大阪高等裁判所 昭和24年(を)790号 判決 1949年5月16日
被告人
藤田宮治
主文
本件控訴はこれを棄却する。
理由
前略
第一点について
被告人の前科に関する原判示は所論のとおりであつて挙示の前科調書によれば被告人に対する右判決の宣告は昭和二十二年五月二十六日であり、同年六月三日これが確定をみたことが窺われるから、前科を表示するのにそのように記載すれば正確はすなわち正確にちがいないしかし判決は確定してはじめて執行の段階に達するし、累犯加重については執行の点もきわめて重要であることを考えると、こと累犯に関するかぎり判決宣告日よりむしろ確定日の方がより重要であるともいえる從つて、前記のような詳細かつ正確ではあるが聊か繁雜な記載をするかわりに特別の必要ない以上原判示のように「昭和二十二年六月三日云云に処せられ」なる簡潔な文調を右趣旨を表現することは必ずしも違法なりとはいゝ難く、原判決には所論のような瑕疵ありとはいえない。
第二点について
しかし判決事実摘示には罪となるべき事実すなわち犯罪の構成に必要な具体的事実を記載するを要しかつこれをもつて足るものと解すべきであるが原判決によれば被告人は窃盜の目的で判示日時判示八木欣一方裏口の施錠を破壞してその邸内に侵入したものであり、要するに侵入したのは同人方の邸内であつて屋内ではない趣旨が判示自体で窺われるから邸宅侵入罪の構成要件たる具体的事実の記載として欠くるところはない。もとより裏口あるいは施錠の設備がどんな状態であつたかまた何んで破壞したか等の詳細な点について必ずしも判文上記載することを要しないものと解すべきであるから原判決には所論のような違法はない。