大阪高等裁判所 昭和25年(う)1979号 判決
次に弁護人は巡査足立順一の当時の行為は適法性を欠くと主張するけれども、警察官等職務執行法によれば警察官等は犯罪がまさに行われようとするのを認めたときはその予防のため関係者に必要な警告を発し又もしその行為により人の生命若しくは身体に危険が及び又は財産に重大な損害を受ける虞があつて急を要する場合にはその行為を制止することができると規定せられている。原判決挙示の証拠によれば被告人は当時盆踊場で太鼓に寄りかかつて太鼓打をして之を乱打せしめて盆踊の妨害をしていたので足立巡査は軽犯罪法第一条第十三号又は第十四号違反の所為がまさに行われようとすると認め、その予防のため被告人に警告を発したところ被告人は矢庭に同巡査を欧打して来たのである。しかして犯罪予防のために警告を発することは被警告者をして自発的に当該行為を中止せしめ以て犯罪に至らないようにすることを目的とするものであるから、若し被警告者が一回の警告を受けても之を肯んせず、更に当該行為を継続するような場合にはなお警告を繰返えして所期の目的を達するよう努める職務を有するものと解すべきである。故に若し本件被告人において足立巡査の第一回の警告を肯んじないときは同巡査としては引続き警告を発する職務を有していたのであるが、被告人は同巡査に暴行を加えて、その職務の執行を中絶するの止むなきに至らしめたのであるからこの時に既に公務執行妨害罪が成立している。而して現行犯人は何人と雖も逮捕することができるのである。従つて同巡査が之を逮捕し巡査派出所に連行せんとした行為は現行犯人の適法な逮捕手続行為である。
(後略)