年二月九日頃から同年三月五日までの間に約十三回にわたつて武据から同人が他で窃取して来た衣類等を買受けているのであるが、あまり度々売りに来るので同年二月二十七日頃から、これはおかしい物ではないかと思つたと述べているのであるから、原判決が、これらの証拠を綜合して未必の故意を認定したのは相当である。たとえ所論のように被告人が武据の跡をつけて同人の依頼者だという家を確かめているにしても、それは買受後のことであつて却つて同人の言葉を疑いあやしめばこその所為であるから、少しも被告人の未必の故意を認定する妨げとはならない。論旨は理由がない。