大判例

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大阪高等裁判所 昭和24年(ネ)10号 判決

控訴代理人は本案前の申立として、「原判決を取り消す。本件を大阪地方裁判所に差し戻す。」との判決を求め、被控訴代理人は「本件控訴を棄却する。控訴費用は控訴人の負担とする。」との判決を求めた。

控訴代理人が本案前の抗弁として主張した理由の要旨は、「原審で本件の第一回口頭弁論期日を昭和二三年一二月一日と指定したので控訴人は直ちに弁護士油木巌を訴訟代理人に選任した所、同人は右期日に差支があつたので同年一一月一〇日控訴人の訴訟委任状及び右口頭弁論期日の変更申請書等を原審に郵送し、該書類は遅くとも上記口頭弁論期日前である同年一一月一五日までに原審に送達され同裁判所書記官が現実にこれを受取つたのに拘らず訴訟記録に編てつして置かなかつたため、原審裁判官は前記口頭弁論期日に右期日変更申請書が提出された事実を知らず、控訴人の方の不出頭のまま結審して判決を言渡したのであつた。元來訴訟当事者から口頭弁論期日変更申請書の提出のあつた場合には、受訴裁判所はこの申請許否の裁判をしなければならなかつたに拘らず、原審がこの裁判をなすことなく前記のような判決をしたのは違法であつて、かような場合には第一審において全然弁論がなされなかつたので同審でこれをなす必要があるから、原判決を取り消し本件を原審に差し戻す旨の判決を求める。」というのである。

三、理  由

よつて当裁判所は弁論を控訴人の右本案前の抗弁だけに制限して審査するのに、本件記録によると、原裁判所は本件訴訟の第一回口頭弁論期日を昭和二三年一二月一日午前一〇時と指定しこの期日呼出状が同年一月二日控訴人(一審被告)に送達されたので、控訴人は應訴のため島根縣松江市居住の弁護士油木巌をその訴訟代理人に委任したが、同人は右昭和二三年一二月一〇日廣島高等裁判所松江支部に開廷される刑事被告事件の弁護人として公判に列席しなければならぬとの理由で同年一一月一〇日ごろ右口頭弁論期日の変更申請書を訴訟委任状並びに疎明書類と共に原裁判所に郵送したのであるが、同郵便が遅延した特殊の事情のあつたことは認められないので、これらの書類は遅くとも同月一七日ごろまでには原審に送達されたものと推測する外はないのであつたが、原審ではどういう原因によるのか不明であるが、前記口頭弁論期日に期日変更申請書の提出がなかつたものとして、控訴人の訴訟代理人不出頭のまま結審し控訴人敗訴の判決の言渡があつたことが明かである。思うに、最初の口頭弁論期日に当事者の一方に顕著の事由があつたときは裁判所はその当事者の該弁論期日の変更申請を許容すべきことは、民事訴訟法第一五二條第三項の反面解釈から疑のない所である。しかしながらこの期日変更申請が許されるのには顕著な理由即ち重要な理由の存在を要件とするのであるが、訴訟代理人たる弁護士が他の刑事被告事件に弁護人として出頭するような場合は、右にいわゆる顕著な事由に該当しないものと断定せざるを得ない。けだし当事者は自身口頭弁論に出頭するとかまたは他の弁護士に訴訟を委任し若しくは訴訟復代理人を選任することによつて口頭弁論期日の変更申請をせずに済んだであろうからである。(なお被控訴人の方で前記の期日変更申請に同意しなかつたであろうことは、本件記録上明らかである当審における本件と同様の控訴人の期日変更申請に同意しなかつた事実から推測できる所である。)そうして見れば、原審は右の控訴人の訴訟代理人の期日変更申請を失当として却下し控訴人の方の不出頭のまま結審することができたわけであるから、たとえ原審が同弁護士から期日変更申請がなかつたものとして同代理人不出頭のまま判決をしたからといつて、結果から観て少しも違法の点がなかつたということに帰着せぜるを得ない。よつて結局控訴人の本案前の抗弁は理由のないものと認めるので主文の通り判決する次第である。

(裁判官 松本左右一 大野美稻 福本一)

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