大阪高等裁判所 昭和24年(ネ)86号 判決
控訴代理人は原判決中控訴関係部分を取消す。被控訴人の請求を棄却する旨の判決を求め、被控訴代理人は控訴棄却の判決を求めた。当事者双方の事実上の陳述は控訴代理人において控訴人は昭和二二年九月一五日株式会社栄和商会との間に玩具、裝身具、骨董等の外人向の商品の販賣を目的とし、(一)右会社の資本金が総額十万円であるので、控訴人は同会社の株式二百株(額面総額一万円)を讓り受けて株主となる外更に金九万円を出資する、同会社はその後の状勢に應じ必要の都度出資する、損益の分配について控訴人は損益に拘らず毎月金一万円を受け取り、利益は全部同会社が取得すると共に損失は全部同会社において負担する。(二)日常の業務は会社がこれに当り控訴人はこれに協力する。特に骨董の販賣及び外人客の誘致は控訴人においてこれを担当する。(三)右共同事業のために控訴人は被控訴人から賃借中の本件家屋を使用することを認めると同時に同会社は控訴人から代金三十万円で買い受けた右家屋の造作を使用することを認める約旨の下に組合契約を締結し、爾來控訴人及び右会社が本件家屋において共同事業を営んできたもので、控訴人は右会社に対し本件家屋を轉貸したものでも、その賃借権を讓渡したものでもない。而も控訴人が被控訴人から本件家屋を賃借した当初被控訴人において控訴人が賃借人としての責任を持つ限り、本件家屋をいかように改裝するも、何業を営むもまた何人と共同するも、何人を居住せしむるも差支ない旨の承認を得ていたので、本件家屋を前記組合の業務のために使用することは被控訴人において予め承諾していたものであるから、被控訴人の本件賃貸借の解除はその効力がないと述べた外原判決事実摘示と同一であるから、ここにこれを引用する。
<立証省略>
三、理 由
被控訴人が昭和一九年中控訴人に対し本件家屋を賃料月金百円の約定で期間の定なく賃貸したことは当事者間に爭がなく、被控訴人が控訴人において右家屋を被控訴人に無断で他に轉貸又はその賃借権を讓渡したことを理由として本訴において本件賃貸借解除の意思表示をしたことは本件記録上明白である。よつて控訴人が被控訴人に無断で本件家屋を他に轉貸し又はその賃借権の讓渡をなしたか否かについて考えて見るのに、当裁判所が眞正に成立したものと認める乙第一ないし第五号証に原審証人望月務の証言(但し後記認定に反する部分を除く)、当審における証人石井良太郎、飯田爲廣の各証言及び控訴本人の供述を考え合せると、控訴人は昭和二二年九月一五日株式会社栄和商会との間に控訴人が本件家屋に取りつけた造作を代金三十万円にて右会社に讓渡し右代金の内金十万円については同会社の株式二百株を金一万円として讓り受ける外残金九万円はこれを出資金とし同会社は必要に應じて出資することとして同会社と共同して玩具、裝身具、骨董等外人向の商品の販賣を爲す、控訴人は被控訴人から賃借中の本件家屋を右共同事業のために使用することを認め、同会社は右家屋において、専ら商品の販賣に從事し、控訴人は常時出入して連絡をとる等の約旨の組合契約を締結し、爾來右会社が本件家屋において玩具その他の商品を陳列してその販賣を行つてきたことが認められ、前顕証人望月の証言中右認定に反する部分は措信しない。而して民法第六一二條にいわゆる賃借物の轉貸とは賃借人が自己の有する権利の範囲内において第三者をしてその物の使用收益を爲さしむることを約する契約であつてその法律関係が轉賃貸借であると、轉使用貸借であると、組合契約であるとその他の法律関係であるとを問わないものと解するが故に、控訴人は株式会社栄和商会に対し本件家屋を轉貸したものと云わなければならない。
控訴人は前記組合契約により株式会社栄和商会をして本件家屋を使用せしめることについては予め被控訴人の承諾を得ていた旨主張するけれども、この点に関する控訴本人の供述はたやすく信用できず、他に右主張事実を認むるに足る証拠がなく、その他控訴人挙出に係る全証拠によるも叙上認定に係る轉貸借について被控訴人の承諾のあつた事実は認められないので、被控訴人の爲した前記賃貸借解除の意思表示は有効であつて、控訴人は本件賃貸借の終了により本件家屋の明渡を爲すべき義務あるもので、これが履行を求める被控訴人の本訴請求はこれを正当として認容すべく、これと同旨に出でた原判決は結局相当であつて、本件控訴はその理由がないのでこれを棄却し、控訴費用の負担について民事訴訟法第九五條、第八九條を適用し、主文のとおり判決したのである。
(裁判官 大嶋京一郎 林平八郎 大田外一)