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大阪高等裁判所 昭和24年(を)3821号 判決 1950年4月27日

被告人

曾我玄亮

主文

本件控訴を棄却する。

当審の訴訟費用は被告人の負担とする。

理由

弁護人藤田敬治の控訴趣意第一点について。

しかし原判決挙示の証拠を綜合すれば判示事実は十分認められる。そして、右認定事実によると被告人は錦証劵株式会社に外務員として雇はれ同店の顧客橫井康子、菱田栄美子外一名の各買註文に基き代金と引換に同人等に交付すべく店から預つた株劵を勝手に他人に対する自己の債務の担保に差入れ又はその株劵を他の顧客から売却方を依賴されたものように裝つて店に売却処分したと言うのであるから、業務上橫領罪の成立することは明らかである。所論は該株劵を担保に差入れることについては橫井及菱田の承諾があつたから橫領罪を構成しないと主張する。しかし該株劵の所有権は店が外務員に交付すると同時に買註文者たる客に移轉すると云ふ商慣習は存在しないから客から株劵代金の支拂がない限りその所有権は客に移轉せず從て客の処分承諾の有無は犯罪の成否には影響はない。又所論は外務員は買註文者たる客に引渡すべく店から預つた株劵を自由に他に売却処分し得る権限があると主張するもののようであるが、かような株劵を無條件に処分し得ると言うような商慣習の存在を認めるに足る資料は記録上発見することはできない。

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